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[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
流れ者 ギルバート は 医師 ヴィンセント に投票した。
双子 リック は 学生 ラッセル に投票した。
修道女 ステラ は 吟遊詩人 コーネリアス に投票した。
冒険家 ナサニエル は 村長 アーノルド に投票した。
吟遊詩人 コーネリアス は 村長 アーノルド に投票した。
学生 ラッセル は 修道女 ステラ に投票した。
書生 ハーヴェイ は 村長 アーノルド に投票した。
牧童 トビー は 学生 ラッセル に投票した。
村長 アーノルド は お尋ね者 クインジー に投票した。
見習い看護婦 ニーナ は 吟遊詩人 コーネリアス に投票した。
お尋ね者 クインジー は 村長 アーノルド に投票した。
医師 ヴィンセント は 村長 アーノルド に投票した。
村長 アーノルド は村人達の手により処刑された。
冒険家 ナサニエル は、双子 リック を占った。
次の日の朝、冒険家 ナサニエル が無残な姿で発見された。
《★霊》 村長 アーノルド は 人間 のようだ。
現在の生存者は、流れ者 ギルバート、双子 リック、修道女 ステラ、吟遊詩人 コーネリアス、学生 ラッセル、書生 ハーヴェイ、牧童 トビー、見習い看護婦 ニーナ、お尋ね者 クインジー、医師 ヴィンセント の 10 名。
修道女 ステラは、流れ者 ギルバート を能力(襲う)の対象に選びました。
[白い腕を覆う幾重もの重なる色合い、その徴の意味するところは。]
だが、お前という器は無窮ではない。
お前の器が途方もなく巨(おお)きくとも、みやこに溢れる穢れ全てを収めんとしたとて収めきれるものではない……
話に聞くお前の主は本当にみやこを守護し奉らんとしてお前を作ったのか。
おれは……
[そこまで畳み掛けたところで。
ふと己の落ち着きを喪った様に気付いたのか。
きつく寄せた眉を開き、大きく息を吐く。]
……いかんな。
どうもひとの善意というものが信じられぬらしい。おれは。
…そなたも、どうぞご無事で。
[彼の法師に促されるままに、狐は垣根の外へと身を隠しておりました。
禍々しき気配は、己には辛いものでもあったので。
ふと見上げた空、落つるはふたつのほうきぼし。
狐は思わず、高い声で鳴くのです。
袂に収めた彼の笛には、ぴしりと亀裂が入っておりました。]
―大殿邸・庭、門近く―
……検分はお済ですか?
[陰のある細いおとこに、声をかける。
薄笑み、己と似たような笑みだろうか。分からない。]
…あぁ、嗚呼。何方が彼の御方を。
[件の笛を胸に擁き、はらはらと涙を零すのです。]
あの御方へのご恩は、未だ返せて居らぬというのに。
あの御方の笛の音を、未だ聞けておらぬというのに。
──大殿の屋敷・中庭──
[白藤に声を掛けられ、おとこは困ったように色褪せた薄茶の髪を掻いた。]
…いやあ。
検分は、むしろ中将どののお勤めでしょう。
わたしは、ただ。葬儀の手はずを。
血がつながるか繋がらぬかは兎も角、大殿を悼む屋敷の者や、身内のものがおられましょうゆえ。
[身内のものと云ったところで、おとこはおのれの兄を見た。]
──屋敷の外──
[空に星の流れたを、鳶尾が見たわけでは無かった。
ただ、星の引く尾の消えたあと、するすると立ち込める黒雲を見た。
いかにも不穏な雲は、さりとて雨を降らそうとするであなく、頭上に立ち込めては陽を遮り、不吉に影を落として広げる。]
鳴き声…?
[高い鳴き声。
狐の物と分かっていたが、何故こんな所で?
そう思ったのか、辺りを見回してみる。
しかし、其の鳴き声の主は見当たらず…
見えるは空を見上げる白藤の姿]
…?
[同じように空を見上げれば、見えるは二つのほうき星]
お前は、純粋な式らしい。
余分なものが無い。簡素で、しかも力づよい。
お前を生み出した理由は何にせよ、
[と苦笑しつつ一旦開いた眉根は。
すぐさまにまた寄せられた。
邸の塀のすぐ外から響き渡る、狐の鳴声。高く。
その声の方へと顔を向けると、みきり、と音がしそうなほど深く、皺というより溝が眉間に刻まれた。]
…人が悲しみを恨みと為すのは、このような時で御座いましょうか。
[よくして頂いたこと、いやそれだけではありませんでした。
ずっと焦がれていたのです。
あの笛のあるじは、どのような素晴らしい御方なのだろうと。]
[空へ向けていた視線と顔を永漂へと戻し]
……そうですな。
手はずを整えてくださり、ありがとうございます。
屋敷のものも、多少は心が慰められるでしょう。
[少しの間、眼を閉じる。
――次に開いたとき、見えたのは 兄 を見る 弟。
剣呑な、奇妙な空気
そして何よりもあの空が酷く不安にさせる。
星が 落ちる。]
[目が暗い所為で、先刻までは兄の傍にいるかれが汐であることがわからなかった。
おとこはゆっくりと庭を歩いていった。おとこと兄の距離が近づいたゆえに、汐のことも認識する事ができたのだった。]
[そちらへと足を向けたところで、気が付いたように黒白の式に振り返り、]
……来るか?
[端然と座り居る式──未だその名付けられたる名を知らず──に寂びた声を掛けた。]
[影居の厳しさを秘めた横顔は 先(せん)の緩みはなく
鍛え上げた鋼の心 よく研ぎ錬られた刀であった
妖狐の鳴く声に そちらへと顔を向ける]
お尋ね者 クインジーは、流れ者 ギルバート を能力(襲う)の対象に選びました。
…汐どの。
薬師のあなたも来られていたのか。
なにやら巻き込んでしまったような心地がして、申し訳ないねえ。
[遠くで 犬の鳴き声がきこえた気がした。]
[けれども、まばたきをしたおとこの耳に正しく届いたのは、狐の声だった。]
…葛木?
[案じるようにささやいた声は、低く響かず。
空をみあげても星の光は暗い目ではうまくみることが出来なかった。おとこは困ったような表情のまま、近くの兄へ、そして汐に、白藤に顔を向けた。]
──空になにが、見えますか?
─故大殿邸の庭─
[緩みの無い足取りで、真っ直ぐに外に通じる門へと向かう。]
鳶尾──
[己に従う式の名を呼べば、その顔は決然と。]
…此は…不吉、と言うべきなのかな?
[落ちる星。
視線を下ろし、禿の髪を掻く。
ふと、法師の言葉に目を瞬かせるが]
…何。私は白藤の兄さんに話を聞きに来ていたのですが、ね。
巻き込まれ…てるのかはよく分かりませんが。
法師様は悪くはないでしょう…恐らく。
[緩く首を横に振った。
顎に手をやると、法師を見やる目を細め。
白藤の言葉に、小さく頷いた]
[御簾の中までもどこからか狐の鳴く声が聞こえてきて、御簾の外を見つめ]
狐の声のように聞こえましたけども。
この京の中でそんな声を聞くなどとは。
[どこか不吉なものを感じて、わずかに身震いする]
[遠い呼び声──それは単純に知覚できる範囲での声というものでは無かったかも知れないが、
喚びつけられ、はたと我に返る。
一度、邸内に溜るものたちの顔を見て
門の横へ黙って控えた]
修道女 ステラは、吟遊詩人 コーネリアス を投票先に選びました。
[垣根の脇へとへたりこんで、ゆるゆると頭を振るのです。
笛は、彼の方より預かりし件の笛は、
口を寄せ、息を吹き込もうとも、二度と歌おうとはしないのでした。]
─故大殿邸門前─
[足を止め、門の横に控える己が式にちらりと視線を送る。]
急いで行かねばならん。
間に合わない──だろうが、それでも。
[元来気難しい顔だが、今はそれが凶相とも見えるほど険しい顔つきになっていた。]
──先んじて向かいましょうか。
それともすぐにもお運びしますか。
[今度は無我──識の視線を感じながらもその顔へ目を向けず、短く応えた。
健脚である主と人ならざるものものの道行き、徒歩で進んだところで大した時間は掛かるまいが。]
[門へと向かう影居らが見える。
険しい――酷く険しい顔だった。]
……
[それが伝染したかのように、眉間に皺が寄ったまま。]
凶兆だな。
[呟いた。]
わたしは目が暗いのでね…
星の光は、明るいものだけ、滲んでみえるのだけども。
…おつる星か
──見えなかったな。
[兄からすこし顔を背け、白藤と汐に、困ったような笑みを浮かべたままで呟いた。]
[ゆるゆると車は進み、やがて中将の邸へと辿り着く]
なにやら、お騒がしいご様子。
何か、あったのでしょうか。
[御簾を上げて若宮が降りれば、後ろを付いていくつもりで女房の手を取る]
……そうでしたか。
気づかず、申し訳なく。
[おとこの目元の影、それゆえだろうかと思いながら見つめ]
――遠い、ですからな。
すぐに、きえてしまった。
[茫とした目は焦点は結ばずに広い視野――否。理へ向いているようでもある
主のみへといらえる式神――鳶尾は何処ぞに心を引っ掛けていたのか …あえて目を向けずに居るのは]
[門のところへ出てきた方々へ、人の姿をした狐は涙に濡れた面を上げるのです。]
行かれるのですか?彼の御方の所へ。
…凶兆が御座いました。おそらくは……。
[既に。との言葉は音にはならず。
握り締めた竜笛には、深い亀裂が入っております。]
…凶兆、か。
まぁ、兄さんの聴いたとおりの話であるならば…
[手は髪を掻きつつ。小さく息をつき…
法師の言葉には]
…それは不便…でしょうねぇ…
[もう一度天を仰ぐ。
しかし、白藤の言う通りほうき星は見えなくなっていた]
飛ばせ。
事は一刻を争う。
[きっぱりと命じ、自分は式に力与える禹歩(うほ)─本邦で行われる反閇の原型となった歩行術─を開始した。]
[短く断り、影居の肘の辺りへ手を添え]
[力を得てはいつも自分ひとりでするように
門前よりふい、と消え
おのが主の念ずる場所へ──]
−中将殿の屋敷への道−
[若宮様に同行し、中将殿の屋敷へと歩いていく最中]
・・・・・・匂い。厭な匂いがする。
[このような状況で若宮様の傍を離れるのは芳しくないのは承知している。だが間違いない。
これから向かう先に、何かある。
傍に他の従者もいる、今なら]
若宮様、大変申し訳ありませぬが、思うところある故某先行して中将殿のお屋敷へと参ります。どうかお許しを。
[少し間があった後、若宮様の小さい許可を頂き、中将殿の屋敷へと向かう]
[後をついていくに従い、血の臭いがきつくなってくる]
これは……。
(何でこんなに血の臭いが。誰が、やられたんだ? まさか、中将……が?)
[先へ付いているはずの、侍従の男の姿も見えず]
……。
[あの方角は]
橘の――屋敷だったかね。
[誰に聞くでもなく謂って、門の方へと歩いていく。
しろいきつねが泣いている。]
・・・・・・
[既に気が付いたときには、中将の頬は血にまみれ、自身は中将の体を貪る様にまさぐっていた。
局所をなめらかに、かつ強く刺激し、その反応を弄ぶ。
もう数刻後には潰える命を背負い、何も出来ずただ屈辱に塗れる姿を見ながら、富樫は激しく興奮していた。
これこそが理性を失うことで手に入れることの出来る快楽。これこそが己の中に蠢く欲望。死の気配と性欲に溺れ、最後に富樫は恍惚の表情で。
橘中将の四肢を喰らった]
いや、白藤どの。
謝られることは──
[こまったような笑みを二人に対して浮かべたまま、おとこはおのれを祓いを花山院の屋敷で行うてくれた陰陽師の「凶兆」と云う言葉を聞き、ふと何かを思いついたように汐に近づいた。]
この位の距離ならば──なんとか見えるのですよ。
[そのような言葉を続けながら、おとこが至近距離でじっと凝らしたように探っていたのは、大殿を内側より喰ろうた呪と化した野犬の気配。
天をあおいだ汐の首筋におとこは骨張った手をのばす。]
[乾いたおとこの手のひらが、そっと汐のうなじに触れた。]
・・……
(──獣はここにはない。)
ああ、失礼を。
汐どのは、形のよい 首をしておられる。
[薬師との出会いがそうであったゆえに、おとこは大殿を喰ろうた犬が、汐の元へもどり来る気配がないと云うそのことに安堵をおぼえたようだった。]
[おとこが基点となす場所は若宮の居る場所──
何となれば、怪異の起こりたる左大臣邸にこそ、若宮はおわします故に──]
−中将殿の私室−
・・・・・・これは、一体!?
[既に館の中は騒然としていた。混乱する従者を掻き分け、その私室へとたどり着いた富樫は、予感が的中していた事を察した]
な、なんと惨たらしい・・・・・・
[中将殿の体は切り裂かれ四散し、既に息絶えていた。まさに回りは血の池、さらに着衣は失われ弄ばれたような後もある。
胃の中からこみ上げてくるものを必死で止め、近くにある布を上から被せる]
この位…?
それほどまでに近づかねば見えぬとは…
[直ぐ傍まで来た法師に目を丸くしつつも。
其の目を見つめ…]
…!?
[目を瞬かせる。
項に何かが触れたためだった。
…声を上げなかったのは直ぐ傍に法師が居たからだったのだろう。
しかし、其の原因も法師だったのだが]
は、はぁ…首、ですか。
首を褒められた事は無かったですねぇ…
[自身でも首に手を当ててみて。
しかし、其の首が良い形をしているのかは分からず、首を傾げつつ]
──橘の中将の屋敷・廊下──
[急ぎとあらば礼も置き去りに門をも超え、中将の私室からはすこし離れた廊下へ──以前に来たからおおまかのつくりは識っていた]
[まだ血の匂いの届かぬ場所であれど、
慌しく動くものたちの気配は遠く近く感じる。]
[…白藤が行く先を見やる。
門へと向かう其の様子に、少し考えていたが]
…どうしたのです?
[声を掛けつつ。首に手をやりつつも後を追う]
[――穢れていた
血腥く 闇と紅を孕んで
幾つもの業(ごう)を 呪を 怨を その身に請けて
胎(なか)は たぽり たぽり と 巨きな穢れをおさめていた
ゆるりと繋がった刹那 跳ぶ一時の間に安倍影居に知れよう
その穢れは
一日や一月のものではあるまい
嗚呼もし その文を見たのが目の悪い花京院明輔という法師でなければ 既に半年を経た紙と墨の翳を知ったろうに]
一体何が起こったのだ!事を見たものはおらぬのか!
[部屋から出て、廊下の喧騒へと声を荒げる。だが混乱した者達はただこの状況から脱する為に叫び、そして混乱した様子で行き来するだけであった]
[門をくぐり、向かうは中将の寝所で、走る女房や従者らしき男たちから漏れる声を聞けば、中将のみに何かがあったことが判り]
……この、臭いは。
[進む足を止めて、若宮の裾を掴み]
若君様、行ってはなりませぬ。
お待ちを。
[行けば、若宮が気を落とすのは目に見えて、気を落とすだけでよいならまだ良いが、心神を喪失しなければ良いと]
─橘左大臣邸─
[基点となる場所を少し外し、勝手知ったる左大臣邸の適度な場所を到達点として結んだ。
いきなり邸内に出現したことになるが、幸い見咎める者も居らず。
ざわめく邸内の雰囲気を感じ取り、眦が吊り上がる。]
―大殿邸 門―
[首についての遣り取りは途切れ途切れにしか聞こえておらず。
泣くしろいおとこを見て眼を伏せた。]
……ひとが居たんでな。
[門が面する通りはひともまばらで、
ひどく寂しいものだった。
向いた先は星の落ちた方角のひとつ]
橘の屋敷――へ、ひとが集っているようだねぇ……。
[どうするか、と考える様子。
薄笑みは無く。]
おとこがおとこに首のかたちを褒められても困りますかねえ。
[と、何かを冗談でまぎらせてから、話をしようと思うたのか。]
…汐どの。
影居どのは、大殿の寝所に若宮さまが踏み入れてしまったことを嘆いておられたが、理があるとわたしも思う。
…大殿を喰らった犬の呪に一度触れてしまった汐どのも、また同じく。
今後の不安があるならば──花山院の屋敷に。
よろしいならば。
[おとこは碌に挨拶すらしておらぬ兄を見て、咄嗟の会話の流れに兄が汐を歓迎する様子に暗い目を細め、 暫しの沈黙ののち──]
ああ。
わたしも都にいる間は、花山院の屋敷に滞在いたしますがゆえ。
[星を負うたものたちだけが
なにかに引き寄せられるように
──橘 智鷹の屋敷へ 意識を向かわせる 足を運ばせる]
[星のみえぬおとこは、汐と白藤の背を送りながら、狐の声のかなしさに、わずかに眉を顰めたのだった。]
─橘左大臣邸─
──いってらっしゃいませ。
[辺りの喧騒をしても、既に事の起こったことは疑いようも無い。
ひたりと控えた姿は、図らずとも無我と同じく]
…何方が、何方があのような…。
[何かを垣間見てしまったのか、震えの止まらぬ肩を抱きます。
未だ其処に居る御方に、目を上げて問うのです。]
乱れた気持ちが収まりませぬ。
あの方をあのような目に遭わせた方に…同じ痛みをと希う。
そんな己の気持ちが恐ろしいのです。
うらみ、とは…このような心持ちの事を言うのですか?
