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[姉の不幸はきっと夢を見てしまったこと。]
[俺の不幸はきっと夢を知ってしまったこと。]
[少女はいつだって夢を見る。
自分に甘くて、自由で、無責任で、傲慢な。
少女の世界ではそれが許される。
夢を夢のままで維持するには……
現実では、現実が立ちはだかる。
それから逃げるには、
死ぬ以外ないのだということ。]
生きたいよ……ずっとみんなを見ていたかった。
グレイヘンもミズキもハルもカスミもシンもヴェルもローザも
……ダハールも
でもね でもね
だめなんだよ。私は見てちゃいけないんだ。
もう私には見る目もないの
自分で取っちゃったから。
ひどいひどい私の目を
[俺は、夢を見知ってしまった。
現実とは違う理を持つ夢を。
自分の中にはない、義務を放棄した自由を。
罪に対して罰のない世界を。
………甘い、甘い物語を。]
― 桜の木 きっとハルがお弁当を食べている ―
[姉が、俺を追い出そうとすることは
今回介入する前からわかっていて
俺は、昔のやり方で介入した。
すなわち、彼女の手をつなぐやり方だ。
これは俺の意思だけによる行き方。
その反動で、左手は消えてしまったけど。
ローブで隠すようにして
パンをほおばるハルものとへ戻る。]
……いい日差しだね。
花見、しに戻ったよ?
[氷のような風が吹き付ける。
凍えた大地は痩せた足を容赦なく傷つけた。
主にさよならを告げられた小さな白蛇へ手を伸ばす。
叶うなら両の手で寒さに弱い鱗を暖めるように包み込んだ]
カスミとミズキは。
ちゃんと、戻れたよ。
まだ会ってないけど、私には判る。
資格なんて、必要ない。
リヴリアの体は今まで生かされてきた。
それは罰されるため?
だとしたら、私はそんな残酷な世界を許さない。
罰されるためだけに生かされるなんて、
殺されるよりずっと、ずっと酷い。
そんな仕打ちをする世界が与える資格なんて。
何の価値もない。
生きていく世界があったって。
ダハールが望まないなら、私は連れて帰らない。
ダハールには自分で選ぶ時間が幾らだってあった。
それでも夢にいたがる人を連れて帰るほど。
私は、お人好しじゃない。
私だって。
自分を、殺した。
人を殺したっていうなら私だって立派な人殺しだ。
[暖かな日差し。生き生きとしたお花。
少女はにこにこしながらパンを食べる。
指先のパンくずを払っていると、ダハールが戻ってきた]
おかえりー。
うん、今日はとってもいい天気だもんねえ。
リヴリアちゃんは、どうしたの?
[ご機嫌で笑いながら、少女は首を傾げる]
そろそろレンゲの花冠、作ろうかなって思ってたとこだよう。
リヴリアはちょっと拗ねちゃった。
拗ねさせて、一緒にいられなくして、御免ね?
[走り去った方向は知らないけれど、
あの姉の話からすれば、
俺を外に出したいだろう。
そうなると渡り鳥を探しに行ったか。]
戻ってきたらびっくりさせようか?
リヴリアの、あの仮面の奥
瞳は赤いから、何か、赤い花
一緒に編み上げてもかわいいんじゃないかな?
[彼女の左手側、桜の木下に腰掛け笑う。
左手の消失に気づかれないように。]
[素顔の少女の願い、取り零したりしないように]
……リヴリアの本音、やっと聞けたんだよ。
ねえ、リヴリア。
ここはまだ夢の中だよ。
私を見て……グレイヘンを、見て。
グレイヘンは、見ちゃ駄目なんて言わない。
ローザだってきっと言わない。
罪があったら生きちゃいけない?
そんなの、違うよ。
ー カスミのそば ー
ごめんね、ちょっと離れるね。
[カスミ?と問いかけたへんじを聞いたか聞かないか
ヴェルでもシンでもないような声が聞こえて、
そちらの方へと歩をすすめる]
カスミ…?
