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この村にも恐るべき“人狼”の噂が流れてきた。ひそかに人間と入れ替わり、夜になると人間を襲うという魔物。不安に駆られた村人たちは、集会所へと集まるのだった……。
1人目、自警団長 アーヴァイン がやってきました。
自警団長 アーヴァインは、村人 を希望しました。
村の設定が変更されました。
血闇の平安末期──京の都
咲麗の春
まだ明けきらぬ 紫黒の空のもと
とある──貴族の屋敷から、蜘蛛の子を散らすように何台もの車が去ってゆきました。ひときわ豪華なびろう毛の大きな車の朱塗りの格子の向こう、簾越しにちらりと見えた衣は、長く、病に臥せっているとうわさのあった北の方のものではなかったでしょうか。
「ああ・・とうとう」
わたしの声は息をのみこむようなささやきになりました。
車たちが去ったあとも、開け放たれたままの門。
四季ごとに分けてつくられた季節の庭、その中でも京の外れにあるさくらの古木が移されたと云う、池を臨む春の庭がうつくしいはずのその屋敷は、がらりとして──なぜか、死臭がただよっているように見受けられました。
うす白い朝もやにまぎれて、恨めしげな犬のなき声がわたしの元へ届きます。
わたしは、どれほどの時間、お屋敷の門前でたたずんでいたのでしょうか。びっこをひきながら現れた老人ににらまれて、ようやく、わたしは足に根が生えてしまっていたことに気付いたのでした。
「女性は誰ひとりとして、残ってはおらぬのですね」
わたしは、文を届けるため、何度もこの屋敷をおとずれておりました。
(祟られている)
(四つ辻に 埋められた 呪によって──)
老人に確かめる言葉がふるえました。
おのがあるじのため。あるいは ここを訪れなくてはならない、おのれのため。わたしはこの屋敷を覆う──────気配から、ずっと目をそむけ続けていたのです。
(この屋敷は 大殿さまは 祟られている)
[夜明け前に屋敷を去っていった栗毛の馬の従者は、かえりみち。百鬼夜行の群れに巻き込まれ、おのがあるじの元へもどることは叶わなかったと云う。
ただ、男がたもとに抱えていたはずの文だけが、文のいろを、まだ五分咲きにならぬと云うさくらの薄紅に染め変えて、あるじの元へ帰ってきたらしい。
文を届けた者は「これは路で拾ったのだ」とわらったが、
「名のしるしの無い文が何故、あるじの物だと分かったのか」
女房がいぶかしむと、魔障のごとく*掻き消えたとも云う──*。]
村の設定が変更されました。
2人目、流れ陰陽師 白藤 がやってきました。
流れ陰陽師 白藤は、共鳴者 を希望しました。
[朝靄が揺れている。
春告げる梅の花も白妙の向こう側。
漂うそれをひらりと手で払う影がひとつ。]
……いやな風だねぇ。
[白い直衣を身に纏ったおとこは呟く。
春を描いた庭先の、大きな櫻の古木の下で
開ききらないつぼみを見上げた。]
澱んじまってる。
[ばさり、鳥の羽ばたきに似た音が響く。
だがしかし、それは鳥ではない。
おとこが手を差し伸べると羽音は指先にとまり、
ひらり、一枚の紙になった。おとこは眼を細める。]
白が、さくらの薄紅か。
[飾り紐でひとつに結わえた後ろ髪をぬるい風が小さく揺らした。]
村の設定が変更されました。
流れ陰陽師 白藤 が村を出て行きました。
2人目、流れ者 ギルバート がやってきました。
流れ者 ギルバートは、共鳴者 を希望しました。
[鳥のようであった白い紙を袖の下に仕舞う。
取り出したのは白い紙で折った小さな鶴だ]
さぁて、もうひとつ。
[手のひらに乗ったそれに印を切り
息を吹けば羽ばたいた。
晴れるか晴れぬか曖昧な靄の中を飛ぶそれを見送りながら]
あの従者は結局帰れず、か。
[おとこは低く*呟いた*]
3人目、双子 リック がやってきました。
双子 リックは、共鳴者 を希望しました。
―どこかの邸―
[響く琴の音は少年の手によって生み出されていた。
流れるように、軽やかに。
不意に、醜い音がして琴の音色がやむ]
…不穏な……。
[切れた琴の弦は、変えたばかりだったと言うのに、そればかりか少年の指先まで傷つける。
朝靄が次第に晴れて行く空を眺めた視線は伏せられて、赤がにじむ指先に舌を這わせながら眉根を*寄せた*]
4人目、修道女 ステラ がやってきました。
修道女 ステラは、C国狂人 を希望しました。
薄紅の衣ははらはらと昼なく夜なく屋敷を彩り
灰橙の雲ははんなりと空を隠し 京の一角を覆っておりました
齢重ねる櫻の地の脈動伝えんとす根に すぅと足を降ろして
死臭物ともせずに 辰星無我は無礼にも君の方へ視線を注ぎ続けていたのです
――と
貴族の眼差しに出会い彼が声を上げようとした時には
ぽぉ
何時の間にか消えてしまいました
5人目、冒険家 ナサニエル がやってきました。
冒険家 ナサニエルは、霊能者 を希望しました。
[宿居の朝。どこからともなく感じる不穏な空気。
笛の音もまた濁るかのよう。用あって先に招いた加持の僧も何やら感じるものがあったという。はてさて、この胸騒ぎが一体何なるか]
……。ゆゆしきことなければよろしいが。
春の曙、風情感じるままに平穏をとく願いたいものよ。
6人目、吟遊詩人 コーネリアス がやってきました。
吟遊詩人 コーネリアスは、占い師 を希望しました。
…ふむ、これは宜しく無い。
[都大路の門の上。
腰掛けて足元を眺める姿がありました。
長い白雪のような髪が殊更目立ちましたが、誰もその姿を気にしたり咎めたりはしないようです。
もしかすると既にそれは、あやかしの見せる幻の中であったのかもしれません。]
[事も無げにひらりと、彼は門の上から身を踊らせました。
ふわりと靡いた衣の裾から、髪と同じ色のふさふさした尾が覗いたのを、誰しも気づく事はありませんでした。
何事も無かったように降り立つと、通りの雑踏の中へ消えて行ってしまうのでした。]
7人目、学生 ラッセル がやってきました。
学生 ラッセルは、おまかせ を希望しました。
[のどけき春の朝と、おぐらき夜の境
夜のあいだに都あそびをたのしんだ悪鬼どもが朝のひかりを避け、薄靄を辿り己が世界へ還る刻限
薄墨の残る小路のかげでひそかに白刃がひらめいた。]
[一刀のもと斬り捨てられたのは獣。
しかし獣は、たおれることなく煙のように立ち消えた。
刃に纏わる僅かな血糊を、紫浮織の袖でぬぐうおとこの
何所より来るを識るものはない。
ただ、そのすがたを見れば何所ぞ公家の従者とでも判ずる――
おとこはそういった出で立ちをしていた。
陽を受けた髪はすこし赤い。]
――まっこと、魑魅の絶えぬ都よ
[おとこは、言葉のほかには
刀を納める音も、少しの靴音も立てず
全く静かに、人の行き交いはじめた大路へと
歩き去って行った。]
−六条邸−
[琴の音が途切れたのを不思議に思ったのか、少年を呼ぶ声が几帳の向こうからかかる]
…問題ないよ、お下がり。
起こしてすまなかったね。
[その声は、静かに声の主を下がらせる。
しばらくして衣擦れの音がして、それは次第に遠くなる。
指から舌をはずせば、僅かに腫れた部分を見てその状況を把握し、問題ないとばかりに切れた弦を張り替えはじめる。
その手付きは慣れていて]
[清い笛の音が途切れて眉顰め。そして]
…しかし…面妖な。
笛の音が濁るのは何かよからぬこと…
[笛が濁れば清さを尊ぶ琴は尚のこと。そうして思い浮かぶのはあの六条の若宮。偶に笛と琴を合わせる仲でもあり。風流な祖父宮とは年離れながらも]
一つ、ご機嫌伺いにでも参ろうか
[自宅へ向かわず、牛車は向かうは六条邸。先触れぬ無礼、お赦し頂けるか。とかく、先に従者を走らせて、答えあれば向うつもり]
[琴とは、縮小された世界なのだという。
上胴の半円は天を模し下胴方形は血を模し。
その長さ、一年を示す三尺六分五寸。
肩幅六寸は六合、腰幅四寸の四時。
弦を押さえるは十三───十二と閏月の数の徽。
そのうちの一本が、変えたばかりなのに、ぶつりと]
…何もなければよいけれど。
[外した一弦を手の内に、少年は呟く。
その聲が空気に溶けたのと同じ頃、再び几帳の向こうから声がかかる。
それは笛の奏者の訪れる前触れ]
…中将殿が?