[ゆうらり目を開く。世界は暗い。熱くて寒い。
あぁ、自分は何をしていたのだろう。覚えがない。何も。
見えるものはぼんやりとした世界。
まるで夢と現実の狭間のようなその世界は見ようとすれば消え、見まいとすれば浮かび上がる。
感じ取れるものは今は懐かしきものとなった我が家と既に殻となった己の体を遠巻きに見る家人達]
………何故皆泣いている…?何が…あった?
人?
[白藤の言葉に緩く首を傾げるが。
門前に行く間際、法師の言葉には苦笑いし]
…首の形を褒めれる方は少ないでしょう。
ふむ…?
[話を聞いていたが、顎に手をやると]
…成る程。
見に来るだけでも関わった事になってしまうのですか…
それは…弱りました。ねぇ…
ええ、もし不安が募る様なれば…法師様の。
花山院のお屋敷にあがらせて頂きましょう…
[そう言うと、法師と師輔に頭を下げ、白藤の元へと]
[先ほど繋いだ刹那に察知した、黒白の式の負うた穢れの巨きさも気になっていたが、唯今はそれどころではなかった。
おとこには、何よりも大事な、確かめねばならぬことがあった。
──凶相の陰陽師がずかずかと、橘中将の私室までほぼ一直線に足早に突き進む。
以前に幾度も左大臣や中将に呼ばれていた関係で、邸内で召し使われている者達も影居の顔を知っていたが、皆怖れた目で見詰めるばかり。
呼び止め、或いは遮ろうとした随身達でさえも、咄嗟に口を噤んで棒立ちとなる有様。]
[その見える世界…波紋立つ泉のような鏡面は泣く銀色の男を映し出す。握る竜笛はあの時くれてやったものか]
…葛木よ、泣いてくれるな。笛もお前に握られ泣いている。
私も誰かに恨み買っていたのだろう。この結末も都では些細なことよ。
[言の葉と思いは裏腹に]
……そいつは、
[白いおとこを見下ろして、ふっと眼を逸らし]
そう。
届かぬものすらもころす うらみ さ。
野のいきものであるおまえでさえも、抱くか。それを。
[眼を閉じて]
うらみだよ。
間違いなく。
それを抱くこと、よいか悪いかはおれにはわからんがね……。
[門前へと出れば。
居たのは陰陽師と…銀の髪の男]
…
[白藤を見て。銀髪の男を見て。
声を掛けようとするも。
聞こえてきた言葉には眉をひそめ。口を噤んだ]
なんと・・・・・・一体どうしたものか。
[高鳴る鼓動を抑え、頭を冷やす。周りを見渡しつつ何か手がかりがないかと探る。
壁にまでべったりとついた血糊。だがよく観てみるとそこには人間の掌の形]
・・・・・・人。犬ではなく人。
もしこの手形が橘中将の物ではなかったとしたら、喰ったのも、人だと言うのか。
[確証には至らない。だがもしそうだとしたら、ここに人が居、そしてこの凶行を目の当たりにした可能性が高いという事]
[この先に行かせてはならない、と若宮を留めたまま、それでもなお行こうとするのならば、傷が痛んで裾を放し]
(中将……。ほんとうに、死んだ。のか)
[袖で鼻を押さえ、血の臭いから庇うように]
先程の邸もそうでしたが、ここも尚血の臭いが、きつすぎる。
貴女は、下がっていて。
[若宮には聞こえぬように、付いていた女房へ声をかける。自身は血の臭いにも慣れている。凄惨な状況も経験はあった、が老いた女房には酷と気づいて]
[調べるならば、今さっきそこらに四散していた肉塊の中に中将殿の掌があるか探ればよい。そして壁の手と照らし合わせればよいのだろう。だがさすがにそれは気が引けた]
─橘中将の私室─
[無惨に朱染まる室内。
血の海には形ばかり衣が被せてあったが、その下にある「物」の形は隠しようもなく。
塗篭に、人の手形がべっとりと血の痕見せているのが、愈々もの凄まじい。
そこへ、凶相の陰陽師が踏み込んだ。]
[歩くに騒がしい音の無いものたちだから、障子のぶつかる音だけがよく聴こえた。]
[障子に光が遮られ、人気のない部屋のこと──いまは使われてもいないから、明かりも無い。わずかの光を背に立つ無我の顔はいよいよ霞む。
振り返り、刀へ手をかけた]
さて。
先ほどからあらわれては
……何のつもりだ?
[部屋に入ってくる人物は、確か観たことがある顔だった]
そなたは確か・・・安倍殿か。
[安倍殿も表情は険しかったが、自身の表情もこわばっているに違いない]
某がたどり着いたときにはもう。
わたくしは……
[返る言葉に項垂れて、笛を握った手は震えました。]
それでもわたくしは、彼の御方の仇をうちとうございます。
[それが何を意味為すものなのか。
恐れ多さに狐はその目を伏せるのでした。]
[血まみれの自室がまた映し出される。そこにいるのは富樫。この声聞こえるなら宮様を中にお通しだけはすなるな
そして凶相と共に入ってくる者は]
……影居、お前には見られたくなかったな。
そんな情けない姿…。
[向き合って目を向けられては、刀へかけた手に力を込め
ぐい、と身を沈める。
一息に刃を抜き、背にした障子ごとほそい胴を貫かんとする勢いで
突いた]
[無言で目を床に落とされ血に染んだ衣に落とし、
無造作に踏み込んで手を掛け、引き剥いだ。
衣の下に隠されていたものが露わになる。]
本当に無念だ。まさか中将にまで呪いが。
[壁の血糊の一部に目をやり]
あの血の手形が中将殿のものでなければ、凶行の最中にいたのは犬ではなく人、ということになるようだな。
──大殿の屋敷・中庭…→門──
[おとこは、兄と並んだところで、ようやく兄に顔を向けた。
おとこの声は相も変わらず通らず そして今は 地を這うように低かった。]
・・おひさしぶりですね、兄上。
[暗い目で兄を見る──。]
兄上は、都を落ちたわたしとは違って、花山院の名を、
よく保ってらっしゃるようだ──
大殿の葬儀の手配を、先ほどわたしが整えられたのも、うろんな法師がうろついて居られるのも、花山院の名あってのことでしょう。
[その刀は識の腹を突いた
刀が返され ――その胎(はら)、その胎(なか)が顕になる
僅かな隙間から覗いたのは
胎(うち)を埋めつくす無数の極彩色の徴
鳶尾に切り裂かれる事はなかった
その細い指にどこにそんな力があるのかと思われるほど 強い力で鳶尾の手首を握り 動きを封じる]
[――藤の甘い匂いがした]
ああ。文に書いたとおり。
わたしの記憶は──ほとんど戻らぬまま。
兄上に遊んでいただいた、子どものころの事はようくおぼえているのですけども。
大人になってからの事は何も。
[おのれが、門の外で鳴いている狐に、行き倒れたところを助けられたのだ。と云えば、この兄はなんといらえるのだろうか、と──おとこは想うた。]
[──目は逸らさない。
ただ、きつく顰めた眉根の下の目が細められ、
噛み締めた唇にじわりと血が滲んだ。]
智鷹……
[地を這うように低い声が、*歯の間から洩れた。*]
……そうか。
[顔をしろいおとこのほうへ戻して]
それをとめる理由も、権利も、おれにはない。
とめようとしたって、どうなるもんでもないしな。
……好きにすればいい。
[蒼いおとこと、この白い狐がいかな繋がりかは白藤は知らない。
しかし、この嘆きは確かに在るものだ。
項で揺れる翡翠と後ろ髪に手をやり、少しだけ滑らせ]
……信用できるって謂ってくれた傍から、これか。
[微か、苦い笑みで呟いた。]
大人になってからの事を、何も思い出せないと云うのは。
嘘ですね。
葛木に会うて
おのれが行き倒れていた時のことを思い出し、
兄上に会うて
わたしが兄上をどのような想いを抱いていたかを思い出した。
[腕は中空に捕らえられ]
[目は、はら に]
[目まぐるしき、溜め込まれた色彩を──
美しいと思いこそすれいまは]
──────おぞましい。
……大殿が屋敷にあらわれ、
我が主に取り入って、何とする。
[抗い太刀を戻そうとするも、細い指はからだに食い込むばかり]
……ぁ。
[突然小さな声を上げ、狐は顔を上げました。
普段は細いその目は、恐怖のあまりにか大きく見開かれ、
震えながら首筋へと己の手をやるのです。]
…何故、…何故……そんな。
[霞む意識に見える景色は、己の目の高さとは違っておりました。
耳元で聞こえる囁きに、確かに覚えはあったのです。]
…恨み辛み…か。
[まだ背に負う傘を頂いた中将の死を知らぬ薬師は頭を掻き]
やれ。何とも言えぬ…
あの部屋を見るのも。近づくのも辛かったが。
悲痛な声を聴くのも辛い物ですねぇ…
[門に凭れ。白藤と男を見やる]
[かつて、山にて行き倒れていた彼の法師は、
深い夢の中に魘されておいででした。
幾度も呟くうわ言は、誰かを妬み恨むものだったような覚えがありました。
そう、今聞こえたのと同じ声。]
『 に く い か 』
『 に く い か 』
『 に く い よ の 』
『 主と添い遂げたいのであろう 式でありながら 』
『 誰にも渡さず 闇の中閉じ込め奪い貪りたいのであろう 』
[藤の匂いは 藤色の靄を伴い 何時しか辺りを覆う]
『 お ぞ ま し い は 』
『 身 分 弁 え ぬ お 前 よ 』
『 嗚 呼 『欲望に』
『身をゆだね』 よ―― 』
[藤色の靄は鳶尾の身を包み込み染み入るように]
[四十を過ぎたの立派なおとこが、喉をそらせて苦しげに喘ぐそのさまを。押さえつけた手のひらで、気管の ふるえを味わうごとく。]
ふふ・・…
兄上は野心家でいらっしゃる。
昔から、お強くもあった──
お強いがゆえに 弱きもののこころが分からぬのでは無いかと。
ああ 今、鳴く狐にも、
少しばかりの好奇の気色を浮かべられましたな。
[首に掛けた手はそのまま、おとこは兄に息が掛かるほど顔を近づけたかと思うと]
…兄さんが…凶星、だったとしても、私には分からないからねぇ。
[ぽつり、と呟けば。白藤の側へと寄り。
其の顔を見つめ]
だとすると。
私は私の好きな様に流れれば良いのかねぇ?
[口元をつり上げれば、銀髪の男に視線を移す]
所で…其方の兄さんは大丈夫…じゃ、無さそうなんだが。
[白い膚のうえの唇は、そよとも動いた風が無いのに
声が──否、声は無い
藤のかおり──否、気付けば藤の色が染み出している
目が眩むようだ
何故か、
白いかおはくっきりと見えるのにそのかおつきは知れぬ]
[おぞましきは]
[奇しくも、心中のことばが染み出しでもしたか
否、これは私の言葉ではない]
────否、添い遂げる?
私はただ、何故か 酷く悔しいと
[途切れ途切れのこの言葉が私のものだ]
[身分も弁えず]
[身をゆだねよ]
[命じられることには弱い────否、これが強いのだ。
いっときでも美しいと、
悪しきにあらずと思うたはあやまりか]
[抗っていた筈の腕にいつしか力はなく]
[きりきりと、音を立てそうなほどに睨み付ける目は藤に霞み]
…なりませぬ。…なりませ…ぬ…。
[頸を押さえるその手が震えます。
重なったこころは恨みよりも、驚きと哀しみに彩られているように思えました。
あぁ、今逝かれる此の方は、人を喰らうような方ではなかろうと。
それだけを覚えて、
白狐は人の姿のまま、くらりと崩折れるのでした。]
[振り向きかけたのを、汐のこえに一度とめて。]
――そいつはお互い様だろう?
[笑みを敷いてしずかな声。
見つめられたのに、首を少しだけ傾けて]
そうだな。
好きなようにすればいいんじゃないかねぇ。
……うらむも。
……祟るも。
それを、祓うも。
[おのれが喪に服したまま、流れているように。
白い狐のおびえる様子、眉を寄せて
改めて背後を向けば、師輔咳き込みふらついていて]
……何を?
[怪訝そうに、聞いた]
[無我が喋っている声ではなく 声は虚空より聞こえているようだった 靄が凝結し誰とも知れぬ顔をつくると霧散し するすると鳶尾の口に滑り込み甘い湿り気で満たす]
[もう片手その指先を伸ばし 鳶尾の喉を柔らかに掴んだ]
[花山院 師輔が、久方ぶりに再会した弟に、その時何を云ったかは分からぬ。
だが、弟は兄より先に門にたどり着き、やはり薄笑みをはいたまま銀狐に変わらずやさしい声をかけたのだった。]
・・…葛木。
きみは、おそろしいのかい?
だいじょうぶ か な。
[くらり][崩れた狐をおとこは白藤の反対側より、膝をついて支える。]
[近く、白藤のそばにある男の目はまた暗く──]
[身分も弁えず、
あさましきと思うたは確かに私のこころだが]
[口内へ忍び行ったものを、反射的に飲み下さんとしたが
喉元を抑えられては、半端なところで息を詰まらせる]
[誰そを]
[問われては他に心に浮かぶもののある筈もなく、]
[その隙へ何かがこころ――否、身のうちか、同じこと
するりと忍び込んだようだ]
[嗚呼、あざけり笑う]
[中将の寝所から出てくるものたちの顔を見れば、そこがどんな状況であるのか、見ずともわかり]
若君様はどうぞこちらに。留まられてくださりませ。
(放っておけばいい。中将がどんな死に様でも、それを若君に見せてやればいい。それがどんな衝撃であろうと、おれには関係のないこと)
[そう思うのに、体はそうではなく、この腕は離すまいと、若宮の自身よりも小さな体を後ろから抱きしめて――]
(――葛木と名乗っているのか)
……陰の気が、濃いですからな。
あてられたのやもしれませんが。
[墨染めの男は、くらいくらい眼をしている。
それと悟られないようにできているだろうか。
警戒が解けない。この男は 何故だろうか――酷く 恐ろしい。]
……別の場所へ運んだほうがよろしいでしょう。
[す とさりげなく眼を逸らす]
…そうか。兄さんにも分からぬ、か。
なら。好きな様に流れれば良いか…
[ふふ、と。小さく息を漏らせば。
崩れ落ちた銀髪の男に近寄って]
…気を確かに…何処か具合が悪いのかい?
