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[カラカラ嗤いながら、手に持ったバケツをシンに見せる。
端の方で、いつの間にか肩から下りていた白蛇が、戻ってきたかやって来たかわからない子蟹と対面し、遊び遊ばれ弄ばれて、尻尾を巻いて帰ってきた。
その口に石花菜の欠片を咥えながら。
空に見せ始めた“異変”の痕
崩れていくセカイ
海の様子はどうだっただろう?
そして彼女たちの様子は?]
潮騒の子、変わりはないかい?
[期せずして慮るような言葉が口をついた]**
― こうや ―
[月明かりを背に渡り鳥は海辺を目指す。
だけど]
――……?
[荒れ果てた野に迷い込んだ。
正確には今まさに朽ちていこうとする野に。
そこがかつて夢見る少女の棲んでいた場所と判るのに
幾らかの時間を要した。
誰かが夢を去ったとしても。
時間をかけて極自然に理が消滅するか、
あるいは他の誰かの夢に同化するか。
少なくともこんな姿で残ったりはしない]
[小さな姿を見下ろす。
呆然と見上げていた姿が動き出す。
時を止める為 色々なものを置き去りにした姿は
言葉に、微か綻びを乗せて。]
……そっか、懐かしかった……か。
いや、謝ることはないよ。
――…………思い出ってさ、思い出すと、楽しいよね。
その時の、楽しかったこと、とか思い出して。
[お人形めいた笑い方に見えるハルに
そう零す。
それは、子供 の楽しみ方
……では、ないかもしれないが]
―海岸線の家―
…ミズキ?
[振っていた手を止めて少女たちのやり取りを見る。
なにか話しているその後ろ、太陽は少し光が弱い。
バケツを揺らしながらやって来た二人に
再び緩く手を降りながら近づいてゆく]
いらっしゃい、…浜風?
──ああ、もしかして
[泣き顔の道化は情報源となったらしい。
籠を抱えたまま建物の方へと歩き出す]
パンとハムの事ね。
……小さい頃さー 姉さんと手をつないで寝ると
同じ夢を見ることができて
そこで遊んで楽しかったなー、とか。
よくさ、夢って見た後忘れちゃうて言う話を聞いて
姉さんが、それについて聞いてきたこともあったな……
逆に……忘れてしまうのは……
忘れられるのは……悲しい
せっかく同じ時を過ごせたのにさ
忘れちゃうのは……楽なんだけど、さ……
[解かれた腕、道化師からも腕を解いて
軽く、頭を撫でるに留めて。
リヴリアとは言わず、姉と口にしながら。
遠い昔、口にしたことを、もう一度口にする。]
なーんて、僕も年かなー
近頃疲労が抜けなくてね?
懐かしいなぁ……あの頃……楽しかった。
[そうして、彼女の髪から手を離して、
両の手を地面につけ、
そこに体重を預けて空と花を見上げ笑う。
懐かしさ、遠い思い出。
もう戻らない、無邪気な日々。
胸が、痛む。同時に、その痛みさえ 大事 だと思った]
[バケツの中を覗けば蟹がいる。
蛇が負けている器の中には淡水魚]
いい型ね、綺麗。
んー…獲れたてだろうけど焼こうか。
生はちょっと危ないからね。
塩竃にしてもいいけど、出来るかな…。
[川魚らしい、しゅっとした細いフォルム。
見下ろしてあれこれ思い付く実験方法
それを遮るような道化師の声に
顔をあげて少しばかりの沈黙]
…。
この浜は、毎日どこかしら何か違うから。
[浜に打ち上げられるものも。
訪れるものたちも、また]
道化師 ダハールは、無口 ローザ を投票先に選びました。
[走り出したリヴリアに、少しだけ困った顔をしてから小走りで追いかける。
チリンチリン小さな鈴が小さな音を立てる。
二人を見失えば岬の少女のところへも行けなくなってしまう。]
渡り鳥 グレイヘンは、岬守 シン を能力(襲う)の対象に選びました。
[もう少し。もう少しすれば、"楽しくないこと"はなかったことになる。
そう、思っているのに]
思い出すと……楽しい……?
[まるで反対のことを、ダハールは言う。
"なかったことにする"のを邪魔するように、きょうだいの話をする]
ハルは、ハルは……。
[自分に言い聞かせるように"ハル"と少女は口にする。
はーちゃんなんて、知らない]
ハルは、思い出なんて、いらないんだあ。
楽な方で、いいんだよ。
[にこにこ、いつものように見える笑みを浮かべながら。 いつものようにおっとりした声に聞こえるように。
けれど、いつも血色のよかった頬は、今は紙のように白い]
ハルは、なんにもいらないの。
ハルは、このお花畑があればいいの。
だって、なんにもなかったら、
なんにも、なくさずにいられるでしょう?
[だから、少女は空っぽでいい。
記憶も、思い出も、心も、笑顔も。
なんにも持たないがらんどうでいい]
― そら ―
[風がいつものように行き先を教えてくれない。
それはこの世界に訪れつつある予兆なのか。
それとも]
――……。
[気付けば荒れた波の上にいた。
水際すれすれで滞空すると足の裏を白く泡立つ波が舐めた。
底に何かが潜んでいるかのような深い海。
その上を滑るように、爪先を海水に遊ばせながら。
陸地を目指して海岸線へと滑空する]
…新顔ちゃん?
[こちらに頭を下げた少女をじっと見る。
見覚えのない顔、いまの段階ではただただ異質な存在。
籠をテーブルの脇に起きながら少女たちのために椅子を引く]
まあ、立ち話もなんだし…座ったら?
いま、何か用意する。
[どうぞ、と椅子を指し示す掌]
[ 余りに沢山、一度に、大事なものをなくしたから
無くす事への恐怖。
それでも全く持たずにいることはできない。
事実、彼女はこの花畑だけを持っている。
………現実で話した会話、世界の終末……
杞憂であれば、いいのだけれど。
彼女の現実の身体が、まだ保てばいいのだけれど。
けれど、今は、それらは言えない。
紙のように白い表情を見ればそれは一目瞭然。]
……………そっか。
ハル、顔……白いよ。
たっくさんしゃべったから疲れただろう……?
ちょっと、昼寝しようか?
花びらのお布団で。
[中身があろうと、なかろうと
彼女は今ここにいて、
それを選択しているなら……
もし、世界の終末が確実となったら
また、お話をすればいいだけだと。
そう思って、話題を切り上げて
わざと髪を乱すように、わしゃわしゃと撫でた]
― かいがんせん ―
[海に臨む家が一軒。
丁度リヴリアやローザの反対側からやって来た形になるか。
多分、シンが向いているのとは反対方向。
ローザの姿に目を留めて。
ぱちり、瞬いた]
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