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アヤメさまも、おやすみなさいですわ。
[軽く手を振って見送る。
気付くと、談話室も随分静かになった。
考え込んでいる様子のミユキの横に座り直し、自分も投票用紙を開いてセリナの名前を書いた。
……こんなわざわざ自ら正体をバラすようなことを、何故……
男はまだまだ、余裕があるのかもしれない。こちらを狙っているのかも知れない。
現にラヴィ、セリナさまにはしっかり騙されてしまいましたわ……。
間抜けさに軽く肩を落とす。自分ももっと、しっかりしないといけない。
けどまず前提として、ミユキさまと、テレサさまは……絶対違いますわ。そう思わなければ、ラヴィがなくなってしまいそう。
けれど、他の先輩は……。
今一度考え直さないと。ラヴィニアはそう思い直した。]
[口腔内にこじ入れた舌に、それに応えるようにユリウスの舌も絡まるのを感じて、セリナは驚き、とっさにユリウスを弾き飛ばした。]
なぜ…どうして?
どうして抵抗をしないのですか…?
この後、何をされるのか、分かっているのですか?
私は…性犯罪者、なのですよ…?
いやらしい、汚らしい、けがらわしい、人間なのですよ…?
[その言葉は震え、顔は泣きそうになっている。]
[弾き飛ばされ、廊下を数歩、後ろへよろめく。
口周りについた唾液を、手で拭う。
数歩先ながら、相手を見つめる目は、上等だ、と言わんばかりに力が籠っていた。]
心の芯まで卑しくて、汚れた人間なら、そんな事は言わん。
…それに、 …… …
紅茶を淹れてくれた君、
コーヒーゼリーを作ってくれた君、
褒められて、自信がついて、喜ぶ君。
私にはどれも、虚構には見えない。
[ゆっくりと、静かに答えた。]
セリナさん……。
何となくですがこっそりアジトからセリナさんの恋を応援しています。
悪いのはセリナさんの生い立ちを知りそそのかした人達です。残りの二人は3年病院から出られない覚悟をしておいてください。
ぅ……。
[思わず両手で口元を押さえる。ユリウスの言葉に、こみ上げるものを感じ…。]
ユリ…ウスさま……。
そんな、お優しいこと、を、言わないでください…。
せっかくの、決心が……。
[そこまでが限界だった。涙が溢れてとまらない。ぽろぽろ、ぽろぽろ。]
ユリウスさま…ユリウスさま……。
やはりユリウスさまが大好きです…。
離れたくない…一緒にいたい……。
我侭です、どうしたらいいのか、もう、分からない…。
[立ち尽くし、涙を流す。]
[切なげに、哀しげに、その様子を見つめていた。]
辛かったな、セリナ。
[離れていた距離。それを、数歩進んで縮める。そうして、優しげな微笑をたたえて、セリナの頭をそっと撫でる。
そうしてから、指で、その涙をぬぐう。]
迷わない。
一緒に、行こう。
──…今晩、私を"襲え"。
そうして──… [言葉を途切れさせる。]
[頭を撫でる手に、目元を拭う指先に、触られた箇所に全神経が集中する。こみ上げる感情が抑えきれない。]
……嬉しい…。
[一緒に、そう言ってくれた。でも。]
…仲間には仲間の、考えがあるのです……。
私ひとりの我侭は……。
[小さくかぶりを振った。]
でも、その気持ち…凄く嬉しいです…。
いつかまた、きっと会えます。
[そう。]
[口の中で小さく言った。]
君を、信じよう。…
[踵を返す。その方向は、ユリウスの部屋。]
ただ、今晩わが部屋に来ること。
それくらいは、"男同士のルール"に捉われないだろう?
[一度、少し前にいったこと。
言葉を改めて言いなおして。]
君の意思に任せよう。
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