[背負っていた箱を下ろし。
後ろより聞こえた法師の声に振り返った]
『 それとも 之が識か? ―― 』
[指の力が緩まる]
[靄が無我の周囲から取り払われ鳶尾に全て吸い込まれてゆくと 無我のその身は障子を滑り刀が抜けた ――紅いの染みは何処にもあらず]
[憑物が落ちたような態で膝を折り ぺたりと座り込む]
[白藤が、汐が、葛木に気を取られたほんのわずかな隙に
《逢魔》
庭に居たはずの花山院師輔は神隠しにあったように、大殿の屋敷から突如すがたを消した。花山院の従者、屋敷の者に、検非違使が、夜を尽くし声を枯らし探せど呼べど姿は見えぬ──。]
[花山院師輔の屍骸は、翌朝
一番鶏のけたたましく鳴いたすぐのちの刻]
[皮肉にも、橘 智鷹が必死で守ろうとした内裏で発見されることとなる。]
[藤色の霞みなど何処にも無い]
[刀の幅だけわずかに空いた障子の穴から、かぼそく光が這入って無我の肩を照らす。刃傷沙汰の名残はそれだけだった。]
[ひとつ音を立て、刀をおさめた。]
──はぐれの識なぞに我が心の惹かるるものか。
[無我を見下ろすかたちで云った。
すこし身を屈め、僅かに見える胎の傷へ
ほじるようなしぐさで手を伸ばした。]
[汐に首をかたむけ、]
葛木は、山で、行き倒れて死にかけたわたしを助けてくれた。
…ああ。
毒が強いのかもしれないねえ。
[白藤の言葉に、おとこはおのが手のひらを反対の指でそっと押さえてみせる。]
花山院の屋敷に運んでよいならば、運ぼうか。
汐どのが、滋養のある物を商っているならば、葛木にくれてやってはくれぬだろうか──
…おや。
兄上は、先に屋敷に戻られたのか。
この刹那の隙に?
[兄の了承を得ようとおとこが振り返れば、花山院 師輔の姿はすでにそこに無かった。]
[その場に居た者たちがどう動くかはともあれ、おとこは兄の居らぬ屋敷──居心地悪く、白藤に庭で祓いをしてもらった──へ*もどるのだった*。]
―大殿邸・門前―
……奇縁、ですな。
[ぽつり呟く。
伺うように永漂をの眼を見るが
ただ其処には暗い影が落ちるだけ。
手を押さえるしぐさ、視線はあいまいに]
そうさせていただけるなら。
此処にいるのは、あまり良くないでしょうからな。
……薬師の出番みたいだな。
[などと、汐に謂って]
[しずかに遣えるものと云うよりかは、夜盗のような粗野な仕草で、
素早く傷跡に手を伸ばし、
その中に蓄えられたものの端へ指を掛ける]
[ずるり]
[つめたい風が
一瞬吹き抜けた気がした。
そこには誰も居ない。]
……?
[おかしな気配、だけれども、それを追うことはできなかった。
無残に塵となった折鶴のありさまを知るのは
朝の報せの後となるだろう。]
…山、ですか。
[山、と言う言葉が気になった様だが。
少し考え。背負っていた箱を下ろし、一つの草の根を取りだした]
命の恩人、と言う事ですかねぇ…
恐らく。陰の気に当てられたので在れば。
此を煎じて、白湯と共に飲ませると良い。
貴族の方々に売る事が多かったのはこの根、なので、ね。
[法師に手渡すと箱を背負い]
流石に。気を失ってるんじゃあ話も聞きようがないので。
大雑把な対応しかできませんが、ね。
…お代は結構です。一度…助けて頂きましたしねぇ。
[師輔が居ない…と、分かると、髪を掻きつつ]
何とも早くお帰りになる方なのですねぇ…
[汐の薬を選ぶ様、さすがという風か眼を細め]
……早すぎる気がしないでもないがねぇ。
[考えるように先ほどまで師輔がふらるいていた場所を見る。
ぽとり、と椿の花が落ちた。]
[無我に半ば引き倒され、細い指が絡みついても
かそけく笑うだけ。
身体の間に手を差し入れ、
手の甲で、無我を押しのけるようにぐいと押した。]
まぁ。薬が合わなかったら直ぐに吐かせてください。
他の薬が要り用でしたら、汐の名をお呼び下さい…
すいませんが。ご一緒は…出来ませんので。
[去る法師に頭を下げ。
其の姿が見えなくなれば、頭を掻く]
…兄さんもそう思うかい?
[白藤の方へと視線を戻せば]
師輔様は…少ししか話をしなかったが、礼儀正しく、挨拶も無しに場を辞す方ではなかった。
ましてや…門、は。此処、だろう?
[その場で見送りながら、頷く]
……思うね。
しかも足音もしないとは。
奇妙なこともあるものだ。
と、こう怪異続きだと奇妙も何も、作為を感じるねぇ。
[眼を細める。先ほどの冷たい風のこともある。]
その膚でもって主の気を惹くおまえが憎い。
その眼でもって主の姿を間近にうつすおまえが憎い。
その身でもってこの都を護ることの出来るおまえが憎い。
さても、あさましきことよのう
[飲み下したところで、”そういったもの”ではない鳶尾にはそれを留めおくことなど出来ない。
なお肌を這い回る手がくすぐったいのか、また笑った。]
かえして欲しいか。
――嗚呼それとも冒されたいか
…兄さんも思いますか。
足音も無し、かける声も無し…
祟りや呪いと片づけるなら簡単ですけどねぇ。
[ふむ、と小さく顎に手をやりつつ]
…それで。兄さんは…如何する?
師輔様を捜してみるつもりかい?
たたりとのろい、か。
[風がゆらりと吹く。翡翠がゆれ]
探してみるとするかね。
町を行けば橘中将の話も聞けるかもしれないし。
まぁ、嫌でもそのうち耳に入ってくるんだろうが。
[屋敷をちらと見遣る、前髪に隠れた瞳。]
……それにもう、
此処にこだわる理由はなくなっちまったからなぁ。
守るものはもう此処にはない。
祓えるなら、封じられるんならよかったんだが。
及ばないねえ。
届かないもんだ、いつも。
[瞳の色はまぶたの奥に隠して薄い笑い。]
さっきの葛木の様子は気になるし、
花山院に顔は出そうと思ってるがね。
そっちはどうするんだ。
お得意様めぐりかい?
[最後の一言は軽い調子だった。*]
…何。本当に祟りや呪いの時があるのでしょうけどねぇ…
悪い事や縁起でもない事が起きたときは。
何かのせいにしたくなるものですよ。
[首筋。手を当てると首を回し]
…やはり。
先ほどの言葉を聞いてると、橘様に何か起きたのですか?
確かに…耳に入ってくるかも知れませんが、ねぇ…
[片目を閉じ。白藤と屋敷を見やる]
…なれば。私もついていきましょうかねぇ。
[何をしようとしたのか。わからずに力を緩めて、今の行動を思い返す]
[綺麗だと思い儚いと感じけれど強い人だと認めて]
臭いに、酔うたようです。行かれるのなら、今は止めはしませぬ。けれど、ご覚悟を。
何を見ても、強くあられると、お約束を。
[その場に腰を落とし、*息をついた*]
[いっときは抱き込まれるままに、
白い、つるりとした耳朶を噛んだ]
[それから、小突くようにして識を押しのけ、
障子を開き、そとへ出て後ろ手にぴしゃりと閉じた。
以後は全く普通の通り、かしこい従者の顔をして
屋敷の外まで歩き
しずかに静かに控えていた。*]
力及ばず、なんて事は…薬師でもあるもんですよ。
特に、学び始めた時は酷かった…
だけれど。
全ての病をどうにか出来る、と思うのは驕り、という物だと思い始めましてねぇ…
出来るところまででやってみよう、と。そう、思いましてねぇ。
[ふふ、と息を漏らし]
確かにお得意様の所に行くのも良いですが。
師輔様も、橘様も。さっきの銀の髪の兄さんも気になるんで、ね。
[箱を背負い直すと、頷いて。
小さな笑みを浮かべ、白藤の隣へと*]
[目を開けると、其処は座敷のようでした。
寝乱れた長い髪のまま、まだぼんやりとした風で天井を見上げます。]
…お止めせねばならなかったというのに。
[頸へとその手を滑らせて、
あの時感じた痛みも苦しさも、今はすっかり消えてしまっていました。]
なのにわたくしは…
それでも構わぬと思ってしまった。
彼の方の怨みが、憎しみが、癒えるのならばそれで構わぬと。
[行き倒れの彼の方が酷く心を乱していた事を、
その原因の一つが、彼の方の兄に在る事を、白狐は知っていたのです。
知っていて、止めもせず、むしろ望んでしまったなど…。
暫しのち、俄かに人の騒ぐのが聞こえてまいりました。
此方のあるじが、彼の方の兄が、内裏にてお亡くなりに、と。]
吟遊詩人 コーネリアスは、双子 リック を投票先に選びました。
[気分が優れぬので、白狐はそのまま、床に伏せっておりました。
穢れ無き白の毛並みのはずであった、狐の三ッ尾。
そのひとつに、薄墨を散らしたごとく、淡い斑が二つ三つ。]
―左大臣邸―
[その部屋は酷く赤が散っていて、錆びた臭いに満ちていて]
…中将、殿。
[気を失うことも、胃の中身を戻すこともなかったけれど、ただ、少年は呆然としていた。
弥君に抱き締められたも気付かぬほど、それくらい呆然としていたのだ]
[不意に。
爪先に、かつりと軽い音が当たる]
……?
[笛だった。
錆びた赤が散った部屋の中、踏まれも汚れもしなかったそれは奇跡なのか。
それとも、それが中将の遺志のかたちなのか]
…!
[慌てて弥君の腕をほどいて拾い上げる。
これ以上、彼が失われてしまうのを恐れて]
犬。犬か。
[くっと唇は嘲るような笑みの形を形作れど、かえって猛りのいろを加えたようにしか見えず。]
形は理(ことわり)を示すに過ぎぬ。
結局は人、人だ。
蠱(まじもの)は、呪を振り向けるひとの意志が無くば、何の効力も無い。
ひとの縁に結び付けられて初めて、業をなす。
人の情念が鬼をつくるのだ──
[声音に空しさ含んだ怒りが滲むのは、目の前の武士へかおとこ自身に向けてか。]
[笛を、手の内に捕えれば溢れる安堵のため息]
…中将、殿。
[幽かに声がこぼれて、追いかけて涙がこぼれた。
現れた安倍にも気付けないほど中将が死んだことがただ悲しかった]
[おとこの凶相は目に見えて和らいだが、それでも眼(まなこ)に漂う激したいろは消えず。
口を引き結び、強い視線を拾い上げた笛を抱いて涙を溢す式部卿宮の上に据えた。]
[怒りは、橘中将を喪った故にあらず、
中将が襲われるまで異変を察知できなかった己、
何よりも、若宮のすぐ側でこの様な怪異の発生を許した己に対してだった。]
ここは宮様のいらっしゃる様なところではございません。
早々にお屋敷にお帰りなされませ。
[やさしいが、きっぱりとした口調で忠言すると。
つい、と顔背けて、血の海に転がる橘中将の骸──より正しくはその残骸──の前に跪いた。]
・ ・ ・ ・
……足りない。
喰われたとして──
破れた衣が無いのは、その前に剥がされていたのか?
[検分するような視線は骸に落としたまま、]
富樫殿。
[近くの武士に話し掛ける。]
貴殿が参られた時には既にこうであったと仰いましたな?
何かに触れたり動かしたりはなさいましたか?
或いは誰ぞがその様なことをしているのを見たと言う様な事は。
この手形は、
[と、壁にべっとりと血塗られた手形を見遣り、]
どなたか家の者が誤って付けた、ということはないのですな。
[若宮がそこに居ないかのように、常と同じ陰陽師の顔で、役目に没頭する、]
[そうしなければ、
若宮に駆け寄り、抱き取って、
ここから連れ攫ってしまいたくなるから。]
[若宮をいとおしく思えば思うほど、
若宮の身もこころも、全てを奪い尽くて貪りたいという欲望がつのる。
若宮に見せる己を清く保とうとすればするほど、
若宮を穢して壊して、穢し尽くしたくて堪らぬ悪心が身の内で暴れ出す。
若宮に捧げるこころは無私でありたいと願えば願うほど、
若宮を奪い取って、縛り付けて虜としたい身勝手な思いが止まらぬ。]
[膝をついたまま、その状況を眺め。その様子は余りにも酷いもので、自身色々な屍を見てきたが、一、二を争うほどに内に残る、色と臭い]
(こんなことを、誰が。あの手形は、何だ? 誰がつけたものか。
誰がこんな事を。)
[この都と同じ、
美しく装い、外に向かってはあらゆる災い遠ざけんと堅く閉ざせば、
開放されること無いまま内に澱み溜まり、穢れが充満する──
分かってはいても。]
[確かに憤りはしたが、心は平静を保ち]
(中将は誰かに恨まれでもしていたのか。それとも、あやかしの仕業か、あるいはただの戯れか。
どれでも、知っている者がこんな風になるのは気持ちいいものではないな。吐き気がする)
若君様、橘の中将様もこのような場所に若君様がおられることを望んではいないでしょう。
退出された方が良いように思いまする。
お尋ね者 クインジーは、吟遊詩人 コーネリアス を投票先に選びました。
お尋ね者 クインジーが「時間を進める」を選択しました。
[出た場所にいた邸の女房へと事情を聞くと、頭を下げて車の方へ向かう]
(何を、しようとしているのだ、おれは。哀れみか、同情か)
(違う)
[車まで辿りつくと、女房と車には若宮を待つように告げて、中将邸を後にした]
…っ……。
[上手く言葉をつむぐどころか、体裁すら繕えず。
手元の絹で涙拭い、安倍の背を少しだけ見つめ]
…影秀のせいでは、ないよ。
そのように、自責の念に、駆られる必要は、ないから。
[やっとのことで音になった言葉は、涙ゆえに弱く、か細く。
安倍の背に無言のまま頭を下げて、廊下へと出る]
[おなごの姿は歩きづらいと、文句を言った。それは今も変わらずに、時折裾が道端の石へと引っかかる]
(おれがいなくなったら、同じように嘆くだろうか)
[頭を振り]
[六条院に辿りつく頃には汗が粒となって*滴り落ちていた*]
若宮の仰る通りです。
富樫殿が参られても、恐らくは間に合わなんだとは思います。
それどころか巻添えを食らい、富樫殿の命も危うくなったやも。
[何処か濡れた式部卿宮の声を背に、淡々と武士に語った。
宮が部屋を退出する気配に振り向き、此方も無言のまま礼を返した。
最後までその顔は見なかった。]
──左大臣邸・門前──
[中将殿と主は傍目には仲も良いようだったから、そのふたりの別れか職務か──どちらでも同じであるようにも思う。ともかく、妨げるつもりは無かった。
だから、ひとの出入りを眺めて居た。鳶尾へ気のつくもの、つかぬもの、貴賤入り乱れて出入りは激しい。]
[さて、先ごろ奪って飲みくだした呪わしい徴だが、
留めおく事が出来ぬ代わりに次第に形を変え、性質を変えて鳶尾という式を僅かずつ書き換えていた。]
―通り―
[やはり、空気がざわついていた。
春なのに、落ちた赤は花びらではない。
騒然となった橘の屋敷を、少しばかり難しい顔をしながら眺め]
……血のにおい、だねぇ
[伴った汐に、呟いた。
このような状況では流れ者など中に入るどころではなく、下人に話を聞くのが精一杯か。]
お供もやられちまったかね……?
[ひとではなく、鷹でだったが]
[後ろを振り向かぬ安倍をもう一度だけ見たあと廊下へと出る。
暫く進めば庭に植わった桜が見えた。
都にはいくつかの名園があり、左大臣邸もそのうちに数えられており、中でも春の庭の見事な風景は宮中は無論、遠国にまで及んでいるという。
桜の蕾は、膨らんで、今にも綻びそうに紅を湛え、それが余計に中将との先日のやり取りを思い出させ、思わず笛を抱いたまま踞って袖を涙で濡らして]
──花山院の屋敷にもどる途中──
[倒れた狐を抱いて花山院の屋敷へもどる途中。
共に帰路につく花山院屋敷の従者が、空を見上げたことに気付いて、おとこは立ち止まった。]
もしかして、また星が落ちたのかい。
…・・なに。
このような時刻に鷹?
あちらは羅生門の方角ではないかい。
[いぶかしげに首を傾け、また歩きだす。]
[振り向いても貰えず。
抱き締めて貰えないどころか、視線のひとつも合わせて貰えない。
その事実は少なからず少年の心に影をおとし]
[彼の心のうちを推し量れるほど少年は大人でなくて。
かといって泣き喚いて取りすがるほど子供にはなれなくて]
──花山院の屋敷にもどる途中──
[ひゅうるり] [なまぬるい風が 闇のなか とおりを抜けて行く]
[おとこの周囲が仄かにあかく染まり 血臭がひろがり
加えて、青くさい栗の花のようなにおいが混じった──。]
・・…ああ
どこかで、人が殺されたのかもしれないね。
[花山院の従者がむせこみ、驚いたようにおとこを見る頃には、血臭も栗の花のにおいも消え失せている。]
兄上はご無事だろうか。
[銀狐を抱いて、困ったように眉を顰め呟く。
おとこの声はそれでも淡々として、どこか浮世を離れた*様子であったと云う*。]
仕方ないな。ちっと飛ぶか。
[鳥は夜に飛ばない。
そこに白が舞うのは式故だ。
闇夜を其処だけ切り取って空へ。]
覗き見みたいになるがねぇ。
[と、小さく漏らして片眼を瞑り手で覆う。
鳥の視点、夜の都が広がった。
風をとらえる翼の横を飛び去っていくはやてがひとつ。]
なに?
