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体育と言っても、お遊戯みたいなものです。女学校の体育なんて。
[校庭を散歩しているかのように歩いたり、舶来の「ダンス」と称して盆踊りを滑稽にしたようなもの等が主だった。もちろん、矢神などははりきって走り回るのだが]
ああ、でも、薙刀はちゃんとした運動かも知れませんわね。
[何故か薙刀だけは得意だったりする、瞬発力だけはあるのかも知れない。持久力はとんとだが]
他に...?
[ここでできないとなると、道場でやるなのかなのか程度の予想はつくが]
では、下りは気をつけて帰るようにいたしますわ。足首ですね。
[言われる通りに心に念を押した]
か、家事ですか?
あ、ああ、はい、母上のお手伝いなど。はい。
[婦女子たるもの、家事ができなくてどうするといつも母からは言いつけられるものの、数日に一度程度しか手伝いもしない。一人娘ということもあり、全体的には甘やかされて育ってきたのだ]
薙刀か、それはきちんと行うのであれば佇まいなども整うから美しいのだろうな。
[>>253 武道は、突き詰めれば美に届く可能性はあると考えている。勿論、心技体が揃わねばならぬのだろうが。]
…まぁ、型とかだな。
[剣道場を使って、存命していた頃の祖父に習った剣道の型である。柔道の型は、基本的に相手がいるものであるが。剣道であれば1人であれどある程度形になり得る。
まぁ、恐らく。飽くまで真似事の域は越えないが。祖父からの精神を受け継ぐと言う意味で日々行なっていた。]
ふむ…
[母上の手伝いなど、と言われて暫し黙る。実家を想起して。]
視野と見識を拡げるという意味ならば、家事も嗜むべきなのだろうか?
[大真面目に尋ねている。]
[美しいと言われて、鼓動が鳴った。今度から薙刀の授業はきちんとしようと思ったとかなんとか]
型ですか。
[剣道をやっているのは知らないので、柔道の型とやらを想像している]
...へ?
[彼の言う意味が一瞬では掴めず、戸惑ってしまった]
それは、西野さんが、家事をなさるということですか?
あの、お掃除はともかくとして、いくら世が変わったとは言え、男子厨房に入らずと申しますか、さすがに、お料理はどうなんでしょう?
[とは言え、巷では男料理なる言葉が生まれつつあるのも聞き及んではいるが、原田家の主は明治一桁産まれのごつごつの日本男児である]
楽しみというか、趣味?であるなら、それも愉しくはあるかも知れませんね。
[と、お茶を濁したり]
胴着の洗濯などは、昔から自分でやっていたが?
[>>256 自分の用いるものなのだ、手入れも勿論自分で行うべきであろうという家の考え方のものだ。]
本を読んでいてな。男女がこうあらねばならぬという当たり前の認識が間違っているような気がしてな。
大正2年には、女性も帝国大学に通う者が現れ始めた。その中で、自分自身も。今の時勢も見つめ直さねばならぬのかもしれない。そんなことを思ってな。
[自らに社会を変えるなどといった志まで、持っているとはいえないが。]
女性が男性がやるべきとするものに来るのであれば、逆もまた然りなのではないかとな。
料理である必要はないのだろうが。
[どうやら、反発は根強そうだと苦笑した。]
自由主義でございますか?
[ぽろりと出た言葉はそんな単語であった。特に教養だの何だのと気にしたことはないのだけれど、なんとなく最近大人たちが流行り熱のように語っている単語を口にしただけだった。
普段であれば、主義主張など、婦女子の口にすることではないと言われそうだが、この御人であれば、問題がなさそうとの思いで出たのかも知れない]
本というのは、先だってお読みになっていた御本でございますか?
[翻訳本だったというから、外国の思想にかぶれただけなのか、それとも、何か思うところがあったのか、少し興味があった]
まあ、まあやちゃんのような男女見てますから、いずれ、男女平等なる世の中が来るでのはないかという気はいたしますが、とてもうち等のような庶民にはあまり関係のない話と思っておりましたわ。
[矢神がいないことをいいことに酷い言いようだが。
反発はないが、そんなこと言い出す男子を初めて見ただけに戸惑いの方が先にあったのかも知れない]
…最近大人たちが言ってるそれか。それとは、違うと思うが。
[国家に対して人間は理性を持ち従来の権威から自由であり自己決定権を持つ、などと言ったものではない。
権威が不要だとは思わないからである。]
先立って…そうかもしれないな。
『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと」いえり』とは、世の中に聞こえよがしに言われていることだと思うが、君なら『「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。』と後に続くことは知っているだろう?
[自身は聞いていないが、彼女自身も引用している>>15。それに]
君がいきなり読んでみよと勧めたのだ、不慣れながら真面目に読んで考えてみた結果のつもりだ。
[そう言って、反応を見るべく視線を真っ直ぐに合わせてみた。此処まで言って忘れられていれば、それはそれで…と言ったところであろうか。]
[彼の言葉を黙って聞いていて、最後の台詞で思い当たることがあった]
あ!
