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― 教会の中 ―
……。
[暗闇の中、かすかな泣き声が途切れ途切れに止む。
泣き腫らした目許も、血の滲む首や腕も、赤く赤く染まり。
行き場のない思いにぐちゃぐちゃに乱されたまま、振り向いた顔は幽鬼のように青白く浮かび上がった]
高山君は、今、
絵崎君を、追って……――
[追って。おって。ひとりで、どこへ?
どこにいった?
僕は片手で顔を覆う。
指の間から見える景色がぐらぐら揺れるみたいだ。
何のせい?あの本のせい?
それとも。それとも。
ああ、おまじないなんてなかった。
掌を見る。九字、なんて、煙草のにおいはまだ かすかに]
――っ、ぁ
[吐きだした息は声にはならず
笑い声にかき消された]
[ 自分が怖がってる人が 居ると
落ち付かなければならないみたいな
きもちになる なんて――]
―ー糺森君!
[腕を掴んで、涙にぬれた顔を見ながら、僕は口を開く]
君 …… 何か知ってるのかい
[わからないわからないでも
糺森君は何か知っているような口ぶりだったし
どういうことなのかわからないけれど手がかりがあるのなら]
独りになったらだめだ
君も 久世君も
[情けない、声が震えてる、どうしたらいいのかなんてわからない、けど]
[東に腕を抱えられると、横に首をふる]
ウェイターさん、ありがとう。
だけど、ダメなの。知っているはずなのに、靄がかかって思い出せないよ。ずっと自分から忘れようとしていた事だから。
[寂しそうに苦笑する]
だけど1つだけ思い出せるんだ。この村が、呪われた村だって事。恨み、憎しみ、悲しみ、苦しみ、それを引きずる負の魂を封じ込めた村だって事をね。そんな空気にあてられたら、誰だって心の闇が表に出てきてちゃうじゃん。
ねえ、ウェイターさんはこれからどうしたらいいと思う?
[やや上目使いに聞き返す]
―教会―
[ペンライトで照らした先に見えた人影を目を凝らして見る。そこにいたのは]
――――っ、ま、こちゃん?
[細い光の先、幽鬼の様に佇んでいたのは、キャンプファイヤーからいつの間にか姿を消していた真子ちゃんだった。
なんでここに、という疑問が浮かんだのは一瞬で]
どうしたの、真子ちゃんっ…!
[赤く血に染まった姿に怪我でもしたのかと駆け寄ろうとして]
きゃっ!
[足元に空いていた穴にはまって転ぶ。忘れてた、この教会穴だらけだった]
[それでもなんとか「大丈夫か…?」と声をかけようとしたが、それより早く、淡雪が真子に駆け寄る]
!?
[今度は淡雪の悲鳴。よほど慌てていたのか、淡雪は転んでしまったらしい。変わり果てた真子の姿を見たばかりなので気が動転する]
おい! 大丈夫か!?
[真子ではなく、その声はとっさに淡雪に向けられていた。倒れた淡雪に向けて手を差し出す]
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