[目の端に雫が見えて、ガーゼで拭き取った。
もしかして起きたのだろうか、と顔を覗き込んだ]
生きたかったら。
力尽きるまで生きて良いじゃない。
死にたかったら。
死んだって良いじゃない。
私はそういう自由を、ずっとずっと夢見てた。
だから。
私は、リヴリアが生きて良い世界を、望むんだよ。
私はただ、それだけ。
[疲労の滲む顔。
だけど、表情は眠たげな色はなくひたりと]
/*
個人的にご都合主義のHEはいやだなぁ
屋敷全焼させたのはまずかったよな。
使用人は死んでなければいいわけじゃないと思うんだ
*/
拗ねちゃった?
だめだよう、けんかしたら。
[ダハールの言葉に、少し困った顔をする。
そう言いつつも、手はレンゲを編み始めて]
アカツメクサも一緒に編んだらどうかなって。
リヴリアちゃん、喜んでくれるかなあ。
[レンゲに目を落とし、少女は楽しげに笑む。
それから、口調はそのままに]
リヴリアちゃん、戻ってくる?
それならいいんだけど……。
だけどね、ダハールちゃん。
[レンゲを編む手元に目を落としたまま、いつもと変わらぬおっとりした口調で]
ハル、知ってるの。ここは、"ハルの願いが叶う場所"
ハルの場所。ハルの世界。
だからね、ここは、ダハールちゃんの願いが叶う場所じゃ、ないんだよう。
[おひさまが、風が、花が元に戻っても。
世界は確実に、綻んでいて。
少女は、本当は気づいているのだ]
ハルは、お花畑しかいらないの。
ダハールちゃんがいてくれたら、そりゃあ嬉しいけど。
だけど、ハルがどうしてもほしくて、望んでいるものじゃない。
[せっせとレンゲを編みながら、穏やかに少女は言葉を落とす]
ハル、本当は知ってるの。
多分、ハルはたくさんのことを忘れてる。
何を忘れちゃったのか、それはわからないんだけど。
でもね、どんなことかはわかるよ。
きっとね、それはハルにとって都合の悪いこと。
[口元に笑みすら浮かべて、少女はそっと目を伏せる]
だけど同時に、きっととても大事なこと。
ハルの心を揺らすほど、大事なこと。
だから穏やかでいられるように、ハルはそれを忘れることにした。
だからね……。
[顔を上げて、ダハールに顔を向けると、少女は困ったように笑った]
きっと、ハルは忘れちゃうの。
ダハールちゃんのことも。
アカツメクサ……
[名前からすると、シロツメクサの赤い花?
だろう、か?庭師 ワットの話を
ちゃんと聞いておけばよかったなぁ、と
それがどんな花かわからず。]
………………
俺の住んでいた屋敷に、さ、
広くて、綺麗な庭園が、あったんだー
今は、もう焼失してしまったけど。
庭師のワットが丹精込めた庭でさ。
他にも、ノーリーンはいつも他のメイド達を
きびきびと働かせて、家をピカピカにしてくれて。
ピエールは、俺たちが包丁を使う必要がないくらい
おいしい食事やおやつを用意してくれて。
けど……4年前 彼らの仕事場は失われて。
でも、彼らは、まぁ、親類の家に散っていて。
同じ待遇ってわけには行かないけれど
[ハルの言葉に 目を細める。
姉によって丹精込めた仕事場が奪われた面々。
姉が何より贖罪しなければいけない面々。
彼らは、家族、ではないのだから。]
俺がいなくても、動くとは思うんだけどね。
でも、やらなきゃだめかなぁ
[ハルの言葉にくすくすと笑いながら寝転んで
穏やかに笑って彼女を見上げる。
忘れていることは、覚えているんだ
と、そのことに少し安堵した。]
忘れたっていいんだ、それで君は笑うのだろう?
確かに、君の忘れたもの、
その代わりには俺はなれないから。
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