[思わず大きく開けた口を、慌てて手で塞いだ]
そうでしたね。お勧めしましたね。
[あれは、いつのことだったろうか。卒業前の中学三年の冬の時期であったように思う。何の気なしに言った言葉だっただけに、すっかり忘れていた、確か彼を入れた複数人の男女で何かを話しているところで、『これからの世の中は、体力だけでなく、教養も付けた方がよい』等と、誰かの言葉の受け売りをしたのだった]
福澤先生は、男女平等の精神は謳ってはいなかったように思いますが、確かに今まで私たちが育つにつれ会得してきた知識とは全く異なるお考えでございました。
[と、真面目吹いてから、くすりと笑い]
西野さんは、本当に生真面目でいらっしゃるのね。
でも、それであれば、男子が女子の真似事をするよりも、女子の気持ちを掬い取る気持ちをもたれる方がよろしいかも知れませんよ。
ああ、でも、真似事をすることでその気持ちを分かるということも確かではありますわね。
...難しいところですわ。
[とミイラ取りがミイラになった]
君もそのように驚くことがあるのだな。
[>>260 ハハッ、と。此方も軽くながら声を上げて笑うのは珍しいかもしれない。]
あの時は國語が苦手でな、やれることはやってみるかと読んでみたものだよ。
[生真面目というよりは馬鹿の一つ覚えであろう。兎に角一直線に行ったのであるから。]
謳ってはいないだろうが、そういう考え方もあるだろうなと思ったのだ。それは人生経験によるものなのかは分からぬが。
[それこそ、矢神の存在も関与してあるのかもしれない。]
女性の気持ちを掬い取る、か。
それは、中々に難しいものであろうな。女性というより。一人一人の気持ちを酌み取ることは難しいから。
君の言葉もな、どのような意図で言っているのか。
それを分からねばならぬのであろう?
[そう、返答する。でも、まずは朝の遭遇時より雰囲気が柔らかくなっていることに、内心で安心を覚えるのだ。]
[朝、井村に遭遇すれば、その手が握られているか確認する。さて、どうだろう。どちらにしろ]
井村さん、おはようございます。
[しおらしく挨拶して周囲を驚かせた。井村の反応を気にすることなく通り過ぎた**]
― 朝食後 ―
や〜
やっぱ何かあると落ち着きますなぁ
無いと不便ってわけちゃいますし、むしろある方が不便とか邪魔だったりするときも多々あるんやけれど、それでもおってくれるのがええんですな〜
……男女の仲もそういうものなんとちゃいます?
[大人しかったのは手が独り身だった間だけで。
結局、空き家となった手に収まったのは、朝食時に掴んだ醤油差しだった。
醤油をこぼさないように気をつけつつ、立ち話で捕まえた誰かと楽しく話しながら新たな人生のお供を口元にかざして交流を深めていた。]
醤油差し持ってたな。
[笑えば良いのか怒れば良いのか、呆れれば良いのかと考えれば、呆れ半分笑い半分といったところか。
この日は何度か思い出し笑いをすることになるだろう**]
そりゃあ、ありますよ。そんな、冷血女に見えまして?
[西野が声を出して笑うのを見て、向こう様もそれなりに緊張はしていたのかなと思い至る。少し距離が縮まったのを感じた]
そう言えば、そんなこと仰っていたかも知れませんわね。
國語が苦手だと。
目から鱗と申しますよね。鱗が剥がれると、世界が広く見えるのかもしれません。それこそ、福澤先生の仰った、学問のすすめなのでしょう。
[勉強が嫌いなのどと日頃言った口が何を言うかというところだが]
人の心は万華鏡でございます。くるくると回る度に変化いたします故に、自分でさえも推し量ることができませんわ。
...あら、これは、誰の言葉だったかしら?
時に、西野さんが己の見識を広め、男女の役割のなんたるかを再考しようと思ったきっかけは何でしたの?
[けだし、矢神か藤乃のせいであろうことは容易に想像はつくが、念のために尋ねてみるついでに、自分の隣を指し、お座りになりませんかと誘ってみる]
いやいや、冷徹だとは思わないが。
[>>267 そう言い返す様子にまたクスリと。
心理的障害が少し減るような感覚。]
鱗が剥がれれば、傷つく余地も生まれそうなものだが。変化への土壌と言い換えても良いかもしれないな。
[恐らく、一年前と比べれば自分も変化があると思う。それがきっと、学問によるものなのだろう、とな。]
確かに、な。自分自身のものでさえ、うまく説明出来なかったりするのだし。
[隣を示されれば、言葉に甘えながら。彼女の言葉の続きへの返答を考えて。]
……広範なことを言えば、自らの周囲全般、となるだろうが。本を読む間に思ったことであるから、君の読書の勧めが切っ掛けと言えるのではなかろうか。
それまでの僕は武術と親から伝えられた精神論的なものしか知らなかったからな。
[思考には知識が必要である。
現状に疑問を持たなかった自分は、書を読むことで小さなものながら疑問を持つようになった。]
…だから、君の言葉は。
あの時の僕にとって、無類の価値を持っていたと思う。
[今更になってしまうのだろうが有難う、と。座って距離が近くなろうと、目を見詰めたままに伝えた。]
それならいいんですけど。
[そう言って微笑んでみた。西野の表情も幾分和らいだ気がした。西野が横に座る素振りがあれば、自分は少し腰を動かして距離を置く]
変化には必ず何かの犠牲があると言いますよ。それの対価が自分にとっての価値であれば、土壌と呼べるのでしょうね。
うちの一言が西野さんの糧になったのであれば、嬉しい限りですわ。
...うちは、すっかり忘れていたのだけれど。
[と、少し自嘲気味の笑いを浮かべてから、じっと見つめられた瞳に見入る。]
あ、あの。
男子校は今日はどのようなことをされるのですか?うちは、調理実習らしいですが、それを皆さんで食べていただくらしいですの。
あの...うちの料理食べてみていただいてもいいですか?
[料理に自信は全くないけれど]
男女の役割に変化はあったとしても、得意不得意はあるわけで、得意な方が得意なことをやった方が、社会的に効率が良いでしょうね。
[なんだか訳の分からない言い訳だったりする]
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