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・・・早まらないようにね。失敗ってしまった私達とは違う、まだ貴女はやり直せる。
この中では一番信用なりそうなのは・・・あの飲んだくれね。・・・生き残るのよ。
……さァな。
欺瞞だろうが何だろうが、人殺しは人殺しだ。
規律があろうが無かろうが同じ……だろ。
[封を開けたばかりのバーボンの瓶を煽りながら、ぽつりと呟いた。]
それによ、忘れちゃいけねぇのは……
自分が生き残るためにゃァ規律を乱すのも構わねぇって、あの金髪の姉ちゃんが堂々と言ってることだ……なァ?ギャングスターと手を組む奴等がバカみたいに増える可能性だって否定はできねぇ。
折り目正しく規律を守りゃァ万事快調、とはいかねぇみてぇだぞ、オッサン。
とりあえず、殺し合いをするにもお互いについて知る必要があるって分かったところで自己紹介しておく。
[ぐるり、辺りを見回し参加者に視線を合わせる。]
俺はケネス。歳はよく覚えてねぇ。
住所不定無職だ。
ほか、知りたいことがあれば何でも聞け。
それまでは暇だから酒飲んで……ああ、そこのテーブルで「ゲーム」でもするかな。
[テキサスホールデムのテーブルに寄り、眠る老人の手札をちらりと盗み見る。]
おっと、オッサン、答えはゲームしながらでも良いか?
まあ、この寝てるんだか惚けてるんだかよく分からないじーさんにやる気があるならだが。
ギャングスターと手を組む人間がいっぱいになることは無い。
答えは簡単。
ギャングと一般参加者が同数にならない限りゲームは終わらない。
普通の参加者が生き残る為の手は、ギャングをさっさと殺すか、ギャングが二人だから残り4人迄生き残るかだ。
しかも、ブラックオペレータとやらがいて、ギャングが誰か知ってるならそいつの方がギャングと手を組むには容易い。
空いてる席はひとつ。
まあ、実際のゲームが始まってみないと、どれだけ極端に人が死んで行くか分からないから……場合にも寄るか。
なあ、性悪ねーちゃん、俺たちはゲームが始まったらガンガン殺し合うのか?
イカレタ奴らが張り切っちゃって誰が生きてるか確認する前に、全員あの世なんてことは無いのか?
[カミーラの言葉に]
そうですか・・・でも私たちの村は生き残るために誰かを売ってまで生きてるんです。だからこそ生きていることは大事だと思います。
住所不定無職のケネスさん、か。
いいかげん「オッサン」と呼ぶのも飽きた頃合だ。名前を聞いておくのも悪かねぇな。
[ポケットに忍ばせていた金色のマルボロを取り出し、マッチで火をつけた。]
そうだなァ……
俺のことは「ベン」とでも呼んでくれや。いつか殺し合う相手に深い情を持つのも、お互いに面倒な話だろうサ。名前なんざ2〜3文字もありゃ十分だ。
歳は……そうだなァ、ミック・ジャガーよりかは幾分若い、とでも言えば十分だろうよ。それ以上を知っても、何も価値はあるまいよ。……なァ?
[男は、本名である「ベンジャミン・フランク」という名は名乗らぬことにした。]
倫理観、ねえ。
[へらり、唇をゆがめて笑った。]
このゲームがどんなんだか知ってて参加してるアンタが言う言葉とは思えないな。
……知ってて参加したんだろう?
借金でもあるのか?
[ブウン…という鈍い音を立て、モニタのスイッチがついた。
画面は二つに割れており、片方はカジノの様子が、片方はキャロルの満面の笑みが映っている。]
質問にお答えするわ、「住所不定無職のケネスさん」。
そうねぇ……もし一度に大量虐殺をするバカが現れたとしたら、その時は我々スタッフが容赦無く射殺する手筈になってるから、ご心配なく♪
ついでに、銃弾が通じないようなら、カジノのどこかに毒ガスの発射装置も隠してあるから、よ・ろ・し・く♪
殺し合いは、焦らず、ゆっくり。
惨劇は少しずつ進行するのが面白いのよ。
殺しを楽しみに来た猛者の皆様は、餌を「恐怖」でいっぱいに、丸々肥らせてから食べるようにして頂戴な。
番組プロデューサーからのお願いよ?
[カミーラの言葉にはい、と答えてから聞こえてきたケネスとベンの言葉に続けるように]
私はセシリアっていいます。・・・年は十五歳です。
[そうその場にいる人に告げた]
ケネス、「まさに」あんたの言う通りだ。
ここにゃァ、俺を含めて「ゲームのルールを知っているのに」「わざわざ進んで来た」奴等もいる……そんな奴が「殺し」の「規律」とやらを語るのが……なァ?
[笑みを浮かべ、バーボンをまた一口煽る。]
そうさ。俺にゃァ少なからず「事情」ってモンがあんのサ。だからこそ、俺ァここに来た。金が欲しいからなァ。自分の「事情」を他人の血で贖うことにした、卑怯者だ。
だが……「だからどうした」?
「それがお前さんの人生に関わるのか」?
お前さんだって、俺だって、他人を殺さなきゃ自分が死ぬんだ。生きたきゃ、四の五の言わずに「殺す」覚悟をしなくちゃならねぇ。でなけりゃ、そこの兄ちゃんや爺さんみたいな「覚悟のキマった」奴等にあっさり殺されちまわァ。
「死ぬ」覚悟をすりゃー、漏れなく殺されるのがオチだぜ。
……ま、お互いに覚悟キメて頑張ろうや。
セシリア……15歳、ねぇ。
そんな若いミソラで、こんな所にねぇ……。
ケネスと同じで、いつの間にか連れて来られたクチか?
……と見せかけて、実は自ら乗り込んで来た猛者だったら大笑いだな。
[もう一口、バーボンを煽る。]
ま、何にせよ……「お前さんの事情なんざ、俺には関係ねぇ」訳だがな。
ーカジノー
[テキサスホールデムのテーブルにつき、だらりと椅子に腰掛ける。]
了解、ベン。
呼び名があれば本名だろうとなんだろうと構わないさ。
フルネームはお互い生き残れたらな。
なあ、このゲームに参加することは卑怯なのか?
あー、俺やあのチビ……セシリアってのか?
みたいなのは別として、アンタらは自分の命を掛け金にこのゲームに参加した。
それは卑怯なことか?
卑怯ってのは、自分は手を汚さず利益だけをもぎ取ろうとする奴らのことだ。
高みの見物を決め込んでるあの別嬪さんみたいなのだろ。
[近場のモニタに唾でも吐きかけそうな笑顔で手を振った。]
ご回答ありがとよ、性悪さん。
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