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>>115 光
ああ。[確かめられれば頷いた。]
あんたはリュミール様、だよな。
[憮然とした表情はこの男の素だが、声をかけられてもなお、表情は変わらなかった。この男には珍しく相手に敬称などつけていたり。]
お前じゃないだろうな、あの張り紙。落書き。
…アンやリコシェを騙したりしたら、その面ぶっ飛ばしてやるから覚えとけよ。
[そう低く、声量は抑えるものの吼えるように、そして一方的に。
それだけを告げれば、早足にその場を立ち去ろうと。]
>>114鉄
[ついぞ見たことのない兄の表情に、耳がへたりと垂れる。
連続した選択肢を間違え続けて、どんどん兄を傷つけているようだ。
噛みしめた犬歯が唇の薄い皮をぷちと傷めるほどに噛みしめて、慌てて緩める。幸いにして、血は出なかった。血なんて出したら、また──]
お兄ちゃん、なんで、
[謝るの。そんな言葉が途切れたのは、あなたがその腕を広げたからだ。あなたから逃げる理由なんてどこにもなくて、泣きそうな表情のまま、小さな体がその腕に収まるだろうか。
あなたの言葉だけじゃなく、その体も震えているような、気がした。]
……、お兄ちゃん。[鼻を鳴らして、] あり、がと。
ぼく、……お兄ちゃん、の。やりたい、こと。の、
力に、なれて……る?
[恐る恐る。途切れ途切れの。答えを恐れるような問いの後、あなたの肩口に顔を押し付けるように抱きつこうと。]
うん。約束。
ヘルさん、と。も、飛ばす。の。
その時、いっぱい、いっぱい。ヘルさん、が、びっくりするくらい、飛ばす、練習。
一緒に、してね。
>>118
あ、はい。リュミーエル・プリュイです。
確か、アンと親しくしてる方、
[少し戸惑い気味に尋ねようとしかけた所で、
低く抑えられた、けれど吠えるような声にさらされて、余計に困惑気に言葉が止まった。]
――、そんな、僕じゃありません。
…………その、あなたでもないなら、アンとリコと親しいなら、一緒にいるときは2人をお願いします。
[立ち去ろうとするあなたの背に口早にそう述べたんだろう]
>>119銀
[やせ型だけれど、筋肉で堅い身体で、君を包み込むように抱きしめた。肩に顎を乗せて、僅かに身を震わせる。
なぜ俺は、今までこんなに本質的に無邪気で、幼い子を放っておいたのだろうか。ただ俺のために作った優秀さに甘え切って、ずっと俺に気を使ってくれていた。こんなことに、皆に指摘されないと気付かなかったなんて。
何度も謝りたかった。けれど、これ以上はきっと君を傷つけるから、呑みこんだ。]
……勿論だ。当然だ。
これだけ覚えておいてくれ。
俺の為に、我慢するな。
して欲しいことがあったら、何でも言え。
俺はお前の為にいる兄さんなんだから。
お前はそれだけで、俺の自慢の弟なんだから。
[君の耳元でそう告げて、ぎゅうとまた一度力を籠めた。君の後頭部に手を回して、真っ白で柔らかな髪をわしゃと掻いた。ふんわりとした白毛の耳を指で撫でた。
……そうして、君を離す。ついていた片膝を外し、立ち上がって、
もう、笑顔だった。"ああ"と一つ頷いて。]
……さ、もう遅い時間だ。帰ろう。
>>111獣
…ごめんなさい。
「音叉」とか、「来たりし者」が誰なのかも、そもそもどういう意思を持ってるのかもわからないのに。
護ります、なんてたいそうな事言っちゃいましたけど。
僕が一番取り乱してるのかもしれないです…恐ろしいものですね、相手の気持ちが分からない…って言うのは。あは、何やってんだろ。
[最後に付け加えた一言は、自嘲の色を含んでいる。困ったように頭をくしゃくしゃと掻き乱した手は、小さく震えるように見えたかもしれない。]
僕も、サラさんの様子を見て安心しました。いつだってしっかりしてて…羨ましいな。
