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【どこか】
[後日。この騒動を起こした三人は、然るべきところに埋葬された。
プリュイ家がリュミールの葬式を挙げたのは当然だが、よく働く使用人の弟ということで、家主のはからいでリコシェの葬式もまた小規模ながら行われた。]
[葬式の翌日は、爽やかな晴れの日であった。
よく澄んだ空はどこまでも広がり、千切れ雲が白くアクセントになっていた。
その朝、家主は屋敷で、軽く声を張り上げた。"アンブローズ!"と。使いの用事を思い出したのである。
こう呼べば、かの従順で耳のよい使用人は、屋敷のどこからでも駆け脚で飛んでくるのが通例であった。
だけれど今日は、足音の一つも聞こえない。
家主はまた呼んだ。"アンブローズ!"
けれどやはり、呼び声ばかりが屋敷に響いた。]
[その人アンブローズは、どこにも居なかった。
屋敷にも、塔にも、街にも、その姿は無かった。
二ヶ月経っても帰ってこなかった。
海から死体が上がることもなかった。]
[その人アンブローズは、まるで最初からどこにも居ないようだった。
犬の獣人アンブローズという存在は、忽然と世界から消えてしまった。
世界のどこかで、誰かがかの人を指してアンブローズと言うことは、彼が消えてから数ヶ月は時折あった。けれど、一年、十年と経つと、もうそれは一切無くなった。
アンブローズは消えた。
盲目の忠犬アンブローズは、もうどこにも居ない。
どこにも。]
[**]
>>293獣
…無理はしちゃ駄目ですからね
[ちょっとすねそうになるのを抑えて、お願いするようにいった。]
研究者として、それを聞いたらもう何もいえないなって、思いました。
それでも…やっぱり寂しいですけれど。
[あの時のことを思い出すように。一瞬だけ、泣きそうな顔をした]
ええ、私もあの子に会いたいですから。
お付き合いします、サラさん。
[やんわりと微笑んだ表情で]
>>290 塵
[軽くぶつけた拳の感触に、頼もしさを感じる。
子供のころ、星がぶつかる前、世界は灰色で、何もきれいに見えていなかった。それが色鮮やかに、くっきりと見え始めたのは、星がぶつかってからだ。
自分や貴方がどんな運命を背負い込んだことになったのだとしても、それだけははっきりと、星に感謝している。]
[真っ白な紙を手に、新しい景色を見るのを、心待ちにしている。
隣に居るのは弟ではないけれど、絆を確かに信じていれば、何も寂しさはなく。
晴れやかな空に、大きな鷲が飛ぶのが、ふっと頭に浮かんだ。]
>>281獣
馬鹿ねえ、最初からそのつもりよ。
友達を放って、さっさと先に成仏なんてされちゃ困るわ。
遅れた分、土産話を抱えて追いかけるに決まってるじゃない。
[ぴ、とカードを一枚出した。それはあの時ひかれた「正義」。
目を伏せて、緩く首を振って]
運勢好調。このカードはね、
――「公正な」「裏表のない」、「人間愛の勝利」。
……恋愛方向じゃないから、友情かしら。
いい友を見つけたのかもね。
[困り笑いだったのは、逃げるに至る事の顛末を知っているから]
【いつか。筆をとりながら――】
兄さん、元気にしていますか。
ちゃんとご飯は食べていますか。
ロンディーネさんと喧嘩はしてやいませんか。
兄さんはカッとなりやすいのだから、気をつけないといけないよ。
全てが終わって。三つの星が天に登った日の事が、つい先日のように思い出されます。二人を乗せた船を送り出した日のきらきらと輝く波間の光景が、つい昨日のことのようです。
俺とリネアは、元気に暮らしています。
あたらしい街での暮らしにも慣れてきました。
ねえ聞いて。リネアの義手の試作一号は凄い出来なんだ。
俺の体にフィットしてて、軽くて――。
へへ、俺への愛を感じちゃうね。
甥っ子が産まれたよ、って報告。俺の方が先かもしれないよ?
それから。
兄さん、ありがとう。あの日、兄さんが迎えにきてくれなければ。きっと、今のように幸せを噛みしめる事はできなかったと思うんだ。俺は、真に人を愛す事はなかったと思うんだ。だから、兄さん。俺は心底、兄さんの弟でよかったと思うよ。これまでも。これからも。
兄さん達のしあわせを祈ってます。
いつまでもあなたの弟 Hale.
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