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[目を見張る。]
すごいわね。
それにあなたが気付くくらい、時が経ったのね。
―――きっと。
[目を伏せる。]
ちょっと語弊があるかな。
この聖杯戦争は、この聖杯戦争だけ。
まったく同じことが繰り返されてるわけじゃないわ。
繰り返してるのは、舞台と、ここにいる人たちだけよ。
― 2F・廃ビル屋上 ―
[――――かくして、現世に蘇りし創世の神話は終わりを遂げた。
空を覆っていた轟雷は、静かなる暗雲を残して静まり返り
街を覆っていた暴風は、人の叡智を罰せんとした石像を塵と還し
地を覆わんとした溢水は、一つ残らず枯れ果てた。
最後に残ったものは、
――破壊し尽された大地になお芽吹く、生命の兆し。
ささやかに、それでも力強く根付くその花は、
天よりもたらされた雨粒によって、徐々に潤されていった。]
――天地の理を、人の叡智を以って解き明かす。
神の造形に、創世せし大地に。人の身を以ってなおも挑む。
……キャスター。貴君なら。
自身の知が何に届き、何に届かなかったのか。
きっと、誰よりもよく知っているのだろうな。
……ならばこそ。
貴君に前に俺が立ち塞がるは、必然の理であったか。
――――そして、再戦の機会を失ったこと。
惜しく思うぞ。アーチャー。
貴君の見出した頂の真髄。見事であった。
[夜明けを思わせる菫の彩り。
今もなお名を遺す偉大なる芸術家の墓標。
――寂れた風をも包む光の輝き>>526によって、淡く照らされる。
刹那の視線の交わりに、鎧の兵は静かな目で応えた。
怒りも、憐れみも、憎しみも無く。
少年を引き連れ、未来の光へ包まれる騎士を、見届けた。]
――今一度問おう。
この場にて初めに目にした景色。
貴君は今もなお、この戦、彼女の戦に於いて、不要であったと。
そう思うか。
[問いかけるはアルフレートへ。
声色は、すべてが去った荒涼の破壊痕に於いて、より静かに響いた。]
[儚げな美しい人の姿は、今はっきりと形を取り輝くような気品に彩られた。
見惚れてしまわぬように少しだけ視線を動かすと ]
様はいらないよ。ヒイラギって呼び捨てにして。
呼びにくかったらhollyでもいい。
僕はあなたを何と呼んだらいいかしら?
[返事を待つ間もなく、小さな欠伸を一つ落とすと…]
ごめん。また明日ゆっくり話そう。
[親方の使っていた部屋とは別の部屋を宛がうと自室のベットに倒れ込んだ…**]
あれを不要といえる人物は間抜けでしかない。
貴様、私を侮っているのか?
[最初に見た光景は闘いとは結びつかなかった。
しかし、ここまでの流れを見てしまえばそれは間違いだと確信できた。]
凡そ闘いとは結びつかないあの英霊。
それがアレだけの力を見せたのだ。
どうして、それを不要といえるか。
そうねえ。
[窓の外を見る。]
どう言えばいいのかな。
―――あなたが忘れてる過去なんて、別にないのよ。
あなたが見てるのは、まぼろしだわ。
あなたとは違う人の過去が、まるであなたが間近に見たことのようにフラッシュバックするのは、少し不思議よね。
けど、それはあなたが、いや、違うな。
あなたや私が。
ちょっとだけ、特殊な生まれ方をしたからよ。
あなたは、生まれたばかり。
私もね。
ま、「繰り返してる」分を入れたら、それなりの歳だけど。
[ウインクする。]
繰り返している分をいれたら。
それは、単に聖杯戦争が”複数回”繰り返されている、とは別の意味ですよね?
そもそも、聖杯戦争を行っている時間軸自体がループしている。
それならば、僕は夢でみた僕とは厳密にはつながっていない可能性がある、って事。
貴方も、そうだって事ですか。
それと、あなたはアサシンの事も知っているって事なんですか?
[であったとすれば、それはそれで別の疑問が沸く。
繰り返しを行っていれば、あの夢の中でシェムハザと組んでいなかった事が説明がつかない。
何故、僕はシェムハザと契約していなかったのか?
そして、繰り返しは何故起きているのか?]
