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──花山院の屋敷──
[おとこを中に、車蓋の上に識神をのせた車は、朱雀大路を抜け、三条、花山院の屋敷にたどり着く。
迎え人は、ようやくおのが仕事を終えられたと、安堵したと云う。かわりに、久方ぶりの弟君のもどりに、花山院の屋敷は騒然となった。
それも無理の無いこと。
──まずそもそも、弟を呼び寄せた師輔は兎も角、屋敷の者たちが、おとこを歓迎するはずも無い。
おとこは出家後、都を落ち田舎へ下った者。
──この家の者にとっては、《無き者》同様──
しかも、花山院の家の者から見れば、襤褸と云っても差し支えの無い法衣にあかくろの沁みを付けて現れたとあっては。迎え人が、おとこが一度都についてから、はばかりに行くと云って逃げ出し、羅生門で見つかったと云えば、祓いをせねば屋敷に入れる事は出来ぬと大騒ぎ。
おとこを乗せてきた車の上には、何か──無我が乗っていた、と云えば、更に女房から悲鳴があがる。
間の悪い事に、花山院 師輔は入れ違いに出掛けてしまったと云う。]
[そして、騒ぎの結末として]
「あなたさまは、お祓いが済むまで屋敷に入れるわけにはまいりません。」
「陰陽師を呼んで参ります故、祓いが済むまでそこでお待ちくださいますよう。」
[たとえ、師輔が戻った時に叱りを受ける事になろうとも、それが屋敷の者たちの総意であると云う。その様ないきさつで、おとこは衣を剥がれ、御祓の水を掛けられ、裏庭で待たされることになった。
屋敷の者たちが何処の陰陽師を呼びに行ったのやらは定かではない。]
[くだんの大殿のさくら古木の屋敷とまた異なり、花山院の屋敷もなかなかに趣のある庭であった。
久方ぶりに屋敷にもどったおとこは、送られた文のたっぷりと墨を含んだ肉厚の筆跡と、その庭の持ち主は、なるほど同じ人物なのだろうと、感性の一致に得心したのだった。]
わたしは、風雅な兄を持っているらしい。
とは云え、大人になってからの兄の顔を思い出そうとすると、霞が掛かったかのように思い出せないのだよなあ。
[呟くおとこは、薄い身体に白い着物一枚の姿。
さわぎの渦中の人物にしては、どこか飄々としてつかみ所の無い態度で庭を眺めているのだった。]
[無我を見た。]
血が真に近しい者はどうやら数少ないようなのだけど、記憶のあった頃のわたしは、果たして、この庭の持ち主をどう思うていたのだろうねえ。
恨んでいた。
畏れていた。
慕うていた。
──すべて霞の彼方に。
わたしは目も暗く、うすらぼんやりとしているが・・・実は兄に相見えることが恐ろしい。
と、このような話は、識の無我には面白くないだろうか。
何処かへ行くかい?
[おとこは、しずむ事があるのか、夜闇に溶けた庭にまた*視線を戻す*。]
[ひとまずは羅生門へ向かって歩いてみるだけ歩いてみようと、大路へ出た。
夜の空気は酷くからみつくような心地がした。
通りは静かであったが、あやしき行列の賑やかして通ったあとのような静けさだった。]
[嗚呼 それは空を切り裂く女の悲鳴 女の恐慌]
[騒然 騒然 静寂はなく 烏合の衆は屠殺される前の鶏のように喚き立てる]
[喚(おらぶ)喚(おらぶ)喚(おらぶ)]
[ややあり静寂がおとこの周辺に戻ったのは裏庭について後の事]
[深いどろりとした羅生門辺のような空気もこの界隈には未だ押し寄せる事はなく 庭には見事に枝を張った松の大樹が邸を守るように生えていた 青々とした針のような葉の先端を撫で無我はおとこに寄り添う]
「恨んでいた。」
「畏れていた。」
「慕うていた。」
[茫とした態の識神はおとこの声を聞き おとこからは見えず触れぬ喪われた記憶に――松の葉の先端をまた手でいらうた]
「と、このような話は、識の無我には面白くないだろうか。」
[首を左右にゆっくりと振る]
「何処かへ行くかい?」
[おとこの声音は、優しく――無我はきたるべき花京院師輔とおとこの邂逅を邪魔せぬためのように、ふわりと邸の塀へ]
[真黒な空を過った白いものを振り仰ぎ
――夜に鳥の飛ぶものか
すわ誰ぞの放った呪の類かと、刀へ手を掛け
降り立ったものへ対峙した。
夜目の利かぬではないが、そのものの色白き故か、茫としてかおつきは知れぬ]
[攻撃を意図する意思もなく それよりか意思と呼べるものすらなく その識神は世の理を撫でながら足の関節をやや曲げていたのから立ち上がり 流麗な動作で刀に手をかけたものへ体を向けた]
[攻撃を意図する意思もなく それよりか意思と呼べるものすら感じられず その識神は世の理を撫でながら足の関節をやや曲げていたのから立ち上がり 流れる動作で刀に手をかけたものへ向いた]
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