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[自分の村にも占い師がいれば、
もっと結末は変わったかもしれないのに。
アリスが生きたその騒動の結末は……どうだったのだろう。
今度こそ役に立つと告げた事から想像は付く。
これ以上追求出来なかった。]
止めとくれよ……。
あたしは……そんなの無くても……信じてる。
信じたいんだ……。
[出来れば黙っていて密かに占って欲しかった。
能力者の存在は嫌でも人狼を、惨劇を思い出すから。
疑われていたとしても、知らずにすむならそのまま
目を閉じてやり過ごしたかった。]
ひょう?
人を喰った挙句、その姿を乗っ取るとか
あまり知りたく無いけど。
[急激に食欲が落ちていく。
それでも無理にでも咀嚼と嚥下を必死で繰り返す。
食べなければ生きていけないのだと言い聞かせながら**]
― 初めてひとを×したときの ―
「お前の脚には家畜の証が刻まれている。
これがある限り、お前はここを出たってまともな恋愛なんかできやしねえ。
けど、俺は気にしないぜ。
何せこの印を付けたのは俺だからな。」
…………。
「だからなあ、俺のものになれよ、シャリー」
……やめて……貴方なんかに……
「この期に及んで、俺に心を渡すのを嫌がってるのか?
お前に拒否権なんてねえんだ。大人しく――」
――――嫌っ!!
[どんっ]
[迫ってくる男――娼館の主を突き飛ばす。
その背後には階段があることを失念して。]
あ…………。
[声にならない叫びを上げながら、主が転げ落ちていく。
その音を聞いて、仕事仲間達が次々に部屋から出てきた。]
「親方が倒れてるわ!」
「ひっ! し、死んでる……!!」
「自警団を呼んで! それから、シャリーを捕まえておかなきゃ」
「あっ、逃げた! 待ちな、シャリー!!」
[仲間は主へ従順で。家畜として扱われているにも関わらず、主の死を喜ぶ者はいなかった。
自身も主に迫られさえしなければ、きっと何の疑問も抱かずここで暮らしていたのだろう。
ただの一度。成長し、主に気に入られ、楽な暮らしをさせてやるから結婚しよと迫られたとき――普段感情を表に出さない娘は、強い拒絶を顕にした。]
はぁ……はぁ……
[殺した。この手で殺した。]
[死体を見るなんて、貧民街では日常茶飯事だったのに。
どのような形であれ人を殺したのだと、娘は山道を走りながらも、震えが止まらない手を見つめていた。
今日を生き延び、明日を生きる。その為なら何をしても平気だと思っていた。
もし仕事の過程で名も知らぬ誰かの子を身に宿したとして、貯水槽へ沈めることになっても、それは自分が生きる為に不要なものを切り捨てるだけで、仕方のないことなのだと。
ああ、けれど。飼い主を殺すなんて、生きる為の利益など一つもないのにどうして自分は。
わからない。家畜の自分でも、いつかは――なんて、望んでいたのだろうか。]
「いたぞ――――!!」
「シャリー、てめえが娼館の主人を食い殺した人狼だってことは判ってんだ!」
[追いかけてきた自警団が怒声を投げる。
人狼。少し前から噂は耳に入っていたけれど、いつの間に自分はそのような存在になったのだろうか。
情報が頭の中でまとまらないまま、娘は逃げた。
山道を昇ったところにある村の酒場まで**]
やだよ、ダメだよ、そんなの、そんなの。
[かき抱く腕に力がこもる]
もうおにいちゃんは離さない。
もうおにいちゃんは傷つけさせない。
もしおにいちゃんを傷つける人がいるなら
よし、よし、ニイナは良い子だね。
大丈夫、相手は子供だ。
必要なら、台所からナイフでも持っておいき。
[とはいっても、心配はしていない。
彼女の両手には消えない死臭が染みついている。
まあ、彼女が仕留め損ねた時に備え用意だけはしておくつもりだ。
彼女にはまた別の機会もあるだろう]
― 夕刻/自室 ―
夢…………。
[全身が、汗でじっとりと濡れていた。
少し休憩するだけのつもりだったけれど、眠っていたのか。
運動をしたわけでもないのに、激しい動悸と息切れがする。]
……気持ち悪い。
汚い……。
[滴り落ちる雫が。
心まで奪おうとするように伸し掛る汗臭い体が。
いや――気持ち悪いのも汚いのも、自分自身か。]
[湯浴みがしたい。
ふらりとベッドから立ち上がると、娘は部屋を出た。]
― 廊下 ―
アリス様……?
……ええ、わかりました。
すぐに食堂へ行きます。
[廊下へ出ると、ちょうど自分を呼びに来たらしいアリスと遭遇して。
浴室へ向けようとしていた足は、食堂へ。]
ランスに教えてあげるのはもう少し後にしよう。
ああでも、君はしたいようにおし。
そちらのほうが楽しめる。
[正体がばれても、新たな顔に成り代わればいいだけのこと。
人に好かれる性質の彼女が『狂い』なのは好都合だ。
彼女なら何をしたとしても彼らは最後まで疑心暗鬼に迷うだろう。
もししくじって彼女自身が吊られたとしても、その死体に歪む彼らの表情を見れるのなら悪くはない]
[再び始まろうとしている惨劇を待ちわびて、抑えきれぬ高揚の内に様々な情景を思い描いた。
マイダの幼い拒絶はもうすぐ永久のものとなる。
ヤーニカは可愛がってきた娘たちを手にかける。
マコトはそれでも表情を変えないのだろうか。
クリスタはすぐに壊れてしまうだろう。
存分に殺しあうと良い。
生きる為という真理を自己愛と錯覚して]*
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