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[其処に求めるものは無く、
先のように血も流れず
地に広がる染みのような衣を掴んでは
穢れを受け留めるためでもなく、ただ私利の為に暴く]
―羅生門付近―
[確かにねぇ。
白藤の言葉に、ふふ、と小さく息を漏らす。
実際にそう思っていたのか、此処に至までの足取りは何処か景色を見渡すかの様にゆっくりで。
桐弥が誰かと話していようと。
白藤が草笛を吹いていようと。
其の視線は何処か遠くを見つめていて]
…
[羅生門へと近づいて…ようやく視線は下ろされた。
草笛の旋律に、目を細め…辺りを見回した]
[近くに見える羅生門を見上げて。昨日の晩のことを思い出す。人ではない男と、宮と陰陽師。大殿のところで見たときは何も気づかなかった、が]
(あれは、あの男の式神か。
昨日の様子では二人は対立してたようだった。会ってみるならあの式の方だろうな。顔も知られてるし)
[犬に喰らいつかれたように
鳶尾へ面を向け
麻のように破れ裂かれた衣の下には 目の醒めるような種々の色彩の徴
指先程に小さく 平たく薄い胸板に無数に刻まれている]
牧童 トビーは、お尋ね者 クインジー を投票先に選びました。
[向けられた白い面を顧みもしない。
声も立てない識の如何であるよりも、ただその身に宿る徴を見、
器にくちを付け、啜るように
胸元へ口をつけて眼を瞑る。*]
―羅生門―
[歩幅を狭め、やがて立ち止まり。
羅生門を見上げながら緑の笛を吹く。
はなびらは陽の光に映えるのに
つめたい風は何処から来るのやら
東寺の木々を撫ぜて遠くへ。]
(居た)
[門の上部、屋根の端、止まった鳥。
笛を押さえた手と逆の手を招くように伸ばした。]
―自邸・昼近い午前―
[しゅるりと衣擦れの音。
女房装束の女が傅き、おとこの着替えを手伝っている。
女は先程から一言も喋らず、表情も茫洋としてひとの気に乏しい。
さもあらん、おとこの周囲にあって甲斐甲斐しく立ち働くは、式、
この館に召し使われているのは全ておとこが呼び出した式神の類であった。]
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