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[戯れに花の蜜を吸ってみたりもするけれど、それではおなかは膨れない。
ミズキやカスミの届けてくれる"おやつ"は少女には貴重品。
だけど、誰も我慢なんかしてはいけないと少女は思う。
だって、ここは、優しい世界だから。
春が終わることはなく。
寂しい夜がくることもない。
少女がずっと笑っていられる、あたたかい世界だから]
うん、ミズキちゃん、ありがとねえ。
[立ち上がるミズキを見上げて、少女は春の陽だまりのようにほわっと笑った]
おおい……このベリーのが。
いっぱいいっぱい、つまってるのね。
[驚いたように綺麗な赤を見詰める。
もう一度はむ、と匙を舐めた]
うん! みんなでたべたら、おいしいの。
てん、ぐさ……?ぐれいへんも、おそらからさがすの。
そうしたらまた、たべられるもの。
[匙を持っていない方の手でOKサインを真似っこする。
丸いほっぺに寒天を頬張りながら。
空になった器に両手を合わせる]
ごちそうさま、なの。
あさから、ごはんみつからなくてぺこぺこだったから。
すっごく、ありがとうなの。
[ぺこりん、と頭を下げた]
はーい、
今日も空が青いからお星様は絶好調ですよお――、 ……?
[反射的に返事をしつつも「星」をすくう手は止めない。
違和感にようやく気付いたのは、手がビンと薄紙の間をきっかり3往復した後のこと]
……だあれ?
[ふわり、ふわり。
軽やかな足取りで扉に近付き、開ければ、見えたのは立ち去ろうとする道化師>>74の後ろ姿か]
わあ、さっきの声はひょっとしたら道化師さんですかあ?
せっかく来ていただいたのにおもてなしもできないでごめんなさいねえ!
[ぶんぶんと両手を振りながら非礼を詫びる。
ちなみに片方の手にはしっかりと、「星」を包んだ薄紙が握られている]
[見上げて笑う少女の笑みの中に、名前通りの春を見る。
春は好きだ。
風はあたたかく、陽の光がやさしいから。]
いいや、こちらこそ。 ――ありがとう。
[花水木の花言葉は「返礼」。
伸ばした手を再び空に切らせて、
春の花畑に背を向けた*]
[また匙を舐める様子に、かなり気に入った様子が見て取れた。
空から探すときいて目は丸くなったが
首を縦に二回振って笑う]
うん、たくさん集めたら皆で食べられるね。
色を抜くまで時間かかるけど…
[天草は天日乾燥と水晒しを繰り返して出来上がる。
両手を合わせて、頭を下げて。
小さい割に律儀な渡り鳥に合わせて、短い髪を揺らす]
おそまつさまでした。
…そうだ、ミズキに会ったら
ココナッツに合うものがあれば頂戴って。
[伝えて欲しいとひとつ伝言を頼みながら
空になった器と匙を下げるために席を立つ**]
[胸を張るミズキに、へええ、と心底感心したような声を漏らす。
こちらの真剣な訴えに噴き出されると目を丸くした]
山ほど? ほんと?
なあんだあ、それなら安心だねえ!
[ほうっと安心したように息を吐いて。少女は先ほどの訴えが少し恥ずかしくなって、少し頬を赤くして笑う。
恥ずかしいのを誤魔化すように、ちょっぴり意地悪げな表情を浮かべた]
でも、山ほどあるのに取り分が減ったら我慢しなくちゃいけないなんて、グレイちゃんは食いしん坊なんだあ。
[そういう少女も負けてはいないのだけど。小さいからだからは想像できないくらい、おやつは食べてしまうのだけど。
しばらく自分のことは棚に上げておいた]
いい子? そうかなあ。
えへへー。
[頭を撫でられると、頬を赤くして、ちょっぴりだらしない笑みを浮かべた]
ううん、ハルはなにもしてないよう?
ミズキちゃんが来てくれて嬉しかったよう?
またねえ。
[お礼の言葉にそう返し、背を向けるミズキにほわほわと笑って手を振った**]
[時間がかかる、との言葉に一瞬視線を落とす。
しかしすぐにとろんとした微笑を浮かべて。
屈託無く笑う岬守を見た]
ココナッツ。
わかったの、つたえておくね。
[ココナッツ、ココナッツ、と復唱しながら。
席を立つ彼女に手を振って。
ふわり、山の方角へと飛び立っていく。
後には一枚、白い羽根が机の上に*残っていた*]
― →山のログハウス ―
[家に帰ればまず、じたばたと動く袋の口を開いた。
本日の収穫、白兎の耳を掴み持ち上げて、
慣れた手つきでサバイバルナイフを滑らせる。
動脈を切れば血液がどっと流れ出す。
………はずが、流れない。
ここは、優しい世界。
ミズキの望みのままにすべてが在る。
故に、命の途切れる瞬間はとてもやさしく、安らかに。]
[しばらくすれば、まな板に綺麗に捌かれた兎肉が並んだ。
ここまではいい。
が、問題はその先だ]
だれに料理してもらおうか。
[肉を小分けに包みながら、
兎料理のできそうな顔を思案する。
まず思い浮かんだのは先日もベリーを渡した海辺の少女]
またシンにお願いするかなぁ。
いい加減嫌がられて無ければ良いのだが……。
あとは―――… 『星売り』。
[その顔を思い浮かべれば、快活な表情に陰が落ちる。]
[道化師が振り返れば、少女の人懐っこい笑みが見える。
自分の表情が、相手のそれと反射的に正反対になる性質を、少女は持ち合わせている。
道化師の仮面は涙を流しているかのよう。
だから、少女は笑う**]
[ここは、優しい世界。
ここは、暖かな世界。
何も怖いことも、嫌なこともない。 ――けれど。]
……論外、だな。
[ふぅ。と溜息を吐き出し、作業の続きに取り掛かる。
すっと伸びる瑞々しい手元で、太陽の輪が*輝いた*]
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