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そうか……だいじょうぶなら良かった。
あの子は“お気に入り”だったからね。
[決定的でも確信的でもなかったけれど。
“見たい”と“キレイ”だと言ってくれたその言の葉は
私に“何か”を与えてくれた。だから──]
んー? 渡り鳥に巣はないのかい?
じゃあ渡らなくなったら巣は作れるよね?
ゆっくりと休める巣が 帰るべき日常が
[それはここにはないだろう? と微かに首を傾ける。
ここに日常なんてないのだから]
ああ、二人は一緒がいい
二人はとてもいい子だから輝けるから
仲良くなれる。……ああちがうね。
“なかよし”さ
くちて、くさり、おちる。
[本懐、その言葉が本当なら。
渡り鳥がその手を引く事はできない。
死に焦がれる想いを、今もまだ覚えている]
げんそう。
――たしかに。
まぎれこんだ、そんざいが。
このせかいをかえてしまったのかもしれない。
ユメがユメであるかぎり。
せかいは、くちはてたり、しなかったのかもしれない。
[手の中の花の命を風が断っていった。
はらはらとさらわれていく花弁。
残ったのは萎れた茎と顎]
わすれもの。
それが、リヴリアのことなら。
リヴリアは、おせっかいやきかもしれないし。
いじわるなのかもしれない。
わすれもの。
もってかえれないなら。
それは、なくしもの。
どっちなのか、おしえてあげなくちゃ。
きっと、あきらめられない。
[そっと草の間に花だったものを戻す。
いつか土に還るよう]
ぐれいへんは。
だれもしらないばしょで。
ちからつきて、ねむりたいの。
ただ、それだけなの。
[終わる、その言葉に内心で期待をしている自分がいた]
亡くした、もの……か。
埋められそうにないなら。
このまま眠る方が幸せなのかもね……。
私には判断はできない。
だから。
これから、見に行こうと思っているけど……。
貴方は。
お姉さんを連れ戻さなくて、良いのかしら……?
今、一緒にハルのところへ向かっているわ。
……そんなことないですよう?
わたしが動けなくなっちゃった時はひどくなかったですからねえ。
………さっきはさっき、今は今ですよう。
[そう、さっきと今は「違う」。
こうして直に触れ合っていることが、
こうして互いの目を見詰め合っていることが。
触れる手はこんなに冷たいのに、
どうして彼女のままでいるのだろうか。
寒くないのかとか、自分のように動けなくなったりしないのかとか、
小さな、小さな不安が降り積もる]
ええ、それで迷ったところを道化師さんに……。
[驚きが「ふり」であることには気付かず。
泣き顔の道化師に感謝を眼差しを向けようとしたが、
風に揺れる草がぱっと目に入るばかり]
そうですよう。
わたしひとりじゃあ飛べないから、渡り鳥さんにつれていってもらって、
白いお空に浮かぶお星様を――……
[声がしぼむ。視線が外されたから。
続く言葉にああ、やっぱりと思いながら、]
やっぱり、こんな話、面白くないですよねえ……。
ましてや一緒に行く、なんて、
夢のまた夢ですよねえ……。
[ことり、と音を立てて、
「星」の入ったビンが草地におろされる。
幾分か大きく動かせるようになった左手で、
太陽輝く右手をぎゅっと握った]
ぐれいへんには、わからない。
ぐれいへんには、まってくれるひとは、いなかったから。
なにをのぞむかなんて、――わからない。
でも。
なにものぞまなければ。
まったり、しない。
ほんとうに、なにものぞまれないなら。
めざめたって、だれもいない。
でも。
リヴリアには、いる。
[微かに揺れる声、仮面をじっと見詰めた]
おいかけて、きてくれたひとも。
しってて、なかよくなろうとしたひとも。
ふふ、グレイヘン
他人が何を忘れたのかを教えてくれなければ
ボクは教えてあげられないよ?
ボクには何を忘れたのかなんて知らないんだから。
それを知っていれば教えるさ。
聞く勇気があるなら聞けばいい。踏み込めばいい。
藪の中へ
[彼女の語る望みを模すように、朽ちた残骸は大地へと隠れていく]
誰も知らない場所かい?
じゃあ、誰も知らない場所、誰も行き着けない場所まで
飛べるよう。
キミは無理をしてはいけないね。
尽きるその日まで。
[夢の中で対峙する相手の揺らぎが現実に被る]
……まだ、連れていける。
だから。
自分の願いがあるなら。
閉じる前に、伝えて……あげて……。
お姉さんも。
苦しんで、いるのだろうから……。
[少女はまだ、
「ほんとうに」空の上まで、
星に近いところまで飛んでいけると思っている。
飛んで、輝くお星様に手を伸ばして、掴んで、]
わたしはまた、誰かを好きになっても、いいんですかあ?
[「帰ってきた」場所で、うまくやっていけるのだろうか?]
……君も、そろそろ、だいぶ疲れただろう?
ミズキとカスミが戻ってきたら、
介入するの、やめたほうがいいよ。
「望む元気もなくなって。
それでも、愛なり優しさなりが欲しくなったら。
結局、他者を頼らなくちゃならない。」
「どんなに居心地が良くても所詮は誰かの作った夢物語。」
君のとって、あの世界はそう、なのだろう?
……ハルのように、忘れられないなら、
姉のように覚悟を決められないなら、
もう、そうろそろ、お帰り。
知ってて仲良く…かい?
キミは本当に啄むのが上手いね。グレイヘン。
[胸の奥がチクリと痛む。嗚呼彼女は知っていて私を“見たい”と言ってきた。それが何を意味するか]
ボクにはその望みがわからない。
まあ、待っているというのなら、その努力に免じて
望むものを演じてもやれるかもしれないけれど。
それでその人は満足するのかい?
タネも仕掛けもあるんだよ? 魔法にも心にも
――そうね。
そのひとが。
わすれものの、なまえを。
ちゃんと、いえたら――いいね。
もう、なくしたりしないように。
[それは仮面の言う通りなのかもしれない。
手を伸ばしきれない者の事を思う]
つかれなくちゃ、ねむれないの。
きっと、せかいも。
もえつきなくちゃ、おわれないのかも。
しれないね。
…… ……ハルの所へは僕が行こう。
変に今後をたずねて、
また、忘れさせるのは忍びない。
姉が来るのだろう?
終わるまでは停戦して
花見でもできればいい。
[そういって、昔したように
姉の手を握る、包帯越し。]
だったらいっそ。
殺してあげたら……?
そうすれば。
もう苦しむ事だって、ないわ……。
帰る気がないなら。
生きる気が、ないなら。
どうして、お姉さんは夢の中で生きているのかしら?
そんな事にも気付かないふりをするのなら。
私が貴方を、この世界から叩き出して。
貴方のお姉さんと一緒に、死んでやるわ。
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