[汐にどうしたのかと問われれば、
何かが見えたと答え]
―――鷹?
―羅生門―
[一度車にて弥君のあとを追うように邸へと戻り、祖父への報告を一通り。
そのあと部屋へ戻れば草臥れた人形のように床に転がって丸くなって赤子のように眠る姿があった。
早い時間に眠りを得たせいか自然と夜半に目が覚めて]
…。
[まだ赤みの引かぬ瞳で大切に抱えてきた笛を見つめ]
[暫くして、少年の姿は羅生門の辺りにあった。
懐には中将の笛を携え、空にかかる月を見上げ]
─自邸─
[更けゆく夜。
闇に白々と浮かび上がる庭の桜を前に、濡れ縁で酒を飲んでいた。
胡座した足の側には既に瓶子が幾つも転がり、手酌で杯を呷っている。
あの後。
内裏での政務を中断して、急遽左大臣が蒼褪めた顔で帰宅し、中将の死骸と対面した。
息子を喪った左大臣は、事の次第を報告する為その場に残っていた影居を扇子で打擲し、罵詈雑言を浴びせかけた。]
―刻:永漂らと別れた後/橘邸付近の通り―
[式は鷹を追う]
狩りってわけじゃぁ、なさそうだな。
[永漂の従者が見たものと、それは同じだった。
見えてきたもの、手に覆われていないほうの眼を細めて]
――羅生門か……。
[低く、のろわれた地の名を紡いだ。]
[死穢を出した左大臣家は物忌に入るだろう。
辞去する間際、影居ではなく父と兄──陰陽頭と天文博士だ──に事後を頼むと、遣る方ない怒り滲ませて吐き捨てられたから、今後役目を外されるかも知れなかった。
かと言ってそれでこの件と縁が切れるというものではない……既に渦中にある以上。]
[左大臣邸を離れてのち、夜半]
[あるじの姿を見るに忍びなく、酒の用意はほかへ任せてそっとしのび出た先は羅生門。闇に紛れてぼうと月を見た]
[月をあおぐ視線は揺れて。
そのまま、石段を上がって角、段のない辺りに腰掛ければぷらりと足が宙をわずかに泳ぐ。
懐から笛を取り出せば美しく漆重ねられたそれを暫し眺めたあと唇寄せて]
―――――。
[澄んだ音ひとつ、月下に響く。
そこには自分以外ないと思っているせいか音をつむぐことに意識は集中していて]
[若宮の居場所は常に探っているから、また羅城門に行ったのも気付いている。
きつく止めて居れば良かったのかも知れぬ──と思う。
今すぐにそこに向かって、きっと叱って抱き締め、その場から連れ出したい──
しかし、そうしたならば、もう若宮を奪いたい自分を押し止める自信が無かった。
慈愛と自制で己を繕うのは、今となっては酷く難しかった。
それゆえ、意を決しかねたおとこは、自堕落に酒を飲み己のこころを麻痺させようとしていた。]
[音は耐え難い悲しみに満ちていた。
それは、中将を失った哀しみのみに非ず。
しかし、少年は感情を吐露する方法を今は他に持たず]
[羅城門は夜は大の男でも行きたがらぬ恐ろしき場所。
門の上層には死人が投げ込まれ、夜には怪しの火がともる噂もある。
そんな場所に若宮が居る。
それがおとこのこころを苛む。]
[幸いにも……と言うべきか。
奇しくも同じ場所に己が式も居た。
いざとなれば若宮を守ってくれようと思え、それもあって一層決意を鈍らせた。
おとこは、続く怪異と若宮への想いに気を取られ、己の式を変容させつつある徴にまだ気付いていなかった。]
…貴方は……。
[眩しくて眇めた瞳が逆に人影に焦点をあわせる]
…確か……鳶尾殿、でしたか。
[このような刻限、このような場所。
そう言われてしまえば、口を閉ざすしかなく]
貴方こそ、何故、ここに。
……安倍殿の、識でいらっしゃるのでしょう?
[視界に入るは彼の識。
言の葉にその名のぼらせれば]
…ずるい。
[小さく溢れた、感情]
[いつでも彼と一緒に居られる資格を持っていて]
[彼のとなりに平然と、公然と立てる存在で]
[幽かに、胸の奥が焦げ付く]
識にこころが無いとお思いでしょうか。
いたたまれなくなることもあり゛す……。
[風が吹くと、ほのかに藤のかおりがする]
しかし
供ももたず。
いのちをとられるやも知れませぬよ
[はらり──桜散る。
未だ咲き揃わぬみやこの桜、
だがこの、さして手入れもしてあるようにも見えない庭では、今まさに満開に咲き乱れ、
はらり、はらはら、
真白き花弁、春の雪の如(ごと)降り頻る。]
…いいえ、そのようなことは決して。
[少しだけ香る、今時分にはまだ早い花の香りに首をかしげる]
…供をつれていても死ぬときは死にまする。
供をつれていなくとも、生きるものは生きましょう。
…ここは……この世と他の世を繋ぐと聞きました。
だから……それだけです。
[少しだけ視線を手元におとして笛をそろり撫でた]
[六条院へと戻り主に会うと、事の次第を話して]
おれは、中将を襲ったやつを探すことにしたから。
だから、「弥君」は生まれ育った里にでも静養に出たと言ってくれ。
約束だからここには戻る。戻るが、いつ戻るのかは分からない。
もし、若君様が仇を討とうとする気配があれば止めて欲しい。
[ここに捕らわれた時と同じ粗末な衣服に着替えて、夜半には六条院邸を抜け出した]
[重なる問いに小さく頷く]
…あの方は、僕が楽に興味を持つ切っ掛けになった方だから……。
[まだまだ幼かった頃。
宮中の宴、大人に混じって一人笛吹く中将―もちろんその頃は中将ではなかったけれど―彼の姿に憧れて。
それを知った姉達が、教えてくれたのが琴で。
今となっては、もう楽から離れられないまでになった]
…とても…中将殿にお聞かせできるような音ではありませんけれど、ね。
[少しだけ恥ずかしそうに苦笑をうかべ]
――刻はその日の夜明けの事。
[――夜明け。
朝焼けは濃紅。
鶏が高く鳴いた。]
[少しばかりの休息をとった後、
式を呼び戻して肩に乗せ、白藤は花山院へと向かった。
葛木が気になるという汐もまた道連れに。]
……なんだ?
[酷く騒がしい。
それは、橘邸で感じたそれと酷似しており。
自然、足は速まった。
鶏はもう鳴かない。]
[門より窺える邸内のようすはただごとではなく。
くらい眼をしたおとこが現れると
警戒を悟られないよう努めながら、
声を潜めてたずねた。]
永漂、どの これは。
[どこか浮世離れしたような様子で、永漂はこたえる。]
[師輔が内裏で、死んでいたのだと。]
――……、
[最も守りが堅いであろう内裏で。]
[なんという皮肉か。]
[千切れた紙片が花びらのように其の場に在ったと聞けば]
……及ばない……ばかり、か。
[俯き、押し隠せない憂いを滲ませた。]
[すらりと抜かれた刃を見る。
その瞳は愁いて揺れる]
…貴方は…それを望むのですか?
それとも、貴方の主殿がそれを望むのですか?
…僕を斬って、貴方は何を叶えたいのですか?
[じっと。
胸の上に右の手かさねて真っ直ぐに刃持つ識を*見つめた*]
[かさりと、胸に感じる気配。
呼べば来てくれるのだろう。
でも、それをためらうのは自分の都合で]
…。
[ぎゅう、と拳を小さく握るものの*未だ躊躇いは続く*]
─影居の邸─
[びょう、と風巻き、桜花散る、
白き旋風(つむじかぜ)、吹雪のよう。]
[風止んだ後には。
濡れ縁に転がる瓶子と、砕けた杯の欠片のみ、
吹き上げられた花びらが散る中に*佇んでいる。*]
……然ういえば。
[石段へ立てた刀へ手をかけ、身を屈めた。
刀が無ければ、傅(かしず)いて居るように見えるかも知れぬ]
よくぞ私の名前など記憶にとどめて頂いていたことです。
影居さまからご紹介に預かっていたでしょうか。
どうも私の記憶には御座いません……最近すこし、調子がおかしいせいかも知れませぬ。
なにもかもがあやしく、うたがわしく思えるものです。
─羅城門─
[狩衣の肩に零るるは白き花びら。
巻いた風の名残、未だ纏わせて、]
刀納めよ、鳶尾。
お前は穢れに触れて狂っている。
今ならばまだおれは許す──
[恐ろしく静かなその眼(まなこ)。]
[琥珀の瞳はじっと識を見上げる]
……そうですか。
ならば…好きにされるといい。
少しは貴方のお役に立てましょう。
[静かに告げて、縁から立ち上がり、それでもやはり彼を見上げていた]
何故…でしょうね?
きっと、他の方が貴方のことをそう呼んでいらしたから自然と覚えたのかもしれません。
[少しかしずくような姿の彼に向ける瞳はただ静かで、微笑むような気配さえあり]
てっきり、
私の知らぬところで伺われたものかと────
嗚呼、式部卿宮ともあろうかたが
いつまでもこのようなところに居られては
いまごろ内裏はうえをしたへの騒ぎでしょう
先立って、中将殿のことあり
戻られたが宜しいのでは。
夜気は身体へ障りましょう────
それほど呼ばれる名でも御座いますまい。
てっきり、
私の知らぬところで伺われたものかと────
[口を開いてはゆっくり、
ふたりを見比べた。
静まり返った湖面のよう。
物怖じせぬ、佇まいの静かであるにも程がある。]
──花山院の屋敷/おもて──
[>>179白藤が花山院邸に訪れたのは、おとこの兄──師輔の遺骸が内裏で発見されたとの報告が、屋敷に入ってほどなくの出来事。
兄を捜しに出るでなく、>>131うなされている銀狐に寄り添うていたおとこは、音も無く白藤と汐の前に姿をあらわした。]
兄は、喉笛が潰れ 首の骨を折られたすがたで見つかったそうです。
腕だけが四本 闇の中にあらわれ──
何者からか逃れんとする兄上を ふたつの腕が掴み
ふたつの腕が くびり殺してしまう様を 女房が見た──のだとか。
・・・
果たして、だれの腕──なのでしょうねえ。
大殿の屋敷あった、無数の血の手形と関係のあるものなのか。
「……及ばない……ばかり、か。」
[白藤の憂いを滲ませた声にも、変わらぬ薄笑みを浮かべたまま。
ただ、もしも──おとこのことを注意深く見る者があれば、顔色は常よりわるく、目元はうすら紫の隈の所為で余計に暗いのだ気付いただろう。]
[薄いおとこの身体が 闇の中で──ゆぅらり
ひずむ 姿は波紋のごとく]
さかしい …及ぶはずもない。
[怨] [怨] […── この怨 ]
…・・・ に ちいさな守り鶴などおよぶはずも無い。
[地の底を這う様な低い声]
[それは、おとこの声のようでもあり、おとこのものでは無いようでもあり。]
[それでも、汐には改めて薬の礼を述べ、]
…汐どのは、薬を有り難う。
何かあったら、また薬師として力になってくれると嬉しい。
《かわいそうに》 葛木はまだ臥せっているので ね。
目覚めたなら、煎じて飲ませてみようと思う──
[《かわいそうに》と口に出す時、声を潜めたおとこは、
山から降りて来たかの銀狐が、ひとのように情念を持ったことを。
──そして、兄を憎みとり殺さんとするおのが呪に、葛木が沿うてくれたことを、知らずに知っているのだった。]
[現れた気配に目を丸くして。
思わず、安倍を見たけれど、その瞳は次に識を見やる]
…いいえ。
安倍殿は貴方の名を、僕の前で少なくとも二度呼ばれた。
この場所と…大殿の邸で。
貴方の、その髪の色が印象的で…だから、覚えていたのです。
[幽かに、微笑む]
[──そして、呪は …… 成就した──]
[おとこは、騒然とした屋敷のおもてで、白藤、汐と話しながら腹の底でわろうていた。]
白藤どのと、汐どのが来てくださったことを
葛木に伝えましょう──
[おとこはそう云って*屋敷の奥へ姿を消した*。]
そうでしたか────そうでしたね。
呼吸をするのとあまり変わらぬもので
すっかり忘れておりました。
[色の所為か
否、それだけではあるまい。この御子はどうも人でないように思ってしまう──すこしあとじさった]
嗚呼、式部卿宮ともあろうかたが
いつまでもこのようなところに居られては
いまごろ内裏はうえをしたへの騒ぎでしょう
―花山院の屋敷・門前―
…御守り。程度の物だったのでしょう?
それで全てを拭えたら、陰陽師も薬師もお役御免です…よ。
[師輔の死を聴けば。
白藤の様子に、頭を掻く。其の表情は何処か暗く]
しかし…惨い。
[小さく息をつけば、ゆるりと目を向け]
私はその手形とやらは見ていないのですが…ね。
其の腕に殺されたとあらば、人によって殺された、と考えますが。
挨拶も無しに居なくなり。
警護も抜かりは無かろう内裏で見つかったとあらば…
私には。あやかしの類…
今、噂で持ちっきりのだと思いますねぇ…
[…法師の薄笑み。
軽く眉を寄せ、首筋に手を当てた]
…何。一度助けて頂いた身ですからねぇ。
此の程度の事は…
ああ、まだ飲ませていなかったのですか。
気分は…楽になると思います故。
[気分が楽になる。
其れは良い事だ、と亡くなった者が言っていた事を思い出したのか。
頭を下げるも、表情は明るくならない。
黙って法師の背中を見送った]
…どうでしょうか。
この身は既に六条へ移っておりますので。
[少し後ずさる識を見やる。
真っ直ぐ。ただ、真っ直ぐに]
…夜のこの地へ参るには、誰その許可が要りましょうか?
……あなたへ命ずることの出来るものなど然程も居りますまい。
[見透かして居るものか、射抜いているものか
何を視ているのかが分からない。気分が悪いと思った。]
…兄さんや。
[ぽつりと]
兄弟というのは。
仲が悪いものなのかい…?
どうも…失礼かも知れないが。
悲しんでる様には。私には…何故か…見えぬ。
[傍にいる白藤に問いかける。
…しばしの間黙っていたが、箱を背負い直すと]
…そう言えば。
鷹が…羅生門の方へ。と、言ったっけ、ね。
──花山院の屋敷/寝所──
[おとこは足音も無く、葛木が臥せったままの寝所にもどった。
黎明のむらさきに染まる部屋の内側は、銀狐を陰の気から遠ざけるため、昨夜におとこが経を書き記した帳で幾重にもおおわれていた。]
・・…葛木
[薄衣 の 泪にぬれた 雨 は 薄紅の紗をかさね ヨ]
[雨] [ヨ] [雪]
[しとり さくら色の雪となる──]
ああ、今は目覚めているのだね。
[力なくゆれる尾をなぞり] [ささやく]
[汐にもらい、おとこが自ら煎じた薬。
葛木が意識を取り戻した時に飲ませようと考えていた──を、おとこは自らの口にふくみ、 葛木に 移してのませた。]
…・・・葛木
[自らの兄を取り殺した呪のことは、おとこは口に出さぬ。]
(それは、云わずとも葛木も知っていること。)
(だから、葛木は泪し、臥せっているのだから──)
わたしはまだ、
おまえが山から降りて来た理由を聞いていなかったね。
わたしのこころが 乱れていたことをお前が知っていたように、
わたしも また おまえのこころが乱れていることを知っている。
…そうですね。
[小さく答える。
酷く、寂しそうな顔をして]
…誰も。誰もが。
近づいては遠ざかっていきます。
主上の御子と近づいては、立身には役立たぬと去ってゆく。
…だから。皆、差し障りのないことばかり。
[寂しそうに微笑む。
やはり、それも静か]
・・・葛木
おまえは、中将どのを殺した
《憎きもの》の処へ──行きたいかい?
もしも行きたいのならば、
わたしが連れて行ってやろう。
…それとも、
怨みは忘れて白藤どのや汐どのと共に行くかい?
