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[屋敷の主人は暫く会えないらしい。
別に今の自分に主人に会うことは特に重要じゃない。
部屋から出て、回りを見渡すとあるわあるわ人形だらけ]
…ふん。モノは悪いわけじゃないらしい。
こんなもんにはまだ用はないんだが。
(感傷に浸るのは、まだ早いわ…
私は…私の成すべき事をしなければ…)
[部屋のドアを開け、先程奥にちらりと見えた大きめな部屋に向かった]
[ステラが二階を歩き回る前のこと。
自身も二階をぐるりと見渡してみる。奥にやけに大きな扉が目に入り、それを見据えて少し口端を持ち上げる。
どうも廊下に飾ってあるだけの人形でもいい値段はするのだろう。
そしてあの扉の奥。何かありそうだ。
そう思ったのは長年の勘。まだその「必要」はないか、と昨日コーヒーを飲んだ食堂へと]
…おやおや、先客がいたかい。
[そこにいた人に軽く挨拶を交わし]
【二階展示室】
[壁一面、あらゆる所に並べられた人形。
その瞳はあらぬ所を見つめているような、それでいて何かをじっと見つめているような。
視線の合わない人形の瞳のひとつひとつを、じっと見つめた。そのガラス玉の奥を。]
…待ってて。
私も、すぐに…。
[誰にともなく呟き、目の前の一体の人形の頬を、そっと撫でた。]
(あまりこの場所に長居するのはよくないわね…。
何故なら私は、[偶然ここに導かれた修道女]なのだから…)
[頭を軽く振ると、顔に微笑を浮かべる。何事も無かったかのように。
そして、意識して、足跡を鳴らして廊下を歩く。そう、普通の人間がそうするように…。]
【一階食堂】
[ 軽く食事を済ませたハーヴェイは、熱いコーヒーの注がれたカップから立ち上る湯気を眺めながら、やはり物思いに沈んでいた。
連絡の途絶えた妹。
ただ単に、多忙なだけかも知れない。半年やそこら連絡がなかった事などは今までもあった。
「――今度、あの人形を作っている方のお屋敷を訪ねる事になりました。帰ってきたら、また手紙を書きますね。楽しみにしていてください。」
……最後の手紙にあった、その文面。
それがハーヴェイの頭の中で繰り返し思い出された。
――その時、ハーヴェイに声を掛ける者がいた。
はっと我に返り振り向けば、そこにはどこか落ち着かないふうのシャーロットの姿があった。
いくつかの言葉を交わす。
用が済んだから家に帰ろうと思ったとシャーロットは言う。取り乱した姿を見たハーヴェイには、その言葉をそのままに取ることはできなかったが、その疑問は口にせず話を聞いていた。]
[ そこに、見かけぬ男が現れた。
その男は、人懐こそうな笑みを浮かべながら軽い弔すの挨拶を飛ばす。モーガンが言っていた、新たな客人なのだろう。
笑みを浮べ、挨拶を返す。]
初めまして。私はハーヴェイ・ウォルターズ。
こちらには、取材でお邪魔しています。
あなたは……人形が好きという雰囲気には見えないですね。商談か何かでこちらへ?
[廊下を歩いていると、階下から人の話し声のようなものが聞こえた。]
…先程お会いした二人が居るのかしら。
[階段を下り、声のする方に歩いていくと、食堂のような部屋が見えた。
中をそっと覗くと、やはり先程の二人と、見知らぬ青年と女性の姿が見えた。
新しい顔ぶれに少し驚きつつ、笑顔で会釈をする。]
商談?…あぁ、そんなとこ。
[実際自身は商談やらなんやらと高度な取引はできないが]
初めまして、ハーヴェイさんな。俺はギルバート。ギルバート・スペンサーだ。
人形に興味なさそうかい?
別にそんなこたぁないけどね?
[人形そのものよりもその人形が生み出すものに興味がある、とは流石に言わずに]
おにーさんはここに何しに来たんで?
興味があったりとか?
それとも
[ちらりと視線は落ち着かなさ気なシャーロット]
わざわざお嬢さんを慰める為にここまで来たとか?
[近くにあったメイドに習った通り、飲み物を持ってくるような指示を出しながら]
―一階:食堂―
ここに居る事にしたとはいえ、長く居るつもりはありませんよ。
モーガンさんが出かける時に、一緒に出るつもりです。
[シャーロットは、ハーヴェイにそう言う。
ハーヴェイが何かを感じた事に、シャーロットは恐らく気づいてないだろう。
ハーヴェイとやりとりをしていると、ギルバートとステラが別々に食堂に入ってきた。
シャーロットは軽く頭を下げ、メイド人形に差し出された紅茶を口にしていた。]
ねぇ……
ポットを一つ、貰えないかな。
私の部屋、水道もなくて……
水飲むのにも、ここに来なきゃいけないのが不便なの。
[言葉で答える事のない人形に、そう言う。
メイド人形は、キッチンからポットを持ってくると、シャーロットに差し出した。]
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