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[右袖に手をやり、潜ませてあるナイフに触れる。
それを抜こうとして、Masqueradeの処置方法を思い出し、舌打ちした。
ナイフではおそらく殺せない。
また一歩退いて間合いを取り、ぼおっと座り込んだ少女に問いかける。]
……貴方がやったの?
月に還るって……何?
―― 街外れ・自宅の自室 ――
………良かった。
[解析結果を確認し、ほっと胸を撫で下ろす]
ちゃんと出来るみたいだね。
[他界した両親の研究の成果、未完成ではあるが、現時点ではおそらく最も必要とされるであろう技術]
……お父様とお母様が生きていたら、今頃は完成してたのかもしれないな……。
1日ではなく、1時間くらいで結果を示せるくらいには――。
[Masqueradeの解析を通じて、ゆくゆくは永続的に効果を示すワクチンの開発にも乗り出したいと言っていた父を思い浮かべる]
わたしは………。
『……僕には検死官としての職務があるんです……』
『…“異端審問官”ご存じですか?俺…わたしは、その構成員になったんです』
[二人の後輩の告白が脳裏をよぎる]
…いや、違う……。
[同じ顔をした例のコールガール。何かを見つめているように見えて。
ビークルのまま低速で近寄り、声をかける。]
…どうか、したのか?
[彼女の視線の先を覗き込もうと。]
―― 路地裏 ――
[自宅から病院へは大通りよりも裏を通った方が早い。
鼻歌を歌いながら早くもお気に入りになったエアボードに乗る]
[カァカァと喚く様な鳴き声に足を止め、
一瞬顔をしかめて見る方向は、病院とは反対側。
なんとなく嫌な空気が漂ってきている気がして、
そちらへ進むべく地面を蹴った]
[スラムからは離れたところ、そこに倒れている同僚の姿を発見する]
……息はまだある…けども…
[ナイフで刺されたのだろうか、腹部からの大量の血。
このままでは長くはない]
病院に連絡を……
[病院へと連絡し、現在地、負傷者の状態を事細かに伝えた。
救急車が来るのはそう遅いことではないのだが、待っている時間は非常に長く感じた。]
[コワクナイ。
そう言い聞かせるかのように、立ち上がろうとした。
けれど、立ち上がることはできなかった。
いつだったか、出会った金髪のかわいい女性。
彼女が来たことも気付かず、ずっと死体を見ていた。]
…………。
[頭の中を駆け巡るのはコード進行。
1つ1つの音が重なり合って、音楽を作り上げる。
いつかの未来完成予定の、最高傑作の音。]
………うぁ……。
[肩を揺さぶられると、ヘッドフォンがするりと肩へと落ちる。
静かな曲から激しい曲へと変わる。
ヴァイオリンの不協和音がヘッドフォンから漏れた。]
─Bar"Blue Moon"─
[からん。
心なしか、ドアベルの音がいつもより重く聴こえた。
げっそりした顔をしながら、店に入ってくる。]
あー、疲れた。
なんか、感染者の死体が出て大騒ぎになっててさ。
ぴりぴりした空気って苦手なんだよね。
でさ。
マスター、街が封鎖されてるって本当かい…?
[いつもの椅子に座り、ブルームーンを注文。
ちらりと、カウンターの一席に視線を送る。]
ん…?
メディクス、か。今日はえらく大人しいみたいだが。
[声を掛けようかどうしようかと迷っている様子。]
[けれど、肩を揺さぶった相手は離れていく。
その様子すらもただ、ぼんやりと見ていた。
問いかけの言葉するも音の羅列に聞こえた。]
………はぇ……??
……『Masquerade』が、やったんでしょ…??
『Masquerade』は人間を月へと導くんだよ……?
[力なく。
目の焦点は定まらないまま。]
アハハ、ハハ……。
役所のおじちゃんも…パパとママと一緒なんだねー…。
へへ…へ、うさぎっているのかなー……。
[震えたまま、相手にはきっと意味の分からない音を並べた。]
[すぐについた救急車。
事情を説明し、彼を連れていってもらう。
自身もついていこうかと思うが、やはり病院は鬼門で。
調査をしなくてはならないからと残ることにした。]
……助かるといいんだけどな。
[彼を診る時に血に汚れた上着はくるんでカバンにいれ、その場を後にした。]
[横からの言葉に、反射的に脇へそれる。
静かに横付けされたビークルと、搭乗者の自分を”間違えた”男。]
Masquerade。
[答える瞳は、放心した少女を指して。]
うあ、なんかくさ・・・腐臭?
[嫌な予感がますますつのる。
ダンテとそのビークルがこちらを向いているのを見ると
地面を強く蹴って近づく]
どうし・・・ま・・・
[かける声は途中で途切れ、
視線の先に最初に飛び込んできたのは、
病院で何度か見たことがある特徴のある無残な姿]
これって・・・
[Masquerade。
金髪の女性の声が聞こえればは、っとそちらを見るだろうか]
………やば、言っちゃった。
これオフレコでお願いね。
[こそっと小声で。]
なんか、うちの近所で役人のバラバラ死体が見つかったとかで。
感染…は、わかんないらしいね。まだ。
例の特徴は出てないらしかったから。
もうそのごたごたで、家出てくるのさえ大変でねぇ。
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