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[しばしその姿を遠目に眺めていたがやがて]
──塒を探さねば。
[ひょうと吹く風に髪が遊ぶ]
[髪はばさりとその表情を覆い隠して]
[少し歩いた先、"集会場"の程近く]
[一軒の宿の一室を塒に選ぶ]
少し休まねばさすがに……。
体が、保たん。
[部屋の隅に置かれた椅子に腰かけ]
[わずかに俯き瞼を*閉じた*]
〔…そして師であり対なる存在へも、念じて告げる。〕
〔(…ものにしたか、とは…まだ訊いては
貰えないのかな…御老。ボクは確かに未熟だけれどさ。
好みの相手を弟子に先んじられたからって、
意地を張ることはないだろう?
御老の魔法を逆手に取って悪戯したのは謝るからさ。
…ボクはあのコをひとりにしたくない。…)〕
[男の笑みに幾らかの好奇心が頭を擡げたか]
[離れていく暗い闇の三日月を緩やかに追う]
私は生を持て余している訳では無いのよ。
ヒューバートのように旅立つ予定も無いけれど。
[エスコートを求める小さな淑女の仕草らしく]
[誘われる侭に男へと小さな手を恭しく伸ばす]
私は遊んであげた覚えは無いわ。
只、此処に在るだけよ。
触れても良いけれど、
心は、教わらなかったから判らないの。
[ドレスの裾を翻し男の傍らへと寄り添い]
[何処か不思議そうに男の貌を見上げる]
助かった、お疲れさま。
感謝するぞみっきい。
[やがて辿り着いた洋館の中、みっきいへと声を掛け。窓を開けることにする…はじめて見るガラスと、その硬さに驚きの声をあげ]
外が見えるのに風を感じぬ、不思議な板じゃ…。
[横に引いても開かず、押したり引いたりしていると外に向けて開く。勝手に慣れるまでに時間が掛かりそう…そんなことを考えながら]
…また知らぬ処へ迷われてしまうのは困るのぅ…
傷の手当てを致そうか。
[ウルズの言葉に笑みを零し、急がなくて良いと諭す声色で。持ってきた荷の中に包帯の替えはあったろうか]
…あぁ、済まない。
[ステラに頷き、手当てをされるならば大人しく任せるだろう。
粗方出血は止まっているが、腫れて膿みかけた傷もいくつかある。
よく見れば、肌の所々に目立たぬ色で、異質な素材を埋め込んだような紋が刻まれているのがわかる。]
随分な言われようじゃ。
誘いを無下にされようとは…
留まる処が決まるのならまた教えておくれ、遊ばれし方。
ご近所付き合いもまた乙なものじゃ。
[カラカラと笑い声をあげて、ヒューバートとの短い会話は終わるのだろう。告げられた言葉、男の顔を見据えながら浮かぶことは隠さずに口に出す]
お主が連れてこようとは思わなかったのか…?
ほんに不思議な男よ。
落ち着いたらまた赴こう…名を呼ばれぬことを祈ってておくれ。
[指された方角を目に焼き付けながら呟くのは交わした口約束を暗に含ませた皮肉にも似た冗談。その言葉が本当にならなければいいのだが、保証はできぬ…そんな意もあるやもしれない]
謝ることではない。
…これと、これが使えるか…
冷たいかもしれぬが暫しの間、我慢じゃ。
[僅かな荷の中から包帯と消毒を見つけたのならウルズの手当てを始めるのだろう。
全身を隈なく、見逃しがないように注意を払いながら傷口を見つけては消毒薬を塗りつけ――途中、傷痕のような紋を疵と間違えて擦ってみる所作も何度かして首を傾げることもあり――]
疵…に、しては歪ではなく綺麗な紋様のようじゃ。
お主もまた不思議な男よ…
[そんなことを呟きながらも滞りなく消毒は終わり、包帯を巻き直す…筈だったのだが]
…む…こうか…
いや、違う…ち、ちょっと待たれよ…
今計算しておる…ああ!うるず、動かれるでないぞ!
