情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
[20]
[21]
[22]
[23]
[24]
[25]
[26]
[27]
[28]
[29]
[30]
[31]
[32]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
[記憶の中で、暗い雨が降る。]
ときわちゃんが帰ってこなくて。
[雨に濡れる森の上に、稲光がひとつ走った。]
おとうさんは、おかあさんの肩を、ずっと。抱いてた。
[雨は降り続けている。]
白くって大きい箱が、玄関に運ばれてるのを、窓から見てた。
[雨の中、傘を差した黒い服の人々が佇んでいた。]
(ときわちゃんが死んだって、知ったんだ。)
【神社・朝ぼらけの頃】
[その神社に漂う薄もやは白く、静かに佇む木々を黒く染め出している。
鳥の声はしない。虫の声もしない。人の気配も、しない。
玉を加えた狛狐は静かに、湿気にその肌を黒く染めている。]
[その鼻先に汚れたフードを垂らしたまま、社を前に佇んでいた。]
……なあ、かみさま。
いるんだろ。
[社は静まりかえったまま、見上げ呟かれた言葉に応えることはない。]
どうすればいい?
どうしたら、ときわちゃんをもう一度、生かしてくれる?
[くたびれたミリタリーブーツが、柔らかな石畳を踏みしめた。
社の階段、きしむ音も湿気の中では柔らかく響く。]
お百度を踏めばいいの? お供え物、とか。いるの?
ねえ。かみさま。いるんでしょ。
おしえてよ。
(わかっている。)
[鈴の緒に肩が触れて、重い音が鳴った。
指を伸ばした先、格子の奥は暗く沈んでいる。]
[絡めた指は、丸みを帯びた格子を歪める。]
なんでも、言うこときくから。
なんだって、するから。
(こんな、役立たずでなければ。)
消えればいい。きえればいい?
[白みを帯びた指が、ふっと格子から離れた。]
(あのこを幸せに──そんな役目も果たせないような、
余計なことを“構わない”とおもうような、ばかでなければ。)
[格子を離した手は左の肘を掴んだ。
肉と空の境の布へ、強ばった指が埋まっていく。]
いなかったことになればいい?
(そうしたらきっと、あのときあの場にいたのは自分じゃなくて、もっと別の誰かで、)
[ガラスの瞳が見つめる先は、物言わぬ闇の中。]
(役立たずじゃない、ばかより役に立つ誰かなら、きっとあのこを助けられた。)
いたいのもがまんする。おしおきも、へいきだ。
[ペンキに似た赤が指へ服へと染みて、木綿糸に千切られた肉綿が袖からこぼれ落ちた。
赤いナメクジのようなそれは、風雨にさらされた木床に跳ねず散らばる。]
(動かないまま、朽ちていけばよかったんだ。)
しんでも、いいんだ。
いなかったことになれば、なんにもおもわなければ、
[切り離された傷口を握りつぶした手が、格子へ伸びる。
なにも言わぬ闇に応えを求めるように、眼を格子へ迫らせる。]
ばかで、ごめんなさい。いなければ、よかった。
もう、わかったから。
(わかっている。)
だから、
[鈍い音がして、格子へと薄汚れたフードがぶつかった。
赤に塗れた指は格子も掴めず、木枠を掻くばかり。]
(──わかっている。)
かえして。
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
[20]
[21]
[22]
[23]
[24]
[25]
[26]
[27]
[28]
[29]
[30]
[31]
[32]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新