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鬼に、近い?
鬼子?
[とらの言葉に自身の幼い頃を重ねていた]
[不義の子として生を受けた自分も、里の皆からは一歩距離を置かれていた]
しかし…皆が滅べばよいだなどと…
そんな、鬼のようなこと、言わないでください
[とらが自分を殺すつもりなのだと知り驚きで目を見開いた]
なっ、何を…!
何をいっているのです?!
[喉首の刃の存在を忘れ、声を荒げた]
[とらへの問いかけに、彼が答える事はなかった。
堂の中には、玄佐を弔いにいっていた蓮同と梨枝も戻ってきていたが、其方に視線を移す事なく、ただとらを鋭い視線でみつめていた]
『皆が居る前で、何か事を起こす事はないと思うけど…。』
[それでも、万一何かしようなら、首を斬り落とそうと、注意深くとらの言動を観察する。
その時、とらが囲炉裏の傍に置いてあった包丁を手にし、成親の首に当てれば]
―――――!!
[太刀を握り締めて立ち上がる]
[紗都が刀を握り締めているのが視界の端に映る]
な、何を…
紗都さん、あなたまで…
[紗都がとらを見る視線は鋭かった]
[何をするつもりなのか察して止めようと声を上げる]
『本当に、鬼かもしれない…? ……違うわ。』
成親さん、離れて…!
とらは…とらは鬼よ……!
[とらと成親の間に入っては、二人を引き離す。
あまりの勢いで、成親の身体は少し離れたところに飛ばされたかもしれない。
駆け寄り、間近に居るとらを睨みつけては]
成親さんを、殺させはしないわ。
貴方には、死んで貰う。
鬼として、永遠に封印してあげるわ。
[そう言うと、太刀を目の前に突き出しては、構える]
[太刀を構えた紗都を睨む]
鬼を退治したら終わりますか?
本当に終わりますか?
鬼狩りって何なんですか。
鬼が復活するのを恐れて、近親相姦を繰り返し、血を守り。
どうしてそんなに怯えるのです。
怯えなければならない事をしたのでしょう?
鬼も、ただ人間を脅かしたいのなら、僕ら等かまわず人里に下りればいい。
何故、わざわざ子孫を集めて囲う必要が?
そこまで深い憎悪は、封印なんかで永遠に鎮まると思う?
[包丁を両手で握り締め、脇に引き付けた。]
私奴 とらは遺言メモを貼りました。
あっ…!!
[紗都に押されて壁際まで転がった]
[包まっていた衾も体から離れて床に落ちていた]
…。
[刀を構える紗都、そして包丁を握るとら]
[向かい合う二人の間の張り詰めた空気に何も言葉を発することができなかった]
私奴 とらは、隠遁僧 蓬同 を投票先に選びました。
[幼い頃から、武士である父親を見て育ち、いつしか興味を持った刀。
誰に教えられたわけでもないのに、自然に身体は動く。
刀の重さに負けないよう、足幅を広げては深く構える]
鬼を退治したら、終わるわ。
鬼を怯えるのは、人として当たり前よ。
凶器持たずとも、その力だけで人を殺める事ができる鬼を、どうして怯えずにいられるの…?
深い憎悪が鎮まるかどうかなんて、関係ないわ。
憎悪を鎮めるために封印するんじゃないわ。
罪ある者に罪を与える…ただ、それだけよ。
[とらの鋭い睨みに、同じような視線で返す。
そして、目の前の太刀を大きく振り上げる]
い、いけません…!!
[刀を振り上げた紗都を見て咄嗟に声を上げる]
[しかしその声は今の二人に届いたのだろうか]
これ以上、此処から死人を出しては…
[掠れた声で呟いて手をぐっと握る]
違う、違うのです……
[ 娘の顔が苦しみに耐えかねるように引き歪んだ。
驚きや悲しみを湛えてさえ、能面のように固かった娘の貌が、今乱れていた。]
悲しみと怒りと絶望が、変えてしまった。
仇を滅ぼしてもなお消えぬ憎悪が……
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