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あんたに尋ねてるって言うよりそうだな。
言いながら、自分で確認してるんだ。
確かに、あんたは式だ。でも、主を欲してたんだろう?
その思いは、人も式も変わらないさ。
誰かを欲しいと思う気持ちは。
[まだ、欲しいと思うのだろうか]
…忘れて、いるな。
なぁ白藤。憑かれていた者は憑き物が落ちた後はどうなる?
記憶は落ち面もこのようになるものか?
[あの凶相とは程遠い、しかし顰めたその顔は比べてみれば穏やかとも言える程の違い]
ふうん。
変わらぬものかな。
お前が云うのならそうかも知れぬし、
童の戯言かも知れぬ
……それは私には判らない。
欲したことだけは事実だ。
未だ満たされぬ、が
それを満たす術も知らぬ。
……そうだな。
[橘の言葉に同意し。]
憑かれて――いたものは。
その間の記憶も抜け落ちることがある。
形相が 穏やかにも、なる。
[答え、影居を見て]
――……どうして?
何やら──気色が悪い。
おれ自身の知らぬことを他人が詳しく知っているとは……
おれが何かに憑かれるなどと。
考えられぬ。
お前が知らぬ、ではなく忘れているのだろう。
その空白の間が真実ではないのか?
陰陽師形無し、だな。名高い陰陽師、阿部殿?
生きるためのものなら寧ろそれを誇れぬものか、お前は。
案外情けないのだな。
[くつくつと笑うがあきれてもいる。ことは重大かもしれないがどこか力が抜けているのはここが死後の世界だから]
誇るだと?
[眉間の皺が一層深くなり]
おれは生まれつき、人とは異なる力を持っていた。
養父がおれに、陰陽の道や召鬼法や符術を覚えさせたのは、無差別に使って周囲を傷つけぬようにするため。
きちんと呪力を制御する術を身につけるようにと、
おれは相当厳しく躾けられたさ。
[思い出したくもない、と言う様な表情に。]
満たす、術、ね。
本当の式であれば、主に聞くのだろうけど。
おれも、あんたも。もらえない答えを探してるんだろうね。
[短刀から手を離し、鳶尾の頬へと当てて]
誰が生きるための術(すべ)に苦労せぬものか。
お前がどのように修行したのかは知らんが私に同情でも求めるのならお門違いだな。
お前の未熟さは事の結末に現れているだろう。
お前がそれを認める認めないは知らぬよ。
死んで安んじるか…。それもありなのだな。
私は逆に未練を持ちそうなのに。己もやはり未熟か
[自嘲気味に唇歪め]
さて…少し疲れた。お前達はまだ…残るものでも見てるのだな
[白藤が咲かせた桜の下、寄りかかるように座るとそのまま眼を閉じた──*]
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