[少し、考えるような表情。そして少年は答える。その返事は了。
切れた弦を小箱にしまって]
―庭先で―
[不安に陰る貴族の面、かれが何やら尋ねる風であれば
白纏うおとこは薄笑み浮かべ]
さぁ、百鬼夜行も
昨夜そこな通りを横切ったと聞きますから。
――あぁ、いけない。
怯えすぎてはよろしくない。
つけこまれますよ。
[笑みを敷いたまま謂った。
相手がそれを脅しととったか、諭しととったかは定かではない。
去る背なを見て]
都にあやかしの途絶えた試しなどないというのにな。
おかしなことだ。
[わらう。白鳥の式が肩にとまった。]
修道女 ステラは、人狼 に希望を変更しました。
若宮様のご機嫌麗しきことお喜び申し上げます。
祖父宮様、若宮様にお変わりはございませんでしょうか?
[暫し後、宮家の門を潜ること許されて。几帳の向こうより頭を下げる。宿直の疲れは顔には浮かばず、まずは若宮、祖父宮の健やかを祝い申し上げて]
…唐突なお伺いをお許し頂き恐縮にございます。
ふと夜明けに気がかりなことあり、若宮様のお声を頂きたくまかりこした次第。何事もなく安堵いたしました。
[簡潔に用事を述べつつ]
修道女 ステラは、C国狂人 に希望を変更しました。
[几帳の向こうより聞こえくる衣擦れの音、声に少し目を細める。
祖父宮はといえば、来客があっても眠いのであれば眠いと一言のみの様子で結局少年は一人、青年と対することになった]
宿直のお役目を済ませていらしたのですか?お疲れ様です。
中将殿も恙ないご様子、安堵いたしました。
[几帳の向こうへと声を一つ投げる。
青年の気がかりの一言に眉が寄せられるも、其れは几帳によってさえぎられ彼の目には届かないもの]
…気がかり、ですか?如何なされました。
まぁ、何にせよ。
[肩に乗った式はまた飛び立つ。
追うように足を踏み出した。]
よろしくないのは、事実な訳だ。
[開いた門、おんなの居ない屋敷、
死にちかいにおいがする]
方違えしろと謂ったのに、やれやれだねぇ。
[あの従者は帰らなかった。]
は…。今朝がた、某めの笛の音に乱れがございました。
昨今斯様なことはなく、ふと若宮様の琴の音が気がかりとなりまして。琴とは古来より清浄を旨といたします故、恐れ多くもはせ参じた次第にございます。
お心を乱すこと承知の上。どうかこの無礼ご容赦願いたく。
…そうでしたか。
[声の調子が少しだけ落ちる。
少しの間をおいて、口を開く]
先ほど…そう、中将殿のお越しになる幾分前ですが。
糸が、切れました。変えたばかりのものです。
…よほど、荒っぽい弾き方をしてしまったのかと思っていたのですが…。
[そこで言葉が止まってしまう]
随分前と申されますと…やはり明け方近くにございますか?
[やや訝しげな声となるか]
一度僧都に祈祷させるとよろしいやも知れませぬ。
宮様もお身を慎まれてお過ごしなさいますよう。
京は何かと噂立つ街にございます故。
[顰め面で注意促す風だがふと顔緩め]
またそろそろ桜の時期にございます。お花をご覧になる際にはまたお供つかまつります。宮様もどうぞお心安らかにお過ごしあれ。
その頃には祖父宮様にもどうぞまたお出まし頂きたく存じますな。
[ ―――――――――――――― ]
[遠く鳴る] [鐘の聲]
[蒼・銅銀の響き似た 重い音]
[ゆわく耀きざわめく鬼ゝは懼れなすように 消え]
[ぽかぁり] [山査子(さんざし)のような太陽が夜闇を追い払い]
[無我は、あけた平安京(たいらのみやこ)のいずこかより、羅城越えた伏見の方角へ茫とした作り物近しい湖(うみ)の目を*向けていた*]
…ええ、そう…ですね。
[訝しげな声に促されるように声はまた少し暗くなる]
…僧都ですか。若しくは、陰陽師に頼むとでもいたします。
……そういえば、この頃少し変わり者の陰陽師がいる、とか。
一度、会ってみたいものです。
[女房たちの噂話に垣間見た陰陽師の話を持ち出して少しだけ声に思案が混じる]
花、ですか。そうですね…そろそろ頃合でしょう。
ようよう日も長く、暖かくもなってきましたからね。
…そういえば、文を頂いたのでした。花を見せてくださる、と。
[文の主の名前を告げれば、其れは件の大殿]
陰陽師…若宮様がそうおっしゃるのならよろしいのでしょう。
[陰陽寮の者か?にしてもあまり好かぬものではあるが。日の沈む国、呪い事に興じて国を滅ぼしたという帝も知らぬではない]
あの大殿からお招きの文。あの大殿…でございますか?
あちらの北の方はまだ病でふせっておいでの筈。御本復見られたのでしょうか?
