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――仮眠室――
[誰も居なくて誰も来そうにない部屋を…神部が選んだのは仮眠室だった。自動ロックの施錠を確認すると万が一にでも寝てしまう可能性を考えてベッドは避け事務椅子を部屋の隅に置くとそこに座る。先程から出てくるのは自己嫌悪の溜息ばかりだ。]
……上から押さえつけようとしてどうする…。
[自分で言った言葉に嫌悪を感じて眉を歪める。書類を確認しては集中できずに深呼吸し、また書類へと目を通しを繰り返しながら時刻を確認する。これでは今日中に終わらせることが出来ない。]
……呆れ…られるだろうな…。
[怒りで興奮しているのではなくどうやら自分は動揺しているらしい。とりあえず落ち着いてから戻ることにし、椅子に背を預けると落ち着くことに*専念することにした。*]
[帰社する伊香保にも挨拶をして。体の事に関してはこくりと頷き]
大丈夫です。この前のように無理はしませんから。
駄目だと思った時には休憩入れますんで。
――それより…伊香保主任の方がお疲れに見えますけど、大丈夫ですか?無理なさらずに…
[ふわっと微笑んで会釈を。
那須からも同時に同じことを言われると、僅かに眉尻を下げて]
これ位大丈夫ですって。オレも体の丈夫さでは部長には負けないと思いますよ?…多分。
精神的な弱さは…勝てそうに無いですけどもね。
[くすりくすりと小さな笑い声を上げる。]
―ワーキングルーム―
只今戻りました…皆さんお疲れみたいですね。
[本人も連日の激務のためかやや顔色がさえないのだが。ともかく席に着き達成率を確認する。54%]
〔今ならレポート用紙で紙飛行機が(01)秒で折れそうだ。
――それも激しく尖ったのが。
推奨検索ワードは「紙飛行機 エアインテーク」だ〕
……お疲れさまです、部長。
……
…
…近藤くんは、大丈夫でしょうか。
〔事情を知るらしき那須へと、訊きたいことはいろいろとあったが、自分の対処できる範囲内のことを尋ねることに〕
[じり、と白い筒が赤に呑まれて黒へと変わる。
銜えたままではその速度は酷く速い。
一本を吸いきるのはもう間もなくだろう]
[一度唇から離す。
眉間ゲージは相変わらずのままで]
[外に痕跡が無ければ内を調べないわけにはいかないだろう]
[福岡支社の面々を信頼しているのに
疑うような真似は、したくない]
[悩みに頭痛は酷くなり、
*ゲージがひとつ上昇したかもしれない*]
[近藤の様子をまじまじと見る。小さく笑う様子が、なにやらハイになっているように見え]
精神的なことは、頼れる人間を選んで相談すると良いでしょう。
[肉体的にも微妙に感じたが、恐らく近藤のこと。
言って素直に聞くものでもないだろう。要注意経過観察対象といったところか。
伊香保の問いには、困ったように小さく首を振り]
見守るしか、できそうにありません。
[己の無力を恥じるかのように、小さく肩をすくめた]
なんとか半分は切ってますね…。
[出来れば後の事を考えてもう少しやっておきたかったのだがあまり根を詰め過ぎて倒れては元も子もない。今日はこの辺りでやめておこうと帰り支度に入る。―帰るのはもう少し後のつもりだが]
精神的…。――そうですね、では部長がお手隙な時にでも、相談に乗ってください。
[邪気の無い笑みを向けて、こてんと首を横に倒す。
緩やかにだが帰り支度を行う羽生を見かけて]
いいなぁ…。羽生さんっていつも順調そうだよなぁ…。
[羨ましそうな声を上げる。自業自得だという言葉が何処からか飛んできそうだとは思ったが、そんなことは気にしない。]
〔ワーキングルームへ戻ってきた折に見かけた、
何か押し殺した様子だった神部も気にかかっている。
そこへ近藤の、何処か上滑りする言葉――――〕
…取り繕うなら完璧にやれ。
今君の態度は、皆の士気を下げているぞ。
〔椅子を引いて腰掛けながら、近藤へ言葉を向ける。
疲れたのは今だな、とも付け加えて〕
……
〔那須の言葉には頷いて…自分もこのくらいしかと
言いたげに深く頭を下げる〕
[近藤の羨ましげな声が聞こえ]
何事もマイペースが一番ですよ。無理して倒れたら結局迷惑を掛ける事になりますからね。
[暗に(?)「もう少し休んだらどうですか」と言って再び支度を再開する。本当にマイペースだ]
私で解決できることであれば、いくらでも相談に乗りましょう。
[精神的に――自分もそれほど強い人間ではないのだが。そう思いつつも近藤に頷いて]
[士気を下げている。
厳しいながらも的を射る言葉に、こくりと頷き――]
スミマセンでした。少し頭を冷やしてきます。
[素直に受け止めると、すっと席を立つ。
後追うように投げ掛けられる羽生の言葉は、自分のペースを乱しがちな近藤にとって、羨ましくも最も遠く離れた対応であり]
それが出来たら苦労しませんって…。
[小さく苦笑いを漏らす。
そして申し出に消極的ながらも頷く那須に対しては]
では、今度お子さんと三人でご飯でも食べませんか?
