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地球のクリスマスか・・・本当に懐かしいのう。
巨大な樅の木でクリスマスっぽいのなら私たちはさしづめ蒼い石をプレゼントしたサンタクロースというところかのぅ。
はーはっは。
[と高笑い。]
― 昔の思い出 ―
ナッツは鋳物のティンク一族として木炭の灰から生まれた。
最初の30〜40年は、ようせいの森で、仲間たちとようせいの仕事のものづくりをやったり、外の様子を色々教えてもらったりして暮らしていた。
そして40年を越える頃、森から出て、夜に人間の子どもたちと空を舞うようになった。
子どもたちは、大体ナッツのことを夢だと思った。
ナッツもそれでよかった。
元来ナッツは人間の子どもたちと遊ぶのが好きだし、一晩ずつ、いろんな子どもの様々なお話を聞くのはとても楽しかった。
そんな中、彼に出会った。
はじめて会ったとき、彼は16歳だったと思う。
彼は親の影響で整備士を目指して工学を勉強しており、いろんなところでナッツは人間の技術に感心した。
また、彼は飛び方の考案が天才的だった。
彼が飛ぶたびにいろんな飛行方法や街の絶景ポイントを探し当てるのをみて、ナッツはいつも、次も彼と飛びいたいと思った。自然と毎晩彼と飛び回るようになった。
彼も大人になり、ナッツの光で飛べなくなった。
しかし、ナッツは彼と一緒にいた。
彼は家を出て、荒野に打ち捨てられたぼろ屋を格安で買い、ナッツがいつでも安心して来れる場所を作ってくれたのだ。
彼は原付で少し離れた街に通い、今度はナッツが彼の仕事にようせいの技術をアドバイスしたりした。
ナッツは他の子どもたちと空を飛んだり、ふらっとようせいの森や他のところに遊びに行きながらも、たいてい彼の元に戻ってきた。
そして黄金の30代。彼は自家用軽飛行機を購入した。
再び2人は2人で好きなように空を飛びまわった。
幸せだった。
― 食堂車近く廊下 ―
……っ。
[自分よりも大きな手で頭を撫でられる>>241と、また涙が零れそうになる。
耐えるように唇を噛んでも、抑えきれなかった雫がまた一筋溢れた。]
ア、ラルースアは、ウェグ星系列のクヤデという星に領土を持っております。
[気持ちを落ち着けるように、ゆっくり言葉を紡ぐ。
クヤデは緑や動物が多く、農業や酪農など、自然のものを活かした産業が盛んな星だ。]
私と母は糸を紡いだり、紡いだ糸で織物を作ったりしておりました。
40代。彼は足を悪くして、軽飛行機を売った。
しばらくして仕事もやめ、ずっとぼろ家にいるようになった。
ぼろ家の周りで細々と食物を育て、その他のものは、退職金と飛行機を売った金で、半月に1度家まで来てくれる雑貨屋から購入するという生活を送るようになったのだ。
それでもナッツは彼と一緒にいた。
小さな畑ながら、彼と春夏秋冬を楽しんだ。
彼が50代になったかというときだった。
彼は季節の変わり目で具合を悪くして、3日くらいベッドに寝たきりになった。
彼は、ずっと近くにいて欲しい、とナッツに言った。
ナッツは、ずっと近くにいるよ、と彼に言った。
5日目も彼はベッドから起き上がれなかった。
ナッツは心配になり、ふと思い出した。
ようせいの森のようせいのお医者さんも、人間の名医と友達だった。
ナッツは彼に、薬をもらってくるね!と言って、ようせいの森に向かった。
やはり少し心配で気がせいて、普通なら2日かかるようせいの森まで1日でついた。
ようせいの森のお医者さんに聞くと、ここから3日かかる森の中に、彼の知り合いの老婆の名医がいるという。
場所を詳しく聞いて、お礼を言うと、ナッツは全速力で老婆の森に向かった。
なんと、1日でついた。
老婆は温かくナッツを出迎えた。
彼の様態を話すと、老婆は、それならわたしは治したことがあるよ。安心しなさい。と微笑んでナッツを撫でてくれた。
老婆は1か月分の薬をくれて、季節の変わり目だから万一のこともあるし、早めに持っていっておやりなさい、とナッツに声をかけた。
老婆にありがとう!とお礼をいって、まずはようせいの森に向かおうと老婆の森を出たとき、急に気温が下がり、雪が降り出した。
雪はすぐに猛吹雪になった。
20年に一度の大寒波の到来だった。
吹雪は向かい風で、大きな雪の塊が体にばすばすと飛んでくる。
かといって雲の上に上がったらいくらようせいでも凍死するだろう。
ナッツはそれでもがんばった。
1日吹雪の中を飛び続けて、夜のうちにようせいの森の明かりが見えるところまで来たのだ。
それ以降の記憶はない。
ナッツが目覚めたのは、ようせいのお医者さんの入院ベッドの上だった。
しばらくぼーっとしたあと、ふと、ここまできたいきさつを思い出し、枕元のカーテンを開けて、外を見たナッツは愕然とした。
[ハンスの言葉>>243を聞けば、表情が微かに歪んで。]
きっと、そうなのだと思います。
父は約束を守り、お義母様が行くように勧めても、一度たりとも母に会おうとはしませんでしたから。
けれど、寂しかったのは父のせいなどではないのです。
私が……私が手の届く位置に、果実を実らせてしまった……!
[瞳から次々と涙が零れる。]
私が決断した一晩、かあさまにとって何がいちばんなのかだけを考えたつもりでした。
でも本当は、私がかあさまに消えて欲しくなかっただけなのです……!
きっと、きっと私は、自分のことだけを考えて……!
[涙と一緒に言葉が溢れてくるようだった。
呼び名が昔のそれに戻っていることにも気づかずに、心の奥底にしまっておいたものが零れ出す。]
村には残雪もなく、日なたではいたるところで小さな青葉が芽吹いていた。
春がそこまできていた。
あの暴風雪の日から、一体何日経っているのか想像もつかなかった。
とっさに枕元においてあった自分の荷物をつかみ取ると、窓から飛び出して、必死で荒野のぼろ屋を目指した。
自分の不甲斐なさに目の前が滲んで見えた。
ぼろ屋はなかった。潰されて廃材だけが置いてあった。
ぼろ屋のあったところには大きな石が置いてあり、
「こちらに住まわれていた――氏のご親戚の方へ。
お話と、お預かりしているものがありますので、○市の教会までお越しください。」
と文字が書かれていた。
石の後ろには簡単な十字架のようなものが建っていた。
ナッツは、この先の50年は、この前の50年よりよほど長いものになるだろう、と予感した。
その潰されたぼろ屋が、今、目の前にあった。**
ありふれたことなのかもしれません。
それでも私にとっては物語でもお伽噺でもなく、現実、で……。
[頬を両手で包まれる>>244と、花が萎むように、声に勢いがなくなった。
真っ直ぐな言葉>>245を聞けば、]
あ……駄目、です。
私にそんな言葉をかけては駄目です……。
[苦しそうに、首を横に振った。]
>>=20
それなら、私よりずっとたくさんのことを見てこられたのでしょうね。
お時間のあるときにでも、是非いろいろお教えいただきたいわ!
[ふたりだけの空間があれば、別れなど来ないのだと、そう信じ切っている口調で。
隙間の向こうで、光が不安気に揺れたように見えたのは、気のせいだろうか。]
[昔は見えるところにある果実には、
容易く手を伸ばし掴めた。]
・・・。
会えたなら、
きっと・・・
願いは、叶ったのでは。
[確信などはないから途切れがちに言った。]
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