[宿直終わり、直に出てしまったからか、あの屋敷での出来事をまだ知ることはなく。屋敷出ればすぐに聞き及ぶことになろうけど]
父、左大臣もぜひ桜の宴にお招きしたいと申しております。
機会があれば我が家の樂等もお聞かせできましょう程に。
久方ぶりに宮様の琴も拝聴したく存じます。
もっとも、独りでは決められません。
お祖父様にも、相談してみようかと。
[微かに几帳に、肩を竦めた影が映る]
…はい、先日。
文には特に書き記したこともありませんでしたので、病も癒えたのではないでしょうか。
[文が既に祖父の手元届いていることも知らず、少し首を傾げる]
大臣のお心遣い、嬉しく思います。
近いうちにお伺いさせていただきましょう。
その折には、是非中将殿の笛もお聞かせください。
[音楽を愛する心が、自然と声を弾ませる]
[病も癒えぬ北の方をほって宴とは。何を考えてのことかは知らないがどうもあちらはいけ好かぬ]
某の笛がお耳を汚すのは恐縮至極にございますが宮様の琴を拝聴できるならいくらでも。
[そういえば自分愛用の二本の笛。一本をいつかの行幸で紛失してしまったのだが]
では某は此度これにて。宮様がお健やかでいらっしゃれば幸い。
また何かの折にお伺いしとうございます。祖父宮様にもどうぞよろしくお伝え下さい。
[深々と礼をし、また二三言言葉を交わしてその場を辞する]
[むごたらしいさまの死人が出たとか。
そのやしきへ、いまは女官はひとりもいない──
都を貫く大路をゆくものたちの口の端を渡る噂は
興味と、恐怖とを帯びていた。]
やはり、女性のほうが喰らい甲斐のあるものだろうか。
8人目、書生 ハーヴェイ がやってきました。
書生 ハーヴェイは、人狼 を希望しました。
[春は、あけぼの──
白みゆく都の空の未だ濃き藍残るに仄白く、浮かび上がるは庭に生いたる山桜。
はらはらと静心なく、真白なる花弁の散り敷く様は、雪と見まごうばかり。
さても不思議な館ではあった。
板敷の床の上には。
彼方には幾巻もの巻物が紐解かれてごろごろと転がり、
此方には珍らかな経を記した折本が無造作に半分ほど広げて置かれ、
という具合に、書の類がやたらと散乱している。
更には、驚いたことに紙縒りの栞が大量に挟まった本──二つ折りにした料紙を綴り合せた冊子本が世に広く認められるのはもっと後代である──が幾つもの小山を成していた。
その真ん中に、これらの書の所有者でもある館の主が、うっそりと横たわっている。]
耳を汚すなんて…その様に仰らないでください。
中将殿の音はとても美しいのですから。
[困ったような音が声に混じる。
続いた場を辞する言葉に影は頷く]
わざわざお疲れのところを、ありがとうございました。
お祖父様にも確かにお伝えいたします。
お気をつけて戻られませ。
[帰ってゆく足音が遠くなれば、今にも沈み行く月を少年の琥珀の瞳が捉え。
傷の少し残る指先は躊躇いを含んで琴の胴を少しだけ*撫ぜた*]
―庭―
[歩めば春から夏へ、秋から冬へ。
庭は移る。ほころぶ若芽や枝先に式が止まる。括る白。
まじない、ひとつ、ふたつ。
ひそり、声がする。
胡散臭そうに見られるも慣れたもの。
それが常である。]
春か、曲水の宴でも見たいものだがね。
[ぐるり、ひととおり何かのまじないを施した後、
改めて櫻の古木を見上げて目を細めた。
琴もいい。和歌もいい。
笛も似合うだろう。
あやかしも舞い踊る春。]
[それが、やおらに起き上がった。不機嫌そうな面持ちで、ばりばりと頭(つむり)を掻く。
年の頃は二十歳から四十の間。
肌の色艶から若くも見ゆるが、目の辺りに尋常でない気色もあり。年齢の定かでない容貌である。
そこそこに整った顔立ちではあるが、それよりも何よりも、眉間に刻まれた深い皺が、この男の気性を良く表しているように見える。]
[誰ぞの遣いの途中であるか、
用など無いのか
おとこは店先を覗いて歩く。
おとこはいま、何を見ているでも無い。
人々の暮らすさまを観るのがこころよいのだ。]
……して、こころの暗きが、あしきものを呼ぶ事もあろうに。
斯様に美しい都を持ちながら、
ひとは何と勿体の無いことをするのか。
[噂の流れるに身を任せ、おとこは大路をゆく。]
ほう?
[笛の音と鶯の声が澄んでからみあう。
見上げる角度をさらに上げ銀糸の揺れるを視界に入れた。]
よい音だねぇ。
[櫻の古木の上の客人に、笑みを向けた。]
御機嫌よう、ってところかい?
[声をかけられて調べは止まり、鶯は枝から飛び立ちました。]
なにはともあれ、陽の下の刻はのどかなものです。
怪しき気配も、今は隠れておいででしょうね。
[自らの事は棚にあげつつ、そんなことを言うのです。]
春は、お好きで?
[羽毛のようにふわりと木から降り、その方を見上げました。]
[宮家を後にし、ふと用事を思い出して戻るのは大内裏。
その道すがら、風に乗ってきたのかどこから聞こえてきたのか、先ほど話題になった大殿のこと。
自身の役割とはあまり関係はないが気になる所はあり、僅かの共を連れ見聞改めにそこへ向う]
[街の大通、道行く人とすれ違い。
そして中に一人、尋常でない気配の赤毛の若者。
見目形、人と変わらぬもその気配だけが気に止まる]
…あれは…たれか?人…であるよな?
―庭園―
あれらは夜のほうが好みであるみたいだしなぁ。
木の上で寛ぐのどかな銀の君よ、
そちらは怪しくないとでも?
[降りてきたその存在へ、
からかい含みでそう声をかけ]
春はいいな。よく眠れる。
[片手を自分の腰にあて、首を少し傾けた]
[視線が、風のように肌を撫でたように思う。
共のものを連れた男が、言った言葉に振り返って頭を垂れた]
これは、失礼をいたしました。
道行を妨げてしまいましたでしょうか。
陽気のうららかなこと、少しぼおっとしていたようです。
[さて、術師の類には見て取れないが。
一体何者であろうか]
そこはまぁ、『お気になさらず』。
[その言葉と共に細い目を更に細めて笑む事で、
大抵の人々は、この若狐の奇行を気にも留めなくなるのです。
適当に誤魔化すつもりで、誑かしているのかもしれません。]
確かに、このような暖かい日に居眠りなどするのも心地が良い。
雨など降らねばなお良いですね。
[はて不思議な気配を持つ青年。様子だけなら常の人。身なりは誰かの共のようだが主はいない。馬上より話す非礼を先ず詫び]
…いや、こちらこそ不躾に失礼をした。少々御身に目がいってしまってな。陽気うららかはよいがそれに酔うて馬にひかれぬように気をつけよ。
所でそなた、このあたりで何が起きたかを聞いておらぬか?
