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〔喧騒の中、幻術師は人形遣いを見つける。〕
………、…居てくれたんだね…
〔心底の安堵が漏れる。…いま傍にいけないのがもどかしく…したかしないかよくわからない、糸目なりの目礼を向ける〕
[ヘンリエッタの疑問に少し悲しそうな顔をして]
―その内分かる様になるから。
[近付いてくる気配に気付けば]
んーと、ひのふのみの…これで全員揃ったかな?
わしのことは今はどうでもよい。
お主の話じゃ。彼らを怒らせると恐い。
でも、そうじゃのう…その時には守ってもらおうか。
わしもできうる限り、皆と平穏を守りたいと願っておる。
無力ではあるが。
[カラカラと笑い声をあげ、ヒューバートの言葉に手招きしている人物こそが待ち人であろうと悟る。言うべきか、迷うが彼も見つけたようだ、密やかに手招きを続け]
自覚があるならばちとは反省して改められよ。
此処は小さな集落じゃ。
しゃあろっとや、年頃の娘を泣かすような真似はわしが許さぬ。
[釘を刺すような少し厳しい口調で。時の話は、漠然としすぎていて理解するにはあまりに情報が少なく…不思議そうに男の横顔を見つめるに留まった。]
[腰につけた柳の枝を一つ撫でて、おずおずと一歩を踏み出す。未だ胸中に葛藤を残しながら]
……
[手招きに吸い寄せられるように、おぼつかない足元のまま、ふらふらと]
――洋館の前――
[人集りの方へ向かおうとして、ふと木陰に顔を向けた]
と……ふむ?
はて。
いつだかに感じたような気配の者が居るの。子供か?
まあよい。程なくそれも判ろうて。
[頷いて杖を仕舞い、集団の方へ向かった]
皆の衆。何を話しておるのじゃ。
でも、「心」はあるじゃろう?
心無いものが木の実の礼を持ってきてくれる訳がない。
ならば同じじゃ、へんりえった。
形に捉われてはならぬ。
なんというか…理屈で語れるものではないと思うのじゃ。
[難しい話は頭がこんがらがりそうで、難しい顔をして一つ頷いた。]
かなしみは知っておいた方が良い。
過ちを繰り返さずに済むから。
[未だ幾らかの距離はあるけれど老人の姿を見止め]
[口許に笑み引きドレスの裾を軽く持ち上げ一礼]
御機嫌よう、お爺様。
貴方がヒューバートの云っていた言葉を操る方かしら?
[忍者の声音と表情に其の貌をじいっと覗き]
[其の貌に浮かぶのは困惑と戸惑いだろうか]
そんな貌をしなければいけないなら、
判りたくなんてないわ。
そうね、随分と集まったみたい。
[シャーロットの言葉に頷き、小さな溜息。]
…そうなのかもしれない。
だが、わからぬのも…怖いんだ。
[左手をじっと見る。
夢にうなされて目覚めたとき、勝手に刃物の生えた腕。
どうやればそうなるのか、それも思い出すことはできず。]
何ができるのか。何をせねばならぬのか…。
わからぬまま、何かをしてしまうかもしれないのが…怖い。
〔こういうときについ考え込みがちなのは、幻術師の悪い癖だった。併し…これだけははっきりしている。〕
――ヘンリエッタ、重ね重ね申し訳ない。
少なくとも、今は貴女に報いるだけの礼儀が
ボクには尽くせそうにないよ?
準備云々ではなくて…あまりにも細切れすぎる時の所為で。
貴女とボクとは、あまりにも近すぎて…
裏返ったときがこわい、そういう存在だ。
貴女とずっと遊んでみたかった…
ご期待に応えられず済まないが、
場を…この村であってこの村でない場所へ
改めさせてもらえないだろうか?
〔少なくともボクは、既にすてらに迷惑をかけているから、と添え〕
そうねすてら、私にも心はあるわ。
けれどこの心もまた人の手に依って作られたのよ。
カタチに捉われるのも、
全てを混同するのも、
どちらも違うのでしょう。
[難しい貌をする様子に人形は微笑む]
過ちも罪も人の作るものだわ。
何を罪とするか、何が正しいか、
自身で決めると云うのならば、
私はもう是以上に間違えようが無いのよ。
[影が徐々に此方へと近付いてくるのを確認すると嬉しそうに歯を見せて笑みを浮かべる。]
爺か、おかえり。
待ち人を探しておった。
今し方見つけたところじゃ。
…これで全てか?
[現れたモーガンとアーヴァインの姿に礼をし、ヒューバートに心底不思議そうに首を傾ける]
はて。
何か迷惑を掛けられたか?
[目を細めて少女の礼を受けゆったりとした動作で辞儀を返す]
言葉を操るのは誰もが為し得る事じゃな。
こうやってする挨拶とてそのひとつ。
儂が行う業も大して変わりはせぬ。言葉の持つ力、《言霊》がどのようにはたらくか、多少なりと気づいて居るというだけじゃ。
元来は剣を振り回すだけが唯一の取り柄という武人であった故、あるいは本義とは外れておるやもしれぬが、――。
義理堅い男なのだな。
自分が分からないのは確かに怖いな。
……もし記憶を全て戻したいと願うのなら、いずれは戻るだろう。
そうだな──。
失った記憶が例えば辛いものだったとしても、お前が笑って居られるならばそれもまた幸せなことか。
[困った様な笑みで]
分かりたくなくても、早めに分かっておいた方が良いよ?その方が、いざと言う時に後悔せずに済むから―
[自分みたいに、2度と取り戻せなくなってから気付いてほしくないから―そんな想いが*籠められていたか*]
わしは難しいことはよくわからぬ。
でも、心の作られ方は皆同じじゃ。
何者も誰かによって形と心が作られる。
そして心は育つものじゃ。
其れは独りでは容易ではない。
へんりえった、お主は見目もまだ幼い。
わしはお主の心が育つことを諦めはせぬ。
[何処か達観した少女の口調に眉尻を下げて呟き]
過ちも罪も、此処では必要とせぬものじゃ。
此処はそういう場所であろう?
「場を改めさせてもらえないだろうか」とは?
何を言っておるのか、ヒューバート。
いや何を申し出ておるのか、と問うべきか。
問うたところで、儂の望むのとは外れた方向からしか答えは返って来ぬだろうが。
だがあえて問おう。お主が自らに任じた業とは何ぞや?
[剄烈な光と瞳の奥に潜め、ヒューバートに問いかけた]
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