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−教会−
[コトリ......小さな音とともに、扉が開く。聖堂から奥の事務室に入ってきた"聖杯戦争の監督者"を見つけ、お盆を片手に近寄る。]
お疲れさまです。
いよいよ、聖杯に選ばれし者たちが動き始めたのですね。
[そのまま事務椅子に座った監督者の前に、湯気をたてているカップを置いた。]
どうぞ、召し上がれ。
―未明 ホテル三十階・非常階段―
[次第に明るみ始めた東の空。駆逐されていく夜の闇。
夏の最中であれば尚更、その変化は急速だった]
聖杯戦争は既に始まっている。この街のどこかで、私たちの他に六組のマスターとサーヴァントが、心に秘めたる願いを叶えようと望んで――……風?
[轟、と旋風が吹き抜けていった。空を吹き渡る強風とは異なった、地上からビル群を叩きつけ揺り動かすような勢いのある風。ジャケットの裾がばたばたとはためく。少年は顔を覆った腕の隙間から、その源を見定めようと瞳を細めた]
そう。縁はなかなか切れるものではない。現に私はその猫を助ける気になった。
それが、ここでバーサーカーが猫と縁を築いたことによるものだとしたら?
どちらにしても飼うつもりなどないのだけど。ここは仮の宿に過ぎないし、面倒を見ていられるほど暇でもない。
ああ。今度教会にでも預けてこようか。
事件の犯人については、実際に発見された場所まで行けば犯人がどちらなのかは割り出せよう。今は、状況から見てサーヴァントの仕業だといってるだけだ。どちらでもやることは変わりない。ただ、サーヴァントであれば……キャスターか、それか魔術を使うサーヴァントだろうな。
[服を見るバーサーカーに対し、やや語調を和らげる。]
それを着ろ、と強制するつもりはない。だが、バーサーカーのその格好はこの時代において目立つことはわかってほしい。何よりその仮面だ。念のために帽子も買っては着たが……。
[身に付けそうもない、と思い肩を竦めた。]
ああ、ありがとう芽祈君。
[置かれたカップを手に取り、礼を言う。]
まったく……損な物だよ、監視者なんてね。
悲しき中間管理職、いやこれはもはや末端か。
[そう呟いて一口飲む。]
上の審議によっては、参加者全員に通知をしなければいけないが。
[そこで言葉を切る。
そう、今回の聖杯戦争でもう一つ不審な点があるのだ。
どうしてそのような事になってるかもわからない。]
――何故、6体なんだ。
[『信じろ』という言葉に、顔を上げる。
そこには男の、からりとした笑みが見えた。]
……。
[思わず、何かが口からこぼれてしまいそうになったが―]
そうお嘆きにならないで。
ここの果たす役割は、聖杯戦争の黒子みたいなものなのですから。
さきほど、マスターがおひとり来ていましたね。もう、参加者の把握も済んだ頃合いなのかしら。
[そう話しかけながら、続いて、クッキーが乗った皿を事務机の上に置いた。]
あ、こっちは私がさっき焼きました。お好きですよね?
バタン。
[どこか別の家の扉が閉まる音が廊下側から聞こえ、はっと意識が覚醒する。]
……っ。
[自分は何を口走ろうとしたのだろう。
慌てて立ち上がると、早口で捲くし立てる。]
…ご心配、ありがとう。
あんたにそこまで気遣われるほど、弱くは無いつもりだけどね!
[そのまま、足音も荒く、窓際のシングル布団まで歩き、毛布と枕を掴むと信長に向かって投げつけた。]
もう、体力の限界だから寝るわ!
…それ、あんたの分の布団!
一組しか無いから、今日はそれで我慢してちょうだい!
それとも、お殿様はこんな固い床じゃ寝れないかしら?