先程妙な噂があってな。これから参る所なのだが。
9人目、牧童 トビー がやってきました。
牧童 トビーは、村人 を希望しました。
[闇夜を影が横切る。細く、小柄な影は、やがていずこかの敷地へと消える]
嫌な夜だ。
[空を見上げて零し、用意された御簾の中へと体躯を滑り込ませた。
そこが彼の根城であり、一つの、牢獄でもあった]
[男が起き上がる寸前まで静寂を保っていた屋敷に、只今はさわさわと、音にならぬ音が満ちている。
夜半から灯っていた燭の火を、ふう、と吹き消したは風ではない。
また、厨から漂う旨そうな香りの朝餉の仕度するのも、人の仕業ではない。
それらそわそわと屋敷中を動く姿無き気配のただなかで一人。
後ろ頭を掻きながら、みきり、と眉間の皺を深くして男は呟いた。]
……一体何処まで行っている。
[*それは、誰への言葉なのか。*]
成る程。
――愛嬌のある『化かし』ならばまだ宜しい。
[真似るように眼を細める。口調は軽い。]
のどかなのはいい事さ。
否、春雨も悪くはない。
雨が降っても血は流れやしないがね。
[ついと屋敷へと顔を向ける。表情は薄笑みのままだ。]
[同じくその屋敷を眺め、柳眉を僅かに吊り上げました。]
臭いますね。
…これは宜しくないやり口だ。
[人よりも勘は鋭いのか、なにやら感じるところもあるようで。]
見目を引くほどの美丈夫でもありますまい。
[軽い声音で応じたが特に笑うでもなく、ふたたび頭を垂れた。
事実、気の緩んでいたのかも知れぬ。それとも、勘のするどいおとこなのだろうか。]
この大路でなにかが起こったという訳では無いようです。あやかしが、女性をあしき牙に捕らえて居るというような、噂を聞き及んでおりまする。
聞けば、さるお方のお屋敷のことだとか。
現場のあらためにゆかれるのでしたら。不調法ではありますが、野次馬ごころで、お供させて頂いても宜しいでしょうか。
[数刻の後、彼は女性の単を纏い寝台へと横になる。御簾の外側に人の影を感じ、目を開けて凝視した]
「今、帰ったか。遅かったではないか」
[掛かる声には返事をせず。衣擦れの音をさせて返事の代わりとする。
それを聞いた人影は、含み笑いと共に寝台の傍へと参り]
「ほんに、綺麗な肌の色だの。白粉の色など私は好かぬ。のう?」
[肌をなぞる指にわずかに眉根を寄せ、目を閉じる]
[冗談ともそうでないともとれる返答。謙遜でも構わないが確かに見目引いてしまったのはなにゆえか]
その髪色だけでも十分目を引く。まぁよいわ。
[今重要なのは青年の言う「噂」。すぐにその顔顰めて]
ふむ…。さようなことが。笛の音は真実語ったか…。
礼をいう。すまぬな。
[馬首返しかけた所に問われることは]
…何?…まぁよい。礼の代わりだ。参るがよい。
但しこれは私の仕事、邪魔立ては許さぬ。
[部下の馬に乗るのならそれを促し。馬を走らせ辿りつくのは例の屋敷]
…これは…何事か…?
臭うか。
さすが、鼻がいいね。
[ちらと銀糸に視線を向ける。
屋敷を巡っていた白い鳥の式がおとこの肩にとまった。]
祟り、だな。
すっかり死のにおいが満ちちまった。
銀の、其方もこんなところに居ては祟りが染み付くぞ?
[世間話のごとく軽い口調は変わらない。]
祟り、ですか。
恨みか…それとも他の……
[白糸のような長い髪を指先で弄び、ふむと考え込むような仕草をします。
馬に乗った御方が此方へ向かってくるのを見ると、軽く頭を下げて道の端へと退きました。]
さぁ、それはおれの預かり知らないところだねぇ。
[銀色に答えると時を同じく馬の蹄の音。
開け放たれた門を野次馬のごとく覗くものはあれど
訪ねてくるものはもはや稀である。]
おや。客人かね?
物好きも居るものだ。
[などと呟きながら、門のほうへと行く。
赤みがかった髪のおとこと陽に透ける蒼のおとこがたたずんでいるのを眼にすると眼を細めた。]
何事とは、見ての通りですな。
[と、少し首を傾けると飾り紐の翡翠が揺れた。]
[野次馬をのけて馬のまま屋敷に近づくと背筋がぞくりとするような。がらんどうとした屋敷。四季で名高い庭も今は趣も感じられず。
道を開けた稀にも見ない銀の男。そして翡翠のひもを垂らした男]
…その方二人。こんな所で何をしている。
そなたらはこの屋敷の奉公人か何かか?ここで一体何があった。
[有無を言わさぬ強い態で問いただす
不躾な願い、聞き届けて頂きありがたく存じます。
[促されるまま、男に従って往く。
屋敷へ着くとすぐさま馬を降りた。
おとこは、人々ではなく白い鳥を目で追った。]
このような、凶ごとのあった屋敷で寛いで居るものが居るとは。
見ての通りといえばおかしな様子にしか見えませぬな。
奉公人――とは、ちょっと違いますな。
おれは、やとわれの陰陽師。
そっちの銀のは、狐の散歩といったところですな。
[おとこの強い口調にも、調子を崩さずそう返す。]
ご存じないと。
[ふむ、とおとこを見て
それからちらと赤みがかった髪の人影にも視線を向ける]
人死に、それも、ただごとではない死に方。
こう謂うべきですか、『祟り』だと。
まあ、それ故おれなどが呼ばれているわけですが。
陰陽師…
[よりにもよって自分が毛嫌いしているもの。確か陰陽寮にも一人、特に性に合わない者がいた]
そしてそこの銀の者がキツネだと?ならばそなた試しにその狐とやらを調伏してみせるがよい。ならば信じよう。
そなたのようなゴロツキ風情から「祟り」といわれても腑に落ちぬ。
それよりあまりふざけたことを抜かすとそのまま引っ立てる。
口には気をつけよ。
して、そなたはここ呼ばれて何をするつもりなのか?
キツネという男と行動しているのか?
[やがて一人になり、焚かれていた香も匂いが消える頃、体を起こして隙間から見える月を見た]
……明日もう一度、行ってみよう。
下調べは入念にした方がいい。
今日はもう、疲れた。
[また、十二単の下へと体を滑らせて目を、閉じる。
気味の悪い空だと思ったが、それでも月は綺麗だと思った]
[この日に見た人の多くが、もうどこかへと逃げた事も知らず――やがて夜は明けて]
[陰陽師と名乗る男がなんと答えても恐らく殆ど聞く耳は持たぬだろう]
…今は私の権限でここは調べられぬ。後ほど検非違使から改めに参る。その際に引っ立てられぬよう注意するのだな。
[自分の後ろに控えるように佇む赤毛の青年に向い]
私は一旦内裏へ戻る。そなたも行くところあれば行くがよい。
近くならば供の者に送らせよう。
[再び馬首を返し、屋敷にはわずかの見張りを置き内裏へと報告に。
近衛府と検非違使も騒然となったに違いない─*]
[蒼いおとこの口調は不機嫌になった様子。
しかしこちらは薄笑みを崩さず。]
お断りします。術は見世物ではない。
[首をゆるゆると横に振って見せる。]
ふざけたことと思うのは御自由に。
なんなら入って御覧になりますかな?
ごろつき風情にに案内されるのが御厭ならば
屋敷の者を呼びますか。
このような状況ですが、
高貴な方の御出でとあっては黙ってはおりますまいよ。
あぁ、口はいつものことなのですよ。
ご忠告痛み入りますな。
[笑んでいる。]
おやおや。
都のお役人は仕事熱心でいらっしゃる。
…そのように荒立てずとも、ま…『気楽に参りましょうや』。
[肩を竦めて、くすくすと笑うのです。]
いえ、只の迷子の田舎者にございますよ。
ちょいと野暮用で人を探しに来たところ、なにやら…きな臭い物を感じましてね。
呪には呪と申します。
祓うために此処に居ります故お察しを。
陰陽寮から正式に呼ばれる方も来られるかもしれませんが。
ああ、そこの銀のとはつい先刻会ったばかりですな。
そこのがどうするかは銀のに聞いていただければと。
[しかし、謂い終える前に蒼いおとこは馬を駆り
行ってしまう。顎に手をやり、くつり笑む]
おやおや。気の短いことで。
本当に、ご忠告痛み入りますな。
せいぜい気をつけるといたしますか。
[白い鳥がまた、肩にとまる。]
[見張りの顔へと眼を向けて]
やれやれ。
本当にきな臭いことだ。
……ところで、そこの式の方は陰陽寮の使いですかな?
