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[しばらくしてちりちりと肌が焼ける感じがした
家が燃えているとわかったのは数秒後
ぼうっとその光景を見つめるだけ
誰が燃やしたのか
それとも神が燃やしたのか
ただその場に立ち尽くし天を見上げ
手を組み目を閉じる]
[
晴天の下。
わたしは例の赤い傘を片方の腕にぶらさげ――子供が自分のお気に入りを持ち歩いていると見れば、晴れていて傘を持っていてもおかしくは、ないはず――、もう片方の手のひらにはあのコイン――まあ父の手紙によれば、これは宿屋で使ってしまってもよいものだったようだが――を握りしめている。
父は、来るだろうか……。
母は、この騒動の直前に東側に脱出していた。
ディーターが手引きしてくれていたのだ。
村人からは、ならず者呼ばわりされて敬遠されているふしもある彼だが、レムスとの間に何かしら絆のようなものを感じてくれているようではある。義の男なのだ。
]
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この騒動でずいぶんと精悍さを身につけたように見えたニコラス。彼は旅人の名にふさわしく、事の始末を終えると挨拶もそこそこにこの村を発って行った。
その姿には、以前の女性的なそれとはまた違った美しさがあったように思う。
クララはニコラスと同じく騒動の収束に務める一方で、司書らしく多くの事柄を熱心に書き留めていたようだ。騒動の渦中ではただただ翻弄されるがままだった、と後悔っぽいことを言ったりもした彼女だけれど、その瞳は、今、前を向いているはずだ。彼女の記述が、この人狼騒動とかいうふざけた運命に、新たな可能性の目を投じることとなるのを願うばかり。
]
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あらためて傘の赤さに目を向ける。
お父さん、お母さん。
――"わたしは"、リーザ・フォルトゥナ・ガルスドルフとして、父マルス、母レアの一人娘としての生を『再び』受けることになった。
わたしは前世の記憶を持ったまま。
体と頭脳は赤子の状態のため、わたしがその記憶を生かすには物心がつくまでの成長を必要とする。だが、物心ついてからも、もちろん、その記憶と、それに基づく成人並みの知性をひけらかすわけにはいかない。
その要領は心得ているつもりだった。
だが、母は、今回の母親にはそれが通用しなかった。
彼女は体がやや丈夫ではなかったが、それを補うかのように鋭い直感力を備えていた。
母は、理屈ではなく勘で、自分の娘の中に赤子のそれとは違う霊(たましい)が宿っていることに薄々と気づいていたようだった。
]
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母はわたしにそれを悟らせないようにしながら父と相談し、ひそかに二人でわたしの様子を観察していた。
そして、わたしが4歳ごろのこと。
父が出かけて母も寝室で休んでいる……と思い込んで、こっそりと、父のもとに届く村の状況、金鉱に関する諸情報や、都からもたらされる電報などに目を通し、人狼騒動の芽があちこちにあることなどを把握していたところ。
『本当に……本当にこんなことが……』
と絶句したまま半開きの扉の向こうで立ち尽くす父の姿が、そこにあった。
…………しまった、と内心思うが、下手に取り乱してはおかしいと思い、平然として『なあに、お父さん?』と声をかけるが、無駄だった。
父はすでに用意していた縄と布でわたしを縛り、口をふさぎ、さらに柱に縛りつけて身動きを封じた。
]
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わたしは泣き叫ぶが、父と母は取り乱してわたしのほうをまともに見ようとしない。
今は知っている。父はこのところ、自分が管理監督をしている金鉱での生産量が落ちていることや、その上、事故が相次いでいたりで心労をずいぶんと抱えていた。
西の金鉱は全面的に閉鎖に、拠点は東に移すという案もすでに賛成多数になっていたようだ。
なにより、父はパウルという男を、自らの過ちが原因で死なせてしまったと苦悩していたようだ。客観的にはそんなことはないと言えるのだが、父は最後までそう思っていた。
――そうか、ヨアヒム。
彼には、パウルの面影があるのだ。
パウルの顔を少ししか見る機会がなくて今まで気づかなかったが。なるほど、表面的な印象は真逆のようではあるが、もっと根本的なところで共通点を感じもする。
]