オレ、小さい子の対応って良く解らないんですよ。今度帰省した際に少しでも楽できるように、部長のお子さんにあれこれ聞いてみたいことがあるんで…。
[茶目っ気を含ませた笑みをその場に零して。屋上へ向かうエレベーターに乗り込んだ。]
私の娘と、食事――?
[突如振られた近藤からの話題に、ぽかんとした表情になり]
それは、まぁ、そうしたいのであれば――。
[どういう心境の変化なのか。帰省した際に、というからには、姪っ子か甥っ子でもいるのだろうか?
複雑な表情のまま、近藤の後姿を見送った]
…判った。行ってこい。
〔皆の言葉を、漸く容れる様子の近藤へ頷く。
視線は柔く送り出す其れで――
何処まで馴れ合いでいいのか、正直自信はない。
が、異動絡みの不安からか、浮き足立つ職場の雰囲気を、
引き締めておく必要があると感じることも確かで。〕
…羅瀬くんも、作業を始めたようだな。
挽回してくれ。
羽生くんは暫くしたら帰りだな、お疲れさま。
マイペースなのもいいが、偶にはアルバイト達の
面倒も見てくれると助かるぞ…
〔フリスクを口の中へ放り込むと、そのままデスクへ
図面を広げて作業を始める様子。羽生へは、半ば
感謝を含む目配せらしきもあったか〕
――屋上――
[鉄の重い扉を開け放てば、心地良い風とネオンが近藤の体を包み込む。]
あたま…痛いな…。
[額に手を当て、顔を顰める。僅かに熱っぽく感じるのは寝不足の為だろう。頭痛は日頃の蓄積疲労が及ぼす悪影響の為。風邪ではない事は確かだった。]
…確かに疲れているんだよな。…最近仕事も忙しいからなぁ。新作発表会も重なってたし…。
それに……
[柵に身を預け、胸ポケットから煙草の箱を取り出すと軽く振り、一本だけ飛び出したフィルター部分を指で摘まんで唇で咥える。彼が喫煙者だという事は、おそらく社内の誰も知らないだろう。
喫煙室でも、得意先でも吸うことは無いのだから。]
あの怪文書がダメ押しだったものなぁ…。ハッキングでないとしたら…。誰かの嫌がらせ?
って何でオレなんだろう…。
[風で消え失せないように、空いた手で簡易の風防を作り、息を吸い込みながら炎に細い先を付け、火を灯す。先端が季節はずれの蛍火を放ったのを確認して、大きく息を吐く。紫煙が闇にゆらゆらと揺れた。]
[近藤の様子に漠然とした不安を覚えつつ―杞憂だとは思うのだが―隣の席にこちらこそと目配せを返す]
すみません、どうも調子が合わなくて…明日からはガンガンいくつもりですので。
[時間が経って、大分落ち着いたと思う。多分、恐らく。ワーキングルームへ戻る事に未だ躊躇いも残るが椅子を元の位置に戻すと灯りを消して階段から何時もの表情で3階へ]
……?
[ほぼ入れ違いに出て行くふらつく近藤の姿を僅かに眉を寄せて見送りながら室内へ。廊下で雑談をしていた社員達の話題は異動のことだろうか。]
――ワーキングルーム――
只今、戻りました。
………。
[正直今の室内の空気が自分が去ったことで少しは和らぐ結果になったのかはわからない。何を言っていいかもわからず話を蒸し返すようなことも避けたく、ただ一礼すると自分のデスクへ。]
…羅瀬君、ありがとう。
[自分が頼んだ作業を続けている羅瀬の姿に背中に声を掛けた。]
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