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[寝台に腰掛けて、顔を俯かせていた頃。
気配には気付かず、呼びかける声でようやっと顔を上げた。
気遣いが滲む声色>>161、その響きに少し、息ができたものの]
……“辛い”と言う資格は、あるんでしょうか。
[終わらせなければならない、その目的に従って動いた結果だ。
だが、殺したことに変わりはない。
いくら都合があったとしても。
辛いと言えば殺した行為が軽くなるのか、なりはしないだろう。
その上――本当に正しかったかのすら、今は]
カタリーネさん、最後。
……“人である私が”って、言ったんです。
[この言葉の意味が彼なら分かるだろうか。
人狼の狡猾な嘘であると、彼なら断じてくれるだろうか。
眼差しは縋るように彼の眼を覗く。
だから、逆接に繋がれた言葉>>162に、瞬いて、次の瞬間]
…… ………… なに
[謝った理由を問うより先に、黄金色の眼>>163が一つ。
どうして色が変わったのかと、更に問うべきものが増えても]
ぁ゛、ッ…… ……! …………っ
[突如伸びた腕が喉を強く掴んだ。その圧迫に呼吸を遮られ、声はろくに漏れはしない。
身をもって思い知らされる。まだ終わってなかった。人狼はいた。まだいるのだ、誰か――そう思えども、助けは呼ぶ声は持たない。
咄嗟に首を掴む腕を指でがりがりと引っ掻く。しかし獣の力はその程度の抵抗で緩みはせず、失われ行く酸素と共に、力も次第に抜けていく。片腕がだらりと落ちる]
… 、 ………… い、 だ
[滲む視界にある金色の輝きはぼやけている。
何を考えているか>>161読み取るなんて到底できやしない。
分かるのは――死が目前に迫っており、最早逃れられないということ]
[馬鹿げたことにこんな際になってようやく、死にたくないと気付いた。
何もかも感情を閉ざしていたのは、ちっぽけで脆弱な心が恐怖から逃れるための防衛反応だったと、今更知っても、何の役にも立ちはしない。
だが、でも、せめて――終わらないのなら、続いてしまうのなら]
[最期の力を振り絞り、胸に隠していたナイフで獣の腕に刃を立てんと。
けれどそれは、拘束から逃れられるような深い傷ではなく、ほんの少し――せめて明日一日、残る傷であれと願うもの]
[意識を失う前の幻聴は、鈴のような軽やかな小鳥の歌声。
ああ、そうだ、彼らのように。
僕の死にも、どうか価値がありますように]
[己の出したクララへの疑いを、
ヨアヒムは真っ直ぐに否定した。
果たして。
当人からの反応はどうであるか。
じっと待っていれば。
”それ”はやってきた。
信じていた人による、騒動が。]
え――…
カタリーネ、さん……?
[何故、彼女が。
翡翠色の瞳が、丸く見開かれる。
血に塗れた姿。
狂ったような笑い。
手にした鉈。
口にするも恐ろしい姿。
だが――…だが、それは
人狼による恐怖といって良いかは、定かではない。]
[果たして、彼女は何を言っているのか。
その言葉の意味を理解することも出来ずに。
ただ、呆然と事の顛末を見守る。
彼女は違うと思ったのに。
何を間違えていたのか。
自分の推理は間違えていて、
皆が、クララが正しかったのか。
わからない。
何も、わからない。]
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