[猫は足元に擦り寄ろうとしている。
掌から血が滴ろうとも、剣を握ろうとも。]
……………。
好きにさせておけばいい。
居住は、自身で勝手に選ぶだろう。
[どのような心情を以って言ったのかは分からない。
ただ言葉の終わり、ほんの少しだけ仮面が猫を向いた気がした。]
キャスターか。
……正直なところ、今はまだ戦闘は避けたいな。
アサシンとキャスター。両者は搦め手を主にする者だろう。
控え目に考えても、私と相性が良いとはとても言えない。
他のサーヴァントと交戦「させる」か。
或いは――――炙り出すか。
[袋の中から服を取り出す。ジーンズとシャツ。
どちらも馴染みがありようも無いものだ。
仮面は真剣に二つを眺める。]
[その間にも、刃を握る手から血は滴る。
足元で猫がちょこまかと避け、それでも興味は尽きないらしく、恐る恐る前足を伸ばしたりしていた。]
これは…………。
…………私が着ると、見苦しくはないか。
[服を装着した自身を想像する。
それがあまりにも奇天烈だったので、すぐにイメージは崩壊した。音を立てて崩壊した。]
帽子だけなら考慮しよう。
どのような帽子だ。
[自分が柄で吊っている袋の中には無いようだ。]
[そう、今回観測されたサーヴァントの出現回数は"6回"。
なのに既に聖杯戦争は開始されているのだ。
過去の聖杯戦争で7体そろった時と同じ現象が起こっている。
――ああ、何か嫌な予感がする。]
そう…ですね。
裏方は表舞台の演技によって駆けずり回る物と決まっていますから。
[そして差し出されるクッキー。
それを手に取り……。]
……。
[――ああ、何か嫌な予感がする。
口へと運んだ。]
[突然の反応に呆気にとられた後、笑いをかみ殺す。
なるほど、案外わかりやすい奴なのかもしれない。]
別に問題はねぇ。
昔はよく城を抜け出して川原あたりで寝てたもんだ。
ただなぁ……。
[手で枕をいじりながら会話を続ける。
この時代の枕は彼にとって風変わりなのかもしれない。]
英霊は眠る必要ないぞ?
ほう、相手はサーヴァントだったか。
[興味深い、と呟く。
その後も戦闘の様子を満足気に聞いていたが、キャスターの報告を最後まで聞き終えた時には、当初の機嫌の良さは消えていた。]
……どこまでも愚かな女だな。一人で事に及んだまでは褒めてやろうかとも思ったが、獲物の息の根を奪うことなくおめおめと逃げ帰ってきたと言うのか。
いいか、よく聞け。戦闘とは己の全てをぶつけるものだ。中途半端な覚悟で臨むものではない。お前の能力の全てを戦闘に費やせ。
――俺たちは、そのために存在するのだ。
[クッキーを口に入れたのを確認し、満面の笑顔になった]
きゃはっ、くっきー(九鬼)がクッキー共食い〜〜☆☆☆
[嬉しそうにはしゃぎながら、走って事務室を*後にした*]
[バーサーカーの足元でちろちろと動く猫に苦笑する。どんに帽子だと聞かれて、別の袋から麦藁帽子を取り出した。]
その仮面が隠れそう、というとこの類しかなくてな。
[バーサーカーへと投げてよこす。]
……それと。あまり体を傷つけるな。それを修復するのにも魔力は使うのだから。
[帽子の入っていた袋から、食パンを取り出してバーサーカーへと見せる。]
食事は、一応パンを買っておいた。飲み物がほしければ紅茶か珈琲かどちらか入れよう。私もちょうど飲みたい時間だ。
え。
[信長の返答に、きょとんとした顔になる。
相手のあまりの人間臭さに、この次元を超えた不思議な繋がりに関する事が、すっかり頭から抜け落ちていたのかもしれない。]
…ひ、必要無くても、私だけぐーすか寝てたら居心地悪いじゃないっ!
こういう時は空気読んで、余計な事言わずにおとなしく寝る振りでもしてみたらどうなのっ!
[顔を真っ赤にして怒鳴る。
自分の勘違いを正して謝る気は、もはや彼女には無いようだ]
[完全に忘れてやがったな…と心の中で呟く。
口に出さないのはせめてもの優しさだ。]
寝たふりしてなにしろってんだ。
あれか、お前の寝顔でも見ながら寝息でも聞いてろってか?
暇な上に無駄でしょうがない。
[明らかに照れ隠しで怒鳴っているアカネにため息をつく。]
まぁ、閨を共にするってぇなら是非もねぇが。
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