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[「儀」の前に、岩壁の話で、この岩為す英雄とも話したが、火の狂戦士が怒りを向けたのはこれが初めてだった。
滲み出す怒りは不穏さを撒いてゆく。]
おまえ達は足場を作り【萌の庭】へ行け。
囲まれて死ぬだけだ。
[足場を作るのは、他の英雄の逃げ場と、氷の巨像の高さに抗する為。
天然の巨石を使え、岩壁の時にも巨石を作り上げていたが、今となっては砕かれ【巨人】よりは小さくなった無数の氷像達の高さに合わせよと。
空飛ぶ氷像への攻撃も、足場があれば、地を這うよりも容易かろう。]
[「儀」の前に、岩壁の話で、この岩為す英雄とも話したが、火の狂戦士が怒りを向けたのはこれが初めてだった。
滲み出す怒りは不穏さを撒いてゆく。]
おまえ達は足場を作り【萌の庭】へ行け。
囲まれて死ぬぞ。
[足場を作るのは、他の英雄の逃げ場と、氷の巨像の高さに抗する為。
天然の巨石を使え、岩壁の時にも巨石を作り上げていたが、今となっては砕かれ【巨人】よりは小さくなった無数の氷像達の高さに合わせた足場を生み出せと。
空飛ぶ氷像への攻撃も、足場があれば、地を這うよりはいいだろう。]
[萌の庭を背に、少年は歩く。
細い骨の浮いた足は裸足のまま、しかししっかりとした足取りで。
少し遅れて、ぴょこぴょこと、陽の雫が追いかける。
一人と、一つは、一定の距離を保ちながら、岩壁へと進んでゆく。]
[少年は、肺いっぱいに息を吸い、ゆっくりと長く、息を吐き出した。
視界は、雪舞う雲が地表まで下りてきたかのように、薄暗い。
行く手には、氷の巨人が二体、立ち塞がっている。
片方は人の形。片方は、四肢の獣の形。
それでも少年は、歩みを止めない。]
[二体の巨人が、襲い掛かる。
まるで少年が見えていないかのように、その傍らを走りぬけ、
吹雪の中でも尚、光と熱を放つ、陽の仔へと。]
―― ― 。
[少年は、大気に満ちる冬の息吹を自らの体へと取り込み、冬と同化していたのだった。
体温はとうに氷点下を切り、吐息は白い湯気となることもなく。
巨人にとって、少年は同じ冬。「見えない」存在だった。
遥か天上、大陸を横断せし巨竜の背、少年は襤褸一枚で凍えることもなく暮らしてきた。
だからこそ、できたこと。]
[巨人が陽の仔へと襲い掛かる。
そこに至って、ようやく少年は、くるりと踵を返し、巨人達の背にいそいそとよじ登る。
そして、まるで水面に手を差し入れるような静かさで、冷たく硬く乾いた巨人の背に、右の手を差し込んだ。]
[少年の右の手に埋められているもの。
それは、鍛冶の神が造った鏃。
「泉」の徴と、鏃の性質である「貫通」の徴が刻みこまれている。
巨人の背を静かに貫き、急所に泉を埋め込む。
体内に涌き出た泉は、やがて圧力の限界をむかえ、巨人の体を爆散させる。
それが、少年の行っている全て。]
[少年は巨人にとって、見えないだけの存在。
音を立ててその場に留まっていれば、気付かれてしまうだろう。
或いは、やみくもに振り回した腕が、少年の華奢な体を薙ぎ払うかもしれない。
その点、陽の仔が一緒に来てくれたのは、少年にとって幸運だった。
吹雪の中でも一際輝き、巨人を呼び寄せる餌となってくれ、さらにその熱で巨人もそう簡単に手を出せない。
かつて、冬の神が討たんとして、人間に懐いたものは、氷の巨人を呼び寄せる無邪気な囮として、再び牙を向いた。]
/*
>>58
(審議中)
というか、ぴょこぴょこしてる時点で危うい気もする…!(地面の雪、被造物関連の雪っぽいという心配)
うーん…ステルスか…この方法で同化…同化…。微妙なラインな気がしつつ、既にログに描かれている。冬かどうかより、人かどうか、の判断な気がしていますが(あと、冬でも、同じ事をオーリンが出来ていても、殺しに掛かるような気がしないでもない)
[陽の仔が、手品でも見たかのように嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねると、少年は、にっかり笑って鼻の下をこする。
そして、距離を取って再び歩き出す。
鏃の材料となった鉱物は、元は陽の仔の体の一部が冷めたもの。
陽の仔は、正確にその気配を追ってくる。
静かな行進は、時折爆発の音を響かせながら続き、やがて地吹雪の向こうに、うっすらと岩壁が見えてきた。
少年の探し人、王都から来た白い英雄は、居るだろうか。
地上へと目を這わす。**]
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