[薄い微笑み。おとこのくちびるは、口移した名残り─薬のいろで、*わずかに濡れていた*。]
[束の間の眠りの中、白狐は夢にうなされておりました。
身を隠す事も出来ぬ草原で、冷たい雨が降るのです。
雨粒が落ちるたび、濡れるたび、
狐の白き毛並みには、淡い斑が二つ三つ。
次第にそれは重なって、黒く染まって行くのです。]
…あぁ、…嗚呼。
心細ぅございます。
[衣擦れの音に目を覚まし、縋るような目を向けるのです。]
焦がれて追うた彼の方は、あのような目に遭われてしまい、
都で迷う狐一匹、頼れるものは…貴方しか。
[衣の裾をそっと握り、狐は縋るような目を向けるのです。]
―花山院屋敷・門前―
[――とてもやさしい調子なのに、ひどくおそろしい。
服の胸元を片手でゆるく握る。
ぽつりと問う汐に、小さく息を吐いて]
……色んなきょうだいが 居るさ。
特に、貴族みたいに家柄や政治が絡むとな。
本当のところは、分からないが。
……おれは、あのひとが、ひどく――
[おそろしい。
謂いかけて、口を噤んだ。]
僕に対して命じる人も、本当を見せてくれる人も…血の繋がりを除いてみれば、誰がいるのか。
[うっすら琥珀の瞳に浮かぶ]
僕自身もわからないのですから。
[―――――鮮やかな、絶望]
投票を委任します。
吟遊詩人 コーネリアスは、医師 ヴィンセント に投票を委任しました。
……あぁ。羅生門だ。
[頷いて、かの地のほうを向いた]
あそこは黄泉との境があるというが。
あるじのたましいを追ったかと思ってな。
呪の残滓でも、
残っているかもしれない。
[彼の法師が口移しにて、その薬湯を飲ませようとも、
その手が背中を撫でようとも、
狐は声を上げませんでした。]
…御傍に。
[ただただそれだけを。]
…そうか。
師輔様は…そんな素振りは見せていなかったのだけれど、ね。
[緩く視線を落としていたが。
ぽつり、と呟かれた言葉。続かぬ言霊。
顔を上げると]
…なんぞ、恐ろしい…かい?
[其の顔を覗き込む様にして見やり。小さく口元を吊り上げる]
魑魅魍魎やあやかしを相手にしてる兄さんの口から聴くとは思わなかったな。
[ふふ、と小さく息を漏らせば。
白藤の向く方向へと]
…成る程、ねぇ。
私達には見えぬ物が見えている…のかも知れぬ、と。
なれば。行ってみても良いのやも知れないねぇ…
…そうですね。
ひとりは、失われ。
ひとりには…どうでしょう。
嫌われてしまったやもしれません。
[小さく肩をすくめ、じっと識を見つめた]
出家してるしなぁ……。
厄介な事情があるのかねぇ。
[祓いのときのこの家の者たちの態度を思う。
と、覗き込まれて謂われた言葉に
多少面食らったように眼を瞬かせ]
―――……む。
[眼を逸らして、困ったように微か眉を寄せた]
そう謂うな。
真実おそろしいのはひとの情念だよ。
魑魅魍魎と化す――おとこも、おんなも。
[腕を組んで、眼を細めた。雲は藤色を帯びる]
まぁな。
おれはあそこはあまり好きじゃないんだがねぇ……。
…。
[低くつむがれた声に、じ、と安倍へ視線を向ける]
…そうだと言ったら……どうされるのですか?
[真っ直ぐに安倍を見る瞳は揺れて、揺れて]
−羅生門近く−
[朝までの露凌ぎにと羅生門まで足を向け。話し声が聞こえてきて足を止めた]
(……この声は、あの男とそれに、若君様。それから、あの陰陽師もいるのか)
[隠れる場所などないに等しかったが、暗がりの中、できるだけ気配を消して耳を欹てる]
(余り、いい雰囲気ではなさそうだ)
[じぃ、と若宮の方へ視線を送り]
─羅城門─
[真っ直ぐに、酷く真っ直ぐに若宮を見詰める。
一歩また一歩。
若宮の眼前に至れば、覆い被さるように顔を近付け、]
[すっと目を細めた。]
…厄介な事情…か。
そればっかりは。何とも言いようがないか、ねぇ。
しかし。死んでも悲しまないならまだしも…
あんな顔をされちゃあ。此方としては…
[小さく息をつく。
しかし、目を逸らす様子には、くく、と小さく笑う]
人の情念、か。
確かに色恋沙汰の恨み辛みは恐ろしい物があるとは思いますが、ねぇ…
[冗談と受けとったのか。其れとも意図的なのか。
目を細めたまま]
ま。人の情念よりは恐ろしくはないのだろう?
なれば、物好きのためについてきてはくれないかい?
[行くあてなどなく、夜の京を彷徨い、気づけば、川のほとりにいて]
ああ、そうだ。元から存在すら違う方じゃないか。
[吐き捨てるように口にして]
[川の底を見つめた]
―朝・花山院邸門前―
まるでわらっているような――
[腕を組んだ、片方の手を伸ばして項の翡翠に触れつつ
くらい瞳を思い出してか難しい顔になり]
……まぁ、あまりいい気はしないかねぇ。
[笑う様子に、流し目で軽く睨むようにした。]
色恋沙汰はまったくもってその通り。
知らず恨まれるものもいるんだろうが、それは罪だねぇ。
[軽い調子のあと――あぁ、橘のにもそんなことを謂ったねぇ。
とは小さな呟き。]
いいさ、行こうか。
[通りに顔を向けると、立っていたのは――識。]
あなたが居なければ、こんな都、滅んだとて何の痛痒も感じぬ。
おれが人であり続けると希んだは、あなたを想うが故だ。
[寂びた声、若宮の耳元で囁いた。]
[じっと、安倍の仕草を見る。
物怖じする気配もなく。
逃げることもなく]
…やっと、怒ってくれましたね。
[小さく、微笑んだ。
その顔を見たかった、とばかり]
だねぇ…
[薬師が見る限りでは、そう、悪い者には見えなかったのだろう。
首筋に手を当て、もう一度屋敷を見やり…視線を戻す]
ふふ、知らず恨まれるのだけは勘弁願いたいものだがねぇ。
[流し目で睨まれても、口元の笑みは剥がれず。
寧ろ、何処か楽しんでいる様で]
魑魅魍魎には策は無いんでねぇ…助かるよ。
[しかし、向きを変えいきなり足が止まった様子に。
その方へと目を向ければ]
…貴方は…
[あの法師の車の上にいた者…]
[たとえ件の法師が、禍怨なすものであろうとも、
それに気づく事無き程に、狐の心は曇っておりました。
それはまるで、霞みか霧に迷えるように。]
…失いたくはないのです。
[彼の薬湯が効きはじめたのか、
狐は法師に身を預け、そっとその目を閉じるのでした。]
−朝・中将邸傍−
[どこをどう歩いたのか、履いていた草履は破れて、鼻緒を指に引っ掛けて手に持ち、中将の宅を眺めた]
花を、見損ねたな。
[中を覗くと、喪に服しているのか静まり返っていて、昨日の騒ぎが嘘のように思え]
さすがに、今入るのはまずい、か。
綺麗な、笛の音を響かせる人だったのに。
[誰が手にかけたのか、それを調べる為に出てきたというのに、その当てもなく、また歩き始めて]
妙に偏った見方しちまってるかねぇ?
[法師から受ける印象の違い。
何処から来るものか、と小さく首を捻り]
まったくだ、御免こうむるな。
[楽しんでいるような様子に。
腕を組みなおして憮然としたような表情で。]
ん
[汐が現れた識を知っているようすと気づき]
……なんだ、
其処此処に顔見知りだらけか?
[そろりと。
右の手を、安倍に伸ばしかける。
そのまま、彼に触れようとした指先が僅かに止まる。
視界のうちに識の動きを認め]
───駄目…!
[短く、けれど強く、音にする。
識を制そうと]
嗚呼、殺してしまいたいものです。
識らねばよかった。
わたしを唆(そそのか)したあれもにくい、
唆されたとあっても
最後に選んだは私
思うも私
我が身がにくく、
この期に及びて私の任を解いてはくださらぬ
あなたがにくい
―花山院屋敷・門前―
[ふわり、と羽毛が風に舞うように、
白磁のすがたは消えてしまう。
その姿を追った先に]
お。
[見たことがある顔が、あった。
何だったかな、と顎に指を添えて暫しの後]
桐弥?
唆された、か……
唆したのは、誰だ。
[背に刃があるのも構わず、鳶尾を制そうとする若宮を途中で抱き取る。]
式のおまえが自由なこころを持つように組んだはおれ、
さぞや恨めしかろう。
[式を見る、横顔は相変わらず鬼相の微笑。]
…何、私は一度助けて貰ったからねぇ…
兄さんの方が正しいかも知れません。
法師様の事が、よく…分からなくなってきています故。
[首を捻る様子に、困った様に笑って見せ。
憮然と見ている様には頬を掻きつ…]
…何。
法師様の車の上に居ました所を。見ただけで…
名前は知りませんがねぇ…何者かも。
[何処かへ消えてしまった織。
織とすら知らないのだが…視線を白藤に戻す]
…兄さんは、あの方が何者か、分かりますかねぇ?
[尋ねてみて。ふと。何か聞こえた様な気がして目を向ける]
桐弥…こんな所で奇遇、だねぇ。
[ようやく頭の隅から名前を引っ張り出して。名を呼ばれるとようやく笑み]
白藤、さん。
そっか、昨日も見たんだ。確か大殿のお邸で。
[口にしてからしまった、と思ったが、慌てるそぶりはなく]
京に来てたんですね。
[駆け寄って見上げる]
[傍にいた汐にも気づき、気づいて礼をする]
昨日はありがとう。まだ布は巻いてるけど、もう、あんまり必要はなくなった、かな。
[自分の手を見る。巻いていた布は既に綻んでいて]
[鳶尾の紡いだ、帝の一文字に微かに表情は揺れて。
かといって、安倍に抱き取られたならその言葉問うことも、彼の腕を解くことも出来ない。
ただ、感情の揺らぐ瞳で鳶尾を見る。
先ほどまでの静けさが嘘に思えるほど、揺れて、揺れて]
あなたへ教うることなどありませぬ。
然う、
こころを与えるもあなたであれば
こころを乱すのもあなたにあります。
あれの謂う通りに、闇へ繋いでおけばよかったのか
ただ遣えておればよかったのか
あなたは何を望まれたのです。
私は
人恋しきにつくられただけでしょうか
助けてもらった、か。
どっちも、どっちも、だねぇ……。
[項に手を、小さく息を吐く。]
やはり奇妙な縁だな、なんともはや。
あれは、識だ。屋敷で話したろう。形代の識だよ。
高名な陰陽師に仕えていたんだろうが
今ははぐれてるようだ。
[陽の光が眩しいか、額の上に手を翳し]
おれも名前は知らないがね。
…おや。
兄さんも知り合いか。
[同じように名を呼んだ白藤に目を瞬かせ。
桐弥の言葉には頬を掻きつつ]
ん…傷が治れば良いだろう?
布を使わずに手に傷を負っても私は知らぬ。
[薬も勿体ない。と、口元だけで笑って見せ]
[ひらり、手を振る。]
……大殿の?
盗みにでも入ってたのか。
[わらう。あの姫君であるとは気づきもせずに]
あぁ、雇われてな。
お前も都にいたとはな。随分なときに来ちまったみたいだが……。
修道女 ステラは、牧童 トビー を投票先に選びました。
[二人の話す「識」が何者かもわからず、首を傾げて]
識? 法師様? 話は良く見えないけど。
ああ、そうだ。白藤さんなら何か知ってるかな。
橘の中将様が死んでしまったって話。襲われたって聴いたけど。
まだ、誰が襲ったのか判らないんだ?
…どっちもどっち、か。
[ふふ、と困った様に息を漏らし]
確かに人間とは思えなかった、が…
あれが、形代の織だってのかい?
そりゃあ…何とも、見た目麗しく作ったものだねぇ。
[式の話を聞けば、考えることが分からぬ、と。
白藤と同じように、項に手をやり]
はぐれ…?
…あの法師様は。車の上に乗っていても、何もせずにいたが…
彼方にも奇縁があるのか。ねぇ…
[少し考えていたが。
続く言葉には、そうか、と小さく]
鳶尾──
[嗤い含んだ声で、静かに囁いた。]
先におれは言うたな、
「おれとお前の繋がりは、呼び出した者と呼び出されたものであるとして、それだけとは思うてはいない」と。
お前はおれが使役する式ではあるが、さのみにあらず、ひとつの存在としてお前の意志を尊んでいたつもりだ──
[二人が同じように自分を知っていたことに驚いているのを見て]
おれからすれば、二人が知り合いだってのも驚きだけどね。
そうそう、大殿の邸は入ったはよかったんだけど、あんまりいいものがなくてさぁ。
すぐに出てきたから何も盗んでないよ。
[入ったのは、まだ大殿自身が生きているときであったが、そこまでは言わず]
傷はね、もう傷を治す必要も余りなくなったんだ。治ればそりゃいいんだろうけど、どうせまた傷になるし。
私の意志とやらを尊び、なんとされますか。
あまりも思う苦しさに
あるじへ向ける刃のあるものとは
私であってもついぞ思いも致しませんでした。
嗚呼、此れにてあなたは満足されておりますか。
盗み…
…私には、兄さんと桐弥が知り合い、って言う方が不思議でたまらないのだが…
[聞こえてきた言葉に、半眼で二人を見やり]
治す必要が…余りなくなった?
…ま、盗みをやっていれば。
確かに指先が上手く使えた方が良いだろうしな…
傷が滲みるのは我慢しろよ。
[何処か投げ槍にそう言って]
おれが、おまえを無聊を慰める為の便利な道具だと思っていたと言えば満足か。
違うだろう。
[一転、嗤いが消え、]
おまえは、
おれを抱きたいか?
おれのこころが欲しいのか。
[やさしく、問い掛けた。]
ん、ああ。
都で会った……花山院のな。
[と、門をちらと見て。
橘中将の名が出ると、少しばかり眼を伏せ]
仔細はおれもちと分からないんだがね。
大殿が“殺された”呪と同じではないかと見てる。
下人から聞いたことだが――
ひとの手の痕が残っていたということだ。
誰かは、まだわからんな。
[首を傾ける。ゆらり、翡翠がゆれ]
そんな目で見られると薬を塗ってもらった手前悪いなって思うよ。
ただ。
もう手を綺麗に見せる必要もなくなったってことだ。
[わずかに表情を翳らせて]
[出てきたのは自分で。これ以上「姫」の姿でいることに限界を憶えたのは確か。それでも。離れることは辛いと思った]
人の呪、か。
[白藤の言葉を聞いて考え込み]
(あれだけの凄惨さを求めるほどの呪なんて)
それだけ、人に恨まれてる様にも見えなかったけど。
うん、前にね、一度会った事があってさ。
一度会っただけで理解できるとは思わないけど、でも、そんな人には見えなかった。
(何が、この京で起きているのだろう)
[ただの庶民にしか過ぎない自分の身を恨めしく思う]
[古木の櫻恨めしげに
咲き誇る先から はらはら落ちて 地を染める
鮮血ばら撒かれていた様の猩々緋は今はなく
櫻は咲麗 退紅(あらぞめ)の美麗な色――褪め濁った色もありけり
いわんや 永漂法師が話したように
それは清浄となり京の澱みの中 空白にならんが為の 必然たる澱み ――清流に魚は棲まぬ]
存じて居ります。
殺してでも奪おうかと思いもしました。
けれど、それももう過ぎたこと。
いまはただ、憎らしやと思えばこそ
そこな宮さまへ
思い知らせん
あなたの愛きひとに、
ふかき悲しみを思い知らせん──
[抱きとめられた腕の中、遮ることはかなわず。
遮る権利など自分にはなく、耳をふさぐことも出来ず。
せめて視覚だけでも遮ろうと目をつぶったところで、一を遮れば一が冴え。
耳に届く会話は遮るどころかよりいっそうはっきりと聞こえる。
ただ、微かに安倍の衣を掴む指先が震えた]
―花山院門前―
[汐の笑みには小さく肩を竦め]
見目麗しいほうが嬉しいのじゃないか?
