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[凍れる英雄の心は、まだそこにあるのか。そこにあったのか。低い囁きと榛の色>>205が答えを報せる]
……お リン
[人よりは蹄もつ獣めく、エルラムの鬱金の虹彩が翳った。
細まる瞳孔の黒が英雄を覗き込む。
緑はオーリン自身を種として、加護の力を糧に芽吹くもの。毟る先から伸びるそれを掻き分けて手を伸ばした。
逞しい胸を侵す萌の徴の隣へ、手のひらを当てる]
▓ ░ ░▓▒。
[息衝きを確かめるように、鼓動を指摘するように。
貴方を助けます、と再三繰り返し告げた声を覚えていないとしても、同じ言葉をもう一度]
[エルラムの体を離れ、新しい楔となった萌の徴>>126
緑は囚獄であったと同時、
はぐくみの揺籃でもあった。
緑は神糸を断つ絶であったと同時、
人間へと近付けて繋ぐ絆でもあった。
狂詩の落とし子を【萌の英雄】として立たせて
いたのと同じ封印の徴へ、這わせた指の爪立てる**]
……オーリ ・ぅル░死んだらな、
新し▓ァなた█、何者░なり▒ か ?
[英雄は項垂れた格好の侭ゆっくり首をふる。]
奴は死に、あるのは凍れる英雄だけ
後悔はしていない
契約は為さねばならん
[独白は続く。
英雄は喩え繰り返そうと火竜を倒す為に契約を為しただろうか。契約した限りは、支払い続けなければならない。
天秤の一方には自分を乗せたのだから。]
[契約を解消しようとするならば他にも手はあっただろう。
契約を解消する為の取引、充分に見合う価値あるもの、交渉に完全に応じなかった筈でも無いだろう。]
[だが、既に賽は投げられた。
小神そのものではないが、生きた芽で描かれた【萌の徴】という方法によって。]
[契約の有り様が、今の状態をうんでいた。
もし仮に、砂漠の民の様に完全に正気を喪うというものであれば結果は違っていた。また、冬の神の力の端が【凍れる英雄】から顕現するという形で無ければ、結果は違って来ていた。【萌え出ずる小神】が意志持ち履行を阻んでいたなら、この結果にはならなかった。]
[そして、冬の神にとって【凍れる英雄】は神の手とならん駒であろうと、蟻に手を噛まれたのではなく、足を噛まれた程度であることが、まだ、憎悪の咾のみで収まる幸いだったか。
より目の前でならば、その蟻を躙り潰していた筈だ。]
エルラム、誇れ
[神に抗ったことをか。]
これを殺し
我が神に敵する神に庇護を求めよ
[手に蔓が巻きついていなければ、エルラムの頭を強く撫でただろう。英雄は豪胆だが凍れる英雄とは違う笑みを*浮かべた。*]
[ナジはエルラムに近づき、同じように蔓を払い始めた。
短剣を抜き、絡み合い大樹となった凍れる英雄を解き放とうとする。蔓は重さを増し、何の支えもない氷の橋も限りなく保つ訳ではない。取り除けた蔓は、奈落へと投げ込む。]
貴方を殺し、別の神に庇護を求めろと?
[それはひとつの解だろう。この英雄が死ぬ以外は。
気のせいか、蔓の芽吹きは弱まっているように思えた。
ナジは密かに上空の咾を窺う。]
[【凍れる英雄】が【陽の雫】の大部分を討ち、アメシストが残りを討ち、更にその残りをエルラムが掬い上げた。
天使は見ていた。
エルラムが萌の徴をほどき、【凍れる英雄】の【冬の神】との【契約】を拒むように阻んだことも。
全てを見ていた。]
[もし、この天使が人間達の抗いが為、先に剣なりを向けられていれば、歓びすら感じたかもしれない。
しかし今、天使は歓びなど感じることは無かった。
今や萌の徴へと昇華される冬の神の力の端。
それは契約を阻むものであり小神の御業によるもの。
人の意志により使われたとはいえ天使の心は動かされない。]
[詩の風が吹き天使は知る。
天使は人間達を哀れんだ。]
これより私は、
神の使いとして動き神の言葉を伝えます。
[片翼は緩やかに大きく広げられ天使は音色を*降らせる。*]
[誇るべき自我など]
……
[英雄へ首を振る。
神を前にして誇れる功績などいらない。
殺しやすくするために、徴を移したわけではなかった。
村を守りたければ凍れる英雄を除く必要があったけれど、敵対し剣を向けるのではなくこの方法を選んだのは、
選択したのは【人】の為。集落の民も凍れる英雄も、等しく人であるならば]
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