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[帰ってきた声に"私"はどこか安堵に似た吐息を洩らす]
私は「シャーロット」……否、"ファーカ"と言う。
その声は未だ聞いたことが無いな。
まだまだ知らない来訪者が居るらしい。
その後どうしようとか考えてなかったんだ。ただどんな者にも安住を約束された地があるとだけ聞いて、それでどんな所なのか一度見に行ってみようと、
[いつのまにか身振り手振りを交えて魚屋に身の上話をしている自分に気付き、少し照れたように]
別に、本気にしてたわけじゃないんだ……
[魚屋から3歩半ほどの距離を保ったまま、集落に近づき感じるのは人の気配。錘がついたように足が重くなる]
[相手の安堵は敵意の無い声からも幾らか感じ取れたらしく]
[かけられる言葉の内容に思案気に幾拍かの間を置いてから]
ファーカ、ファーカ…
[声にせずとも舌の上で甘い砂糖菓子を味わうかの如く]
[歌う様にか囁く様にかうっとりと幾度か其の名を紡いで]
私は今、漸く着いたところだわ。
他にも居るのね。
…何か?
[ナサニエルの口元が、微かに動いたのを、訝しげに見、首を傾げた。]
…何でもないんなら、別にいいんだが。
[それ以上詮索するのも憚られ、黙って縁側でくつろいでいる。]
…わしは天才じゃのう…
のう、みっきいよ!
ほれ、見てみい。小屋に真っ直ぐ辿りついたわ。
[見覚えのある小屋が姿を表すと指差し、ミッキーにそれは嬉しそうに笑いかけ]
やればできるではないか。
[誇らしげに独りごち、小屋の向こう…また新たな人影が見えた気がして目を凝らす]
…?
幻ではあるまい…
ああ。清めるべき魂を持つものが、幾人と。
村に住み、村をつくり、互いに協力し合い……。
そんなことを望む者も居た。
どこまで逃げたとしても、背負った罪までは、魂の疵からは逃げ切れるわけではないのに。
[ヘンリエッタの声にくすと微笑む気配]
奇妙な人間ばかりが集まっているよ。
小さな村だ。すぐにでも顔をあわせることになるだろう。
お前がどのような姿なのか。少し楽しみにしている。
同類に会うことは稀だからね。
[最後にそれだけ言い残し"私"は再び意識を*外界へと向けた*]
[声と気配にぴたりと足を止め小首を傾げる]
[一瞬だけ集中し驚異的な視覚により人影を確認]
其れが私の事を云っているのなら、幻ではないわね。
[日傘の柄を握り直し地を蹴るか算段を始め]
[立ち止まった侭に闇の向こうの気配を探る]
[影が返事を返す、小さな声。幼子の声だと気づいて驚きに目を丸くさせ]
なんと、子もおったか。
可愛らしい声じゃ、娘か?
声代わり前の坊やもしれぬな…
ささ、此方へおいで。
甘い果実があるから食うといい。
一人で来たか?
[声のする方へ手招きをし、小屋を顎で指す。縁側に見えるのはウルズの姿]
ただいま。
おお…よぅ似合うではないか。
身体を起こすことはできるようになったか。
魂を清める?
[くすり] [くすくす] [くす] [くすり]
[悪意は無いがさも可笑しいと云う様子]
そうね、そうだわ、その通りよ。
罪も、咎も、全ては、切り離せはしないわ。
…たくさんの人が居るのね。
[続く言葉に急にたのしげな声は途切れ]
[変わりに響く声は酷く哀しげなもので]
私は――…醜いわ。
きっとたのしくなんてないわよ。
[声に敵意は感じられないけれど躊躇う気配が滲む]
[哀しげに瞬いてから闇の向こうへと小首を傾げ]
誰も、嗤わない?
[不安気に問う声は子供らしい響きをもって]
[立ち尽くして躊躇いがちに日傘の柄を回す]
声は可愛らしいのね。
でも私は可愛らしくなんて無いわ。
だから、此処に居るのだもの。
醜くても嗤わないのなら、そっちへ行くわ。
はて、何故笑うのじゃ?
[心底不思議に問い返し、しかし不安気な声にそっと諭すように声を和らげ]
可愛い声の主を笑うことはあるまい。
笑みが浮かぶことはあるやもしれぬ。
しかしそれは何か楽しいことや嬉しいことがあった時じゃ。
わしは隠すことはあまり好かぬ。
わしはお主の姿を見たいのじゃが。
此方へ来て姿を見せてはくれぬか?
[女の声に暫くは思案する間もあっただろうか]
――…嗤ったら殺すわ。
[あそこに居た者達の様に、とは小さく呟く程度]
[当然の事の様に変わらぬ声が告げ歩き始める]
[ふわり] [ふわふわ] [ふわ] [ふわり] [ふわ]
[女をはじめとする幾人かの姿に距離を取った侭]
[軽くドレスの裾を持ち上げ恭しく一礼して見せ]
御機嫌よう、たくさん人が居るのね。
それは物騒なことじゃ。
[少女の言葉にカラカラと笑い声をあげる。少しずつ、影が形となり現れた少女の姿に思わず見惚れ]
これはこれは…
[見たことのない装飾と服装をどう喩えたらよいのか、言葉を捜しあぐねているようで]
其の声に似つかわしい、とても可愛らしいお姿じゃ。
皆あちこちへと行って大分人も減っておる。
もっとおるぞ、また姿を見かけたら声を掛けて見るとよい。
わしは「すてら」じゃ。
後ろにおる逞しい男が「ミッキー」、其処の銀髪の男は「ウルズ」
姿は見えぬが何処かへ行っていなければ「ナサニエル」という
蒼髪の男もいるであろう。お主の名は何じゃ?
物騒かしら?
私は其の為につくられたのだわ。
…お父様は、私を醜いと仰ったわ。
[哀しげに瞳を伏せ弱弱しく首を振る]
すてら、すてら、すてら…
[名乗る声に瞼を持ち上げじいっと女を見詰める]
[幾度も舌の上で甘く味わう如く其の名をなぞり]
[紹介される順に他の者達も視線を送り頷いて]
ミッキーに、ウルズに、ナサニエルね。
私は――…名前は貰えなかったの。
でも祖体の呼称はヘンリエッタ。
だから、此処では私がヘンリエッタ。
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