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>>387
[響く声にびくっと肩を跳ねさせ、振り向く]
……なんか嫌な歌…これからの事を暗示する様な……。
もっと明るい歌を歌えー。
[去っていく道化師にそれだけ叫び、アルカに視線を戻す]
本当に嫌になるよね。
でだ…兆候があるって事はあれだよ。
覚悟を決めろって……きっと……。**
―回想、本屋―
[人狼の出た村では、決まって、処刑が始まる。人狼だと疑わしき者を処刑するためだ。一度人狼に殺されかけた僕が、人狼だという疑いをかけられ、殺されたとしたら。
……それもまた滑稽、それでもいいかもしれない。そんなことを思った。
クレイグは、僕を助けることを、当たり前だ、と言った。]
あたりまえ?……助けるの、あたりまえ?
……そっかあ、あたりまえ、なのかあ。
[当たり前。彼にとって、それは当たり前。とても純粋で、そして、もしかすると、偽善的だ。
彼は、僕のことを、「本当に」助けてくれるのだろうか。僕の望みを、叶えてくれるのだろうか。]
心配しない。じゃあ、期待、しとく。
[言葉通り、期待する。彼が、僕を助けてくれることを。僕の望みを叶える、手がかりになってくれることを。]
― 回想 ―
[いつだったか、日付も時間も忘れた頃の記憶。
シュカと、妹のミレイユが交わした会話。]
「まーたおねえちゃん、あんな噂信じてたの?」
「単純なシュカが、トルテの流した巨大ネズミの噂を信じ込んで、巨大ネズミ捕りを作ろうとしたりチーズを餌にして誘き寄せようとしたり、そうして遊んでいたところを妹のミレイユにたしなめられていた。]
「本当にいるわけないでしょ? 巨大ネズミなんて。」
えー、いないとは限らないじゃん!
「いないよ。本に書いてあったもん。」
またそう言うー。ミレイユはいっつもいっつも本ばっかり読んで、楽しいの?
「楽しいとかそういうんじゃなくて、勉強してるんだよ。おねえちゃんみたいなバカにはなりたくないもん!」
バカ!? ひどい、いくらあたしが勉強できないからって、バカはないでしょー!
[シュカは頬を膨らませてそっぽを向く。こんなやり取りは日常茶飯事で、どちらも本気で喧嘩しているわけではなかった。
ミレイユが、そっぽを向いているシュカに、呆れたように言い放った。]
「おねえちゃん、だめだよ。ちゃんと自分の頭で考えなきゃ。
いつか悪い人に騙されるよ。」
[シュカはすねて、ミレイユの言葉を聞いてないフリをした。
“いつか”って、いつの話だろう。
“悪い人”なんて、この村にはいないのに。
“騙される”……そんなことがあるのかな。
私は間違ってるんだろうか。真面目に、そんなことを考えたひとときだった。]
―回想、町外れ―
だれがこまどり、ころしたの?
わたし。とすずめがいいました。
[僕は今日も独り、道を行く。唱えているのは、マザーグースのクックロビン。昔、まだ両親が生きていた頃、よく読んでもらった詩編の一部であった。内容は、コマドリの死と、それを悼む動物達の、ごくごく単純なやりとり。]
わたしの弓と矢をつかって。
わたしが、こまどり……。
[機嫌よくクックロビンを暗唱していたが、ふと疑問が頭をよぎり、僕は立ち止まり、またいつものように小首を傾げた。]
……なんで、こまどりころしたの?
[この詩に書いてあるのは、「誰が」コマドリを殺したのか。「誰が」墓穴を掘るのか。「誰が」鐘の音を鳴らすのか。ただ、それだけ。そこに動機も、理由も無いのだ。]
ねえ、なんで?
[なんで?なんで?と、僕はしきりに繰り返す。今日も間違って叔父のものを履いてきてしまったらしく、サイズの合わない靴を引きずり、村を歩いた。]
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