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[体重をかけて、ゆっくりと倒していく。
前のめりになったせいで足が浮き、もしこのタイミングで投げを打たれればひっくり返る可能性はあった――が、組み合っていた彼女の手は襟ではなく、背中に回されてきて。
体が密着すれば、わたしはおんなだと告げられて――応える暇もなく、背中をつけさせてしまった]
試合はうちの勝ちやね
――起きれる?
[女を試してみろと誘われて、ここまで女であると見せつけられるとは思わなかった。
ゲームプラン通りに進んだはずなのに上手く行った気がまったくしない。
短い浅緋を手で梳いて微笑んで……それ以上何もしなくて、彼女を起こした]
決着もついたし、逢引きはこれで終わりや
今髪の毛絡んできたからこれ貰っていくわぁ
[さらに甘い逢瀬にする計画もあったに違いないだろうに、しかし進めることはせずに。
試合の前と変わったことは、梳いたときに手に入れた髪の毛を握り込んだ拳が開かず、それまで手を占有していた旅のしおりは懐に仕舞い込まれた。
そのまま――矢神が少し落ち着くまでただ隣に座っていて]
さて、部屋まで送ろっか?
それとも風呂行こっか、うちもこれから行くところやし
実は脱衣場柔道ってのもあってなぁ……
[やがて回復すれば、風呂敷を持ってそんな誘い――それは軽口を叩けるようになれるまで戻った自分のことかもしれない。
もちろん脱衣場柔道は嘘だが]
[矢神の回答がどうであっても、別れ際に添えた言葉は――]
…――ええおんなやね
[向けた微笑みは、羨望に近いものがあった――**]
― 居室 ―
[そのあと風呂に入り、その後また誰かと何かがあったかもで。
西野と顔を合わせれば、星見の成果を尋ねただろう――偽装工作の報酬としては当然の要求だろう。
面白おかしく語るような親友ではないが、だからこそそんな彼が逢瀬をどう報告するのか、楽しんで聴いて]
うち?
せやねぇ……試合に勝って勝負に負けたってああいうの言うんやろな。
[自分のこと訊かれれば、そうでなくても自分からそう述べただろう。]
ねぇ…――自分、「僕は男だ」って女の子に対して自信持って言える?
[追加でそんなこと聞いてから就寝。**]
[解放されて撫でられて起こされて、誇りがガラガラと音を立てて崩れていく]
あ、ありがとう。
[見事おんなを試してみせた井村にしおらしく相対する。
これから先も多分]
本当に髪の毛一本でいいだなんて。案外優しい所があるんだな。
わたしの風呂の順番は終わったはずだから、部屋へ。
[部屋までの道すがら、なにも言葉を発することができず、俯いて歩いた。別れ際の言葉に、耳まで赤くなったのは気付いて欲しくない]
送ってくれてありがとう。井村の男気も見せてもらったよ。
[もっと色々いたづらが出来たはずなのにしなかったのはわかっているから。立ち去る背中を見えなくなるまで見送った]
[部屋に戻って]
おーい、お園さーん、代返ありがとう。
[が、お園さんはすでにすやすやと寝息を立てていた]
あららおつかれなのね。そりゃあ昼間あれだけ歩いたら。
紫織ちゃんは大丈夫かな。
[未だ帰ってきていないようで心配ではあるが、西野がいれば大丈夫だろうと自分も先に寝た**]
ー回想・昼の遭遇に(回想時期:上着を羽織って貰うかどうかの下りの後)ー
おさぼりされて此処に2人しか来なかったのなら、悲しさは覚えただろうな。
[>>206 舌を一瞬出して戻す動作に少し目を遣ってから、続く言葉には動きが止まっただろう。]
憶えていないなら、構わない。
先日の坪内逍遙氏の翻訳なされた物語は面白かったぞ。今度、何かで話そう。
[憶えていなかったとしても、事実は変わらないことは分かっている。自分にとっては価値あるものでも、彼女にとっては路傍の石のような価値の言葉だったのかもしれないから。
それは、とても。残念ではあるけれど*]
ー居室ー
満天の星空が煌めいていてな、美しいと思った。
以前、本で読んで引っ掛かりを覚えた歌があって。その引っ掛かりを知るために観に行ったから。
まぁ…藤乃さん、井村が言うほど高嶺の華であったりはしないと思うがな。
[>>232 居室に戻った後、勿論待っていたのは彼の質問だった。予想され得るべきものであるが、不出来な恋路の弟子は元々下心的な物ばかりで行くわけでも無かったから、彼にとって面白いのかは分からない。一先ず、素直に答えるだけである。
高嶺の華のように扱うから、そう感じるのかもしれないと思った。
自分から彼に聞くことはない。ただ、彼が自分から話すことは聞いていた。矢神との逢瀬があることも。]
井村が提案した勝負なら、矢神が勝てるとは思わないがな。
……でも、まぁ。勝負に負けたというのなら。ぼくも少し安心するのかもしれない。
[他に同室の男子はいるのかどうか。何にせよ、耳元に口を寄せて]
[一瞬の変貌に、井村はどんな反応を示すのだろうか。
底冷えするような、自分の声は。少なくとも今、彼女に向けた思慕の情の発露でこそないものの。
親愛という名の元に発せられた言葉であることは、自らも疑っていなかった。
この言葉に意味があるのかどうかは、さて置いて。]
さて、明日も早い。寝るか?
