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[赤い悪魔が候補者を屠ったことは知っても、
天空で紡いだ言葉をウェスペルは知らない。
聞いたなら間違いなく怒りをぶつけたろう。
彼は赤い悪魔を追う。
お前を殺すのは私。
私を殺すのはお前。
ならば――
深く根ざした、睦言に似た呪いの言葉、
それは紛れもない誓いの言葉。]
邪魔だ。
[銀を編んで新手を刺し貫く。
満ちるには足りないがこの程度の相手ならば十分。]
立ち塞がるならば、私の糧となってもらう。
[双眸に宿る鋭い光と共に、
地を蹴り空を*駆ける。*]
[倦怠と不快の表情が艶やかな微笑へと変わる様は、まるで白薔薇(そうび)の花弁が綻んで、大輪に咲き開いてゆくよう。
その匂い立つ艶かしさ。]
クァルトゥス。
貴方に話しておきたいことがある──
[天鵝絨の手触りの声が、*薔薇の唇からこぼれた。*]
あー……燃えてますね、僕の屋敷。困りますねぇ。あとで弁償してくださいねー。それから、そのカップも。苦労して手に入れたんですから。ね?
[パチリパチリと何かが燃える音が鼓膜を震わせ、それに呼応するかのようにジュアンも瞬く。瑠璃姫がキロリと瞬き、ジュアンに同意。
――ガチャリ。扉が開く音、クァルトゥスの声。]
あはは。それほど待ってませんよ。
[視界を失ったジュアンは、クァルトゥスの声に笑って応えた――…が。]
……って、クァルトゥスさんが待たせてたのは僕じゃなかったんですねぇ。勘違い失礼しました。
[ジュアンの間合いの二歩向こう、舐め取る唾の音が聞こえる。位置は高い――…ソファから動かぬザリチェではない。ならば――…]
――…ロネヴェさん。
もしかして、その《損得勘定》のお相手って…――クァルトゥスさんのことですか?
……あははっ。
瑠璃音ノ五シキ ジュアンは、地上の穢 ロネヴェ を能力(襲う)の対象に選びました。
[躯の奥に潜む《青》が、ドクリと大きく脈を打つ。]
[――ドクリ。
鼓動に合わせて、ジュアンの口許が歪む。]
[――ドクリ。
見えぬ目を、見開いて。]
………あはっ。
[突き上げるのは、快楽ではなく――…]
ぶっ……………くくく
[抑えても抑えきれぬ息の塊がジュアンの口内で爆発し、唇から一気に漏れ出す。]
あははははははっ!
……楽しい。楽しすぎる。
理由全然わかんないけど楽しすぎる……!
おかしすぎる………!
醜いの気にして必死になってザリチェさんに噛み付いてるロネヴェさんも。ロネヴェさんの指舐めてるクァルトゥスさんも……!
堪らなく醜くて、惨めで、面白すぎる………!
[――止まぬ、嘲笑。]
あー………っはっは……
まいっかー……
[琵琶に添えていた右手を、ロネヴェに向けた。]
――…ロネヴェさん。
『雨はお好きですか?』
なぁんて。聞いても結果はおんなじですけれど。
『火曜日と土曜日は、雨が散々降りますので、ご注意くださいね?』
[キロリ][瑠璃姫が瞬くと――…無数の弦が雨となり、天井からロネヴェに向かって降り注いだ。]
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