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…………起きたら腹パン
[腹パン=腹にパンチ。]
[中性的外見といっても少年は少年。
こういうとき、さくっと、殴ってすっきりする
それが一番だと心得ている]
…………まったく
[仮面は泣き顔だが、醸し出す空気は
呆れ一色で、ふわふわとした少女が
空の一点を見るのを見。
それから、嘲笑の、をみる]
……別に、海に何かしら探したわけではないよ
強いて言うなら、まっとうな食事
そのにおいにつられただけだ
[瞬きひとつ。]
けんか、よくない。
[もうひとりの仮面から感じる視線を無視して
手をつないでいる仮面に声をかける。
言い合うような二人に、首を少し傾けて仲裁らしからぬこと。
チリンと鈴が鳴る。]
…どうしたの、ローザ。
[急に飛び起きた、ように見える彼を見やる。
カルテの棚に一番近いところに腰掛けていた彼女は、ぽうとそれを見て]
リヴリアとダハール姉弟が、どうかしたの?
[わけがわからない、というように、こてりと首を傾げた]
[言葉とともに渡り鳥の翼が伸びてくる。
その白い翼を、ミズキは拒絶しようとはしなかった]
……そうだ、 な。
だれも、許しはしない。
自分を責めているのは多分……私自身、だから、
痛くないよ。私は頑丈だから……
けれど――…… すこしだけ、痛いんだ。
[触れた翼のやわらかさに、そっと身を委ねる。]
[……青年男性の声ではなく、
愛らしい少女の声。
……元を知っているだけに、ギャップがすごいが
外見にはあっては、いる。
と、仲裁の声に最初に思ったのはそんなこと。]
………喧嘩……喧嘩、なのだろうか……
それにしても、鈴、よくお似合いで姫君?
姫君、この先で実験の結果を口になされますか?
[結論は出さない、出せない。
喧嘩かどうか決め打つこともなく、
わざとらしい貴族のお辞儀一つしつつ
シンの食事のことを口にする]
[なにか、あ、このやろう
と思うことが現実では起きているが
当の本人は枕に顔を押し付けたスタイルで
介入中なため、言い訳も口に出来ない]
[こうしてふたり、陽だまりの中にいても。
かつて目の前の少女に酷い表情をさせてしまったことを、
天上の星――お空のお星様を「大嫌い」だと言われたことを、
時折、思い出すことがある。今のように]
『わかりましたよう。ハルちゃんがそこまで言うならもう、
本物のお星様のお話はしませんよう。』
[それで花畑の少女が幸せになれるなら何の問題もない。
そう思っていたのに]
……ミズキはわるくないの。
だから、じぶんをくるしくしないで。
にげて、いいから。
がんじょう、だなんて。
いいわけ、しなくていいから。
[翼が花水木を優しく包み込む。
それはいつか小鳥が焦がれた親鳥の温もり。
小鳥が決して手に入れる事のなかった、温もりの憧憬]
いたくて、いいよ。
かくさなくて、いいよ。
ぐれいへんは、きれいなゆめより。
ミズキのほんねのほうが、すき。
ああそうなのかい?
潮騒の子の食事は美味しいからね。
キミがそれに誘われる犬のような良き鼻をしていたとしても、奇異とは思わないよ。
キミがどこで何をしようがまあ構わないのだけれどね。
[興味なさげにひらひらと手を振って、かけられる声に顔を向け、不思議そうに首を傾ける]
けんかかい? 困ったねぇ。
これでけんかと言われてしまうと、ボクはおひさまの子と顔を合わせばけんかをしていることになってしまうよ。
見てのとおりボクは平和主義者だからね。
[そう言って。
両手を少女の頬へと伸ばした。
少し背伸びをして、そうしたら。
彼女の頭を胸に抱けるだろうか。
――彼女が拒まなければ]
『わたしはただ、星を見せたかっただけなのに……』
[最後の最後で本音が零れて、零れて、落ちる。
好意が通じなかったことで生じるもやもやを、
全部相手のせいにしようとする「醜い」思いが――。
それすらも、忘れられずに少女の中に残っている]
どういたしましてですよう。
[差し出された手のひらをそっと両手で握りしめた。
なるべく笑顔に見えるように、口の端に上向きの力をこめながら。
苦い思い出が、紅茶に入れられた星型の砂糖のように、包み込まれて溶けることはない。
けれど、触れた手の温かさに、心が少しずつ凪いでいく気が、した**]
……ん?
[一瞬、何を言われているのか分からなかった。
先生が、なんだって?
ぱちくりとまばたき一つ。
そして理解すれば、ため息一つ]
…あらあら、まあまあ。
[腹いせの行動か、そんな由は知るはずもなく
すこしだけ、ダハールの方に向けて困った表情。
表情は枕の奥なので見えないだろうが]
そう、ねえ。
先生、とよばれるひとは、むこうにはいないわけだから。
ちょっと困惑する子も、いるかもしれないわ。
[それが強い刺激にならなければいい、が]
大勢の子に、聞かれていたの?
…そうねぇ…
もし先生が何か、ってきかれたら…
知らないふりを通すか、
なにかの愛称とても、いえばいいかしら。
……混乱しそうな子がいたら、教えてね。
[口元にニヤリとした笑顔を浮かべる。
だが、すぐに自分の口を押さえ込むように
繋がれていないほうの手で
ぺちっと軽く叩いて笑いを消した。]
[ちらりと、自分の剥き出しの足に視線を落とした。
日焼けした肌の上に、血液の流れ出す一筋の傷跡。
きっと尖った小枝に引っ掛けたのだろう。
浅くはない傷跡だけれども、
ちっとも痛いとは思わなかった。
こんな痛みよりずっとずっと強い痛みを、
身体は違っても、感覚が覚えているから――――]
『どうして、笑ってられるの。』
[問いが、奇妙に少女の中で反響して、
やがて花畑の少女に狙いを定める。
その心の声が、]
『どうして、そう、笑うんだ。』
[花水木の少女の声と重なって、
何か納得するような思いが、すとんと胸中に落ちた。
けれど、 それだけ。**]
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