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−−リェンの店へと向かう道すがら、ぽつりと拾い上げられた言葉に、カガチははっとする。
*お狐様なんじゃ……*
−−そんなバカな、とかぶりを振った。
カガチも、生まれついてから狐、お稲荷様の伝承を聞いてこなかったわけではない。
100年に一度、お稲荷様が人に憑依する。
それらを祓うのが、我ら退魔師のお役目である、と。
嫌という程聞かされてきた伝承と、自らにあるらしい、力。
夢物語だと思っていた。この歳になってなお鵜呑みにするものじゃない浮世の話だと思っていた。
事実、カガチは今でもそう思っているし、"そう思おうと"している。
急く足か絡まるのは、なんの故か。
−−そうだ。
御伽噺にも負けず劣らずの素っ頓狂な言い伝え、本当であるはずがない。
例えばそう。この時期にだけやってくるよそ者が、悪巧みをしているだけ。
確かにそんな輩は、この村にずっと住まうものとして、払わなきゃならないな、などと余計なことを考えつつ。
花盗人 烏丸は遅延メモを貼りました。
代々、花盗人は花守人の当主に惚れるという。まるで、呪いのように。
だが、花盗人は花守人とは結ばれることは決してない。忌み嫌われているし、花盗人も花守人を嫌っている、とされているからな。
花盗人の一族の始まりは、身分違いの恋をしたことからだと聞いている。花を盗んでしまえば、役目から解放されるのではないかと。
−−人の群れを抜けるのにも苦労した。
いつもの比較にもならぬほど押し寄せる人だかりを避けるようにして、昨晩自分が酔いつぶれていた店へと向かう。
ほどなくして、今日も今日とて繁盛しているらしい唐物売りの店>>84にたどり着いた。
>>リェン
「て、店主さん!
あの、今日は……えっと、そうだな、何を売ってます?」
−−場当たり的に飛び出した言葉は、無難。
いきなり真正面からこの物盗りが、と騒ぎ立てて、いらぬ嫌疑をかけるほど、カガチは出来ていない人間ではない。
そんな当たり障りのない言葉……のつもりであったし、実際、何を並べているかは見れば瞭然。
こんな様子のカガチを見て、店主はどう思っただろうか。
−−そんな遠慮がちな声となったのには、もっと別の理由が、きっとカガチの中にはあったのだろう。
夢物語だと、御伽噺だと、嘘八百だとくくっていた稲荷祭の伝承が。
よもや真実であったことを、退魔師としての本能で、感じ取っているのかもしれなかった。
……少し言い方がきつくなってしまっただろうか。
もう傷の手当てなら自分でできるとしても、
無理をしないといいんだが。
それにしても、なんだか騒がしいな。
楽しげな声だけじゃないようだ……
主人 シラサワは遅延メモを貼りました。
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