わしはお主の首を絞めたいわけではない…
[顰め面で巻く包帯は彼の肩だけではなく全身ぐるぐる巻きにしてしまいそうな不器用なもので。此方が謝る側に転換し、その場にいる他の誰かに助けの声を求めるのも時間の問題なのやも*しれない*]
〔レディの瞳に、自らが時に持て余すものが宿るのを認め…男は見惚れるような溜息をつく。〕
…ただ、落ち着かない…それだけなのかい。
うん…退行と逆行は違うから…
より純粋に自分でいたいのかもしれない。
ただ、全く純粋というわけではないけれど。
〔濃緑の外套を翻すと、淑女の差し出す手をごく軽く握る。
そうして跪き――手の甲へと薄い唇を触れさせる。〕
それがボクと遊ぶこと。
…キミの望みに触れるのは…気持ちいいな。…
知らないのとないのは、やっぱり違うことさ…アハハ。
〔緩慢な仕草で立ち上がると、膝の砂埃を払いもせずに…
不思議そうな面持ちの相手を見詰める。無遠慮に差し出す手が、許された接触を得て…滑らかに滑る〕
…今は…これで充分。そろそろ行くよ…時を有難う。
/*
お約束。
すみません!ちょっと親戚の容態が急変したので
途中離脱の可能性があります…(汗)
タイミング的にプロでは予期せぬ事態なので
抜けれずに申し訳なく…
病院からできる限り参加予定…。
[零される溜息にすと瞳を細めるも]
[続く言葉には緩やかに被りを振る]
いいえ、其れも違うわ。
持て余す事も無く、
落ち着かない事も無く、
只、愛(かな)しいだけ。
純粋ではないからかも知れないわね。
[だから腐って逝くのだわ、と小さく囁き]
[男の所作を静かに見守りされるが侭に]
[寄せられる唇に指先ではなく瞳が揺れる]
知らないうちに遊んでいたの。
そうね、私も在るのだとは思うのよ。
只、判らない事が多過ぎるだけで。
[男の手が滑る間は其の表情を窺うかの様で]
[愉しみの在り方を探っているのかも知れず]
お粗末様、御機嫌ようヒューバート。
[ドレスの裾を軽く持ち上げて礼をしかけて]
[不意に所作は止まり貌を見上げ小首を傾げ]
ひとつ訊いて良いかしら。
ヒューバートは、ひとりだと寂しい?
[紅い人形は静かに男の瞳を*見詰めた*]
―小屋―
うっ……
[生命の息吹が感じられない部屋に嗚咽が聞こえる]
来ないで……もう……来るなっ
[毛布を蹴飛ばし、バネ仕掛けの人形のように跳ね起きる]
はあ…はぁ…
[充血した目に荒い息、浅い眠りと多量の汗]
また、昔の夢……
[ふと視界に入った柳の枝を憎憎しげに睨みつけた]
…ひとつ、ボクとゲームをしよう…ヘンリエッタ。
〔ふと、面白い遊びを思いついたように提案する。〕
…ここに、ボクの杖から折った柳の枝がある。
これを貴女に渡しておくよ。
同じものを持った方へ、食べものを届けてくれないか。
〔手に取ったものを渡して…お願い、と頼む。
空き小屋にいる人物の特徴を伝えて笑みかけ〕
…こわがり屋さんだから…まだ皆とうまく話せない。
頼むよ、ヘンリエッタ。
できれば早いうちがいい。
[再び眠る気にもなれず、新鮮な空気を吸いに小屋から外へと出る。きい……と扉の軋む音に、辺りを気にしながら]
[周囲に立ち込める薄い霧の中を、独りあてもなく散歩という名の徘徊に出かけた]
[時折痛みに顔を顰めながらも、大人しく手当てを受けている。]
…あぁ、何だろうな…これは。
[肌に埋められた奇妙な紋を指摘されて、うなづく。
生まれつきあるようなものではなく、ほかの者にも無いものだろうと、なんとなくは思った。
何の為にそうなっているのかは、思いもつかなかったが。]
…っ、ステラ? それは苦し…っ……
[甲斐甲斐しく世話を焼いてくれているのはありがたくもあるが…どうやらこの方はかなりそそっかしいようで。
ほほえましくも思えたが…
なんというか、力なく苦笑いするしかないわけで。]
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