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[乱雑にシールごとキャップをひねり開けるのも、ごくごくと喉を鳴らして一息に水を飲み干すのも、余すところなくカメラは映し出す。
最後に手の甲で口を拭っているところで、男は何かに気付いたように視線を移した。
空になったボトルを放り出し、大股で視線の先――ベッドへと近付いていく。]
[ベッドの前に辿り着いた男が見詰めるのは、ベッドカバーの上に置かれた一通の封筒。
封のされていないそれの中には、二つ折りのカードが一枚。
真っ白い紙面の上に描かれた文字を、男の鋭い目が追う。
最後まで読み終えた男は、しばらくの間考え込むかのように紙面を睨んでいた。
そして、ニヤリとほくそ笑んでカードを握り潰した。*]
−自室−
[事前に指示されていた部屋に行くと豪華なベットや座り心地のよさそうなソファーのある部屋だった。奥にはシャワーもあるようだった。
部屋が豪華ゆえに傍に置かれた自分の私物の入ったくたびれた袋が酷く目だって見えたのは仕方ないことであろう。
服を脱いで下着姿になりベッドに潜り込む。その余りの柔らかさに疲れていた彼女はそのまま深い眠りに落ちていった*]
……っと、カメラがないのはここぐらいか。
[人気のないトイレ。個室に籠もり通信機のスイッチを入れる。
丁度良く、流れこんできた少女の声に、ふうと息を吐いた。]
その声はチビだな?
もう一人の女の方じゃない……な。
意図せずゲームに混ぜられたのは俺だけってことか。
一般参加者と違い、俺達がなるべく楽に勝つためにはお互いの協力が不可欠だ。
宜しく、相棒。
[布団に包まっていれば少なくとも外界からは分からない。
通信機から聞こえてきたのはあののんだくれことケネスの声だった。]
私の相棒はあなたなのね。よろしく。やる気満々の人達が多いみたいだから気を付けないとね。
とりあえずここの警備担当から始末するわ。ああ見えて結構鋭そうだしね。
[通路ですれ違ったときにやや不審気に自分を見た男の顔を思い出しながらそう伝えた]
おい、ゲームの勝敗に関係ない相手も殺すのか?
必要な殺しは躊躇うつもりはないが……。
[言いかけて、トイレに近づく足音に口を噤んだ。]
-セシリアの寝室-
[眠る下着姿の少女を見下ろし]
鍵を掛け忘れるなんて・・・迂闊じゃないかしら?ご主人様。
[つぅ、と首筋を撫で]
命を預けるには不安・・・だけど、その潜在能力に賭けさせて貰うわ。
―自室―
[ふと目を覚ますと見知らぬ部屋・・・ではなくホテルの一室。あれからどれくらいの時が経ったのだろうか。柔らかい布団は彼女を再び微睡みへ誘おうとするがそれを振り切りごそごそと起きだしてくる。
シャワーの使い方に手間取ったりいきなり冷水を浴びて叫んだりしたがシャワーを浴びて服を着る頃には大分頭もはっきりとしていた。
これからどうすべきか考えたが最良の答えは出なかったため彼女はホールに向かって歩き始めた]
―リネン室―
[清掃用具と交換用の備品を積んだワゴンを押して、リネン室に入ってきた客室係は、壁際の床に落ちた毛布の小山――否、毛布に包まった人影に怯み、立ち止まった。
纏っていた毛布を振り落として素早く立ち上がると、“それ”は竦む彼女を押し退けて部屋を出て行った。
やっと驚きから立ち直った彼女が怖々と廊下を覗く頃には、蛇革のスーツの背中は随分と小さくなっていた。]
―ホール―
[戻ってきたホールには余り人影がなかったがそれでも何人かの人はいた。その人たちがやっているようにして食事をもらって(代金がいるかと恐る恐る聞いて笑われながら説明を受けたりしたが)隅の方のテーブルで食べることにした。]
―カジノ―
[昼夜の別なく喧騒に包まれたカジノ。
テーブルに配置されたディーラーと客を演じるエキストラたちが常に偽りの華やかさを演出している。
ホールに現れた男は入り口で、誰かを捜すかのようにぐるりと辺りを見回した。]
スタンド。これで勝負するよ。
……あたしの勝ちだ。悪いね。
[ディーラーにウィンク。直視して悪いものを食ったような顔をするディーラーの表情に、またけらけらと笑う]
あたし自身のツキは落ちていないね。
[いや、確かに探していたのだろう。
中央に向かってゆっくりと歩を進める男の視線は、明らかに何かを求めて、ホールのあちこちを彷徨っていた。]
−ホール−
ここ座ってもいいかな?
[ゴツゴツとした体躯すら爽やかに思える笑顔。]
やー、こりゃまた嵐の前の静けさというか何というか。
[返答も聞かず、ずかずかと座り込んでしまった。]
[一勝負終わって顔を上げると、ちょうどその時カジノに入ってきた男に気付く。明らかに誰かを捜しているとおぼしき彼に声をかけるべきかどうか、しばし躊躇った]
[やがて、求めるものをカードテーブルの傍で見つけた彼は、そちらに向かって大股で進んでいった。]
……あんたに話がある。
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