[と、赤い髪のおとこに尋ねた。]
……。
申し遅れましたが、わたくし安倍影居さまのもとで仕えさせて頂いておりますもので、鳶尾と申します。
本日は、ありがとうございました。
わたくしは暫くここへ残らせて頂きたく思いますが……礼を伝えておいて貰えますでしょうか。
[どうも嫌な予感……恐らくは事実であろう思いを抱き、わざと、男が去ったあとに残された従者へ言った。]
生真面目な御方だ。
[去り行く馬を見送って、小さく息をつくのです。]
さて、わたくしはこれで。
…先ほどからざわめいていらっしゃるようで、どうにも落ち着かぬのですよ。
[ふわりと一陣の風。
草むらがかさりと音をたてる頃には、白髪の若者の姿は消えていたのでした。]
これは、流石にお目が高い。
陰陽師を名乗られる方に隠しおおせるものではありませんね。
使いというほどでは御座いません。
そう、買出しの途中でよからぬ噂を耳にしましたもので。
そうかい、銀の。気をつけな。
此処じゃ落ち着きはしないだろうねぇ。
[声をかけるとほぼ同時に、
その姿は掻き消えている。
赤い髪のおとこから答えが返ってくると向き直り]
なに、曲がりなりにも陰陽師ですからな。
……固い口調は疲れるな。
[と、言葉遣いを常のものに戻して]
よからぬ噂?此処の屋敷での出来事かい。
人の口に戸は立てられぬと謂うがね。
話が広まるのが流石に早いな。
[人ならざるものが去るのを無言で見送った。
風が、春先の木々を揺らす]
ええ。
都のひとびとは、おもしろきことを求めております故。
……して、御身に祓えそうですかな?
[屋敷を指し、陰陽師らしき男に尋ねた。
力量を見てやろうと、知らず目は細まる。]
おもしろき、か。
[眼を閉じて呟く。
薄く双眸を開くと、声の主を流し見て]
さぁて、どうだろうな。
こいつはちと根が深そうでねぇ。
[屋敷を見て謂う、それはおそらく嘘ではない。]
然様。
これ以上あしきものの呼び寄せられること、無ければよいものですが。
誰ぞの情念か、
心得あるものの悪戯か。
……みたところ御身、自由な暮らしのようですが
悪戯心など、ゆめゆめ持たれませぬよう。
では、失礼。
[軽く、しかし慇懃に頭を下げ、踵を返した。検分を続けるものたちに労いの声をかけ、門をくぐる。
陰陽寮へ声の掛かることもあろう。
また訪れることにもなろう、と。
おとこは屋敷へ路を辿る。
嗚呼すこし、長く出歩き*すぎた。*]
ま、そう遠くなくさっきの兄さんも来るんだろうさ。
其方は此処に留まるつもりかい?
物好きだねぇ。
[首を少し傾けると、前髪が揺れる]
話はおれが通そう。
何、其方の肩書きがあれば問題はないだろうがね。
[陰陽寮か……と小さく呟く。
白い衣を翻し、屋敷のほうへと歩いていった。*]
書生 ハーヴェイは、ランダム に希望を変更しました。
[川辺の草むらにて、白狐は午睡から目覚めたようでした。
一つ欠伸をかみ殺して、いつもの青年の姿へと変わります。
散り行く櫻に背を預け、漆塗りの見事な竜笛を取りいだしました。]
それにしても。
これのあるじは、何処にいらっしゃるのでしょうね。
対なるものは、共にあらねば寂しかろうて。
[笛の嘆きを慰めるが如く、そろりと口を寄せ息を吹き込みました。
流れる川のせせらぎを琴とし、笛の調べは流れて行きます。
習った事のない出鱈目ですから、何処で聞いたとも知れない曲となったでしょう。
いつしか、散りゆく櫻の花びらすらも、その調べに舞いはじめるでしょう。
いえいえ、それすらも…あやかしの見せる一時の夢かもしれません。]
[直垂に袴を膝丈で裁断したような衣服を纏い、昨晩通った道を歩く。短く刈られた髪は、道行く者に奇異に映るかも知れず、それでも当人は気にする風でもなく]
なんだ? 何か、あったのか?
ああ出入りが多いと、今晩は無理だなぁ。
[昨晩入り込んだ邸を遠目に見つめて、近くに座り込んでいた老人に何があったのかを尋ね、答えを得るとやがて引き返した]
[──後刻。
おとこは物言わぬ侍女たちに傅かれて、乱れた狩衣から衣を改めていた。
陰陽寮に出勤するにもこの頃は簡易な狩衣で済まそうとするこの男が、きっちりと衣冠を纏っているのは何を予期してのことか。
女房装束の女が庇まで出て見送るのに、]
留守中に人が尋ねてくるやも知れぬ。
その折は、直ちに知らせるように。
[と言い置いて屋敷を出る。
卑官ゆえ牛車の類も許されぬが、何かと物騒な昨今、下人の一人も連れ歩かぬのも奇妙ではある。
とまれ、ふらりと大路に歩み出た。]
[足を向けたわけでもなく、通りがかった邸の前で、値踏みでもするかの様に塀の中へと視線を送り]
でっかい屋敷だな。確かここは九条の……。
狙うには、でかすぎる。
[中に見える寝殿をみながらぐるぐると屋敷を囲む道を歩く。見れば物乞いの子に見えなくもなかったが、来ている衣服は上物で]
[近衛府に馬を走らせ、検非違使へと使いと検分改めを要求する。
して気になるのはそこにあった銀と翡翠紐の男の二人と赤毛の青年の妙な気配。陰陽師と言っていた。銀の男、キツネとは真か?]
