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[ぴきぴきと、刃が高く鳴いた]
命じられるまま──役を果たす。
罪を重ね──いずれ下される裁きを待ってね。
未だ裁きが下されないのは、それほど私の罪が重いということなのだろう。
[罪を贖うために罪を重ねる矛盾に、"私"は気づかないふりをして]
(無の安息は、いつ訪れるのだろう)
[約された安息があまりに遠い]
[刀の声に重なるあどけない笑い声]
[くすり] [くすくす] [くすくすり] [くすり]
[だからこそ其れは残酷かも知れず]
贖罪の為に罪を重ねては、
裁きは望めないのではないの?
[ふと小さく零す吐息は甘い]
私は未だファーカを知らないわ。
けれど私はきっと貴女の邪魔はしない。
何時か私を見ても、
貴女は嗤わないで居てくれる気がするのよ。
不思議ね、知らないと云うのに。
だが――お主はすでにひとつ、間違えておるよ。ヒューバート。
[恰も直接語りかけるように、視線を一点に留める。その先にあるのはひときわ目立つ洋館の姿だった]
敗者は常に存在するのだ。
過去にも、現在にも、そして未来にも。
敗者の居らぬ時点など存在せぬ。
そして――敗者であったことの無い者もまた、存在せぬのだ。
誰もがすべて、敗北しているのだよ……
私の安らぎは永遠に訪れはしないのかもしれないな。
それほどまでに罪深いのだろうさ。
[もはや声音は自嘲の響きを帯びて][乾いた笑い声]
「ありがとう」。
私も、お前の邪魔はしないよ。
互いに、為すべきと思うことをすれば良い。
嗤いなどしないさ。
私はお前のことを、どうやら好きなようだからね。
まだ会いもしていないというのに、不思議な話だ。
[柔らかな微笑み][でも、悪い気はしない]
まあだが、仮初めの幻力(マーヤー)といえどお主の希望を模したものならば、破却するに至る理由もあるまい。もう半ばまでの実存を得たようでもあるし、な。
[顎髭をなぞり、ふむ、と口にして頬に笑みを上せた]
[ふと振り返ると、先ほど出会った老人が邸の程近くに立っている]
つまるところ、人は人の集まるところに集うということか?
誰しも、一人では生きられないのかもしれないな。
[呟き、その立ち姿と邸を比べ見る]
ファーカ…
[彼女の笑い声は酷く胸を騒がせる響きをもって]
[名を呼んだきり随分と長い事言葉は無くなる]
少しもたのしくなさそうに笑うのは、
泣いてしまわない為かしらね。
[問い掛けるでもなくぽつりと呟く声は静かで]
[続く声に息を呑むのも忘れ今度こそ時は止まる]
[戸惑いの滲む長い沈黙には息遣いすら無くて]
…お礼を云われたのなんて初めてよ。
誰かに好きだと云われたのも。
私は貴女の罪を裁く事も赦す事も出来ない。
でもそうね、お互いの為すべき事を。
私も、ファーカに逢うのが少しだけたのしみに成ったわ。
[本当に不思議ね、と笑う声は柔らかい]
――キミはボクと、同じものが欲しかったんだね。
すこし違うのは…今はもう死はいらない…と考えてるところ。
いま欲しいのは…アハハ。
〔ゆらん。男は上体を揺らして紅を覗き込む。〕
師にして――学びあう相手。
〔秘密を囁く、そんな声音。唇の前に歪な指を1本立てる。〕
――ボクは旅立つ者…ヒューバート。
キミは「何」だい。
―空き小屋―
[魚屋に案内された空き小屋に残る。柳の枝を手にしたまま]
人のにほいが……する
[小屋の中をしばらく探索している。瓶詰めの中身は(おそらくは果実の砂糖漬けだろうか)すでに痛みきって原型を留めておらず、一口食べて挫折した]
ここが……安住の地?
[誰もいない小屋の中で独り微笑む。すえた臭いのする汚い毛布を見つけると、裏口からの退路を確保できつつ入口からは死角になる場所を探して、毛布にくるまって*丸くなった*]
〔既にやさしい嘘が暴かれていることを、魔法使いは理解していた。そこを師に指摘して貰わなくては――前に進めなかった。男には身の回りのことしかわからないが…自らの望み、そのひとつが果たされた…ということだけは離れていてもわかる。〕
……有難う…師匠。暴いてくれて。
〔ぽつりと呟く。「でも、ホントのところは教えない。」
それは悪戯であり、複数回答の可能性を示唆する言葉。〕
[同じものを求めていたと男は云う]
[無遠慮に頭から爪先まで眺め回し]
[くるり] [くるくる] [くる] [くるり]
[傘を回し揺れる上体に視線を移す]
[細い眼差しを石榴石は真っ直ぐ見]
其れは、少しだけ愉しそうね。
[唇にはあどけない悪戯な笑みを引いて]
[男を真似て其処に細い指を1本添える]
[名乗られた名を幾度か舌の上で転がし]
ヒューバートは何処へ旅立つの?
[「誰」ではなく「何」と云う男の問い掛けにか]
[指添える薔薇色の唇は三日月に吊り上がる]
私は棄てられた迷子のお人形、Sinkと呼ばれていたの。
でもヘンリエッタと呼んで呉れないと、
仮令ヒューバートが求めて無くても殺すわ。
――…
[其れ以上に紡ぐ言葉は無くて]
[聴こえる声の温もりを感じる]
[未だ見ぬ彼女へ暫し想い馳せ]
[心にあどけない微笑を浮かべ]
[倣う如く外側へと意識を向け]
…羨ましければついてきぃ、柳よ。
わし等はお主も拒みはせぬ。いつでも待っておる。
[すれ違うヒューバートへ、カラカラと笑い声をあげて引越しは続く。彼が通り過ぎた後大柄の男に背負われし青年を見遣り]
そうじゃのう、早よ良うなってもらわねば。
治ればまた、遣れることはたくさんある。
この村には未だ未だ足りぬものが多くある。
農耕も…家畜を育てることも、炊事も、一人だけでは到底できぬ。
じゃが、皆で分け合えば少しずつではあるが形になろう。
安住とは訪れるものではない。
作り上げるものなのじゃ…
[途中からは自らに聞かすように一人ごち]
…ところでうるずよ。何か、思い出したものはないか?
[始めて見た時から幾分、落ち着いたウルズの姿に気になっていた問いを口にする]
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