あの子のことは黙っておきますし、覚悟も…しておきます。何が起こるか分かりませんから。
…それじゃあ僕、そろそろ行きます。
サラさんと話せて良かったです。僕がいま何を見るべきなのか、少しだけわかった気がします。
[あなたの肩に乗る猿を指先でちいさく撫で、にこりと微笑んで。それでは、と呟くと青年は足早に裏庭を立ち去っていった。あなたが声を掛けたとしても、小さく手を振って返すのみだっただろう。**]
>>121塵
[あなたの謝罪には、ううん、とぎこちない動作で首を不利ながら。]
いいの。あたしが聞いたんだから。
むしろ……変なこと、ごめんね。
[じゃあ、と手を振って。足早に廊下の先へと消えていった。一度だけ、あなたを振り返ってから。**]
【自室】
[完成した布地を父に渡せば、後の仕事は翌日だ。今日は早く寝るから、などと言い含んで、そそくさと自室に滑り込んだ。
ベッドサイドの小テーブルの上に、紙飛行機があった。まだ甘い香りの残る布の上で、少し翼が開いた状態だ。一度開いた上で、時間の無い中で読んでしまうのがどうにも勿体無くて、態々折り目にそって元の形になおしたためだ。]
[――まだ日が辛うじて空に有る頃だった。届いていた包みを、客先のコップのように大切に、大切に抱えて運び込んだ。アップルパイは、母からの冷やかしを聞き流しながら、夕時に食べた。時間が経ってしまっていたが、それでもパイ生地はしっとりと林檎の蜜を吸い込んで、頬張れば優しい甘さが身体に満ちた。彼の腕に嫉妬してしまいそうなくらい、美味しいアップルパイだった。]
[そんなことを思い返しながら、膝をそろえてベッドに腰掛けて、紙飛行機を手に取った。改めて丁寧に書かれた文を読む。少ない文字列の、その一つ一つの単語を確かめるように、ゆっくりと。読み終えれば、もう一度、読んだ。また、文字数に対してはかけすぎな程に時間をかけて。そうする度に、身体中があたたまるようだった。なんだか本当に熱っぽくも思えて、それだから、きっと頬も赤く染まったのだ。]
……書けるの、早いよ。
[ぽつり。部屋の静寂が一瞬揺れた。それからしばらく、部屋の明かりは消えなかった。]**
>>120 光
[相手が、自分とアンが親しいことを知っていたことに少し驚いていた。びくりと肩が震えるほど。
2人をお願いします。そんなことは誰にも言える。誰だって。
そう、口をへの字に結んで考えながら、早足で立ち去った。]**
>>127 鳥
えっと、その……?
[びくりと肩を震わす相手にやっぱり困惑の眼差しを向けて。
そうして足早に立ち去る背中をそのまなざしのまま見つめていた**]
【寄宿棟・一室】
[ただ、深夜、暗い部屋で、
弟に受け取ったままアップルパイが収められた、
一つのバスケットを見つめていた。
身動きもせず。]
[**]
【魔術師の塔:寄宿棟自室】
[魔術師の塔の施設のうちの一つの寄宿棟。最近は、仕事が終わった後寝るために帰ってくることが多くなっていた。ベッドに仰向けに横になって、特になるをするでもなく、ぼんやりと天井を見ていた。]
…──。
[最近、ギルドがばたばたしているけれど、一過性のものでまた時間がたてば。なんて、感じていた。
けれども、今朝あたりから、塔の慌しさが増したのは気のせいではないだろう。ざわざわと、言いようのない不安が音を増している。]
一体、何が起ころうとしているのかしら…。
[もう、ギルドに所属してから随分とたったが、彼女が得たものは噂の域を出ないものであった。不安を感じたまま、一ギルド員としての時間が過ぎていくの感じていた**]
…
…無事だと、いいけれど…
[手の中の包帯を仕舞い込んで。踵を返す。
すっかり暗くなった裏庭に、その呟きだけが残った。**]
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