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[セリナが、こちらの言葉の意図を察したのを様子から悟れば、にやついた。
どうする、と言われれば腕を組む。]
とりあえず、寮の私物を回収する。セリナの部屋もな。 [リヤカーでも借りるかな、と呟き。]
それで何処か、貸し部屋を……
……嗚呼、そうだ、既に退学届は出してあるからな。
[後について思いついた事を口に出しながら、当然のような顔で言葉を付けたし。
どうやら、もし一緒に行く事を断られてもついて行く心づもりだったらしく。]
[やさしい声で呼ぶのを聞いた。
やさしい表情で話すのを見た。
じっと、マレーネの言葉に耳を傾けた。]
また…救ってくださるんですね。
こんな私でも…マレーネさんの傍にいていいんですね。
[見慣れた笑みをクレールに向ける
“いつもの”マレーネがそこにいた。]
あなたについて行きます。
[マレーネの瞳をじっと見据えて、静かにそう答えた。]
[ぽかんと。既に退学届けを出してある。そんな言葉に、ひたすらぽかんと。]
ゆ、ユリウスさま…。
[その行動力には敬服するが、さすがにセリナは身が引き締まる思いで。
私物を回収すると聞けば。]
あ、あの。
サイドテーブルの上に、小さな蝶…ピンクのものと白いものがあると思います…。
お気に入りなんです。
それも、もってきてもらえますか…?
[お願いをした。]
[ぽかんとする様子を全く気にも留めずに、何だ、などと。
まるでそこまで重大な事情でもないかのように、平然としていた。]
小さな…ピンク、と、白か。わかった。
とりあえず、部屋の備品以外は手当たり次第積むつもりだ。
[一つ頷く。]
では、行ってくる。少し時間がかかるかもしれんが…
セリナ君はここで待っている、かね?
[校内をうろつくわけにもいかんし。と。]
さすがにもう、入れないでしょうね…。特に寮内は。
[警備などもきつくなっているだろう。]
はい、ここでお待ちしてます。
よろしくお願いします…。
[ユリウスを見て、にっこりと微笑んだ。]
[よし。急ぐかな。]
[悪いな、とセリナに告げて、早足に階段を上がる。
あんな長いシーツのドレスを着ながら、廊下を猛スピードで駆けて行く音が聞こえる。
昇降口の板を蹴り出て行ったと思えば、
……暫く経って、リヤカーが学校に持ち込まれたらしき車輪の音が聞こえる。
多少教師と揉めたあと、その人はリヤカーを寮前に置き、荷物を次々運び出し始めた。
通りすがる生徒会の者を捕まえては、手伝わせる。]
ついていく、か。
そんなにさくっと言っちゃっていいの?
私、こう見えても犯罪者なのは、わかってるよね?
[彼女を見つめ返すと、笑いながら言った。
そこにからかいの色はない。
外面だけ見て"愉しむ"のではなく、本当に、彼女自身を自身の身で、"楽しんで"いた]
救いなんてもの、あげた覚えもないのに。
うん、まあ。
……いいけどさ。
[呟いた直後、彼女の眼差しを、もう一度捉え。
不意に、彼女に唇を重ねようと動いた]
[しかし、ユリウスが「アジト」に戻ったとき、セリナの姿はそこになかった。あの、ベールにしたシーツもそのまま。マットレスの染みもそのまま。全てのものがそのままで、ただ、セリナの姿だけが忽然と消えていた。
書置きすらない。]
[探すだろうか、ユリウスは。
しかし見つからない。
学校に尋ねても、そんな生徒は最初から居ないの一点張り。
セリナだけではなく、マレーネも、ヒカリも。
事件は全て、無かったこととされていた。
即日、旧校舎の取り壊しが始まり、そして、ユリウスの退学届けは…破棄されていた。]
えへへ驚いたか!
私だってセリナは可愛いからねー。
ちゃんと幸せにするする。
とりあえず、高校はちゃんと卒業しておくれユリウスさま。
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