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[ジェーンの独り言――それは随分と大きかったが――にも男は何の反応も見せなかった。
続いて問われて、軽く肩を竦めて見せる。
どうやら「お好きにどうぞ」と言う意味なのかも知れない。
それとも他の意味があったのかも知れないが、男の表情からは窺い知れなかった。]
[その獣はまだ若かった。
過酷な幼年期を生き延びて、やっと成獣になったばかりだった。
生涯で最も力に溢れる黄金期を生きていた。]
[だが、人間社会は彼のような「獣」の生存を許さない。
ヒトという獣を人間たらしめる巨大な機構が、法と秩序の名の元に、獣のままで生きる彼らを押し潰す。
彼らの多くは、思春期を迎える頃には社会と衝突し、何故本能が指し示す正当な欲求が受け入れられないのか分からずに、年老いる前に死を迎える。
或いは牙を抜かれ、去勢された家畜として飼い馴らされていく。
一握りの学習能力の高い老獪な獣だけが、無害な姿に擬態する方法を会得して、周囲の人間を搾取し続ける術を学ぶ。]
[このまま行けば、いずれ彼もそう遠くないうちに、社会機構に無謀な戦いを挑んで殺されていただろう。
いや。
社会はもう、殺人ゲームに出演させるという形で、彼の抹殺を図っているではないか?
しかも、良識ある人々には理解し難い恐ろしいフリークという演出まで行って。]
さて。ここからがジェーンさんの本当の独り言。
あたしの立場から考えると、ここで手を結ぼう、といって票堅めにきたギルバートはほぼ9割方ギャング側。なぜなら、ギャングの持っている票は3。ブラックオペレーターはギャングには票を入れない。もう一人をギャング側に転ばせて委任投票させればほぼ負けはなくなるからだ。そう考えるのが一番辻褄が合うね。
ギルバートが生粋のギャングなら、まあいい。問題は、ブラックオペレーターで票操作のため頑張ってる場合。
ギルバートはあたしを生かすと約束したけど、それはあくまでもあたしとギルバートの約束だからね。
かといって。ここでギルバートの恨みを買うのは全くの死亡フラグ。ギャング×2、ブラックオペレーター×1、参加者×1でもギャング勝利なんだから、そっちにしてくれることに賭ける……といっても分が悪い賭けだねこりゃ。どう見ても最後にあたしの死体が転がってエンドじゃないか。
あと。ギルバートがブラックオペレーターで、ギャングのあたしにサインを出してきた……そう捉える人も多いだろうね。そういう的にあたしはぴったりだったってことなんだろうか。癪だけど、悪い読みじゃないね。
もっと最初に突っぱねるべきだったのかしら。
でもねえ。たてついた相手がギャングだったら。
やっぱりあたし死ぬのよね。
―レストラン―
[ベンとケネスに連れられて行ったレストランで水をもらいゆっくりと飲んでいるうちにやっと落ち着いてきた]
あ、ありがとうございます。ところであそこに映っていた女の人がここの主催者・・・なんですか?
[金髪のこちらを嘲笑うかの笑顔を向けていた女性を思い出しそう尋ねた]
……そうだよ、嬢ちゃん。
アレがこの番組のプロデューサー、キャロルって姉ちゃんだ。
お前さんみたいな「可哀想な」参加者を引っ張り込んだのも、おそらくあの女だ。
[煙草をくわえた口の端から、だるそうに言葉を発した。]
[ゆっくり歩く二人に先んじてレストランに入ると、水と、自分には酒を用意する。
飲みたけりゃ飲むだろと、もう一人の分は気にせずに、席に着いた二人にそれを運んだ。
セシリアがやがて落ち着き、口にした問いに肩を竦める。]
お前、今迄の放送ちゃんと見てなかったのか。
あの女が出てただろう。
生き残りたいなら、ゲームについての情報はきちんと得ておけ。
生きる気がない奴は、ギャングだろうと参加者だろうと殺すぞ?
[少しだけ本音を混ぜた口調で言うと、先ほどの映像を思いだし語調を弱めた。]
まあ、モニタの映像にはあーゆーのもあるだろうからな……見たくないってのも分かるが。
―カジノ―
[ひとりの女が、カジノの扉を開けた。
彼女の姿を見るや否や、ディーラーやバニーガール、バーテンダー、全てのスタッフが恭しく礼をする。
それに軽く目配せをし、女はカジノの中央――ルーレットのテーブルの前に座った。]
……ハァイ、調子はどう?
[ディーラーに声を掛け、ケラケラと甲高い声で笑った。]
―回想―
[メイド服を着てターゲットを探す。特に問題もなくアーヴァインは見つかった。]
あの・・・少しだけ手伝ってほしいことがあるんですがいいですか?
[両手で荷物を抱え困ったように上目遣いでアーヴァインを見上れば渋い顔をしながらもついてきたので倉庫に案内する。一人なら小細工を使った不意打ちを考えたが二人いるならその必要もない。荷物をアーヴァインに持ってもらった瞬間に背後からケネスが喉をかき切った。
後は騒ぎが大きくなる前にキーを奪うだけ。二人にとってはアーヴァイン殺害は造作もないことだった]
……と、そう思いきやご本人の登場か。
[遠目からもそれと分かる金の髪。
参加者以外で仮面を付けていないのは彼女だけだ。]
何しに来たんだか。
あァ……そういうことみてぇだな。
あの姉ちゃんも、まったくもっていいご身分してやがる。
セレブリティの考えることはさっぱりわかんねぇよ。
[不機嫌そうに煙を吐き出し、呟いた。]
……あのクソ女に一泡噴かせてやりてぇモンだぜ、まったくよ。
さァてね。さしずめ、「殺し合いの現場が見たい」とか何とかいう理由じゃねぇのか?あの姉ちゃんのこった、平和なことを考えてるだろうと察すると100%判断をミスるだろう…な。
……ま、カジノに行けば分かるンじゃねぇのか。
ケネス、嬢ちゃん、どうするよ?
[ベンやケネスの言葉に]
そうですか。顔はモニターで見かけることはあったのですがどういうひとなのか分からなかったので・・・
[そういったところでキャロルがホールにきたことに気付いて顔を向けた]
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