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母は悲痛に叫んでいた。わたしたちの子はどこ!? と。だが、父は少し違った。
『だが……この子は私たちの子だ。私たちでなんとか……教会……? いかんレア! ダメだダメだ! これは教会に見せてはいけない……悪魔の子と断じて処刑することさえ彼らはやりかねない……隠さなければ……リーザを人の目になるべくふれないようにしなければ……』>>1:52
果たして教会がそのような行動に出たかはわからない。
すくなくともこの村でそんなことが起こるとは思えないが、たしかに都などにまで話がいけば、さもありなん、と言える。
わたしたち一家は、それまでの暮らしをすてて西のはずれに移り住んだ。
]
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以後、母はますます体を弱らせ、心のほうも病んでいった。わたしのことを自分の娘と認識しないこともたびたびあった。
父は、なるべくわたしを自分の娘――異常な知性を持つだけの――として接しようとしたが、その後も金鉱での仕事がうまくいかないことからか、だんだんとわたしを避けるようになっていった。
わたしは――わたしも追い詰められていた。
そして、わたしは霊を分かつことを決めた。>>3:38
そうして年相応の"リーザ"が誕生したが、時すでに遅し。父はこの村での稼ぎをあきらめて都へ発つことに決めていた。本心は、わたしからも、心を壊した妻からも、離れたかったのではないか……"リーザ"が読んだ手紙>>37の内容がわたしの記憶に流れ込むまでは、そう思っていた。
]
[
今、わたしは父を待っている。
幼子の"リーザ"ではなく、リーザ・フォルトゥナ・ガルスドルフとして。
あの惨劇の舞台となった、宿屋の前で。
やがて。
父は来た。
ぬっと伸びる影でなく、一人の人間として。
わたしの記憶よりもずいぶんとやつれてしまった気もするけれど。
]
「リーザ」
[わたしの手にした傘を見て、それからぽつりと、わたしの名を呼ぶ]
…………はい。
お父さん。
[
自分自身として、父である彼と向き合う。
ふらふらと近づいてくる彼に、こちらから全力で飛び込む。
リーザ。
リーザ・フォルトゥナ・ガルスドルフ。
わたしはあなたとあなたの家族を壊してしまったかもしれないけれど。
でも、生きるよ、リーザとして。
それが生きているものの義務なのだろうから。
神よ。父よ。
わたしの運命が罰なのだろうと呪いなのだろうと構わない。
人狼騒動が人々をもてあそぶ神と悪魔のゲームなのだろうと、知ったことか。
わたしは生きて、また一つの命を、わたしの運命に積み上げる。
]
[勝気な赤ずきんの隣で声をもらし
息を吐く
鍵も閉めずに出てきた家を思う
言わずとも、この村でなにがあったかは
大まかにでも伝わることだろう
都までまた一つの噂にでもなるか
それからどうなっていくかは
残る者たちの足跡をたどれば見ることはできるけども]
親不孝な娘で残念ね
……別に肯定も否定もほしいわけじゃないけどさ
守れない悔しさってのはようくわかったつもりよ
[怒るか泣くか、笑うのか、それとも無か
どんな表情でもいいけれど、会えたなら笑顔のままいようか
色んな笑顔を持つ兄のようにはなれないけど]
もうちょっと色々聞いとけばよかったね
だけど、そばにいられたんだからそれでいいわ
[獣らしくふるまい、悪びれる様子もなく口端をつり上げる父
――実の娘を食おうとしたくらいだ
エルナが死んだところで狩りをやめることはないだろう
どんなことがあっても獣であり続けるのであれば
――人である面を、隠し通したいというなら
遅かれ早かれ、縄にかかることがあるだろうが
手向けの言葉もない方が彼にとっては救いなのかもしれない
その時に、エルナでない別の誰かが彼を変えるきっかけを
少々手荒にでも与えてくれたなら
見える未来も変わるのかもしれない]
[思考はそこまでで、どこまでも続く空を見上げ
そういえば、見慣れない色の傘もあったなと思い出す
この宿には他に重なる色はない
あえて避けていたのか、たまたまだったかはわからないが
その人物は自分の色が好きではなかったのだろうか、と思いもする
なにか伝えられることはなかったか
そう考えても答えは出ない
自分の一部を受け入れなかったエルナは思いを重ねるだけだ]
でも、あんたの色は好きだった うらやましかったよ
[人で生まれていたなら、こうありたいと願った髪を思い出す]
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