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[さっきは眠くて、カタリナは気付いてなかったことがあった。
アルビンさんがヨアヒムさんにとって大事な人であることだ。
そのことをカタリナが知ったのは、いざ処刑の段になってからだった。
それまでは、ただの行商人だと思っていた。
だから、必死になってまで止めようとはしていなかった。
カタリナはあの投票用紙に、アルビンと書いてしまっていた。あんな投票、本当に多数決であったかさえ怪しいと思っていた。
けれど、そのことが少し――罪悪感があった。
もう、アルビンさんは死んでしまっているのだ。
カタリナの票も、直接手を下したわけではないにしてもそれがヨアヒムさんの大切な人を奪う一因になっていたとしたら。
それが少し気になっていた。]
[村長の家から飛び出せば、一目散にヨアヒムの方へ駆け寄る]
ヨアヒム!ヨアヒム!!
[止めようと必死に胴を抱く。縋りつくように叫ぶ]
やめて!いかないで…!
死なないでヨアヒム…!しんじゃ…やだあ……
[ゲルトに続いてヨアヒムまで死んでほしくない
それはほんとにヨアヒムを止めるためか?それとも単なる自分の我儘か?
わからない わからない
何も 考えたくない
ヨアヒムが、フリーデルが、村長が、アルビンが叫ぶのが聞こえる
これは本当に現実か?
見たくない 皆が争う姿など
顔を上げられない 目を開けられない]
[井戸のことについて、誰かに話すかを迷った。
ヨアヒムさんは、色々とありすぎた。
きっと事件の全容を知れば、村長を恨むに違いない。
この人に罪を犯しては欲しくなかった。
村長の罪は、他の人もいる中で裁こう。
それこそ、処刑をしても良いかもしれない。
それは人狼を処刑するのではなく、罪人としての処刑で。
フリーデルさんは、ショックに続いてショックで寝込んでしまうかもしれない。そもそも井戸から引き上げるのに役に立ちそうにない。
いっそのこと、トーマスさんなどの既に無実であると容疑者から外れている村人に頼むか。いや、なるべく人を集めてから村長の前で真実を暴いた方が良いかもしれない。
そう考えて、まだ放っておくことにした。
けれど、ヨアヒムさんには気をつかって、]
・・・ヨアヒムさん。
顔を、洗うなら。
裏の井戸、使わない方がいいですよ。
[そう忠告しておいた。]
[ ゲルトはこの村が好きだった。
何もないけど、田舎だけど、それでもここより居場所なんてないと思う。
いや、他の村なんか知らないけど。でもきっとそう。
自分から出ていく奴の気が知れなかった。]
[今日の投票で選ばれたのはアルビンだったのだろう
他の村を渡り歩く行商人。それできっと皆にも疑われて
本当にアルビンが人狼なら今日で悪夢はおしまい。また日常が戻ってくる
アルビンが人狼だったらいいのに、と一瞬考えてしまって首を振る。どうして、こんな…
でも自分はアルビンの処刑を止めようとはしていなくて
ヨアヒムは必死に声を上げている。今はわからないが、昔はとても仲が良く見えていた。ちょっと羨ましいぐらいに。だから、今泣き叫んで
フリーデルも同じ。いけないことははっきり否定して、力では敵わないであろう村長にも向かっていっていて。やっぱり聖職者というものは、心の綺麗な人なのだろう
それじゃあ自分は?
現実から目を背ける自分は
人の不幸を願うような自分は
ああどうしてこんなに
汚いのだろう 醜いのだろう]
[ 楽して儲けて大金持ちになって、
村の皆が喜ぶことをしてあげて、感謝される。
それが夢だった。
皆が、真面目にコツコツ毎日働いているのは立派なことだけど。
でもきっと僕には皆と違うことが出来るんだ。 ]
[だから、アルビンの背を想うヨアヒムの気持ちなんて分からない]
[人狼は人を襲うバケモノ
それを殺すのは仕方ないこと
しょうがない 生きるためだから
だから昨日まで仲良くしていた人を殺すことは肯定される
――――ほんとに?
思考は深く闇の中消える]
[今は何者でもないけれど、
それはまだその時期になっていないだけ。
きっとこれから何かが起こる。
何か素敵なことが。
そして、皆が皆、幸せになるんだ]
・・・変な臭いがしただけです。
[嘘は言ってないけれど、そう言っておく。
どうしてこう言っていたかは、あとで分かるだろうと思ってそれ以上は説明しなかった。]
ーそんちょの家ー
[眠るカタリナと、肩を貸すヨアヒムの隣に、
そっと寄り添ってみた。
ふたりは一瞥もくれない。
ゲルトなんて居ないみたいに、完全に無視をしている。
当たり前だ。
ゲルトはもう死者なのだから。]
ねえ、教えてよ。
僕がいけなかったのかな?
だとしたら謝るから。
ねえ、こんなの嫌だよ。
僕が大好きだった皆じゃない。
僕の村は、こんな怖いところじゃないよ。
[そこで見てしまった
アルビンの首のないからだとからだから離れた首
返り血を浴び斧を持って嗤う村長
どうしてあの優しかった村長が
あの優しかったアルビンを
なんで どうして こんなことに]
う…ああああああああああああああああああああああああああ!!!
[その場に崩れ落ち叫ぶ
ああ、げんじつだ ゆめじゃない
平穏なんてもう 戻らない―――――*]
[暗いと思っていたのは何か狭い所に入っているからのようだ。
身体を起こせば何の障害も無くこの身体は天井をすり抜ける
棺だ。
するりと辺りを巡ればここは教会で、遠くの森まで村が一望出来た。
こうして遠くから眺めていると、村はいつもと変わらず長閑に時間が過ぎているように見える。
あれから騒動はどうなったのだろうか。そもそもどのくらいの時間が経っているのだろうか。
すっと音もなく、滑るように移動する。
容疑者が集められていた、自分が殺されたあの場所へ]
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