【遺体状況1】
[犠牲者は、ロビーにいた。
もっとも目立つであろう、ソファーの向かい側の壁。
銃痕が、腹に1発、手足に数発の傷を残している。そこから流された赤い水溜りが床に広がって。
その力を失った体を支える両足は、太い釘で壁へと逆さまに繋ぎとめられている。まるで磔にされた聖人のごとく。]

【遺体状況2】
[聖人との違いは、両目と口とが布のようなもので閉ざされていること、そしてその左右の腕が悉く胴体から離れ、床へと無造作に放り投げられていることか。――胴と生き別れになった首のその近くに。首と手足の傍には、血溜りはほとんどなく、顔につけあられた傷もない。
そして、乱雑に胸部に掘り込まれた赤黒い色の文字。]

[無惨な遺体と変わり果てた彼の胸部。赤黒い文字が綴られる]

かわいそうなかみのいぬ

Ｆのきさりにしばられ
Ｍのどくがにかかり
さいごにＨのせっぷんをうけ

あくむをみつづけるといい

（遺体の傍に、なにかで刻まれたような文章がある）



にがさない

けしてにがさない



つぎこそおまえたちに

さばきをくだす


にげられるとおもうな
むくいをうけよ

[青年が屍になった夜。岸正義の元に一通の電子メールが届く]

ぷれぜんとはロビーにおいておいたよ


[内容はそれだけだった]

/*
[３枚目訂正]
きさり→くさり
*/

[メッセージが一通、端末へと届く]

守れなかった
及ばなかった
救えなかった

敵は強い。
手段のある者が他に居るのなら

皆を救えるのなら

頼む

[まるで別の意味で遺書のような文書は、
　単語だけを途切れ途切れに伝えて切れていた]

/*結びの文と非通知解除忘れ　失礼*/

(容疑者全員の端末に、再びBR経由でメールが届くだろう。それはプレタの時同様に文章ファイルの添えられた、しかしあの時とは送り主の違うメール)

「皆様へ。

　第二の犠牲者に関する調書を開示します。犯人への手掛かりとしていただくため、また次の投票へも役立てていただきたく。

【ハウンド】レッドエリア担当/岸 正義」

(メール自体の内容はひどく短く、また文章ファイルを開けばそれも淡々とした調子で書かれていることが分かる。死体の状況、ロビーの惨状、メッセージを原文そのままに)

(尚、惨劇のあったロビー全域は封鎖するわけにもいかず、死体のあった場所周囲だけを取り囲んで封鎖とした。近づきたがる人間もいるまいと思っているが、念のためにと)

一番目と二番目のコードは「0」。残るコードは後9つ。
「1」は何処に隠れてる。1つの「1」は此処にいる。
「2」は何処に隠れてる。お前は二進の不要物。

（モニターに表示されるメモが一つ、増えていた）

（獅と教を除く全員の携帯端末に、名前入りで簡潔なメールが送られた。）

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ぼくは、臨時の捜査官です。
深夜にここを抜けだし、調査させて貰いました。
ファウスタス・ヴァイスマン大学教授は無実でした。
しかし、シシィ・Ｊ・アインアドル企業軍人は企業を含めたテロリストでした。
彼女には近付かないよう、また、投票をお願いします。
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