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闇の精 フランシスは、それじゃがんばって。(何)また*朝に。* ( B53 )
……私にふさわしい精霊ではないか
[精霊たちの女神はそうつぶやくと口に小さな笑みを浮かべた。]
[その口元から声としては聞こえないものの明らかに魔力を持った言葉が紡がれる。女神の姿は徐々に変化し、幻獣を従え額に赤い赤い石を持つ精霊に姿となった]
[鏡に映る変化した自分の姿に女神は満足そうに頷いた。]
[しかしその鏡の中に何かを見つけ、きゅっと眉をしかめた。]
(私としたことが……)
[女神が見ている鏡の中には美しい花が咲き乱れていた。それ以外花に群がる蜂の姿すらないように見える。]
そこで見ているお前。
そんなに早くお仕置き部屋に行きたいのか?
[女神を守る幻獣たちがいっせいにある方向めがけてすばやく移動し、その者が逃げることができないように取り囲んだ。]
えへへ……別に覗いていたわけじゃないのですよ?
[咲き乱れていた花の中から一人の精霊が姿を現した。なんだか眠そうな顔をしているので本当に覗くつもりがあって覗いていたわけではないようだ。威嚇する幻獣たちに怯える様子もない。]
(……どうも調子が狂うな。)
[その精霊はあくびをしてからぺたんとその場に膝をつき、女神を見上げる。]
でもアルは見ちゃったのです。女神様が変身するところ。えへへー。
[精霊はアルラウネと名乗った。なにやら緊張感のない反応に女神は緊張感を少し解き、幻獣たちに戻ってくるように命令をした。]
[アルラウネは女神の命令に幻獣たちがおとなしく従うのをみてちょっと目を丸くする。怖がっている様子はなかったが、改めて見ると幻獣たちの姿はかなり獰猛に見えるだろう。禍々しく光る赤い複眼、怪しくうごめく触覚、虫のような姿に似合わないくらい鋭い牙。動くたびにキチキチ……といやな鳴き声をたてている。]
ほわわ、その生き物じゃ花粉は運んでもらえなさそうなのです。
(そこなのかっ!)
[思わずハリセンをかまえた女神だったが、なんとか冷静さを保つ。]
アルラウネ、お前はこのことを他の精霊にしゃべるかい?
[女神はうすく笑みを浮かべた表情でアルラウネに問いかける。]
(精霊たちは悪戯好きでおしゃべり好きだ。
このまま帰せば今すでに集まっている精霊たちの顔ぶれによってはどの精霊が女神なのかアルラウネにはわかってしまうだろう。
このままお仕置き部屋に送り込んでしまおうか……)
[女神はアルラウネをどうするべきか逡巡していた。]
女神様、アルがお仕置きのお手伝いしましょーか?
[アルラウネの思わぬ返事に女神が一瞬戸惑う。緊張感のない様子からは想像もつかない返事だった。]
精霊たちの集まる場所にアルが入ったら空間を閉じちゃいますね。
そしたら嘘つき大好きな精霊たちがそぉれーっで嘘をつき始めると思うのです。
女神様もそれにまぎれて好きな嘘をついちゃってくださいよー。
[一応集まってくる精霊のうち一人だけ女神の味方をするようにあの空間には魔法をかけてある。しかし……直接手助けをしてくれる精霊がいるのも悪くはないだろう。]
それでもよいのか?アルラウネ。
[女神の問いかけにアルラウネはにっこりと笑った。]
おお、麗しき女神様!
女神様の為ならば、このアルラウネ命も惜しくアリマセン、えへへ。
[アルラウネの返事に女神も笑みを浮かべ頷く。]
では、私は先にあそこへ行く。
頃合を見計らってお前も来るがよい。
[女神はそう告げると幻獣たちを従えて妖精たちが集まっている場所へと向かっていった。]
[アルラウネは女神の姿を見送ると、立ち上がってぐっと伸びをする。]
ふぁー、退屈すぎると眠いのです。
女神様のお手伝いってただ嘘をつくよりもスリル満点。
他の妖精をアルの前に跪かせて靴をお舐め!とか楽しそうなのです。
[アルラウネはこれからのことに思いを馳せ、想像を楽しみすぎてちょっと(どころかかなり)遅れて女神の向かった場所へと行くことになる。]
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