……気は進まぬが…仕方あるまいか。
[陰陽寮へも使いを走らせる。了解を得られれば同行求め、なくとも事の次第寮へも伝わるだろう*]
[やがて東の門まで来ると、通り過ぎながらこそりと中を覗く]
(窺うなら、夜だな)
[通り過ぎると、足早に駆けていく。駆けながら、それでも目線は辺りの様子を確かめるように]
……物好きと申されますか。
都にわざわいのきざしあらば、疾くあるじのもとへ運ぶ文となるは我が勤めのひとつ。
尤も、御身陰陽寮にてみかどにお遣えする身になくば、関わりのあらぬ事ではありましょうが。
[どういった手練手管か、男の”はなしを通す”様子や、飄々とたなびく白き衣に悪しきところあれば見定めんと、周囲の検分と同じく目をそそぐ。因果か禍根か、奇禍に見舞われた屋敷は血のにおいがまつわりつくようだった。]
[しかしその場に長くは留まらず、
失礼、と短く断りを入れたのちにおとこの姿は掻き消えた。]
[つぎに男が現れたのは安倍の屋敷の内だったが、
あるじは既に発ったと聞いては裾の地につく間もなく再び表へ出た。
まさか往来の真ん中へ忽然とあらわれる訳にもゆかぬから、
足を急がせてあとを追う。
あるじは昨夜も書に埋もれていたようだから、暫くは床(しかし床と呼べるものかは甚だ疑問である)に居るであろうと願ったの*だが。*]
―屋敷―
ふ、式神の鑑だねぇ。
[式神のおとこに笑みを浮かべたまま返す。
つぶさに様子を観察する忠義振りに、眼を細めた。
失礼、と掻き消えるかれを見送って]
あの変わり者のねぇ。
[不遜にも呟く。
薄笑みはそのままに。]
[腕を組む。
首を傾けて櫻の古木を見たなら
翡翠の飾り紐がまた揺れて]
今はおとなしいが……
呪がこれで終わるはずはないな。
まったく、根が深いことだ。
[聞いていたのは風ばかり。
どこからか薄い靄が立ち込める。
白い式が薄櫻色に滲む*]
冒険家 ナサニエルは、占い師 に希望を変更しました。
[陰陽寮に出した使いより同行の文を受け取る。
元々いけすかない陰陽寮から誰が来ても変わらないが。
あの屋敷に赤髪の青年を送るよう申しつけた従者が戻る。
そして言伝聞いて眉をしかめ]
…安部の?あの安部影居の者か。
…得体が知れぬのはそのせいだったか、あの赤毛。
主が主なら従者も従者ということだな。
[検分向う準備しながらため息つきつつ]
―件の邸界隈―
[皇族の車にしては華美を欠くのは主の考え方を反映していた。
極端な華美を好まず、目立つを厭う。
人の集まるところをなるべく避けるも同じ理由]
…。
[件の大殿の北の方は没したのだと言う。
和歌の才を持つ彼女との交流の過去ゆえに、少年は弔問へ向かおうと薄墨の絹を纏い、小窓から時折外の世界を眺め]
10人目、村長 アーノルド がやってきました。
村長 アーノルドは、村人 を希望しました。
この今上の君の世も、はるかはるか昔にくらぶれば、こと由々しいものになったものよ。
怨霊、物の怪の類は、まこと静まる気配は見せぬ。
この流れる風も、嵐山はたまた丹波から叫んでいるものであろうか。
[男は自室の一角から西の空を見上げた。]
[邸まで戻り、重いと文句を口にしながら十二単を纏い、鬘を頭に被る。申し訳程度に白粉をつけると、日課にと申し渡された歌を詠み始める]
……。
(教養は大事だって言うけど、歌なんておれには関係ないのになぁ。文字を読めるようになったのは感謝してもいいけど)
[声には出せずに、筆を紙へと走らせ、出来上がったものを見てから床へと投げる]
[件の邸へやった前触れが戻ってくれば、止まっていた車に近づく。
その答えを聞けば琥珀の瞳は瞬き]
……叶わぬ?
[大殿に断られた、そう彼は告げる。
少し黙って、それから小さく頷く]
邸へ戻る。
…大殿には悪いことをした。
[丁重に謝罪をしてくれるように先触れの男に頼むと、その車はゆっくり六条邸へとの帰途をたどり始めた]
[見張りの者に視線をくれると
睨むような視線が返ってくる。
白装束のおとこはやれやれと肩を竦めた。]
こんなのがまた増えるのかねぇ。
[木に凭れて笑みに似た形に眼を細めた。]
[いくつか投げられた紙は全て書きかけで、歌として完成してるものはなく。付きの女房がそれらを拾い上げてまた小卓の上へと戻す。
御簾の外に誰もいないのを確認して]
よくわからないものはかけないよ。
後で一首は考えるから。
[香炉に火を入れ、今度は半紙に向かい、墨を落としていく]
[例の一件はどうやら主上の御耳にも届いたものらしい。
出仕して陰陽寮に顔を見せた早々に、怪異を収めよとの内々の沙汰が下されたとの話を聞かされた。
折も折、検非違使より使いの者が現れ、近衛の筋を臭わす文が届けられ──
そして今、こうして件の大殿の邸に出向いていたという訳なのだった。]
[描かれたのは六条邸から今日見た邸への道筋を記した絵図。
そして九条殿まで延びる一本の線]
今日は偵察だけにしとこうか。じっくり攻めないと、捕まったときがまずいから。
[描いた半紙に墨を塗りつぶし、丸めてまた床へと]
[暫く後。
陰陽寮から派遣される官人は…あの安部氏。
唯でさえ陰陽師は好かぬのによりにもよって彼と同行か。
しかしこれも仕事、彼と挨拶かわし再度検分の為に屋敷に向かう]
影居殿。この屋敷だ。
貴公、何か感ずることはあるか?
[先に彼にははぐれの陰陽師らしきものがいる旨を伝えている。
どうやら物盗り等の気配もなさそうな。それゆえに同じ陰陽師の彼に問うてみる]
―大殿邸、庭園―
[都びとは、おもしろきを望んでいる。
赤い髪の式神の言葉を思い出し]
死体なら、羅生門に行けばやたら転がってるだろうに。
[庭木の、花のにおいが漂った。
にわかに騒がしくなる。
恐らくはあの中将の謂ったものたちが到着するのだろう。]
賑やかなのは結構だが、
出来ればたのしい方がいいねぇ。
[枝に結んだ呪をちらと見る。
薄櫻の花びらのように滲んでいた。]
[相も変わらず眉間の皺は深い。
それは、こうして遥かに高位の公達を目の前にしても変わることはないようだ。
きちんと衣冠を調えているのはそれでも殊勝なこころのあらわれか、それとも何らかの思惑あってのことか。]
ない…と申せば嘘になりましょうな。
さて。どうしたものか。
[ぼそり、声低く答えた。]
―六条邸―
[途中、少し思い立って市に寄り道をしてから邸へと戻る。
包みを抱えながら、出迎えの侍従に声をかける]
弥君様は、お目覚めかな…?
[祖父が迎えた病がちらしい少女の様子を訪ねる。
彼女を迎えてから祖父は何気に毎日が楽しいようで。
少年はといえば、同じ年の頃の姫君に少し戸惑いもあれど、彼の気質的に病がちの姫に気を使わぬはずもなく、今日とて叶えばという淡い期待の元に侍従に訪れの不可を訪ね、それ故に彼女は少年の代わりに先触れとして新米姫君の元へ訪ねる]
[あるじはすでに陰陽寮へ向かったというから、日差しのうららかな路を急いだ。先刻屋敷へ赴いてより衣へ纏わるよからぬ匂いと気配が、空模様とは裏腹に、心持をわるくさせる。]
[果たして陰陽寮へ着いたとあれば、あるじは件の屋敷へ向かったという。どこで相を違えたか、どうにも無駄足の多い日と、一路、件の屋敷へ。]
[必要最低限しか答えないこの男にそれを窘めることはなく]
何かある、ということか。
そういえば貴公の従者らしきものとここで出会っての。
別れてからもしばしここにいたそうな。
何か聞いてはおらなんだか?