まぁ、それだけではないが。
白は白であればなお、深く祟りと呪いと業を吸い込む。
いつかその身が消え失せるまで。
[うたうように。]
見えずとも、何かしていたのかもしれないが。
あれの性質はおれもわからないしな。
奇縁に絡めとられて居る気分だ。
[片目を瞑る。]
―― 故大殿邸 ――
[古老の櫻に語りかけるように 大ぶりの枝に腰かけ 春の風に身を任す 京の蔓延する澱みは此処では薄い
本来の春の訪れたる息吹が僅か感じられる されど
先の大殿の狂死
先の怪異
ひそひそと囁き交わすおとこ達の言葉が――呪われているという言霊が 空ゆく不吉な異形の聲が この地に再度澱みを呼び込む
このみやこは――幾ら陰陽師が祈祷師が法師達が祓っても祓ってもきりなく闇は湧く そこかしこから ぽこぉりと
人が集まり棲まう業
人の妬みが人扱いすらされぬ人の苦悶が憎悪が 呼び水
呼び出されたそれは連綿と続く負の歌をつくる]
[不思議、と言われればやはり流し眼で見て]
ちと縁があったのさ。
3人が3人とも驚いてるんじゃお相子だな。
[薄く笑んだ。]
良いものがなかった、か。
ま、大殿が倒れてからというもの
随分な有様だったしなぁ……。
−橘中将邸前・夜−
[頭が痛い。
騒動に巻き込まれ、事の顛末を見届けた。安倍が部屋から出て行くのは感じていたが、それよりもこの光景には衝撃を受けていた。
人喰い。人の手を持った人喰い。さまざまな事を考えながら、事が落ち着いたのを確認し、中将邸を後にする]
・・・若?若宮様は一体。
[迂闊だった。先だって危険を回避しようとしたのが逆に若宮様と逸れる事になってしまった]
[表情を翳らす様子に微かに眉をひそめ]
手を綺麗に見せる必要…?
[顎に手をやり。思案し…]
…深くは聞かぬが。ねぇ。
役人に引っ捕らえられぬようにしなよ。
[小さく息を吐き…]
嬉しい…かい?
みるみるうちに…祟りに、呪いに、業に。汚れていくというのに。
麗しい者を見て美しいと思わず、ねたましいと思うのは。
麗しい者を汚れゆく様が見たいと思うのは。
私は歪んでると思うが、ねぇ…
ま。私の織じゃないから、何も出来ぬし、言わぬが、ね。
[片目を瞑るのを見やれば、ふむ、と小さく]
……会ったことがあるのか。
捕まりでもしたかね?
[くつりと笑い。]
あぁ――おれもそんなに相対したわけじゃないが
別段、お堅い以外は悪いやつには見えなかったんだがね。
[少しだけ俯いて、項にやった手で翡翠を撫ぜ]
そいつの鷹をみた。
羅生門だ。追おうと思っているんだが。
[くかかかか、と高らかに嗤い、]
であれば、手向かうてみせよ。
おれも今は、ひとりの鬼……
恋うるがゆえに惑う、ひとりの鬼だ。
[手挟んだ呪符、はらり扇の形に広げて眼前に構えた。]
役人に捕まるようなへまはしないよ。
それに、今はそれどころじゃなくてね。
捕まったら色々まずいし、そうならないようにちゃんと注意してる。
でも、今一番の問題は宿かなぁ。
定宿にしてたところが使えなくなってね。
夕べも羅生門まで行ってみたけど先客がいて引き返してきた。
何か、いいとこしらない?
[二人を見上げる]
学生 ラッセルは、書生 ハーヴェイ を投票先に選びました。
[己の衣掴んで震える若宮の指、
いとおしく、また狂おしく]
あなたを六条邸から、
あなたを縛る全てのものから、
奪い去ります──
綺麗なものを汚したい、か。
――わからんね。
そういう意図があったかどうかは
あの陰陽師やらに聞いてみないとわからないが。
そういった輩が居るのも確かか。
[一度目を閉じて]
ほかはどうかしらないが
情を持ってしまうと痛くてね。
おれはひとの姿の式神は持たないんだよ。
[と、軽く謂って空を見たまま遠い目をした。
空から白鳥が一羽舞い降りて肩に止まる。]
若宮様…?影居?あとは…あれは影居の連れか。
何があった。なにをしている。
あぁ、この身が恨めしい。役目賜りながらこの体たらく。
[曇った瑠璃がごとくのその鏡面、手を伸ばそうにも近くにあって遠くとなり、遠くにありては近くなる]
あなたに逢わねば、影居の生は空しかった。
あなたに逢うた日、私はひとのこころを捨てようと、そう考えていたのです──
[其はいつの刻(とき)を運んだ風であったのか
今は太陽が昇ってあるからして昨夜の事であるに相違ない
嗚呼 ゆるゆると また都に満ちてゆく…‥]
[汐と自然笑い合う形になる。]
面白くもあるが恐ろしくもあるな。
星の動きのこともあるし、仕組まれたみたいでねぇ。
[桐弥のことばには首を傾けて]
それどころじゃない?随分慌しいねぇ。
なんかそっちもそっちでややこしいことになってるようで。
羅生門に……先客?それはまた。
宿なぁ……花山院にでも頼んでみるか?
大殿の屋敷の部屋ならまだ使わせてもらえると思うがね。
[気は進まないだろうがね、と少し苦笑した。]
凄い自信だな。
…それどころじゃない、ねぇ…
[顎に手をやり胡散臭げに見ていたが…]
羅生門で寝れるならば、何処でも寝れそうな物だが…
一応。相談出来る事は出来るが…お前の生業が生業だからなぁ。
あまり、お得意様に頼みたくはないのだよなぁ…
[考えて。渋い顔で呟く]
…花山院…ならば。
話ものってくれそうではあるが…
―花山院の屋敷・門前―
…わからんねぇ。
そう言う輩を見たことがないから、かも…知れないが、ね。
[肩に式が止まれば、小さく笑った]
…やはり。兄さんとは気が合いそうだ。
仕組まれた、にしても。
私は悪くないと思うが、ね…
[口元を吊り上げて]
羅生門はそりゃ変なのも寄ってくるけど、寝てみると割りとすごしやすいよ。
雨には濡れないし。
[花山院のお邸、と聴いて眉をひそめる]
(もう)
貴族のお邸はいいや。
肩が凝る。
[それは永き時かひと時か、狐は夢から覚めました。
彼の法師の姿は今は無く、ただその彼の書き連ねた経が、その部屋を守るかのように幾重にも覆っておるのでした。]
…わたくし、は。
[褥(しとね)の上にゆるりと身を起こし、立てた指はそっと己の口元を辿るのです。
薬が効いた所為か、幾分楽になったような気がいたしました。]
─羅城門─
[符のひとつ、風切る太刀に向けて繰り出す。]
火は金を剋す──
[刃に触れるや否や、符から灼熱の炎噴き出し、刀身に巻きつかんと渦を巻く。]
…遠慮しておこう。
寝ておらずとも薬を盗ろうとする者が多かったしねぇ。
[其れは薬師の体の線が細いせいもあるからか。
桐弥の言葉に緩く首を横に振ると。
今度は頭を掻く]
…贅沢だねぇ。
雨風防げる上に、飯も用意してくれるというのに。
―朝/花山院の屋敷・門前―
見ないほうがたぶんいいと思うがね。
[小さく苦笑まじり。]
ふ、そうかい?
便利なのは分かってるんだがね、どうしても。
悪くないと思うとは、やはり物好きなわけだ。
[白鳥の咽を撫ぜて笑む。]
――夜の羅生門――
[符によって留められ、噴きあげる炎によって押し戻され]
これしきの炎、
我が身中のほむらと比ぶれば
なんの熱きことがありましょうか
[炎の絡む太刀を振り翳しては
夜闇を焼く。
炎へひるみもせず続くかと思われたが
無我より奪って飲み下した穢れは
うらみを吸って育ち、
太刀を取り落として膝をつく。
その姿も、闇に霧散する──*]
―朝/花山院前―
[桐弥の言葉に首を傾げ]
住めば都、ってやつか?
おれは澱みが気になってねぇ。
[横目で羅生門の方角を見る。]
肩が、ね。まぁそりゃそうだろうが。
羅生門や野宿よりは安全だろうに。
そうなると、――難しいねぇ。
都に居る間は大殿邸に居るつもりだったんで
ほかは知らないな。
−朝・花山院邸門前−
そりゃ、ご飯だって出るだろうが。
おれ、根っから庶民だから、貴族の暮らしは肌に合わないんだよ。食いもんとかさ。
(そうだ、天上の人だ。あれは)
[ぼう、と視線が揺れて]
−夜/六条邸−
[急いで戻ると、既に若は屋敷に戻られているとの事を侍女から伝え聞く。
一度ご挨拶をとも思ったが、疲労が限界に達しその晩は屋敷で疲れを癒した]
[いくら清めて囲えども、内よりの澱みは静かに降り積もってゆくのです。
暫しぼんやりとと其処に居りましたが、
乱れた衣と髪を整え、光漏れる御簾の外を見やります。]
…そうか。
兄さんがそう言うのならそうなのだろうねぇ…
まぁ…確かに、その様を見たいとは思えないが。
[苦笑混じりに言われれば、小さく頷いて]
情を持ってしまった者が、戦い、傷つき、苦しむ様は誰だって見たくはない。
まぁ…共にいてくれるだけならば、何ら問題はないのかも知れないが、ね。
[ふふ、と小さく息を漏らせば]
まぁ、物好きなんだろうさ。
薬師で流れる、って言うのも含めて、ねぇ。
─夜・羅城門─
[式の姿が闇に霧散し、消え去るを見て、舌打ちひとつ。]
……難儀な奴め。
厄介なものを取り込みおって。治してやろうと思ったによ…。
[声に少し愛惜を含む。]
−朝/六条邸−
・・・・・・
[頭痛。臭気。そして辺りに漂っている死の気配。
そして屋敷で聞かされた”花山院での惨事”。
確かめたい事が多い。朝起きると同時に、花山院に向かうべく仕度を始める]
根っから庶民は盗みなんかしないだろうが。
[小さく息をつき]
…それは置いておいても。か。
兄さんも知らないとなると…な。
私はお得意様の所で夜を明かさせて頂く事が多かったからねぇ。
そうなると、道の端しか知らないが…
[ふと、桐弥の方を見やれば]
…どうしたものか。
[其れは両方の意味か]
――朝/故大殿邸――
[鳶尾が奪った徴はどうなったか
しかし無我が其を強く意識する事もなければ 表情を変える事もない
茫とした面で ゆったりとした動きで 世を歩み
身近なる傷を穢れを請け負うのが――式
辰星と陰陽師の意識織りなしの識]
[白藤か安倍影居 はたまた別のものが先のことにつけ 何事か含め言いおいてくれたのか
此度 何者にも囚われも咎められもせず邸のなかに居れるようだった]
−朝・花山院邸門前−
[揺れる桐弥の視線。
その前でひらっと長い指を揺らしてみる。]
どうした、恋わずらいか。
[深い考えはない軽い調子だった。]
─午前・花山院邸にて─
この屋敷にも、櫻。
…都の人々は、余程この花がお好きなのですね。
[はらはらと、舞い散る白を暫く眺め、
門の方に幾人かの姿を垣間見ました。
己が気を失った時に、傍に居たものは心配しているでしょうか。
未だ足元も危ういながらも、彼らの元へ向かうのです。]
…昨夜は、お見苦しいところを。
もう大分良くなりました。
何方かより薬を頂いたそうで。
─夜の羅城門─
[まだ抱えたままの若宮に目を落とすと、その琥珀の瞳の奥のその奥までも貫くように覗き込み、]
──あなたも見たであろう。
今の私は鬼、
ひとのこころを捨てた鬼なのだ。
あなたは鬼に攫われるのだ。
怖くは無いか?
−六条邸→道−
[これほどの騒ぎがあったというのに、道すがらは平穏に見える。まるで今まで自分が見ていたものが全て夢うつつであったかのようだ。
そう考えてるうちに、大殿邸の前に差し掛かった]
・・・ 大殿様、か。
[最初に起きた惨劇。花山院邸も気になるが、こちらももう一度見ておくのも悪くないのかもしれない]
[若宮の応(いら)えが何であったか。
だが、何であろうと最早おとこは逃がさない。]
[朧に照らす月の下、
少年を抱きかかえ、おとこは*闇中を駆ける──*]
―朝/花山院門前―
だろう。懸命な判断だよ。
[汐に謂うと、鳥を手の甲に乗せ、再び放つ。]
――うん。
情ゆえの刃傷沙汰も転がっているわけだがね。
一を知り、次が欲しくなる、さらにその次を。
なんて、キリがない話でな。
ああ。鳶尾あたりは随分――ひとによく似た式だよな。
[かれらが羅生門で刀を交えたことなど知るはずもないが。
物好きなんだろう、と言う言葉は大いに肯定した。]
あ…ああ、もう、起きても大丈夫なのですか?
[桐弥の様子に頭を掻いて、目を逸らしていたが。
此方へと声を掛け、近づいてくる気配に顔を向けた]
そう…それは良かった。
あまりご無理は為さらぬ様…
[足取りが何処か不自然と感じたのか、そう、小さく笑んで]
…ええ。
私が薬をお渡ししました。
気を失われてしまったので、あまり強くない薬しか渡せなかったのですが。
−大路→大殿邸−
[足を踏み入れると、大殿邸は静まり返っていた。恐る恐る中に踏み入ると、丈が長い服装の者が木の下にいるのを見かけた。気になるのはその表情。まるで陶器のように生気が無い]
・・・お主、この屋敷の者か?
影…居?
[鬼のような相をしたそれは。もう自分の知る彼ではないのだろうか]
何故だ…?何故なんだ、影居……?
[ともに京を守ろうと任についたのではなかったのか]
[全て嘘だったのか?]
[初めから影居という「人」はいなかったのか?]
………
[声もなく、ただ茫然と見守る中。曇った瑠璃鏡が見せたのは翡翠の色と蒼い髪の薬師、小さな少年]
[だが、今は何も考えたくも、みたくもない。
何故死んでまでこのようなものを見なければならないのか]
……お。
[体をしろいおとこ――葛木へと向けて]
よう、大丈夫、……、ん。まだ本調子じゃないかねぇ?
まあ、大事無くて何よりだ。
まだまずそうなら、
症状話して汐から薬もらうといいかもな。
――故大殿邸――
[視線に気づいたのか
茫とした面 ひやりとしそうな肌をした 人の似姿の識が振り返る]
[問いにゆっくりと首を左右に動かした]
[目はやや半眼に近く 何処を見つめているのか分からない]
[何が思うところがあるのか 話をしようとする為にか 富樫影秀のもとへ音もなく向かう]
[近づいてきた男に気づき、その銀の髪を見て何時かの男だと気づく]
(あの時の、笛の持ち主を探してたやつだ)
[視点を合わせて]
笛の持ち主は、見つかりましたか?
[何時かのときと同じ声で、葛木へと]
…なれば…兄さんは、そう言うのも祓えるかねぇ?
[冗談っぽく言えば、小さく笑う。
しかし、其の後の言葉には緩く首を傾げ]
情故の刃傷沙汰…?
[尋ねるも。
其の後の言葉には、少し視線を逸らし]
…キリがない、か…
人間、望めば望むほど、というものは…あるんじゃないかねぇ…
[何処か覇気はなく。緩く頭を振り]
−朝/大殿邸−
お主、返事をせぬか。
[近寄ってくる者に対して言葉を再度かける。しかしその者は表情一つ変えず近寄ってくる]
・・・・・・喋れない、というのか。
承知した。ならばそうだな、字は書けるのか?
[近くを見回し、小枝を見つける]
これで地面に字を書くというのはどうか。
して、汝はこの屋敷の者か?
──花山院の屋敷/中庭──
[雪のごとく しろき花びら はらはらと舞い散る]
「…あぁ、…嗚呼。
心細ぅございます。」
「焦がれて追うた彼の方は、あのような目に遭われてしまい、
都で迷う狐一匹、頼れるものは…貴方しか。」
[おとこは、庭に立ち…──葛木の言の葉がおのれの裡にもどり来て反響すを聴きなおしていた。おとこはおのが指を見る。先刻まで銀の毛皮を撫でていたゆびさきを。]
…銀の毛並みに、黒く
沁みが出来ていた。
「…御傍に。」
「…失いたくはないのです。」
おまえは、可愛いね
[おとこは、毛皮に浮かび上がる広がる黒点 《澱み》 を見つめ、ただそう答えたのだった。部屋には、もう二度と鳴らぬ笛が転がっていた。
中将を殺したものの話を、ふたたび眠りに落ちる葛木に告げる事は無く。閉じた銀狐の目蓋をゆびさきでサラとなぞってから、おとこは庭へ出たのだった。]
…あなたが薬を。
[禿姿のお方に一つ頭を下げて。]
胸苦しさは、いくらか収まりました。
…色々一度にさまざまな事が起こりすぎて、どうにも。
普段は、山奥に隠れ住んでいるもので。
此の地は、騒がしすぎる。
[ふと、かけられた声とその方の匂いには覚えがあって、思わず聞き及んだ名を口にします。]
…あまね、さま?
