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─―花山院邸・奥座敷―─
都に仇なす凶星ふたつ、
添え星ひとつ―─
あれは、大殿の身罷られたときの事だったかな。
そう、云っていた方が居る。
笛の―─中将どのを殺した人喰いは
凶星のひとつであろうなあ
[帳を透かして、青いひかりが
めろめろと揺らめいている。
照らし出された経文は、怪しく妖しく揺れる。
帳の向こう、狐の顔がどのようであるか
伺う術もなし]
家名とか、政治とか、しがらみだらけだし、な。
恨んで、祟って、
後に残るのは穴二つだってのに。
[ゆると首を横に振って]
いいさ、気にするな。
おれも櫻は好きさ。
[首を少しだけ傾ける。]
……どうかな。
会いたいと思えば、きっと会えると思う。
ひとの思いが生むのは痛みばっかりじゃないだろ。
そのときは――折角だから、春がいいねぇ。
[薄く笑む。]
何故、そうお思いになるのです?
[腕の中のその細い身体を包むように抱いて]
あなたは何も悪くない。
悪いのは、あなたを攫った私です。
では、
[泣き濡れた若宮の頬に手を添え、じっと濡れた琥珀の瞳を覗き込み]
強くおなりなさい。
これからあなたは、もっともっと辛い目に遭うでしょうから。
………そうだな。そう願おう。
桜、見ながら杯でもかわしたいものよ。
[薄く笑った顔に、ゆるりと手を伸ばしながら一度止め]
…触れてもいいか?
他意はない。
[邸を見上げ]
さっきの、邸か。
あいつは陰陽師だ。この背のものも何かしら呪が含めてあるはず。剥がそうとしてどうにかなると嫌だからな……。服ごと換えるのがいい手、と。
[中で何か調達でもして、と門の中を覗き、人がいないと知ると邸の中へと入っていく]
─花山院邸・奥座敷─
凶星…。
[乱れ髪のまま目を伏せて、狐はぽつりというのです。]
怨み辛みに身を妬いて、人を取り殺すけものなどかは、
…そのようなものでございましょうか?
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