[感じる気配はやはり何かうすら寒いもの。
庭へと進むと例の…翡翠を垂らした自称陰陽師の影みゆる]
[床へ寝転んでいたところに、女房から耳打ちをされ、若宮が来ることを告げられると、面白くなさそうにしぶしぶと起き上がり、扇子を手に取る]
(宮様ねぇ。同じ年頃ったって、住む世界が違うからなぁ。ぼろが、出ないようにしないと)
[わずかに緊張した面持ちで、喉に手を伸ばす]
[従者に話が及べば、僅かに縦皺が深くなったようなようにも見える。]
ええまあ。
遠近(おちこち)を探らせて居りますので。
[近衛中将の後に従い、庭へと進む。
視線の先にそのおとこは居た。
先に話に聞いていた、はぐれ陰陽師である。
──やはり眉間の皺はより深くなりこそすれ、浅くなることはないらしい。]
[凭れていた庭木から体を離し、組んでいた腕を解いた。
頭を下げる。翡翠が揺れた。]
お早いお着きですな。
先程の――中将殿。それから、ああ、やはり安倍の。
早速、検分をなされるのですかな。
[揺れる飾り紐に翡翠。この風体、まさしく、]
……お前か。
また嫌なところで会うものだ。
[への字に曲がった薄い唇が、苦々しげに吐き出した。]
[若い面に似合わぬ皺刻む様]
…変わらずに深い眉間のしわだな。
その溝埋めるには唐の物語のように五色の石を練って埋めねばなるまいか。
[引き出すのは史記の一。そして翡翠揺らすはぐれの陰陽師に目をやると]
その方まだこちらにおったのか。未だ知り足りぬことでもあったか。
[侍従が戻れば、少年は包みを抱えながらあまり足を踏み入れぬ邸の一画へと向ける。
板が軋む音を少しだけ伴いながら少年は扇広げた少女の間へ足を踏み入れる]
失礼致します、弥君様。
今日は、お加減がよろしいとのことですが…
[声に少しだけ不馴れな空気滲ませて、包みを抱えたままで遠すぎず近すぎない間合いを自然と取って腰を下ろす。
香に少し混じる香りや小卓の上の文箱に気付いて]
…何か、手習いでも?
[小さく首をかしげる]
[検分と見張りをおこなうものたちへ軽く頭を下げ――あるじがさきへ来て居るからか、止められることは無かった。侘しきが美しさに取って代わった邸内、その歩みにはやはり音無く庭へと入る。]
[生温い]
[陽気][うららかなる黄色き陽光は邸を妖しげに揺らめかせ]
[顔定かならぬ者達は遠き潮騒のように耳元で囁き合う]
[大殿の眠る処]
[げこり] [庭の片隅 冬眠よりよみがえりし蛙一匹 朱墨で描いたように地から這い出死んでいた]
これはまた、お久しぶりですな。
厄介ごとにはお互い何かと縁があるようで?
[苦々しく謂う陰陽師とは対照的に
白装束は薄笑みを浮かべたまま答えた。
中将のほうを向いて]
おれの役割は此処の怪異を祓うことでして。
昨日の今日で立ち去るわけにもいきますまい。
…お弔いがあるのですかね。
悲しみの匂いがいたします。
[風が焼香の薫りを運んだのか、狐は鼻をくんと鳴らしました。
せせらぎと戯れる一時は過ぎ、鳥達も飛び去って行った後のことです。]
そういえば…あの童も不思議な方だ。
男童かと思うたのに、白粉の香りがするなどとは。
[河辺で見かけた彼の人の事はなんとなく気になってしまっていたのでした。]
[御簾の向こうに若宮の姿を認め、喉を押さえて苦しげに声を出す。震えるように掠れる声は、女性であるかのように]
……、わざわざこちらまでありがとうございます。
わたくしのご機嫌など、若君様のご足労に比べれば、何一つ遠慮することなどございませんのに。
[首を傾げられ、問われると、和紙を手に取り]
少しばかり、歌を詠んでおりました。人に見せられたものではありませんが。
[自分の言葉に、扇子の裏で舌を出しながら向かいの若宮を見つめる。よく見えなかったが、儚いような雰囲気に感じ]
[胡散臭い彼を信じる気にはならないが影居とは顔見知りの様子。
ならば陰陽師であるのは真だろう]
ふん…。ではそなたに問うか。
ここにあるのは一体何か?入った瞬間から何やら蠢く気配がする。
私のような者にも感じるとなれば陰陽師はさらに克明に知れる訳であろう。詳しく申してみよ。
して、そなた誰に頼まれここに来たのだ?私が来る前からおったな?
誰がどのようにしてここを知りそなたに祓いを命じたのか?
[皺についての揶揄には答えず、]
ご忠告申し上げますと、中将殿はこの一件、早々に手をお引きになった方が宜しゅうございますな。
この者が関わって参ったからには。
[ひたりとはぐれ陰陽師に目を据えつつ、寂びた声で述べる。]
[カラカラカラ] [カラ] [カラカラ]
[地を駒如く廻る木の葉] [空を埋める紫と黄金に照らされ]
[春というに 寒々しい音を立てていた]
―――――――羅城門
[晴れる事なき怨念が場]
[絵師が墨を薄めずにえがいたとし どんより濁りこごった斯様な重さを表現できようか 末端より腐敗す醜き肉塊 更には鬼に貪り喰われる貧しき者達を 剥ぎ 剥ぎ 怨嗟は都の空気の中へ 輪ィン 輪ィン と広がってゆく ――其は 水に落とした墨の様に]
[ほんの少し首を傾けて中将を見る。]
此処にあるのは『祟り』。
四辻に埋められた、死のにおい漂う強力な呪い。
大殿様と、この屋敷に向けてですな。
遠くなく屋敷に居るものにもそれが及ぶこと、
疑いようがありますまいな。
[ふ、と眼を細めて]
さる高貴な方から。
なに、皆怪異は恐ろしいのですよ。
それがおのれに降りかかるやもと知れぬなら尚更だ。
[人の弔いの作法など、狐の彼には分かりはしませんでしたけれど、
笛は手向けのつもりか、物悲しげな調べを奏でるのでした。
それはとてもひそやかなものでしたが、遠くの方の心にまで染み入るように届いたかもしれません。]
[数える程しか聞いたことがないけれど彼女の声は少年が知っている女性の中でもとみに低い部類に入るが、かといって、其れは耳障りというわけではなく独特の親しみやすさがあると少年は感じており]
いえ、姫君のもとに伺うのに礼を欠くようなことがあっては、おじいさまに叱られてしまいます。
堅苦しく思われるでしょうが、どうぞお許しください。
[歌と聞けば少しだけ表情が綻んで]
そうでしたか…弥君様がどのような歌を詠まれるかは存じ上げませんが…上手い下手よりも、楽しむことからはじめられるのが宜しいかと。
時が経てば慣れて歌の道も上達いたします。
[檜扇の向こう側の瞳がこちらをじっと見ているのが気がついて、少年はもう一つ、ふわりと微笑む。
それから、思い出したように膝の上の包みを少女の傍仕えの女房に取りに来てもらう]
今日は、外に少しばかり参りましたのでその土産をお持ちいたしたのです。
甘いものは、お好きでしょうか?
11人目、見習い看護婦 ニーナ がやってきました。
見習い看護婦 ニーナは、おまかせ を希望しました。
陰の気が濃いのか…
妙に陽を求める気が多い。
[ふと漏らし空を見上げる禿(かぶろ)の男。
背負うは薬、歩くは道。
仕事終わらばつくは溜め息]
同業が居るのか…?