[見やったその声の主は、いつか川辺で笛と戯れていた時に、それを聞いていた童でございました。]
―朝/花山院前―
生憎試したことがないねぇ。
[前髪を微かに揺らして汐のほうを見て。]
あるもんなんだよな。此れが。
情にも、いろいろあるってことだ。
望んでも手に入らない、手に入らないならばいっそのこと。
……ってやつだ。
職業柄、そういう呪に出くわすことも少なくてね。
[桐弥が葛木に声をかける様子を見て、
また知り合い同士か、と思ったが口には出さない。]
……あるもんかね。
[覇気のない言葉、不思議そうにその横顔を見遣り]
獣に 泪を流させてはいけないねえ。
[怨] [うぉおおおん] [怨]
[花山院の中庭には、何時の間にか あの大殿を喰い殺した犬の姿がある。] [以前よりも 犬のまなざしは虚ろになり あかは深くなり より一層の臭気を放つ] [怨…──]
…笛は。
[件の笛を思い出し、笛のあるじを思い出し、狐はそっと目を伏せるのです。]
彼の笛は、あるじの元へと戻りました。
…けれど…その御方は……
[まぼろしが如くに垣間見た、彼の御方の最期はあまりにも。
それ以上を口に出来ず、狐は苦しげに胸へ手をやるのです。]
…胸苦しさ、ですか。
成る程。身体よりも、気疲れの方が辛いのかも知れませんねぇ。
[薬の出番じゃあないのかも知れません。
そう、頬を掻きつつ]
確かに。山奥と比べたら…
特に、今は。酷いとき、でしょうから。
[弱った様に笑んで。
…其の後の桐弥に対して呼んだ名が気になりはしたが、口にはせず]
… ・・ああ
狐が怖がるからね。
おまえはわたしと一緒に行こう
[おとこは、銀狐を撫でたのと同じ手つきで、ゆっくりと
煮え滾る毒を抱えた犬頭を撫でた。]
いや。なによりも、
…・・兄を乗せた車がくる前に、わたしはこの屋敷を去ろう。
誰も わたしを花山院の主にしようとはするまいが。
すでに屍骸とは云え、兄の顔をみれば、おのれが何をしてかすか分かった物では無い。
[葛木のことばににこりと、指を立てて口元に当てる]
そのことは、ご内密に。
それにもう、その名は必要ないものだから。
それよりも、具合が悪そうだけど、大丈夫?
[口調も声ももう童のもので]
[兄の遺骸を乗せた車が、屋敷の門にたどり着く頃には、おとこは花山院の屋敷から姿を消していた。
門前で語り合う者たちは、車に遭遇するだろう。
そして、おとこが何時の間にか屋敷を抜け出していたことに驚くのかもしれなかった。──もしかすると、おとこの話を聞いていた*葛木をのぞいて*。]
そりゃあ残念。逢わぬ様に願うのみか。
[指でこめかみを押さえ。ふふ、と小さく]
望んでも手に入らぬ…手に入らぬならいっそ?
…それは…理解は、出来ぬ、かな。
[何処か歯切れが悪い。
薬師もそう思ったのか、困った様に笑い]
何、そう、思ったこととか。
そんな時になったことが、無いので、ねぇ…
[しばし、そのまま口を噤んでいたが。一言だけ口にした]
…あるさ。
[ゆぅらり] [ゆらり]
[路を行くおとこの姿は、水面に映った影のように揺れる]
[花山院師輔の抜け殻を乗せた車は、おとことすれ違うも、何故かおとこには気付かない。]
[葛木の様子に、ああ、と視線を落として。胸を手にやる様子には心配そうにその顔を覗き込み]
……人の世は、怖い。
特にこの京の町は。
[銀の髪の男。
目を伏せ、胸に手をやる様を見やれば。
小さく息をつき、視線を外した]
…薬じゃあ治せぬ者も居るって。事ですよねぇ…
[其れは、何処か自嘲めいて]
[おとこと並んだ 犬の呪は、行く路すがら
名もなき人々を 煮え滾る裡に取り込み 喰い殺す]
[首の無い] [はらわたの無い] [手足を欠いた]
[残骸と] [あかく染まった] [花のような沁みが 大路に残る]
遭ったときはま、足掻いてはみるさ。
[自分の後ろ髪を手で梳いて]
……そうかい?
おれはわからないでもない。
真似しようとは思わないがね。
[対照的にさらりと答える。
歯切れの悪さ、言葉では指摘しないが少し眼を細め]
あぁ――そうなったことがないなら、
実感はないだろうがね。
[深い色の目で。
あるさ。という言葉にはぽつりと]
――そうか。
…いえ、お気遣いなく。
[ゆっくりと息を整えて、なんとか笑みをつくるのです。]
人の世は…人の心は、恐ろしゅうございます。
[そしてその、恐ろしきものに、
次第に己も近づいていっているのです。
そう思うと、狐は思わず身を竦めるのでした。
穢れが次第に染みとなりゆく白い尾を、この目で検めるなど。
怖くて出来ぬままなのです。]
―花山院/門前―
……ん?
[きしむ音に通りへと目を向けた。
車がやってくる。しめやかに、かなしげに。]
あれは。
[邪魔にならぬように避ける。
他のものにもそうするように促して]
――遺体か。
[眉を寄せた。]
[次におとこがあらわれたのは、中将の屋敷の門前。
穢れがすでに無き事に、おとこは無我のことを思い浮かべるか。]
[彼の兄の亡骸を乗せた車は、厳かに屋敷へとたどり着きました。
縋って泣く下仕え等の姿に目を向けることも出来ず、狐は己の手をじっと見るのです。
赤黒い沁みが、二つ三つ。
目を見開いて息を呑む時には、それは既に消えておりましたけれど。]
――故大殿邸――
[小枝を持ったまま背を伸ばし腹辺りに出来た衣の傷を見せる
衣の間から窺えるのは刀で突いた傷である 塞がっていないのに一筋の血すら流れておらず 胎(なか)は種々の色の徴で埋まっている]
出来るだけ、見ずに場から辞すことが出来ればいいのですけどねぇ。
[視線を白藤に戻す。小さな驚愕と共に]
…ぇ?
わからないでも、か…
…まぁ、真似しようとしてたら止めなくちゃあならないねぇ。
役人に引っ立てられる前に。
[いつもの調子に戻そうとしているのか。
ふふ、と小さく息を漏らせば]
ええ。
そう言う意味では…幸せ、なのかもねぇ。
[頭を掻きつつ。小さく頷いて。
しかし、車が来て。
道を開ける様に退くと、門の奥で下仕え達の様子を見て。
…視線を逸らした]
薬で戻せはせぬ。
毒でも戻せる気がしない。
[心内呟いた]
…手に入らなければ、か。
いっそ、壊すか?
…そんな事、出来るのか。
出来て、しまうのか…
修道女 ステラは、見習い看護婦 ニーナ を投票先に選びました。
治った・・・・・・それが汝の力だと言うのか。
信じられん、そんな馬鹿な。
[ふと視界の隅に、永漂の姿が入る]
永漂、殿?
確か、花山院にて惨事があったと聞き及んでいるが真か?
[汐に頷く。微か苦笑]
そんなに驚くことか。
情を抱くには理由がある。そいつを知ると
どうも分からんでもないな、と思わなくもないこともあるんだが。
[遠くを見る。]
あぁ、とめてくれ。
おれもお縄は御免だからな。
[調子を合わせ]
呪わないですむならそのほうがいい。
おれが見てきた中で、呪い呪われ
誰も幸せになったためしなどないからねぇ。
[己の力及ばず亡くした者が居る。
故に、祓い続ける。弔いながら。]
[ゆっくりと影秀と無我が対峙する場所まで歩をすすめた。]
ああ。影秀どの。
花山院の話まで──すでにご存知でしたか。
たしかに、今朝方、兄が内裏で殺されました。
[無我のすぐ傍に立つ。
影秀がなにやら不可思議なことを云うを聞き、首を傾ける。
無我に顔を近づけ──暗い目で、識が影秀にしめした傷をのぞきこんだ。]
・・…これは。
傷が治っているのではありませんよ。
切られても、血が流れぬどころか、あかい色すらしていない── まるで極彩色。
影秀どのは、分からぬもの。
見たくないものを──見ずにすませようとなさっているのではないですか?
[無我が、影秀の後方に下がる所作に、おとこは薄い笑みを浮かべ、それからほうと息をついた。]
そうかねぇ…好いた者ならば。
生きていて欲しいと思うんじゃないかねぇ?
壊してしまおうというのは…どうも。私には。
[遠くを見る様子に。小さく苦笑いして。
頭から手を離すと]
ま、そんな時が来ないことを祈るよ。
…だろうねぇ。
呪いで益は入らぬだろうさ。
穴二つ、ってんなら…尚更、ね。
[うん。と、同調する様に小さく頷いて。
白藤の言葉には一つ瞬きをし。門の奥を見やる]
法師殿が?
…弔いの準備でもしていらっしゃるのでは?
[確かに、車の傍には見つからなかったが…其処まで深刻には考えては居ない様だった*]
・・・
[”気味が悪い”率直にそう感じた]
し、失礼。某陰陽道に疎いもので。
そういう事だったか、失礼した。
しかし、永漂殿。そのような騒ぎがあったにも関わらず何故今ここに。外出どころではないのではないか?
[おとこに覗き込まれても 無我の面は変わらず茫としたままだった
暗い目元を映し出す目
おとこの目は 識が跳躍――黄金の弧の軌跡描いたをはっきり捉えた筈だろう 影秀を挟んで墨色の衣纏う二つの影が在った]
[おとこの姿はまた波紋のようにゆれ]
[影秀の足元の血満水は 密度を増す] [まるで影秀の足を絡めとらんとするかのように]
「違う、某は中将殿を殺してなどいない!!」
「馬鹿な、何故永漂殿がそれを知っている!?」
「あれは、あれは某ではない」
「一体某はどうなってしまったのか」
[影秀に問われたことには「外へ出られなくなる前に出て来たのですよ」と静かに答える。]
──無我。
またあえたね。
その徴は、わたしの痛みを取ってくれたように
穢れ澱みを、請け負ったのだろうか──
影秀どのに会いにくれば、無我にもあえる気がした
気が合うね。
おれも、どっちかっていうとそう思うんだがねぇ――
烈しい思いの持ち主は、そうとも限らんらしい。
[首を揺るり横に振り]
まぁ、心配せずとも大丈夫だろう。
それにしても
穴を掘ってでもなにかしらなしたいやつらの多いこと。
此度のことだって―――。
[瞑目。法師についてはそれ以上言及せずに]
さて、遅くなっちまったが
羅生門に向かうか。鷹追いだ。
物好きはもちろんとしてあとは――ついて来るんなら来るといい。
[と、汐には目配せをしてから*歩き始める*]
[おとこは手をかざす] [富樫影秀の周囲の澱みを探り 引き寄せんとするかのように] [それは、汐の首筋に触れたときと同様の所作]
[ぴちゃぁあああん]
[どこかで水が滴る音が響き──]
…影秀どの
橘の中将の肉のあじは 美味でしたかな?
[橘 智鷹の肉の美味。
──それは、禁忌である人肉の味覚と、栗の花 泡立つ 淫微なもうひとつの肉の味覚を指し示す。]
…影秀どの
褥に残った手形と、おのが手を合わせてはご覧になりましたかな?
・・・!?
い、一体何を言っているのだ永漂殿!!
あまりに戯れが過ぎれば、温厚な某とて・・・唯では済まさぬぞ!!
[何を言っているのか理解出来ず、ただ激高する]
ばっ、馬鹿な!
何故某が己の手とあの手形を比べる必要があるというのだ!
何と愚かな・・・気でも狂ったか!?
[だが、何故この手は震えているのか]
某が・・・たどり着いたときには、既に息絶えていたのだ。
間違いない。それ以上でもそれ以外でもありはせぬ。
ありは、せぬのだ・・・・・・
[唇を強くかみ締めすぎ、血が流れ始める]
[おとこは、気がつけば影秀のすぐ傍に来ている。
震える影秀の手を──掴み、おのが顔面に近づける。]
…ああ
あかい いろが見える
[おとこの言葉は、まるで影秀の大きく無骨な掌に血がべったりとはり付いているかのよう。]
お尋ね者 クインジーは、書生 ハーヴェイ を投票先に選びました。
ひいっ!!
[その言葉に飛び退き、肩を震わせる]
違う・・・某はただ。
あの者が、若宮様にとって害を成す者だと・・・
[はっ、と口を塞ぐ]
[背中が何かにぶつかる。咄嗟に振り向くと、そこには先ほどの物言えぬ識神が富樫の体をうけとめていた。
唇をなぞる指。そして同時に永漂がその”血で染まった”手を下でなぞる]
き、貴様ら!某を辱めるつもりか!!
や、やめろっ!!
[抵抗しようとした。だが体に力が入らない]
[酷い頭痛。そして薄れゆく意識。
この意識が本当に消えたら一体どうなるのか。次に気が付いた時に、”血だらけの光景を”見る事になるのか]
や、やめてくれ・・・
[力が入らず、その場にへたり込んでしまう]
──辱める。
ああ、貴男が辱めたかったのは やはり…
[淡色の宝玉のごどき若宮。] [やわらかな 春いろの 澄んだ──]
(六 条 式 部 卿 宮 季 久)
[おとこはわらい。身体に力が入らぬらしき、影秀の血濡れ手をおとこはふたたびひいた。]
あなたが、辱められたいのならば。
そうして差し上げましょうか。
何、男色と云うに貴男が中将になさったことと、さしたる違いはありません。
[その手を握って開くのです。
あのときの、夢か幻か判らぬときの、
力を込めた指の感触はいまだに。
彼の方が為ならば。
そう思いて為した事の恐れ多さよ。]
…あぁ。
[己が身を抱くようにして、狐は震え上がるのです。
野辺に住まう獣の分際で、求め乞う事の罪深さを。
非業の死を遂げたあの方の痛みを無念を、
そのおぞましき行い全て、仇に返して差し上げたい。
その想いは青白い焔となって、内から己の身を焼くのです。
堕ちて行く事の恐ろしさに、
自らの心根のおぞましさに、
失いて独りとなる心細さに。
縋れるは、彼の方だけ…と。]
[気分が優れぬと、部屋へと戻り、
身を折って震えているのです。]
…もはや、只の獣では居られませぬ。
[幾重にも、部屋を囲いし帳の経の。
その墨の香が未だ新しいを知って、
狐は筆跡を、白き指でそっと辿るのです。]
…あぁ、そのようなおぞましき獣にも、
貴方はお優しい…。
[いつしかそれに縋るように、狐は夢へと堕ちるのでした。]
─自邸・昼少し前の午前─
[屋敷の深奥、光届かぬ塗籠の中、
床に散らばる乱れた衣の、
その上におとこは肩膝立てて座って、紙燭の炎を見つめていた。]
[ふと目を落とし、その顔に浮かぶ淡い笑み、]
──季久さま…
[おとこの膝を枕に眠る、想い人。]
もはやあなたの身もこころも、魂魄も、永劫に私のもの、
死でも、わたしからあなたを奪い取れはしない。
あなたと私の魂を結びつけ、
未来永劫離れられぬ絆を結んだ、
あなたが私を嫌い憎もうとも逃げることは最早叶わぬ、
帰ることも許さぬ、どこへ逃げようとも必ず連れ戻す。
たとえ自ら命を絶とうとも、冥府の底から引き摺り出し、
あなたの骨を洗い、香焚いて、
反魂の術にて甦らせましょう。
−花山院邸→羅生門への道−
[花山院へと師輔の屍を乗せた車が来ても動じずにただ見やり、暫し黙したままどこか焦点の定まらぬ目で見ていたが、白藤が羅生門へ向かうというと、その後を付いていく]
(あれから、若君様はどうしたんだろう)
[道行きながら、六条院の邸での見知った顔を見つけ、声をかける]
若宮様が、いない?
