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[雨は小降りになりつつあったが、道が元の状態に戻るには時間がかかる。
しかし村人達も手を決してこまねいていた訳ではない。
と言いたいところだが、こまねく他無かった。
大自然の脅威を前にして、人はあまりにも無力だった。
やがて、西の村人が新たに事態を察知するのはいつになるか。
救援が動き出すまで、まだ今暫く。**]
カタリーネさんがババーンってなってるとこに挟まってしまった。どうせ遅れるなら後から書けばよかったな。
やっぱり人狼騒動のカタリナ、とても好きです…
[何かの血で染まる体を、自らの血で更に赤く彩りながらも。
彼女は取り乱しもせず、……逃げもせず]
…………カタリーネ、
[ふつりと沸いた違和感は、見ない振りをした。
血を浴びようとも、二つの眼は立派にその姿を見てたというのに。
ティーカップが割れる音>>153も、何かを求めるように紡がれた言葉>>149も聞いていたというのに。
彼女を鮮やかな真紅に染め上げて、光を失う瞳をただ、見下ろした。
がちがちに固まって手から落ちもしない、元の色を忘れたナイフは羊飼いと同じ色。
勿論、返り血を浴びた己もまた同様に。
誰かの声があるだろうか、何を言っているか、きちんと理解出来る気はしないのだけど]
……これで、終わるよね。
[色のない眼でぽつりと漏らしたなら、彼女の骸も、エルナの所に運んであげたほうがいいかな、とも続けて、その場にいる人間に手伝いを乞うだろう]
[男が見つけた時、ヨアヒムはもう着替えていただろうか]
[大丈夫かと掛ける声には、心配が滲んでいたし
そこに嘘は無かった――ヨアヒムは、恐らくは始めて、
人を殺したのだ]
辛いか。
[仕方なかったと、そう言う事はしなかった。
だから聞いて何が出来る訳でもない。
これから与えようとしている死が、救いだとも思っていない。
そこにあるのは共有だけ。抱え込まず、零した思考を
互いに取り込んで、胸の内に相手を形作るだけの行為]
[――男にとってすれば、
己の所行を自覚する役にしか、立ちはしない]
耐えるしかないし、続けるしかない。
一度始めてしまうと、止まれなくなる。
最初に思ったことが、少なからず己を縛る
……だから、すまないな、ヨアヒム。
[先達として、戦場にいたものとして語っていた言葉は
その瞬間、人狼としてのものに、変わる]
俺は……止めるつもりが、ない。
[服を着替えて、血を洗い流す。ナイフの血も洗い流そうとして、それを眺めている内に先程のことを思い返した。
カタリーネが遺した言葉。
“もう充分”、“愛してる”、“大切な”、
断片を蘇らせながら、最も気になる一言を自身の口で繰り返す]
“人である私に”……
[今際の嘘だと、そう断じてしまえばいい。
だが嘘であるなら、その理由は。
人であると、人狼ではないと抵抗したならまだ理解できた。
それすらないのに、そう告げる理由はあるのか。
血塗れのナイフをそのまま胸にしまい込み、覚束ない足取りで自分の部屋へと戻る。
どうか、終わったと言ってほしい。
どうか、カタリーネは人狼だったのだと示してほしい。
どうか、人を殺したのだと、思わせないでほしい。
はもう、何の恐れも抱かなくていいのだと、言ってほしい]
[僕がジムゾンさんのように敬虔な人間であったなら、神の声が聞こえたのだろうか]
[寝台に腰掛けて、顔を俯かせていた頃。
気配には気付かず、呼びかける声でようやっと顔を上げた。
気遣いが滲む声色>>161、その響きに少し、息ができたものの]
……“辛い”と言う資格は、あるんでしょうか。
[終わらせなければならない、その目的に従って動いた結果だ。
だが、殺したことに変わりはない。
いくら都合があったとしても。
辛いと言えば殺した行為が軽くなるのか、なりはしないだろう。
その上――本当に正しかったかのすら、今は]
カタリーネさん、最後。
……“人である私が”って、言ったんです。
[この言葉の意味が彼なら分かるだろうか。
人狼の狡猾な嘘であると、彼なら断じてくれるだろうか。
眼差しは縋るように彼の眼を覗く。
だから、逆接に繋がれた言葉>>162に、瞬いて、次の瞬間]
…… ………… なに
[謝った理由を問うより先に、黄金色の眼>>163が一つ。
どうして色が変わったのかと、更に問うべきものが増えても]
ぁ゛、ッ…… ……! …………っ
[突如伸びた腕が喉を強く掴んだ。その圧迫に呼吸を遮られ、声はろくに漏れはしない。
身をもって思い知らされる。まだ終わってなかった。人狼はいた。まだいるのだ、誰か――そう思えども、助けは呼ぶ声は持たない。
咄嗟に首を掴む腕を指でがりがりと引っ掻く。しかし獣の力はその程度の抵抗で緩みはせず、失われ行く酸素と共に、力も次第に抜けていく。片腕がだらりと落ちる]
… 、 ………… い、 だ
[滲む視界にある金色の輝きはぼやけている。
何を考えているか>>161読み取るなんて到底できやしない。
分かるのは――死が目前に迫っており、最早逃れられないということ]
[馬鹿げたことにこんな際になってようやく、死にたくないと気付いた。
何もかも感情を閉ざしていたのは、ちっぽけで脆弱な心が恐怖から逃れるための防衛反応だったと、今更知っても、何の役にも立ちはしない。
だが、でも、せめて――終わらないのなら、続いてしまうのなら]
[最期の力を振り絞り、胸に隠していたナイフで獣の腕に刃を立てんと。
けれどそれは、拘束から逃れられるような深い傷ではなく、ほんの少し――せめて明日一日、残る傷であれと願うもの]
[意識を失う前の幻聴は、鈴のような軽やかな小鳥の歌声。
ああ、そうだ、彼らのように。
僕の死にも、どうか価値がありますように]
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