やれ。祟られなければ良いが。
[ぽつり。呟くも怯えは見えぬ]
[眉間の皺も深い影居と、
その後ろの赤い髪の式神に眼を向ける。]
――あぁ、すれ違っていたのかねぇ。
[と、それは式神に向けた言葉。
寒々しい木の葉の音。
その風の一端が髪を結わえた紐を揺らした。
からん、と翡翠同士がぶつかって澄んだ音をたてる。]
厭な風ですな。
[ちらり、とそらを流し見た]
12人目、お尋ね者 クインジー がやってきました。
お尋ね者 クインジーは、おまかせ を希望しました。
−路地−
[朱の正装に帯刀といういでたちで、富樫影秀は屋敷へへと向かっていた。
”人喰いの討伐”それが彼に与えられた任務であった]
人を喰うなど、にわかには信じられん話だ。実際に見てみるまでは何とも言えぬが。
都への報告を先に考えておいたほうがいいやもしれん。
吟遊詩人 コーネリアスは、霊能者 に希望を変更しました。
13人目、医師 ヴィンセント がやってきました。
医師 ヴィンセントは、C国狂人 を希望しました。
確かに祟りだのは近衛府は勿論検非違使の管轄でもないがな。
その件についてはそちらにまかせるさ。
…その方らの力だけで済めば良いことなのだがね。
何やら別件でも起きそうな、そんな予感もせぬわけではないのだよ。
[翡翠の男が呟く。後ろをちらりと見やるとなにやら赤毛が眼の端に映る。あの青年か?いつの間にここに?]
[あるじの言葉無き叱責に、下げたままで居た首だったが
もうひとりの陰陽師へおもてをあげ、余計な事は言わなくて良いと目で告げた。]
──が、もう遅いかも知れません。
[ぼそり、呟く。]
中将殿の予感・・・と申し上げて宜しければ、それは当たっておりますな。
だからこそ・・・なのですが。
[やがて、ある屋敷の前を通り過ぎ。
…否。通り過ぎようとしていた。
しかし、其の足は立ち止まり、目は門よりも奥へと向け]
役人…検非違使?
物々しいことだ、な。
[目を細める。
見聞をしている姿、話をしている姿…
じぃ、と見ている]
…重い。
[ぽつり。呟く言葉は屋敷より感じる空気の事か]
[甘いものは、と聞かれしばし考え込んでいたが]
贈り物などもらえるような身分でもありませんのに。
お心遣い、なんとお礼申し上げてよいか。
わたくしに持ってきていただいたものでしたら、受け取らない理由などありませぬ。
[女房に目配せをすると、受け取るように指示を出す]
[二人の意味ありげなやりとりは陰陽師たる故か、と特に深くは聞きたださぬ。しかし影居より勘も当たるといわれると]
…まぁよい。この屋敷もその「祟り」というものなればこの取り調べは陰陽寮を主に進めた方がよいのかもしれぬな。
管轄において全くの無関心という訳には参らぬが。何かあればこちらも動けるよう準備はしよう。
[回りからは陰陽寮、検非違使の検分役が戻ってくる。影居と自身に対して何やら報告を]
有難いことですな。
[野次馬は途切れることはないが、
検非違使やら陰陽寮やらの役人が居る今は気後れするものも多い様子。
その中で、ひとり眼を逸らさず見ている者が居る。
流れの薬売りだろうか。]
――おもしろきを求める、か?
[ちらと見遣り、呟いた。が、すぐ逸らしてしまう。]
[返ってきた言葉に、目元緩ませ微笑み]
いえ、自分で食べたくて、使いのものに頼んで用意してもらったのです。
どちらかといえば、お土産というよりも、お裾分け、でしょうか。
[包みを開ければ仮にも親王が手にするにはあまりに簡素な笹の包み。
開ければ現れる、蓬餅と椿餅]
……弥君様のお口に合えば、よいのですけれど。
[女房に預けたあとの少年の瞳には少しだけ不安げな気配もあり]
[緩く。しかし、しっかりと。
其の目は様子を見ていた。
…やがて、一人の男と目があった]
…
[細めていた目を戻す。
既に、彼方の目は此方を見ては居ない]
見過ぎた、か?
[ぽつり呟くも。咎められる気配は無いと感じたのか、また目を細め。
今度は其の男の周りを見るように。目が合えば逸らせるように]
気になる。が…
はて。この屋敷の気の方が気になるのか。
それとも。あの男の方が気になるか…
……この場へ引き寄せられてか、
既にあやしのものなども集いつつあるようです。
先ほども……
[検分役の報告へそっと付け加えるようにして、ようよう口を開いた。]
[女房から餅を受け取り、口に運ぶ。蓬の風味が鼻腔につき、餡の甘さが口に広がる。一口食べたところで]
なんて、甘い――。
[ここに着てから、幾度と甘いものも食べたが、上品過ぎて口には余りあわず]
ありがとうございます、若君様。
明日にでも、わたくしの方から御礼をお持ちいたしましょう。
[蓬餅の味は、舌に馴染んだ味で、扇子の裏で美味しそうに残りを口に運んだ]
[おとこの髪は色あせたように薄茶のいろに濁り、痩せた身体を覆う墨染の法衣はところどころ破れている。]
なれぬ車に乗せられ ゆうらり ゆらり
久方ぶりの京の都へ
・・・不思議なものだ。
数年前の記憶すら無いのに、この場所のことをわたしは覚えている。
[「兄」であるはずのおとこから送られた文と、迎えに寄越された仰々しい車。車になかば強引に押し込まれ、都へ向かう道中、ゆれる車蓋に頭をぶつけたことを思い出して、唇の端を歪め、おとこは呟いた。]
[ぐしゃり]
[無造作に伸ばした、長く色の悪い腕が押しつぶしたものは、ひとの頭蓋だった。おとこのゆびさきに、誰の物とも知れぬ毛髪が絡んだ────そう、おとこが寝転んでいるその場所は、]
──羅生門・内部──
[その場所は なつかしいにおいで満ちていた。]
人が集まってきたな。ではこちらも早々に引くか。
検非違使から出す検分の報告書をそちらの所感と合わせ近衛府まで提出願いたい。結果により今後を検討しようと思う。
影居殿はよろしいか?
そして陰陽師よ。そなた名を聞いておこう。また会うやもしれぬ。
私は近衛中条橘智鷹じゃ。
鳶尾──
[振り返らずに後ろに声を掛けた後、
改めて中将に頭を垂れ、]
中将殿。
この者は私の召し使う従者にて、この後色々と御前に姿を見せることもあるやも知れませぬ。
その折はよしなに──
[少しだけ神妙な面持ちで蓬餅が口に運ばれるのを見ていた瞳が、少女の評価がよいものだったものだからやっと微笑みに変わる]
…よかった。
お口にあったようですね、安心いたしました。
[初めて聞いた気もする感謝の言葉に、少し照れて、そして慌てた様子で両の手を宙にもたつかせて]
あ、い、いえ!
喜んでいただけたのなら、何よりなのですから。
弥君様の、そのお心だけで、その、十分、です。
[頬の上、一足早い僅かな春の色]
にびいろの空は 湿り気を帯び
まるで夜のような黒色をまじらせます
屋形を覆う不吉なかげに 空がさそわれたかのごとく
ぽつり
一滴だけ 雨が──
[薬師はまだ此方を見ていた。
呪いや怪異はひとを呼ぶのであろうか。
むしろ、呼ぶこともまたひとつの呪いではなかろうか。
そのようなことを思う。]
これは、御丁寧に。
おれは――白藤。
[恭しく礼をする。]
呪いに関わるなれば、またお会いすることもございましょうな。
[やはり、笑み浮かべたまま。]
[1]
[2]
[3]
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