三匹のうち、一匹のバンダースナッチが双海子さん目掛けて飛び跳ねると――くるっと振り向いたと思ったらポニーテールだと思ってたものがばくぅっと鋭い牙の並んだクチが開かれたのです。

「わきゃああああっ」
　慌てて逃げる双海子さんの足元の地面をバンダースナッチががぶりとやれば地面がごっそりかじられて。
「怖い怖い怖いこわい」

「おい捕まえるぞなんとか弱らせろ」
「なんとかってなんとかってええ」
　そうこうしているうちに他の二匹も跳んできます。双海子さん大ピンチのままとにかく逃げる、避ける、泣き叫ぶ。
「無理ムリむり無理ムリむり、私ほらしがない新聞部員だってばああ」
「がんばってください夢怪盗ドリーミィ☆スター！」
「よぉしおっけー、ドリーミィ☆スターにおまかせよっ」
「やるきになった？！」

　逃げながら双海子さんは杖の先に意識を集中。ぽうっと先の星が輝いて、虚空に光の軌跡が弧を描きます。くるくると杖を振り回せば、光の軌跡がらせん状になっていって。
「ええいっ」
　幻獣たちが飛び込んできたところを狙って双海子さんがきゅっと杖をひっぱると、光の螺旋もきゅっとしまってバンダースナッチに絡みつきます。
「うまい！」
「このォっ」
　すかさず双海子さんが杖で殴るとかっきーんといい音。双海子さんの手がしびれます。

「なにこの仔かたいー」
「うん、そいつの身体ほとんど鉄なんだ」
「そんなのどうやって弱らせればっ」
　打つ手がない双海子さんピンチ。その間に二匹のバンダースナッチが光のリボンから抜け出して…残る一匹は余計にリボンに絡まっているぞっ？
「やっぱこの仔たちかわいいー」
「そんあこといっている場合じゃねーだろっ」
　抜け出した二匹は思わぬ反撃を受けて怒ったのか、目を真っ赤な攻撃色に。なんだか凶暴さ加減があがっています。クチから炎を吹き出しながらあたり構わず噛み千切りまくり。

「どんどん手がつけれらないよっ」
「また光の輪で捕まえられないのかよ」
「こんだけ暴れられてちゃむりー」
「あ、いけません」
　タックが慌てた声を挙げる。暴れるバンダースナッチたちは見境いなくなって光のリボンに絡まったままのバンダースナッチにまで襲い掛かります。
「え、ちょっと、ダメぇっ！！」
　咄嗟に叫んで双海子さん飛び出した。狙われた仔をかばって吹っ飛ばされる双海子さん。

「きゃあっ」
「双海子さん！」
「おい双海子？！」
　呼びかけるタックとロックに大丈夫だと手をあげて、痛む身体を押さえながら双海子さんは庇われてきょとんとしているバンダースナッチに「逃げて逃げて」とリボンをほどきました。

「おいおい双海子！」
「だってこのままじゃこの仔も危ないもんー」
　怪我した左腕を庇いつつ杖を振り回し暴れる二匹を挑発し、双海子さんは必死に逃げますが小石に躓いて転んじゃった！
「きゃっ」
「あぶなーーーい！」
　飛び掛ってきた二匹の幻獣。もうだめだと双海子さんがぎゅっと瞳を閉じたその瞬間。

「キィー！」
　気合一発！なんとさっき助けたバンダースナッチがいままさに双海子さんに噛み付かんとした幻獣を殴り飛ばして助けたのです。
「ロック！」
「おう！」
　そのチャンスを見逃しません。殴り飛ばされたバンダースナッチ目掛けてロックが水晶球を投げつければ、果たしてその一匹は水晶球に吸い込まれました。

「ありがと、助けてくれたのね！」
「キィ！」
　どうやらこの仔は双海子さんを味方してくれるようです。残るは一匹、バンダースナッチと双海子さんは並んで身構え、暴れる幻獣に向かいます。
　スナッチが真っ向から対峙し、その隙に双海子さんが光のリボンを作ります。タイミングを見計らってえいと投げればリボンは幻獣の足に絡みつく。
「キィーーー！」
　動きの止まった幻獣目掛けバンダースナッチが噛み付いて、弱ったところにロックが水晶球を投げつけ見事に捕まえることに成功した夢怪盗ドリーミィ☆スター。

「おー。なんとかなったー」
「手伝ってくれてありがとねっ」
「キィキィ♪」
　ハイタッチ。
「よし、じゃあそいつも回収して今日は帰るか」
　ロックが取り出した水晶球を双海子さんが受け取ります。

「これに入ってくれる？」
「キ♪」
　素直に水晶球に入ってくれて、これにて一件落着です。

　でもまだまだ逃げ出した幻獣はいっぱいいるみたい。この物語どこまで続くんだがんばれ双海子さん、がんばれ夢怪盗ドリーミィ☆スター、そしてがんばれ夜更かし脚本家！

「次回。
　『ロックの秘密と謎の影』に、
　ドリーミィ・シューティン♪」

「ハードル上げんじゃねぇバカ！」

　ｼﾞﾘﾘﾘﾘﾘﾘﾘﾘ...