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━━━ミウが、『月光のアリア』を読んでいたのは、知っていた。
あるとき、夕暮れの教室で、ミウのカバンの端に、わたしの初めての単行本の背が見えた。
『アリア』は、1年で打ち切り。最近終わった話を収録したもう1冊で全2巻。
嬉しかった。けど。
きっと、ミウの中のアリアの評価は、数ある少女漫画の1つでしかなくて。
ただ、クラスメイトが描いているという物珍しさで。
わたしが、苦しみながら描いていたことも、思いもしないで。
表面的に読んでいるのだろうと思うと、
いっそ、読んで欲しくなかった、とか、
嬉しいのに、つらい気持ちが、ずっともやもやしていて。
もしかしたら本当はミウに、もっとちゃんと、自分を見て欲しかったのかも、しれない、などと。
そんなことは、そんなことは、くやしいから、思わないけれど。
━━こんな状況になってやっと、やっとわたしのことを、奥まで見てくれて。
疑われていて、悲しいのに、
心のどこかで、嬉しいような気がして、
やっぱり、ミウのことを考えると、とてもモヤモヤするのだ。
**クラスに1人いそう、学年に1人いそう、学校に1人いそう、その地域に1人いそう。な人いるよなぁ。
シオンは学年に1人いそうがモチーフ。いないけど。
『加賀美雫さん?水っぽい名前ね!ペンネームは水溜まりの水田マリ、とかどお?』
担当編集は30代前半の女性だった。
もともと、話すのは得意な方ではないし、初対面の、仕事を指導してくれるひと相手ではなおさらだった。
変なペンネーム、と思った。アリアの雰囲気にあっているとも思えなかった。でも、高校生の新人マンガ家が担当編集に異を唱えるなんて出来なかった。
せめてと、「マリは、ひらがながいいです。」とだけ、言った。なんとなく平仮名の方が、可愛いと、思ったから。向こうも、表記にこだわりなんてないから、変えてくれて良かった。
ネームを提出すると、たくさんたくさん、テコ入れされた。
今の流行りは俺様男子だとか、もっと涙を見せろとか、
それはわたしの、小さい頃から心の中にいたアリアではなかった。
連載中、アリアは別の人になった。
せめて、せめてと、アリアの造形には、力を入れてかいた。
せめて、美しくしてあげたかった。
意識を戻す。そもそも実態があるのか無いのかも不明だが…
「はははっ…こんな不思議なことも体験できるなんてな。
全くもって不思議すぎる。不思議すぎて解明したくなるよ。」
打ち切りが決まったとき、担当編集は、
『ごめんねえ、ファンタジーはやっぱりウケなかったみたい!
次は、もっと作画技術を磨いて、現実にあるものをたくさん描きましょうねえ?』
と。
『水田さんって全然、顔変わらないわよねえ。』
『あなた、恋したことないでしょ?』
『っていうか、』
『たのしいこと、あるの?』
と。
それから、たくさんたくさん資料写真を撮った。
たくさんたくさん模写して、絵の練習をした。
次にこの手で生み出す子には、あんな惨めな思いをしたくなかった。
でも。
楽しかった。修学旅行は。
嬉しかった。みらいとえにしと、魂で理解し合えて。
わくわくした。この手で嫌いなクラスメイトを殺して。
わたしにだって、感情はあるんだ。
今だって、こんなに、こんなにいろんな気持ちが溢れてる。
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