・・・・・・繰り返している事、アサシンは知らないんでしょうか。
―西ブロック 洋館東屋―
――、……?
[ 目を逸らされたのにははたと瞬いたが、続く言葉の方が重要だ ]
……貴方がそう望まれるのなら。
では、ヒイラギ、と。
私は――……
[答えるより前。
小さな欠伸とともに、少年は寝台に倒れ伏す。当然だ、創世記をこの世に描き出すような、荘厳なる宝具へ魔力を注ぎ込んだのだから ]
……ええ、おやすみなさい
どうか、良い夢を。ヒイラギ。
[そっと、肩まで寝具をかけて、
あやすようにひとつ、撫でさする。 ]
[ 寝息が聞こえて、
深い眠りにつくまで側に控える。
やおらクレティアンは祈りの形に手を組んだ。]
ミケランジェロさま。
……貴方の大切な主を、お預かりします
[ どうか、お許しください。
祈りと懺悔。
組み合わせた手を解くと、
淡い緑の光が、リュートに変じてクレティアンの腕に抱かれる。 夜を震わせるのは捧げる調べ。
静かに、静かに、染み渡る**]
― 2F・廃ビル屋上 ―
[答を返すアルフレートに、ランサーは顔を向けずに、瞼を閉じる。]
――――、
その言葉は、彼女に対する賛辞であり、弔いともなりましょう。
……俺は、根源とかいうもののことは分からん。初めに貴君に言ったように、魔術の如何についても無知であると言えるだろう。
だが――、それが貴君が定めた頂で、届かせんとするならば。
……どれほど無駄に見えるもので、どれほど滑稽に見えるもので、
……どれほど自らが愚かだと嘆くことが出来るとしても。
目指す場所が、
――彼女らが見せたような何がしかの頂であるならば。
一つとして無駄なものなどない。
多くを見よ。
多くを知れ。
はなから何かを切り捨てるのではなく、
よく見定めた上で判断するのだ。
貴君が、真に頂へ届かんとする限り――、
何を切り分けるべきかを悩み、在り様を確立することは
確かな力となるだろう。
厳密には、って言うか、そもそもつながっちゃいないのよ。
あなたは、あなた。
この時間軸は繰り返してるけど、あなたが見てる夢はこの時間軸とは違うし、その時間軸にあなたはいないのよ。
そこにいたのは「あなたみたいな人」だけ。
ま、「私みたいな人」もいたかな?
[茶目っ気たっぷりに笑う。]
この「塔」には、その時間軸を擬似的に繰り返すために聖杯を機関として働く極めて複雑な呪いがかけられたの。
その瞬間、あなたは生まれたわ。
私と同じように。
……………、すまんな。
貴君があの路地裏で、自身の在り様を悩んでいた時から、俺の考えをどう貴君に伝えるべきか、ずっと考えていたが。
やはり、俺は頭も口も、上手くないようだ。
――――ここ数日、貴君の意に背いてすまなかった。
後の戦いは、貴君の判断に委ねよう。
どのような判断にも異を唱えはせん。
それが――貴君が悩み抜いた、頂へ到る道である限り。
…………期待している。
[言葉を選びながら、ゆっくりと。
雨の降る廃墟の上で、ランサーは霊体と化し、*姿を消した。*]
その呪いをかけたのが、あなたの言うアサシン。
[少し屈み、ブライの鼻先に指をつきつける。]
いーい?
本当の意味で「時間を繰り返す」なんて魔法みたいな真似、そうそうできやしないのよ。
できるのは、状況を再現し続けることだけ。
それだって、聖杯とこの「町」の人たちを利用した非永久の機関を利用して辛うじて実現してることよ。
ま、現代風に言うなら、横に積んでる100円玉が尽きるまで限定のコンティニュープレイってとこね。
その始点にあなたの言うアサシンは何度も立って、何度も自らの望みを叶えるための戦いに身を投じてる。
ま、これも現代風に言うなら、何度も100円玉入れてるのにちっともクリアできない、いいお客さんってとこね。
[笑う。]
―――その始点で、私たちは生まれたわ。
[ぱ、と手を広げる。]
私たちは、それまでの私たちじゃないの。
呪いと聖杯、この「塔」が生み出したNPCよ。
そのことにあの野郎が気付いてるかは知らないけどね。
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