[調子を戻して、そう問いかける。
話がひと段落ついたのであれば、そのまま寝てしまおうか*]
ー次の日・早朝ー
[設定された起床時間より早く目が醒めるのは何時ものことである。昨晩の宣言の代わりに、というわけではないのだが。
運動着で以って外へ出て、昨日の道を走破する。
山道は膝をしっかりと緩衝材にしなければならないことが問題ではあるが、どちらかと言えば慣れている。
息が切れない程度でその場所へと着いた。]
……。
[朝と夜では、印象が違う。
昨日満天の星空を見せたこの場所は、今は眼下に森を望む広場で。
状況が、立場が変われば全てが変わる。それを示しているように思われた。]
取り敢えず、戻るか。
[解散した後、3人のうち2人にしか会わなかったな…と思いながら。
昨日星見前に矢神と遭遇したベンチへと、向かって。朝に行動せねばならぬ時までいようかと考えている。]
−次の日・早朝−
[原田家の朝は早い。
今では地元の名士などと呼ばれるような豪商にはなったが、元々は農家の出自。家訓により、早寝早起きの癖がついている。産まれた時からそんな家庭に育ったものだから、夜のお誘いを掛けるなど思いもよらぬ事だった。むしろ、風呂に入った後は、消灯時間を待たずに就寝するほどであった。
朝起きた頃には、まだ外は薄暗く、二人もぴくりともせずに深い眠りについていた]
まあやちゃんも、紫織ちゃんも、おませねえ。
[矢神の前髪を軽く梳きながら、そんなことをぽつりと漏らす。かと言って、自分が特別奥手とも思わないが]
さて。
[少しのびをすると、自分の布団をきちんと畳み、身支度をして、手ぬぐいを持って洗面所に向かう。すでに起床している子もちらほら見える。洗面所の窓から見えた姿は誰のものであろうか、昨日も会った柔道家の君だったように思う。運動着で駆けていく姿から、朝の鍛錬であろうことは想像がつく]
....。
[顔を洗い、髪を整え、一旦部屋に戻ってから外に出てみる。件の男子学生が戻ってくる頃には逢瀬ができるかもしれないとの下心があったのかも知れない。
しかし、そこで逢えても逢えなくても、それは一つの運であるのだろう。
あの腰掛けに座って、朝の空気を堪能してみた]
そう言えば....
[昨夜の会話を思い出すにつけ、本の話になった刹那にほんの少し寂しそうな、残念そうな蔭が見えたような気がした]
坪内逍遥の翻訳かあ。
日本男子たるもの、日本文学を読まねばとお伝えせねば。
[しかし、思いついたのは全く別の方向であったりして、独白を呟いたりしていた]
うわぁ...ようございまあす。
[思ったより早くに現れた姿に少し慌てたのか、いきなり噛んだ。しかも、両手が少し踊ったくらいにして。なんとも挙動不審]
あ、はい。朝はいつも早いので。そちら様も、朝から鍛錬ご苦労様でございます。
あ....
[と感嘆詞を漏らしてから、おもむろに袂から桜柄の手巾を取り出して差し出した。果たしてそれは昨夜井村から戻ってきたばかりのあれである]
(嗚呼、もう少しおしとやかな動作ができないものか)
[等と、自分の挙動が不満であった]
あの...汗が...
そんなに固くならずとも。
[>>246 挙動不審な姿に一瞬訝しげな視線を向けるも、それは取り止めて。
昨日などももう少し柔らかい言葉遣いであったように思うが、何かしただろうか。
そう考えていた内に、彼女の袂から取り出される手巾で汗をかいてきたことへの意識を初めて行なった。走ってる間も多少は汗をかくかもしれないが、走り終えた後に一気に吹き出すのだ。
放っておいてもどうせ引くとは思うのだが、親切を無駄にするのも如何なものかと思う。]
…後日洗って返せば良いだろうか。
[返答は、如何に。
どちらにせよ、ありがとうと謝辞を述べ。気がつかぬ間に少し口角を上げただろう。]
昨日の疲れは取れたか?君も、疲れていたように思うから。
[徒歩でこれだけ歩いて来たことに対してかなり不満気であったことは覚えている。]
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