[詳しいことは聞けなかったが、朝になったら姿が見えぬ、と聞き]
(昨日、あの後どこへ行ったんだ……)
[その者には羅生門で見たことは言えずに]
(若君様が付いていったのか、それともどちらかに浚われたのか。あいつの名前、なんと言ったっけ)
[白藤の後をその踵を見ながら歩いていたが、伏せた面には*焦りの見えた瞳が光っていた*]
牧童 トビーは、書生 ハーヴェイ を投票先に選びました。
/*
初めて中の人。
投票先に迷います。
そして色々動かしてしまってごめんなさい。(昨日の若宮様
今日は富樫さん辺りが良いのかなぁ。そこしか狼が現れてないのでそこになるのかもと思うけど、あんまりここで死ぬようには見えない。
というか、おれにとっては安倍のひとが悪役なんだって!
でも二人は共鳴なのかも、と思ったりもする。
ここで安倍さんと鳶尾さんの一騎打ちが見たいんだ。
*/
また、私を殺そうとも私の想いは滅ぼせぬ、
その時はひとの理捨てた真正の鬼となりて、必ずや黄泉還(よみがえ)ってあなたのもとに参りましょう……
[おとこは想い人の淡い色の髪に指絡ませ、ゆっくりと撫でた。]
もういつでも、どこに居ても、あなたの声は私に届く。
そして、私の声もあなたに……
誰はばかることなく、ずっと一緒に、
あなたのお側に居りまするよ……
−花山院邸→羅生門への道−
[はるうらら、風がはなびらを舞い上げる。
かすんで淡いそらがみえる。
陰鬱なよどみは拭えないが、それでも。]
……花見とでも洒落込みたいねぇ。
こういう状況でもなければ。
[のんきにも聞こえる事を呟いて、
空を見た瞳の上に、手を翳した。
鳥の影。]
双子 リックは、学生 ラッセル を投票先に選びました。
─安倍邸・昼少し前の午前─
[髪に指の絡む甘いくすぐったさを感じて少しだけ意識は浮き上がる。
酷く気だるい身体はまだ眠っていたいと告げるけれど、意識は何となく起きている、そんな曖昧な感覚。
恐ろしく勝手な愛の告白は少年の口許に笑みを与える。
そのまま起きてもよかったのだけれど、もうすこしくらいは、と、頬を少しだけすり寄せて甘えて。
そのまま眠っているふりを*することにした*]
―自邸・昼少し前の午前―
[微かに膝の上で眠れる想い人の動く気配、
甘えるように身動ぎするを、愛おしく眺める。
既に空寝に気付いているのか、]
あなたが文箱に入れていた私の文と一緒に愛用の琴も、慰みになるかと思い、六条邸から持ってこさせました。
弾きたければ後でお弾きになられると宜しいでしょう。
[寂びた声、*甘い蜜含んで語り掛けた。*]
吟遊詩人 コーネリアスは、お尋ね者 クインジー を投票先に選びました。
−花山院邸→羅生門への道−
[手を伸ばして、椿の葉を一枚千切った。
口に咥えてほどなく、笛のような音が奏でられた。
鳥を呼ぶように、ふるい歌を吹き鳴らす。
鳥に届いただろうか、旋回して行く先は
もうまもなく辿りつく*羅生門だった。*]
――羅生門脇・東寺の境内はずれ――
[未だあたりは明るいというのに、
羅生門を隔てて洛中を守護する東寺の境内
そのはずれたところ、
夜のように凝る影があった。
次第に人らしきの形をして、ようやく式の姿となる。
何処かで葉笛が響く。]
――東寺――
[羅生門の道より外れた場――周囲を隔てられた東寺の境内の中 蹲る人影からようやっと見える場所に――また 人影があった]
―花山院邸・奥座敷―
[昼とも夕ともつかぬまま、狐は臥せっておりました。
胸苦しさは怨みと哀しみに、身を焼く蒼き焔でした。]
お怨み申しあげまする。
どなたが、何方が、彼の方を。
[額には玉の汗。
けれども指は氷のように、冷え切っているのです。
ゆめうつつの譫言(うわごと)に口にするのは、笛の御方を喰らった方への恨み。]
…何処に……。
[浮かぶ狐火は二つ三つ。
経の帳をわずかに焦がし、門の外へとさまよい出るのです。]
[心の何処かで、狐は恐れておりました。
見つけたが最後、己はきっとその方を取り殺してしまうだろうと。]
[黒白の影がいつからそこへ佇んでいたものか、
いつから気付いていたものか。顔を上げもしない。
草笛の音が長閑。]
お前は都を護るものなのか、
それともひとを唆す悪しきものなのかな。
[式と識と色]
[のどかに何処かから聞こえる草笛 其は羅生門周辺に油のように浮かぶ澱みと混ざり合わない水のように]
[何も言わず 鳶尾の方を向いている]
やらぬ、
と云ったろう。
折角、我が身を作り変え、主の編んだ理を外れ、令を受けぬようにと呑んだものを
[眼前をたゆたう黒い衣の、彩りが宿る裾を掴む]
むしろ、足らぬよ
修道女 ステラは、吟遊詩人 コーネリアス を投票先に選びました。
―羅生門ちかく―
[草笛の音はよどみなく、
白藤は少し視線を上につばさを探す。]
……
[なにかを捉えようと
感覚を研ぎ澄ます。
旋律はつづく]
[其処に求めるものは無く、
先のように血も流れず
地に広がる染みのような衣を掴んでは
穢れを受け留めるためでもなく、ただ私利の為に暴く]
―羅生門付近―
[確かにねぇ。
白藤の言葉に、ふふ、と小さく息を漏らす。
実際にそう思っていたのか、此処に至までの足取りは何処か景色を見渡すかの様にゆっくりで。
桐弥が誰かと話していようと。
白藤が草笛を吹いていようと。
其の視線は何処か遠くを見つめていて]
…
[羅生門へと近づいて…ようやく視線は下ろされた。
草笛の旋律に、目を細め…辺りを見回した]
[近くに見える羅生門を見上げて。昨日の晩のことを思い出す。人ではない男と、宮と陰陽師。大殿のところで見たときは何も気づかなかった、が]
(あれは、あの男の式神か。
昨日の様子では二人は対立してたようだった。会ってみるならあの式の方だろうな。顔も知られてるし)
[犬に喰らいつかれたように
鳶尾へ面を向け
麻のように破れ裂かれた衣の下には 目の醒めるような種々の色彩の徴
指先程に小さく 平たく薄い胸板に無数に刻まれている]
牧童 トビーは、お尋ね者 クインジー を投票先に選びました。
[向けられた白い面を顧みもしない。
声も立てない識の如何であるよりも、ただその身に宿る徴を見、
器にくちを付け、啜るように
胸元へ口をつけて眼を瞑る。*]
―羅生門―
[歩幅を狭め、やがて立ち止まり。
羅生門を見上げながら緑の笛を吹く。
はなびらは陽の光に映えるのに
つめたい風は何処から来るのやら
東寺の木々を撫ぜて遠くへ。]
(居た)
[門の上部、屋根の端、止まった鳥。
笛を押さえた手と逆の手を招くように伸ばした。]
―自邸・昼近い午前―
[しゅるりと衣擦れの音。
女房装束の女が傅き、おとこの着替えを手伝っている。
女は先程から一言も喋らず、表情も茫洋としてひとの気に乏しい。
さもあらん、おとこの周囲にあって甲斐甲斐しく立ち働くは、式、
この館に召し使われているのは全ておとこが呼び出した式神の類であった。]
――羅生門――
[白藤の草笛の音を聞きながら、羅生門の屋根の方へと視線を向けると、一羽の鳥。
ぼうと眺めて、あの鳥は、と気づく]
鷹だ。
[呟いて]
(中将様の、か。盗みを生業としたときから、情は持たないと思っていたのに。代わりに仇をとろうなどと、どうして)
[より強く頭を振り、そしてまた羅生門の方へと顔を向ける]
―羅生門―
何時来ても…良い気では無いのは確かか。
[立ち止まるのと同時に門を見上げる。
頭を掻きつつ、草の音を聞いていたが…]
…あれ、かい?
[目を細め、動く影を見つめる]
何か。手がかりか何かあると良いのだけれど、ねぇ…
[何故だか受け容れているような識の仕草がこころに疎ましく、
無闇に乱暴に、吹き抜けて行く冷えた風より疾く奪い、喰らって]
[坊主が何やら近くを通っては驚いて声をあげたようだ]
[汐の言葉を聞いて首を傾げる]
そんなに、気にするほどのことかなぁ。
そりゃあ、其方に通じてる人なら、見たり聞いたりはするんだろうけど。
おれにとっては、ただのじめじめした大きな門だ。
時々屍も転がってるけれど。
学生 ラッセルは、見習い看護婦 ニーナ を投票先に選びました。
学生 ラッセルは、お尋ね者 クインジー を投票先に選びました。
学生 ラッセルは、流れ者 ギルバート を投票先に選びました。
学生 ラッセルは、双子 リック を投票先に選びました。
──回想/大殿の屋敷──
[その場所に 光は無く] [じとりと澱み湿っていた]
[降り注がぬさくら花びら] [衣擦れの音に混じるかすかなうめき声]
[あまい 睦言もなく] [恋情でも憐情でも愛情でもなく]
[硬い漢(おとこ)の肉体をぬかるませ、武士を堕とし、辱め、富樫影秀自身の欲望を知らしめるために、おとこのその手のひらは滑った]
[おとこはわざと影秀の口腔に指を差し込み、中将を食んだやもしれぬ人食いの歯に絡ませる。──影秀が歯を立て、おのが指から血が流れるを眺め、おとこは暗い目をしたまま、ふ とわらう。]
・・・…喰らわれながら犯されるは、
如何様なくるしみでしょうなあ。
影秀どの・・・
学生 ラッセルは、見習い看護婦 ニーナ を投票先に選びました。
──回想/大殿の屋敷──
[ゆびさきから流れた血を、武士の乾いた肌に這わせ]
[《呪》となる真言、血文字を綴る────] [あかあかとぬめる呪言は、影秀に常ならぬ] [乾き][飢(かつ)え][疼きを齎(もたら)す]
…ああ
わたしは、中将でなくとも、人は好まぬゆえ
ただ、あの狐が泣いていたことが堪え難いだけなのだけどねえ。
[皮膚を 肉を えぐり 内腑を傷つけ] [ぐじゅり]
[血を零させるも あかぐろい欲望を刃とし 人食いを辱めるため]
[ぐじゅり] [湧きいでる] [花粉] [蜜を*零し果てるまで*──]
[あかるい空の色に眼を細める。
鷹は伺うように此方を見たか。
狩の命令を待つように。
けれど、もう主人は居ないのだ。
唇から葉を離して]
あれだな。
[翼が風を叩く音を聞いた。]
手がかりにでもなりゃいいがねぇ……。
月白というらしいんだが、不穏な気配に聡いようでな。
そういった意味でも。
……主の言うことじゃないと聞きそうにもないか。
流れ者 ギルバートは、お尋ね者 クインジー を投票先に選びました。
――東寺――
[一つこころに闇抱え
主へ募る思慕の念 募りて墜ちた情念が
地の底から喚(おらび) 求む]
[白い肌を抉り奇妙に混じいる色彩の徴を幾ら喰らわれていたのか 坊主声をあげ 頭を逸らしていた識の茫とした目と合う]
[ りぅゅうぅ ]
[風もないのに鳶尾の耳に何か聞こえた]
修道女 ステラは、学生 ラッセル を投票先に選びました。
──回想/大殿の屋敷──
・…影秀
人食いの欲望すでに止まる事を知らぬなら、
──…怨み祓わんとする 陰陽師 白藤を 喰らうがいい。
─花山院邸・奥座敷─
[狐は熱に浮かされて、ぼんやりと褥に身を横たえておりました。
経の帳に覆われた部屋の光景は揺らいで、揺らいで…]
…何処に。
[その目は既に、部屋の中を見ておらぬようでした。]
あの方を喰らった憎き御方は、何処に…。
…気にするほどの事では在るだろうさ。
陰の気にさらされ続ければ、次第に陰の方に身体が傾いていく。
其れだけなら良いのだけど、な。
そこから…五行の均衡が崩れれば。
病になる。
[桐弥の言葉に顎に手をやりつつ]
…それに、大抵…陰の気が集う場所には屍や物取り、と、あまりよろしくない者が集う。
其れも苦手、だな。
──大路──
[富樫影秀の姿は今は見当たらぬ。
おとこは何処かの池で身を清めたのか、わずか開けた襟元、濡れたままの髪、薄寒い路を行く。]
――羅生門――
月白……。
鳥の言葉がわかるなら、簡単にわかるのだろうけど。
(もし、死に至らしめた犯人が、知っているものならば、どうするのだろうか。ただ一時の情に惑わされて、刃を向けるのは。
いや、中将様は殺されたのだ。ならば、向ける理由は、ある)
――東寺――
[訳もなく自責の念に駆られかけ、
ひとも現れた
すわ逃げんと思いはしたが、
――この識を捨て置いたものか
いっそ抱え出てから何処かへ捨て置こうかと腕をかけ
何が鳴るものか――]
学生 ラッセルは、お尋ね者 クインジー を投票先に選びました。
―羅生門―
そうだなぁ、
気にしないのが一番なんだろうが
どうしてもねぇ。
[桐弥にこたえる。
鷹は、翼広げて一瞬ふわりと風をはらみ]
月白、おまえは何故此処にいる?
真実、此処にあるじが眠るからか。
[鋭い眼は何かを語っただろうか。
差し出した手に爪を立てるようにとまる。
素手だったため血が滲んだが白藤は別に気にするでもなく]
[おとこの傍らに、今、あの犬首の姿は無い。
おとこは薄く笑み、狐火が ちりちりと青白く 恨み 憎しみのままにさまようを、節くれた指先で愛撫するようになぞる。]
…気配に聡い。か。
ならば、羅生門に来た意味も…何処かに有ると思うのだが、ねぇ。
[目を細め。緩く辺りを見渡すが]
主…橘様、か?
まぁ、主以外に従うつもりが無い、と言うのは分からないでも無いが…
[桐弥の言葉に、緩く頷いた]
しかし…残念ながら、私は鳥の言葉は分からないからねぇ…
[ りぅゅうぅ ]
[墨<boku> 墨<boku> 墨<boku>]
[ りぃぃぁぅぅぅぅぃ ]
[風の音近しい其はおとこの哂笑]
[ ぃぃぁぁああああああぅぅうふふふぁああ ]
[混じりいるのは京腐りゆくのを見る爛れた听(わら)い]
屍に、物取り、まさしくそうだね。
おれはただ、気にしないだけだけど。
病は、そうだな、その内なるかもしれないが、宿すらなければ、病になる前に凍え死んでしまうそうだから、なら病になる方を選ぶよ。
そんな奴が多いんだろう。
[ りぅゅうぅ ]
[墨<boku> 墨<boku> 墨<boku>]
[ りぃぃぁぅぅぅぅぃ ]
[風の音近しい其はおとこの哂笑]
[ ぃぃぁぁああああああぅぅうふふふぁああ ]
[混じりいるのは爛れた听(わら)い]
[墨色の衣が黒に染まりゆく
徴は歪み果て ぷつぷつと衣から黒の液体が辺りに伸び――泡立つ
坊主の足を駆け上り 脚腰腹胸首と黒が満ちてゆく]
[白藤の手に止まる鷹を見つめ]
賢そうな、鳥だ。
爪の間に何か、引っかかってたりとかしないのかな。
それとも、どこかに導いてくれるとかさ。
[その鋭い爪をちらりと]
医師 ヴィンセントは、見習い看護婦 ニーナ を投票先に選びました。
[飛ばしたままの月白は翡翠の男に降り止まる。
視線は確かにこちらを見ている。じっとこちらを]
月白よ。お前は一体誰を看た?
お前が見たものは鬼か?人か?それとも鬼のように狂うた人か?
[月白の目は確かに何かを訴える。しかし霞の水鏡では読み取ることもあたわぬ]
…宿すらなければ、か。
なれば、わざわざ都に来なくても良かったろうに…
商や貴族でなければ生きにくい。
…そうも、言えないのが…此処に居る者なのだろうが…
[視線を鷹に向けると。
其の鋭い爪に目を細め]
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