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……女だからか。噛み合わんな。
情報収集は手段であって目的ではない。相手の真名やクラスなど知らずとも、倒してしまえば問題なかろう。
それと、サーヴァントでなければ全てを賭して戦闘に臨むのはおかしいか。お前は余程俺を否定したいと見える。
[キャスターの真意を理解できず、苛立ちを覚えた。]
[パンを食べる猫の様子を見ながら、サンドイッチを口に運ぶ。]
無邪気なものだな、動物は。
それで。
地形は把握した。どこかの馬鹿が一般人から吸い取り始めているのがどこなのか、把握しなくてはならない。
実害は少なくても、魔術師としてその行為を認めるわけにはいかないからな。
今夜、できるだけ探りたい。拠点がわからずとも、どこに流れているのか、方向くらいはわかるはずだ。
何か、意見は?
[言葉が返ってくるまで少しのラグがあった。
しょうがない事なのだろう、英霊の時代では考えられない物なのだから戸惑っても不思議ではない]
昨日の川原と別にか……。
ずいぶん派手に動くね、他の陣営は。
痕跡の方も頼む、しかし、無理はしないように。
それじゃ、また何かあったら連絡する。
[電話を切りながら他陣営の激しさに少し呆れる。
頭の中でプランの修正を考え始めるも相手の情報が無い状態では具体的な案は浮かぶはずもなかった]
[朝は、我々の時間ではない。そう言われて、ジョークの分かる者たちが一斉に声を挙げて笑う。
だが大半の中身は、今のこの場で笑う気になどならなかった]
……移動ハ、すべキダ。
[それだけ言って、キラーは路地のさらに奥まる方向、影の強い方へと足を向ける]
[
男の言葉に、僅かに困惑を覚えて。
そして、その違和感は――いまここで確かめておかねばならないものなのではないかと、口を開いた。
]
いえ――否定、などでは。
確かに、先の私の行動は、打倒し得たかもしれない敵を、みすみす逃すという、愚かなものでした。
――ですが。
この戦争において、直接対峙した敵を打倒するのは絶対条件ではない。
要は、最後の一騎として残っていればいいのですから。
……それを、マスターたる貴方が知らぬはずはない。
だというのに、貴方の言葉は――……。
[言葉を切って]
――……正面から敵を打ち破ろうという、そのためには手段を選ばないという――そんな気がするの、ですが。
[実害は少ない、という言葉にまた空気が止まる。
しかしそれも一瞬のこと。]
――――。
あると言えばあるが。今は必要の無いことだ。
尤も。
先ほど君が触れたが、相手がキャスターのサーヴァントであった場合、今の私達に妥当する術は無いぞ。
逆にこちらが感知されて、迎撃される可能性もある。
その想定はしているのか。
――中央ブロック――
[キラーが進んでいる道は、家に向けて一番近い道ではなかったが、ビルや建物が並ぶ間を縫うように帰ろうと思えば、その方向で間違っていなかった。キラーの持つ方向感覚に感心をしながら、その後を追い、そして、足が止まった]
……今日は間違いなくぶたの日だなあ。
[みなみの視線の先には、一人の少年。人込みにいたら、外見だけならば決して浮かない身なり。しかし、彼を取り巻く空気は、彼が只者ではないと告げていた。キラーに伝えるまでもなく、キラーはすでに察知しているだろう]
―中央ブロック・路地―
[日陰へと足を踏み入れる。急激に低下する体感温度。今朝方に巻き起こった颶風にかき乱されなかった、夜の残滓。この方向ではないと考えて引き返そうとした、その時だった――]
……影――いえ、闇。
[路地の向こう。
少年が立つのと同じ陰の延長上に、二つの姿があった。
一人は女。人間ではあるが幾ばくかの魔力を身に備えていた。
もう一人は――いや、それは『一人』と呼んで良い存在だったのだろうか? 曖昧模糊とした中にも禍々しさを漂わせる『闇』の印象を少年は思い浮かべた]
ね、どうするの。
[キラーにだけ聞こえるように呟く。聞くまでもないかもしれないけれど、と、心の中で付け加えた。それでも先ほど言った通り、会った人間全てを攻撃するだけが、聖杯戦争の勝ち方ではないことが伝わっている事を祈って]
ではバーサーカー。
他のサーヴァントだったとして、勝つ手立てがないと引きこもるのか?
確実に勝てる相手にしか、手を出さないとでも?
もっとも、私とて勝機のない戦いに赴く気はない。そのための情報収集は行う。それに。キャスターに勝てないなら、そのマスターを討てばいいだけのこと。そう簡単に離れるとは思わないけど。
どのサーヴァントが相手であろうと、英霊である以上強力なのに間違いはない。
そしてバーサーカー、お前も、そのサーヴァントの一人だ。それを忘れるな。
[今日は、なかなか愉快な日だ。視界に映る少年を見て、キラーは笑む。
だが、相手は自らの欲求を満たす獲物ではない。そのことには落胆を禁じ得なかった。さっきの女の方が……あるいは自分の横に並ぶ、自らを喚び出したこの女の方が、獲物としては相応しい]
……我々ヲ、見てイた者ダな。
[それでも、キラーは臨戦態勢を取った。
この状況。この身体に慣れておかなければ聖杯どころか、狩りすらままならない。それは、もはや身に染みて分かっていた]
―中央ブロック・路地―
[全身に微弱な電流が走る感覚。戦闘に向けて高揚していく感情を自らの内に感じ取る。眼前に在るは望むべくもない打ち倒すべき敵手――役割(クラス)も特性(ステータス)も見抜くことは不可能。
だが、自らとは根本的に相容れない属性の持ち主であろうと想定する]
汚らわしい、闇色の存在よ。
――そして、手綱の繰り手たる魔術師よ。汝は何を望むのか?
――――ク。
[小さく漏れた声は、笑い――だったのだろうか。
少女の作戦には穴がある。確かにある。
最弱と呼ばれるが故に搦め手に長けているであろうキャスターが、策謀を巡らすという意味で天敵であろう相手であったとしても。
まだ、打倒するために完全な作戦を考え付いていないとしても、彼女は事態を解決する為に散策に出るべきだと提案した。
そして、まだ召喚してそう時を経ていないサーヴァントに対して、はっきりと言ってのけたのだ。]
そうか。
いい答だ。マスター。
[剣に付着したままだった血を拭う。
麦藁帽子を少しあげて、仮面は己がマスターをまっすぐ見た。]
君の命に従おう。
そして、一つ君も誓ってくれ。
うー、と、とてもじゃないけど、同じサーヴァントとは思えない……。
[少年――とはいっても彼は自らが矮小な存在に思える程の力を持つサーヴァントに違いはなかったが――を眺め、呟きながら距離を一つ置く。キラーの彼に対する態度を見れば、この後の行動は見て取れた]
あなたも、単独行動が好きなのね。
[内部で魔力の流れを映像化しながら、アーチャーの問いを静かに聞く。その問いに、喉元で引っ掛かる何かを感じながら、本家の命を思い出して反芻した]
魔術師が魔術師として生きる以上、望むものはたった一つだけだと思う。
わたしはきっと、それを望んでる。
彼を汚らわしいと言うあなたは、さぞご立派な願いを持っているんでしょうね。
これから君が身を投じるのは戦いの場。
華麗なるものは何一つ無く、輝かしい軌跡すらないだろう。
彩りは血の赤、気配は死の臭い。
仮に私が倒れたとしても。
君は必ず、この戦争を勝ち抜くのだと。
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