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……。
[ナデージュに頭を撫でられるのは、これが初めてではないと朧に思う。>>40
彼女がまだ、がんばらなくても声を出せた頃のことだったか。
けれど、それだけ。
むしろスーの方から名前で呼んでもいいのか訊ねたことも忘れたまま、
機嫌よさげに足をぱたぱたと踏み鳴らした]
[やがてカモミールティーと、パンとスープが運ばれてくると]
…いただきます。
[挨拶だけはきちんとしてから、競う相手がいるかのように素早く食事に手を伸ばし、
腹を満たすことに勤しみ始めた。おおむね黙々と]
まいそう。
…また、はこぶんだ。
[周囲で展開される話題も朧に把握しつつ。
灰しかない裏庭と違い、灰に埋もれつつも墓石のある墓地。
酒場の主人も、あそこに運ばれるようだ。
おとなりの家の人達みたいに。料理屋さんのおくさんみたいに]
[ドワイトさんに頭を撫でられるのは、どれくらいぶりのことでしょうか。
まだ教会で暮らしていた頃、何度か撫でて貰った記憶があるのですが。
立ち上がる背中を引きとめようと思ったのですが、その背中にかける言葉は思い浮かびませんでした。
言葉が浮かんだとしても、声は出ないのですが。
だからわたしは、ありがとうございます、と、心の中で呟くのです。
何度も、何度も、噛み締めるように。
そうしてまた、考えるのです。
わたしに何ができるのか。
残り僅かな時間を、わたしはどう生きるべきなのか。
そっと、左頬の包帯に触れます。
―――最近、灰化の進みが、早くなってきたように思いました。]
全然毒舌ではないな。
口の悪いキャラがいたらふっかけるつもりだった。
村に長く住んでいると和やかになるから、引っ越してきてすぐの顔見知りとかにすれば良かっただろうか。
[思考は、歪んでいる。
死んだ人は墓地に運ばれるから、
墓地に運ばれていない両親は死んでいない、と。
どこかの国のどこかの街に、“おしごと”のために出かけていった両親。
東の村の結末も、北の街の惨状も、
他の場所の滅んだ経緯も耳にしていないかのように、
否、耳にしたとしても既に―――忘れて。
彼らが帰る日をひとり、待ち続けている]
[アルカの店で買い物をした。
"こんな"世の中になってから、流通は麻痺し、貨幣での交換は殆ど成り立たなくなってしまった。ある者は物々交換、またある者は労役、ある者は慈善家の真似事をして自分を満足させている。
そしてこの店は――かつて成り立っていた当たり前の再現を望んでいた。
幾ばくかの銀貨と引き換えに、僅かな食料を手にして、男は自室のあるアパートメントに足を向けた]
[息を吸って、吐いて。
歌うように、童謡を詠むように、言葉を紡いだ。]
さあ、星《エステル》は 降る 降る
灰色に落として 蒼穹を創ろう
……。
/*
わりと眠くはなくなってきたけど、
こいつの、こいつの! 絡みにいきづらさがマッハ
好事家的性格だったら占いやってるところにもいけたのによーう
[目を閉じて、開いて。
ふ、と脱力したような笑みが漏れた。]
昔、ある「手紙狂い」が請け負った仕事がね。
そりゃーもう、不思議だったんだって。
まあ、私らみたいのに来るモノは、人に言えないモノの方が多いんだけど。
内容は、荷物を運ぶことと、口伝の“手紙”。
[首をふるふるとふるってから、ずれたキャスケットの位置を直す。
その仕草のせいで、表情は隠れただろうか。]
灰色翼人に会うがよろしかろう。
貴重な生き残りがいるからねえ。
……それと、魔法のことならポラリスかスーだねえ。
ただ、スーはもう危うい。何か情報が得られるかどうか……。
[本心としては、壊れかけの子はそっとしておきたいところだが。
この狭い村、少ない生き残りを巡れば、どうせたどり着いてしまうだろう。]
……ふふ、何の因果だろうねえ。
[今作る笑みは、苦いもの。
どうして苦いのか、もはや己にも分かるまい。]
[一人になれば、足取りはやや覚束なくなる。
他人が見ていない分、気をはる必要がないからか。
自室へ戻る途中、窓から見えた灰の降る空。
先ほどの鳩の姿が重なって見える]
――――――…嗚呼。
[そして今日はパースが村に来て10周年だったと思い出す。
通信屋の姿を始めてみた時、
男はもう十分に大人だったが、
それでも思わず問うてしまったことがある。
『私宛の手紙は、届いているかい?』
少年兵をしていた頃の記憶は曖昧で、
それ以前の思い出はほとんどない。
生死を彷徨った折に、
其処までの命を置いてきたかのように]
[…届くはずはないと分かっている。
家族や故郷の記憶はない。戦友はみんな死んだ。
名無しの手紙は届かない。
死者は手紙をよこさない]
ああ、それと。
エラリーにも会えばいいんじゃないか?
時に想像力というものは、関係のない部品をつなぐ糸になるだろうよ。
それに、彼の創作意欲も刺激されるだろうからね。
[馬のしっぽをしゃらしゃら揺らして、出せる情報をそろえて並べ、にこりと笑った。
それ以上は、今は何も言うつもりはないと言わんばかりに。]
投票を委任します。
小説家 エラリーは、人造妖精 エステル に投票を委任しました。
[自室に戻ると、どんよりとした薄暗さと埃っぽい湿気た紙と、インクの匂いが迎えてくれる]
……
[無言のまま男は手に入れてきた食料を入り口近くに置き放ち、身体に見合わぬ机に置かれた中途を手にとった。
男の部屋は、閑散としている。必要以上に置かれているものが少ない。仕事に見合わぬ、書物の類も職の割に少ないかもしれない。
机と、灯りと、インクと、紙と。
保管用と思われる木箱が幾つか部屋の隅に転がっている。
その中でなぜか一つ、ドアの横に見合わぬ巨大な工具が、土のついたままに鎮座していた]
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