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[老戦士は、天を見上げた。]
[否、それは天ではないかもしれぬ――]
[――"Blue"を染める、*死のにおい*]
[無音の足取りで二人に歩み寄ると、抑揚のない声で話し掛ける。]
今、階段から"Platform"までが大混乱になっていた。君たちの所為か。
………
"Sledge-Hammer"は逝ったのだな。
[ダニエルの亡骸を見下ろし、静かに呟いた。]
もう飽きてしまった。
[オードリーから述べられた手をただ見つめ…それに返すものはない。ゆるりと首を傾けて笑みを見せ]
…覚えていないな。
興味のない話だったから…。
そう。LatestOpeには悪いけど其方の方が嬉しいな。
僕はExaltedAngelの獲物の方が好みだから。
[ニーナへの言葉には感情を揺らす様子を見せることもない、淡々と言葉を紡ぎ]
影は貴方と組んでいたの?よくわからないな…
そんなタイプには到底見えない。
[女の押さえられた左肩を見遣り、立ち上がる様子に目を細める]
…次は僕と遊んでくれる?
ああ、でもExaltedAngelとも約束をしているんだよね…
どちらと遊んだ方が楽しいかな?
…"君たち"の中から僕の存在を除外してくれないかな。
一緒にされちゃ困るよ…僕はここまで趣味は悪くない。
[彼と彼女だよ、と軽く顎先を揺らしてオードリーとダニエルを指し]
……、ジーン…
〔姿を見せて入ってくるらしい様子の影に、視線を向ける。
女からは、戦いの後特有の昂揚は既に過ぎ去っており〕
………ああ。…私がやったことだ。
望む礼儀は…手向けられなかったけれど。
〔ラッセルのことは口にしない。手にした侭だったボトルを影に向けて差し出す。女の眼差しへは、穏やかな笑みと凄絶なる哀しみとが混じる侭〕
[ラッセルからオードリーの顔へと闇黒の瞳が移動する。
それは、麗人の告白に、ゆっくりと一度だけ瞬きをした。]
[が、己に向かって差し出されたボトルには、一瞥を落としたのみ。
オードリーを見詰める瞳は、何のことか分からない、というように、何のいろも浮かべず*沈黙している。*]
…ああ。結局私は君を退屈させずにはいられない。
互いに望むものを知っていて、与えられはしない天邪鬼なのだもの。
ローズとニーナが…まさにそうだった…ろう。
〔口数少なに応えて、青年の感情の動きを受け入れる。併し、〕
……
…ラッセル。教えた筈だ…
御託を並べている暇があったら、
望んだ時に"御前"はかかってくるべきなんだ。
〔ぴしゃりと言って、続くラッセルの言葉には応えない。
若干癪を通り越した、女にしては稀なことに憮然とした面持ち。〕
…そうでもないな。
今の貴方の表情は僕には少し楽しい。
普段見れるものではないからね。
[憮然とした面持ちにさも楽しそうに笑い声を零し、しかし伝えられる言葉には瞳の寒色を際立たせてオードリーを冷えた目で見遣り]
…それにしても貴方も本当に僕のことを解ってくれないな…
そういう意味ではやはり僕と貴方はとても似ている。
決して互いに容れることはないけれどね…。
…思い上がるな、WidowedGentleman?
先程もだが貴方に指図される謂れはどこにもない。
僕にそれが出来るのは…彼の方だけだよ。
[目元を崩すと甘える所作で首を傾けてみせ]
僕は、僕が楽しめればそれでいい…何度も言っているだろう?
そのタイミングは僕が決める。今、この時もね?
それに…乗らぬ相手を無理矢理奮い立たせるのは嫌いなんだ。
こっちの興が醒める…貴方は相手を選びそうだしその確認だよ。
左肩のハンデも加えてね…貴方の獲物はとても好みだから残念だ。
…彼女は約束を覚えていてくれているかな…天使と遊んでくるよ。
次に貴方の元へ帰ってくるのは僕か、それとも彼女か…
多分、そのどちらもが貴方の快気を願っているよ…。
…それまでは、無事でいてね?
[くすくすと、零れる声は子供が嬉しさを隠しきれない時のものと同じで。足取り軽く席を立つと指先を躍らせて手を振り、血溜りを避けながらフロアを出て行く。きっと色濃く漂う鉄の匂いを辿れば*彼女の元へと辿りつくことができるだろうか*]
〔ひととき交す眼差しのうちに、胡桃色の瞳へは多くの感情が混ざって過る。…それでも…影の試み、その意図に変わりはないのを女はよく理解している。僅かだったが、唇の動きだけで…嬉しかったよと告げた。〕
…開けよう。…
ダニエル兄と、…ニーナの痛みを忘れないために。
…全てが終わったら、…感傷に浸る私を見て
その意味が君にはわかると思う…
〔…そう。自分と同じで…彼には時間がかかるのだ。
他者と判りあうために。…女はその時間を愉しめる。〕
…アッハ、…それは良かった。
愉しませると約束したのだものね。
〔続く更なる此方の天邪鬼への反応には、全く手を焼かせて
くれると言った態で、ルージュを引いた口を引き結ぶ。〕
…笑って済ませてくれるといいのに、
本当に容赦のないやつだね…君は。
…ン。… 傍には…行くつもりだ。
出来れば手負いであろうと私がローズを迎えに行きたい。
だが君には大きすぎる借りがあるから…こればかりはね。
上手に生きていておくれよ、"StiweardShip"…
私が君を大好きなことには変わりはない。
ああ、ふむん…そういう意味でなら…
――嫌々でなく囁くこともできるのかもしれないな。
〔影に唇で伝えたのとは、また別の言葉を青年へ向ける。
声はまだお預けというかあまりにも慣れないので
声にはならないというかで躊躇いがちに唇へ乗せる。〕
〔*「…、…、…、…。」*〕
[オードリーとラッセルの会話には口を挟まず、黙ってその場に立っている。
そのうちに、ラッセルがローズを求めてフロアを出て行くのを見送ってから、改めてオードリーに向き直り、語り掛ける。]
痛み、か。
レディ、死人は何も感じはしない。
君はダニエルの死に苦痛を感じているのか。
それから。
ニーナが死んだと何故思う。ローズが破壊者だからか。
[瞬かぬ虚無の瞳がじっと麗人を見据えた。]
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